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2020年2月18日 (火)

【コンセプチュアル講座探訪】VUCA時代のプロジェクトマネジメント~「コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントのポイント」

バックナンバーはこちら https://mat.lekumo.biz/ppf/conceptual_course/
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◆VUCAの世界で生き残るために求められるポイント
 

Vuca9_2

VUCAとは
 
「Volatility」(変動が激しく不安定)
「Uncertainty」(不確実性が高い)
「Complexity」(複雑である)
「Ambiguity」(曖昧である)
 
という言葉の略語です。
 
VUCAは、もともと米国の陸軍で1990年代の冷戦終結後の国際情勢を意味する用語として使われ始めた言葉です。長く続いていた冷戦構造が終結し、ソ連崩壊、ドイツの統一、中国の政策の変革などがあり、まさに、複雑性が増し、将来の予測が困難な情勢で、これをVUCAと呼びました。
 
ビジネスの世界でもVUCAが注目され始めたのは、2016年の世界経済フォーラム(ダボス会議)で「VUCAワールド」という言葉が多くの講演で使われたことが契機だと言われていますが、その前に、米国の軍人であったスタンリー・マクリスタル将軍が2014年のASTD基調講演でVUCAについて述べています。これが2016年のダボス会議の状況をもたらしたと認識されています。
 
マクリスタル将軍の講演は米国軍での経験に基づき、
 
「VUCAの世界で生き残るために求められるポイント」
 
という演題で、3つのポイントを提示しました。
 
・予測できるという傲慢さを捨てる
・組織的な適合性を高める
・共有化された意識と権限委譲による実行
 
の3つです。これは、ビジネスにおいても組織、プロジェクト、チーム、個人のいずれにも当てはまることだと考えられます。この記事では、この指摘をプロジェクトでどのように活かしていくかを考えてみたいと思います。
 

◆プロジェクトの変動性と不確実性
 
それでは、プロジェクトがVUCAであるというのはどういうことでしょう。VUCAをプロジェクトに当てはめ、VUCAなプロジェクトを以下のように捉えます。
 
(1)プロジェクトが変動的である
(2)プロジェクトの不確実性が高い
(3)プロジェクトが複雑である
(4)プロジェクトが曖昧である
 
これでも大体イメージはできると思いますが、実際には不確実性とか、曖昧性とかいう言葉で代表することが多いので、一つ一つ、もう少し深堀してみたいと思います。
 
まず、「プロジェクトが変動的である」とは、プロジェクトの前提が変化し、不安定であることです。例えば、ある技術を使うことを前提としてプロジェクトを実施しているところに、新しい技術の登場というのはVUCA時代の変動性の代表的な例です。
 
次に「プロジェクトの不確実性が高い」とは、プロジェクトリーダーのコントロールし得ないプロジェクト事象の生起の仕方にさまざまな可能性があり、いずれの事象が確実に起こるか判明しないような状況です。例えば、プロジェクトリスクは計画との差異の発生ですが、計画に関係なく、プロジェクトを失敗させるような要因だと考えることができます。
 
 
◆プロジェクトの成功と失敗とは何か
 
少し脱線しますが、プロジェクトの成功と失敗とは何かについても考えておく必要があります。プロジェクトマネジメントでいえば、計画通りにプロジェクト成果物を生み出せば成功、差異が出てくれば失敗と考えるのが普通ですが、実はここには成果が入っていません。目標をクリアして成果物をつくるとプロジェクトに最大の成果が生み出されるように成果物が定義されていることが前提になっています。
 
計画は目標を達成するために策定しますが、その背景には目的があります。目標は定量的なものが中心で、達成できたかできないかを明確に評価できますが、目的は定性的なものですので、実現できたかどうかは非常に評価が難しくなります。
 
そもそも、目標は目的を実現するために決めるものですが、プロジェクトには予算と納期という経営的な制約がありますので、100%実現できるような目標を設定できるかどうかわかりません。そこで、制約と目的の実現度のバランスを考えて目標を決め、ステークホルダーの合意を取って進めていくことになります。
 
このように考えると、目的を当初の予定に対してどのくらい実現できたかという評価が必要になります。これがプロジェクト成果です。このあたりの話は、PMスタイル考の第158話「プロジェクトの成果と成果物」を読んでみてください。
 
