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2021年6月21日 (月)

【コンセプチュアル講座探訪】コンセプチュアルリーダーとしての能力を磨き、センスのよい成果を生み出す~コンセプチュアルリーダー養成講座

バックナンバーはこちら https://mat.lekumo.biz/ppf/conceptual_course/
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◆コンセプチュアルリーダーとは

PMstyleでは、2021年4月からコンセプチュアルリーダー塾を設立し、コンセプチュアルリーダーを育成する活動に取り組んでいます。コンセプチュアルリーダーは一言でいえば、

「コンセプチュアルスキルを活用して、センスのよい成果を上げる人材」

のことです。

この記事では、まず簡単に、PMstyleが提唱しているコンセプチュアルという概念の整理をしておきたいと思います。


◆コンセプチュアルスキルとは

コンセプチュアルスキルは、一般には、

「周囲で起こっている事柄や状況を構造的、概念的に捉え、事柄や問題の本質を見極めるスキル」

という意味で使われます。具体的なスキルとしては、例えば、問題解決や意思決定のスキルがあります。

ポイントは本質を見極めて本質的な問題を解決することや、本質を押さえた適切な意思決定をすることです。問題解決や意思決定をしても本質からずれたものであれば、それがコンセプチュアルスキルとは言えません。

PMstyleでは、コンセプチュアルスキルを使ってこのような活動をした結果、成果に付与される要件をセンスだと考えています。つまり、コンセプチュアルスキルと呼べるクオリティの活動をすることによって、センスのよい成果が得られるわけです。


◆コンセプチュアル思考とは

そして、本質を見極める際に役立つのが、コンセプチュアル思考です。コンセプチュアル思考は、

・大局/分析
・抽象/具象
・直観/論理
・主観/客観
・長期/短期

の5つの軸を使いながら、概念の世界(大局、抽象など右側)と形象の世界(分析、具象など左側)を行き来する思考法です。

もっとも古くから行われているのは、長期と短期の軸の行き来です。企業経営や事業経営においては、来年、あるいは直近の2~3年をどうするかといった視点から戦略を考えると同時に、5年とか10年先を考えてそれをどのように修正するかと考えていくのが普通です。

最近、急速に普及してきたのは、抽象と具象の軸の行き来です。例えば、抽象的に機能を考え、それを具体化し、さらに、その具体から抽象的な機能を見直すといった行き来で考えることによって、同じ(概念)アイデアから、全く異なる製品(形象)が生まれてイノベーションを起こすといった考え方が一般的になりつつあります。

また、このほかにも、最近では、直観や主観を考えの中に入れるべきだという人も増えてきており、まさに、コンセプチュアル思考の5軸をすべて使って考える時代が到来してきたと言えます。

詳しく知りたい方は、好川哲人の「コンセプチュアル思考」という本を読んでみてください。

好川 哲人「コンセプチュアル思考」、 日本経済新聞出版社(2017)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532320623/opc-22/ref=nosim

このように考えていくと、コンセプチュアルスキルを活用した活動をするということは、コンセプチュアル思考を使いこなし、本質を見極めた上で、本質を踏まえてさまざまな活動をしていくことに他なりません。このような活動をするのがコンセプチュアルリーダーです。

ちなみに、コンセプチュアルリーダーが集まって作るチームや組織をコンセプチュアルな組織と呼んでいますので、こちらも覚えておいて頂ければと思います。


◆コンセプチュアルリーダーの中核能力

以上のようなコンセプチュアルの体系に基づき、PMstyleではコンセプチュアルリーダーを

「複雑にからみあい、変動する事象を概念化することにより、ものごとの関係性や本質を認識してリーダーシップを発揮できる人材」

だと定義します。簡単にいえば、コンセプチュアル思考を自身や、チームの活動に活用して、センスのある成果を出しているのがコンセプチュアルリーダーです。

このようなコンセプチュアルリーダーには3つの中核能力があります。以下の3つです。

1.意味をつくる
2.問題を創る
3.柔軟性を重視する

この記事では、コンセプチュアルリーダーの中核能力について簡単に説明していきたいと思います。例として少し古くなりますが、非常に分かりやすいのでグーグルの例を取って考えていきます。


◆「意味をつくる」とは

一つ目の中核能力は、意味をつくることです。

VUCA時代を迎えた今、最適化の意味がなくなっています。最適だと考えているものが次の瞬間には最適ではなくなるのがVUCAの時代です。このため、誰もが必要だと考えたり、適切だと考えるものがありません。事実、そのようになってきていることを実感されている方は多いと思います。

このような状況に対応するには、サービスや製品の提供には要求があってそれに応えるという考え方ではなく、要求自体をつくって意味を持たせていく必要があります。例えば、何かサービスを提案するときに、そのサービスが顧客にとってどのような意味があるのかを考え、それを提案していく必要があるのです。このような発想で考えることができるのがコンセプチュアルリーダーです。

例えば、グーグルは自分たちの提供する検索サービスを

「1クリックで世界の情報へアクセス可能にする」

ものだとしました。今や当たり前ですが、実はグーグルの登場した1990年代の後半にはこれはほとんど考えられていないものでした。

グーグルは、インターネットに着目し、検索に、1クリックで世界の情報にアクセスすると意味付けを提案しました。多くの人にとって検索がそのように位置付けられることは予想もしなかったことですが、これは非常にインパクトのある意味付けで、多くの人に受け入れられ、グーグルは成功していきます。そして、グーグルの提案した検索の意味は常識と思われるものになっていったわけです。

