◆センスは抽象的な理解から
これは、一橋ビジネススクールの楠木建先生と株式会社ライプニッツ代表の山口周さんがセンスについて対談した「仕事ができるとはどういうことか?」(宝島社、2019)の中で、楠木先生が述べている言葉です。
楠木先生といえば、経営学者の中で、センスの重要性をいち早く提供し、論じてきた先生なので、非常に興味深く読ませてもらいました。ちなみに、先生が最初に書かれたセンスの本はこちらです。
この本で、楠木先生がこの発言をされる前に、山口さんが電通時代に、電通のプランナーだった白土謙二さんのエピソードを紹介しています。
それは、第1次のフリースブームのときにユニクロの店に視察に行ったところ、お客さんがいっぱいいて、活気があったそうです。これに対して、白土さんは「このブランドはこれから厳しい状況になる」と指摘しました。
山口さんは、「お客さんはみんなたくさんの商品をかごに入れてレジに並び、レジも待ちができていたじゃないか」と反論したところ、白土さんは
・顧客の8割が女性だったこと
・その女性の買い物は男性用の衣服がほとんどだった
などいくつかの事実を挙げ、「顧客は自分の服を買いたくて来ているんじゃなく、服を選ぶ喜びというベネフィットを得るために来ている。なので、このブランドはタンスがいっぱいになったら一旦打ち止めになる」と指摘したそうです。
この話を聞いた楠木先生は、
「さまざまな具体的な事実から、一つの抽象的なストーリーを描けるのはセンス、言い換えると、具体と抽象の行き来ができると、センスがある人になれる」
と指摘し、出てきた言葉がタイトルの
「抽象的な理解ほど実用的で実践的なものはない」
という言葉でした。
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