【PMスタイル考】第158話:プロジェクトの成果と成果物
https://mat.lekumo.biz/pmstyle/2019/10/post-f682.html
 
プロジェクトが成功したというのは、目的に対して、当初予定した実現度以上の実現度を達成することで、予定以下であれば失敗だと言えます。VUCAなプロジェクトでは、目的実現度100%のプロジェクト目標を設定できることはまずないと思いますので、この関係をよく理解しておく必要があります。
さて、話を元に戻します。次は、複雑性です。
 

◆プロジェクトの複雑性と曖昧性
 
「プロジェクトが複雑である」とは、複数のプロジェクト要素が絡み合って、総合的に状況を見れないような状況です。たとえば、複数の要求の絡み合い、複数のリスクの絡み合いなどを上げることができます。大規模なプロジェクトにおいては、成果物や目標が絡み合って、総合的な状況が見えなくなることも珍しくありません。
 
最後に「プロジェクトが曖昧である」とは、プロジェクトの成果物や作業方法など、プロジェクトを実施するために決めなくてはならない事象が決まっていない状況です。プロジェクトは最初にすべてを決めて計画を作って進めるわけではなく、最初の段階では細かなことは決まっておらず、徐々に決めながら進めていくという前提になっています。これがプロジェクトの性質の一つになっている段階的詳細化です。
 
以上のように考えてみますと、VUCAなプロジェクトはそんなに珍しいものではありません。むしろ、プロジェクトらしい活動はVUCAであると考える方が自然なのかもしれません。
 

◆プロジェクトマネジメントのポイント~変動性への対応
 
では、VUCAをたどりながら、プロジェクトマネジメントのポイントを整理してみましょう。
まず、変動性に対応するには、目標の背景にある前提を常に確認しながらプロジェクトを進めていく必要があります。ここで重要なことは、前提は何から決まるかということです。言い換えれば前提はなぜ変わっていくのかということです。
 
これはプロジェクトの環境やステークホルダーの考え方の変化なのがあるからですが、もっと重要なことは、そのような変化の中で、プロジェクトの目的を実現するには前提を変える必要があることです。
例えば、あるカスタム製品開発プロジェクトで、顧客と末長い良好な関係を作ることがプロジェクトの目的だったとします。これを決めたときには競合に対して有利な状況にあるということで、プロジェクトの納期や予算や収益率を決めました。しかし、プロジェクトを進めているうちに競合が強烈にアピールし、顧客とのよい関係を作りそうになってきました。
 
そこで、目的を実現するために、収益率を下げ、これまでに顧客にあきらめてもらっていたスペックも取り入れ、また、納期を前倒しにしました。こういうマネジメントが必要になります。
 

◆プロジェクトマネジメントのポイント~不確実性/複雑性/曖昧性への対応
 
二つ目は、不確実性ですが、これはリスクの洗い出しの徹底と、できるだけ前倒しにリスク対応を心がけることにより、目標に対するリスクが目的に対するリスクに影響を及ぼさないようにしていきます。
このためには、リスク対応策を概念的なレベルで考えて、具体化し、うまく行かなければすぐに概念に戻り、別の策を打つようなリスクマネジメントをすることが必要です。
 
三番目の複雑性に関しては、大局的な視点から、リスクの相関関係や対応のバランス、要求の相関関係やバランスなどを見極め、より本質的なものを重視して対応していくといったマネジメントが必要になります。
 
そして最後の曖昧性については、できるだけ細かな単位の段階的詳細化の計画を策定し、プロジェクトの変動に対応していくことが効果的です。
 
VUCAなプロジェクトに対しては、以上のような方針で対処いけばよいでしょう。
 

◆VUCA時代におけるプロジェクトに対する認識
 
しかし、ここに一つ問題があります。日本のプロジェクトマネジメントは、IT業界から普及していきましたが、多くの企業では品質管理の強化という位置づけで導入されました。これは、工場パラダイムです。つまり、
 
「たくさんおなじ製品をつくれるのがよいプロジェクトであり、一方でちがいが生まれるとそれは不良品とされ、欠陥として扱われる」
 
というものです。これ自体が悪いわけではありませんが、目標達成が不可欠になり、徐々に達成できる目標を設定するようになってきました。これによって、プロジェクトの目的は目標設定にあまり影響を及ぼさないようになりました。端的にいえば、飾り物になっていきました。
 