意味をつくるとは、このように、目的や、市場などを新たに定義することです。いわゆる、センスメイキングです。

最近では、ストーリーテリングが当たり前のように使われるようになってきましたし、有能なマネジャーはストーリーテリングがうまいと考えられています。この背後にあるのが、センスメインキングです。つまり、相手が想像しなかったような意味をつくって、それをストーリーとして語ることができるのが、有能なマネジャーと考えられています。

また、これはイノベーションに欠かせないものです。特に、既存の技術を組み合わせて行うイノベーションにおいては、不可欠だと言えます。

コンセプチュアルリーダーであるためには、その範囲は自分の業務の範囲であっても、新しい意味を定義して、その意味に基づいて新しい考え方を発想していくことが必要なのです。


◆「問題を創る」とは

二つ目の中核能力は、問題を創ることです。つまり、提唱した新しい意味を実現するために、どのような問題を解けばよいかを明確にすることです。

創られる問題によって、その意味の値打ちが決まってきます。提唱した意味が受け入れられるかどうかは、その意味の元で創られる問題次第だと言ってもよいでしょう。

例えば、上の例のようにサービスに意味をつくって提案したとします。その意味が受け入れられるかどうかは、そのサービスが実現してくれるものが自分にとって価値のあるものだと感じるかどうかにかかっています。価値があると感じたら、そこで初めて意味があると考え、意味を受け入れます。

グーグルの例でいえば、グーグルは、「1クリックで世界の情報へアクセス可能にする」という検索の意味を実現するために、

「卓越した検索を行うエンジンを作る」

という問題を立て、この問題を解決することによって、事業を成功させていきました。イノベーションでいえば、用途を開発することに当たります。


◆「柔軟性を重視する」とは

三つ目の中核能力は、柔軟性を重視することです。

VUCAの時代ですから、環境も変われば、要求も変わります。ここで問題になるのは、何が変わったかです。例えば、要求が変わる場合、要求されているもの自体が変わってもさほど問題はありません。問題なのは、なぜそれを要求しているか、つまり、要求の前提が変わる場合です。

前提が変わっていなければ要求が変わっても対応を調整できます。しかし、前提が変わると、これまでとは全く異なる要求になる可能性が大きく、調整というレベルでは無理になることが多いのです。

グーグルの例でいえば、グーグルは検索対象はテキストで表現されており、検索はテキストベースで行うものだという前提でした。しかし、さまざまな技術の進化の中でテキスト以外による検索対象もあると考えます。そして、例えば、グーグルマップという検索サービスを提供しましたし、そのほかにもさまざまな形態の検索を提供しました。

このように考えられる背景にはビジョンやパーパスがあるのかもしれませんし、また、ライフサイクルに対するしっかりとした認識があり、それを背景に持つことの重要性も感じます。


◆中核能力によるコンセプチュアルリーダーの行動例

このような3つの中核能力を使って行われる、コンセプチュアルリーダーの行動には以下のようなものがあります。これらはコンセプチュアルリーダーの行動規範だといってもよいかもしれません。

<意味をつくる>
・常にものごとの意味を考え、新しい市場を創り出す
・常に目的に立ち返り、少しでも多く目的を実現する

<問題を創る>
・市場や顧客の要求の本質を見極め、期待を上回る製品やサービスを提供する
・前提を疑い、まったく新しい製品やサービスを考える
・自身の興味を業務に活かす

<柔軟性を重視する>
・多様な意見を統合した新しいアイデアを生み出す
・柔軟な発想の問題解決をする
・意思決定を速く、適切に行う
・失敗は成功の過程だと考える
・仕事の本質を見極め、仕事の生産性を上げる

この一部については、「コンセプチュアル思考」の中で説明していますので、読んでみてくだい。また、もっと詳しく知りたい方は、このあとで紹介します、コンセプチュアルリーダー養成講座を受講ください!


◆セミナーの目的と構成

コンセプチュアルリーダー塾では、コンセプチュアルリーダーに必要な3つの中核能力のトレーニングを3回に分けて行います。各回のセッションが2時間半のプログラムになっています。

短時間にトレーニングのため、各セッションは30分程度のお話をした上で、トレーニングを中心に行う構成になっています。

さらに、この中核能力を使って、センスのよい成果を生み出すための活動を如何に行うかを体験します。

4回のセッションで、コンセプチュアルリーダーの中核能力と、行動を身に付けることができる講座です。

━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆コンセプチュアルリーダー養成講座(全4回)           ◆
 日時:<基本編> 2021年07月14日(水) 19:30-22:00
          2021年08月18日(水) 19:30-22:00
          2021年09月15日(水) 19:30-22:00
    <センス編>2021年10月13日(水)19:00-22:00
 形態:ZOOMオンライン
 講師:好川哲人(有限会社エムアンドティ取締役)MBA
 詳細・お申込  https://pmstyle.biz/smn/conceptual_juku0.htm
 主催 プロジェクトマネジメントオフィス、エムアンドティ
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【カリキュラム】
 第1回 意味をうくる(基本編)
 第2回 問題を創る(基本編)
 第3回 柔軟性を重視する(基本編)
 第4回 コンセプチュアル思考でセンスを高める(センス編)
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。