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2020年2月12日 (水)

【コンセプチュアル講座コラム】「抽象的な理解ほど実用的で実践的なものはない」

バックナンバーはこちら https://mat.lekumo.biz/ppf/conceputual_col/
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◆センスは抽象的な理解から
 
これは、一橋ビジネススクールの楠木建先生と株式会社ライプニッツ代表の山口周さんがセンスについて対談した「仕事ができるとはどういうことか?」(宝島社、2019)の中で、楠木先生が述べている言葉です。
 
 
楠木先生といえば、経営学者の中で、センスの重要性をいち早く提供し、論じてきた先生なので、非常に興味深く読ませてもらいました。ちなみに、先生が最初に書かれたセンスの本はこちらです。
 
楠木建「経営センスの論理 (新潮新書) 」、新潮社(2013)
 
この本で、楠木先生がこの発言をされる前に、山口さんが電通時代に、電通のプランナーだった白土謙二さんのエピソードを紹介しています。
 
それは、第1次のフリースブームのときにユニクロの店に視察に行ったところ、お客さんがいっぱいいて、活気があったそうです。これに対して、白土さんは「このブランドはこれから厳しい状況になる」と指摘しました。
 
山口さんは、「お客さんはみんなたくさんの商品をかごに入れてレジに並び、レジも待ちができていたじゃないか」と反論したところ、白土さんは
 
・顧客の8割が女性だったこと
・その女性の買い物は男性用の衣服がほとんどだった
 
などいくつかの事実を挙げ、「顧客は自分の服を買いたくて来ているんじゃなく、服を選ぶ喜びというベネフィットを得るために来ている。なので、このブランドはタンスがいっぱいになったら一旦打ち止めになる」と指摘したそうです。
 
この話を聞いた楠木先生は、
 
「さまざまな具体的な事実から、一つの抽象的なストーリーを描けるのはセンス、言い換えると、具体と抽象の行き来ができると、センスがある人になれる」
 
と指摘し、出てきた言葉がタイトルの
 
「抽象的な理解ほど実用的で実践的なものはない」
 
という言葉でした。
 

◆抽象的であることを嫌う弊害
 
実際にマネジャーリーダーの育成を通じて痛感しているのは、抽象と具体の行き来ができる人が例外なく、よい人材であることです。では、なぜ、抽象的であることは嫌われるのか。
 
それは、抽象的に考える人は、抽象だけで仕事をしようとするからです。リーダーはともかく、マネジャーのアウトプットは抽象だけでできなくはありません。しかし、そういうタイプのマネジャーは組織ではほぼいません。昇進できないからです。
 
それはいいのですが、逆に具体的にしか考えられないマネジャーは少なくありません。これもこのようなタイプは評価され、昇進するからなのですが、このタイプのキャリアは課長で終わりです。部長に昇進していく人は、具体的な思考だけではなく、抽象的な思考ができる人に限られます。特にラインの部長になると確実にそうです。抽象的な思考ができないと、数十人~百人の人をまとめていくことが不可能だからです。

そのように考えると、部長になるマネジャーは、現場に目配りし、また現場の情報を集め、現場で起こっていることをまとめて抽象的なレベルで問題解決をできる人だと言えます。
 

◆付加価値を生み出すにはコンセプチュアルスキルが不可欠
 
昇進の問題はさておき、では、なぜ、抽象的であることが実用的で、実践的なのでしょうか。これは簡単です。
 
本当に付加価値の高い仕事をしようと思えば、具体的にだけ物事を考えていたのではだめなだからです。理由は、具体的な事実をまとめて抽象化できて初めて、洞察ができるからです。洞察をすることによって、新しい具体的なやり方を思いつくのです。
 
自ら行動もしなくてはならないリーダーの場合は、もう一つあります。そこで思いついた新しいやり方を試してみようとすれば、失敗を覚悟でやらなくてはなりません。言い換えると、失敗に強くないとそのような行動は起こせません。
 
失敗に強くなるには、とっさにいくつもの代替案を思いつき、それらを評価し、実行していける必要があります。このためには、ものごとを抽象的に考え、それを具体案に落とし込んでいく思考力が不可欠なのです。
 

◆抽象的な部分をカバーするのはリーダーの責任
 
このプロセスの中で、抽象的なアイデアから具体的な方法を考案することはそんなに難しくありませんし、チームでやればいろいろなアイデアが出てきます。しかし、抽象化はチームでガヤガヤやってもできません。
 
そこはチームリーダーやプロジェクトマネジャーがやらなくてはならない部分ですし、彼らのもっとも重要な役割は、起こっている事実情報を収集し、整理し、抽象化し、課題解決策を考えることによって、チームやプロジェクトの進むべき方向を示すことです。
 
これはリーダーとして具体的なことをいろいろと実行するより、はるかに実用的で、実践的であるし、やりがいのある仕事だといえます。
 
ホンモノのリーダーになるために、コンセプチュアルスキルを鍛えましょう!
 

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【カリキュラム】                     
 1.リーダー行動とコンセプチュアルスキル
 2.リーダーシップとコンセプチュアル思考の活用
 3.リーダーシップを高める方法      
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。