しかし、上で述べましたように、VUCAの時代のプロジェクトマネジメントではプロジェクトの成果物や目標が変わってしまうことが前提になります。その場合、目的まで戻って、目標設定や成果物の設定をしなくては目的が実現できません。
 
このためには、プロジェクトにどのような成果を求めるかを明確にし、それに基づいて目標を設定し、成果物を決める。そして、前提が変動したり、要求やリスクが輻輳したり、するような中で、リスクをマネジメントしながら、段階的詳細化を進めていくというマネジメントが不可欠になります。これがVUCAなプロジェクトへの対応になっています。
 

◆VUCA時代のプロジェクトマネジメントに必要なスタンス
 
このようなマネジメントをしようとすれば、マクリスタル将軍がVUCAを生き延びるために必要だと指摘した
 
・予測できるという傲慢さを捨てる
・組織的な適合性を高める
・共有化された意識と権限委譲による実行
 
というポイントがヒントになります。
 
まず、すべてを予測して、プロジェクトをコントロールするために計画をしているという意識を改め、計画はプロジェクトの状況を共有し、権限移譲するための道具だと考える必要があります。と、同時に、そのような計画を中心にして、プロジェクトは自在に作業を変更できる必要があります。
 

◆セミナーの目的と構成
 
このようなコンセプチュアルなプロジェクトマネジメントを学ぶセミナーとして
 
「コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントのポイント」
 
があります。
 
このセミナーはコンセプチュアル思考をプロジェクトマネジメントの中に持ち込む方法を学ぶセミナーで、まず、VUCA時代に必要なプロジェクトマネジメントのポイントを明確にし、それらのポイントを如何に実現していくかを示します。
 
・プロジェクトのコンセプトを明確にする
・コンセプトを実現する目的な目標を設定する
・本質的な目標を達成する計画を策定する
・プロジェクトマネジメント計画を活用した柔軟なプロジェクト運営
・トラブルの本質を見極め、対応する
・経験を活かしてプロジェクトを成功させる
 
の6つです。
 
従来のプロジェクトマネジメントとの大きな違いは、従来のプロジェクトマネジメントはWHATを中心にして行うのに対して、コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントはWHYを中心にして行うことです。
 
言い換えると、従来はQCDSのトライアングルでバランスを取ることがマネジメントの基本になりますが、VUCA時代のプロジェクトでは、目標とするQCDSが大幅に変化するため、目標自体を変えなくてはプロジェクトの目的が実現できなくなります。
 
このため、計画変更というよりは、そのような局面では、目的に立ち戻り、目標設定をしなおし、その目標を達成するための計画を策定しなおすというアプローチが必要になります。このようなアプローチはPMBOK(R)の枠組みの範疇ではありますが、実際にはリカバリーという位置づけで実行されています。これをリカバリーではなく、通常のマネジメントとして行おうとするものです。
 
これが目的を中心にプロジェクトを回すという意味です。一言でいえば、成果物ではなく、成果の実現を狙ったプロジェクトマネジメントですが、上に示した6つのポイントがそのようなプロジェクトマネジメントのポイントになります。

━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆コンセプチュアルなプロジェクトマネジメントのポイント      ◆(7PDU's)
  日時:2020年 03月 10日(火) 10:00-18:00(9:40受付開始)  
  場所:銀座ブロッサム中央会館(アクセス)東京都中央区
  講師:好川哲人(エム・アンド・ティ コンサルティング代表)
  詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/conceptual_pm.htm
  主催 プロジェクトマネジメントオフィス、PMAJ共催
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【カリキュラム】                     
 1.VUCA時代に必要なコンセプチュアルなプロジェクトマネジメント
 2.プロジェクトへの要求の本質を反映したコンセプトを創る
 3.コンセプトを実現する目的と目標の決定
 4.本質的な目標を優先する計画
 5.プロジェクトマネジメント計画を活用した柔軟なプロジェクト運営
 6.トラブルの本質を見極め、対応する
 7.経験を活かしてプロジェクトを成功させる
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◆関連記事
 
VUCA時代のプロジェクトマネジメントというタイトルで、noteで連載しています。
ぜひ、お読みください!
 
VUCA時代のプロジェクトマネジメント
https://note.com/ppf/m/mc66e1ae06086
 

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。