2006年1月29日 (日)

何だ?この会社

477940018x01lzzzzzzz_1 株式会社ライブドア「livedoor?何だ?この会社」、ライブドアパブリッシング(2005)

お奨め度:★★★★

いろいろと意見のある本だと思うが、一級のエスノグラフィー。

ライブドアの組織文化を書いた本。組織論のグルである、エドガー・シャインの説によると、組織文化には、シンボル、価値観、基本的仮定の3つのレベルがあるそうだ。

456123393809lzzzzzzz エドガー・シャイン(金井寿宏、片山佳代子、尾川丈一訳)「企業文化―生き残りの指針」、白桃書房(2004)

このライブドア本に書かれている主要なライブドアのフューチャーをこの区分に分けてみると

「即決・即断」:「検討します」はタブー(価値観)

「固定費削減」:机も椅子もただでもらう(シンボル)

「メールは1日5000通」:仕事はメールに集約する(基本的仮定)

「人材活用」:”伸びしろ”のある人間の付加を徹底的に高める(価値観)

「下克上人事」:年齢・経歴関係なし、稼ぐ人間がトップをとる(シンボル)

「3ヶ月査定」:3ヶ月ごとの成果に応じて、給料も激増・激減(シンボル)

「社長で稼ぐ」:社長をタダでは遊ばせない(価値観)

「福利厚生の充実」:最高7万円まで!半額支給の住宅補助(シンボル)

「ホリエモン」:売れている名前はとことん使う(基本的仮定)

といった感じになると思う。これを見ても、若い会社であることがわかる。ただ、これからの会社に必要な文化を構築しようとしていることは間違いない。

その意味で、エスノグラフィーの素材が面白く、非常に価値のある本である。

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2006年1月27日 (金)

はぐらかしの達人になろう

453231259001lzzzzzzz 梅森 浩一「「はぐらかし」の技術」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★

小泉首相の答弁を見ていて、不思議なのは、明からの話をはぐらかしているのだが、後味が悪くないことだ。これがはぐらかしの天才といわれる所以だろう。

ところが一方で、誰とは言わないが、一回のはぐらかしに、それをどんどんと突っ込まれて、それが致命傷になった政治家もいる。

民主党が岡田党首だったころ、小泉首相との党首討論を見ていると、この「はぐらかし」が極めて重要だと感じさせる場面がよくあった。直球勝負だけでは身が持たない。

さて、この本は、いまや、ビジネス道のグルの一人になった雰囲気のある梅森 浩一氏が「はぐらかし」という一風変わったテーマで書いた本である。この本では、よいはぐらかしと、やってはならない悪いはぐらかしに分け、よいはぐらかしのテクニックを説いている。

なかなか、面白い。梅森氏がはぐらかしの基本テクニックとして進めているのは、大きくわけると「ずらす」ことと「力関係を利用すること」である。

ずらすテクニックとしては

1)目標をずらす

2)相手にずれてもらう

3)自分の気持ちをずらす

4)ずれたケースをあげる

5)言葉のイメージをずらす

6)キャライメージをずらす

の6つ、力関係を利用するテクニックとしては

7)説得力のありそうな人を出す

8)流行り言葉をちりばめる

9)具体的だけど本筋にあまり関係のない数字をあげる

10)経験の有無の差をつく

11)都合のいいようにまとめる

の5つ。これを読んで心当たりがあって、にやりと笑った人も少なくないだろう。よくぞ、ここまで体系化したという感じだ。

とりあえず、読んでみよう!

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2006年1月25日 (水)

正しいメンタリングの仕方を身につける

453211093901lzzzzzzz 渡辺三枝子、平田史昭「メンタリング入門」、日本経済新聞社(2006)

お奨め度:★★★★

最近、メンタリングが注目されるようになってきている。コーチングブームからの派生だと思うが、あまりにも局所的な部分に焦点が当たりすぎているように思う。

ご存知の方も多いが、メンタリングという言葉は叙述詩「オデッセウス」の登場人物「メントール」という人物が語源だといわれている。オデッセウスが放浪の旅に出るときに,息子の養育を老賢人メントールに依託した。オデッセウスの期待に答え、メントールは見事に息子を育て上げたという話がある。

一人の子供、それも、王様の後継者を育てるという仕事を考えてみてほしい。さまざまな観点から、さまざまな対応をしなくてはならない。それがメンタリングである。あるときには、子供を信用して、全面的に見方をしてやる必要があるだろう。あるときには厳しく指導してやる必要があるだろう。あるときには友達になってあげる必要があるだろう。などなど。

その一因は、メンタリングという言葉や概念は普及してきたが、その方法については自己解釈、経験論が多く、メンターとしてきちんと勉強していない人が多いためだと思われる。

その意味でメンターになる人は、必ず、メンタリングの勉強をしてほしい。そんな人にぜひお奨めしたいのが、この本である。専門的な用語の使用を避け、わかりやすく、かつ、結構、網羅的に書かれている。事例もふんだんに掲載されている。

この本を読んで、興味をもったら、ぜひ、一度、本格的に勉強をしてみてほしい。それには、こちらがお奨め。

456126387x09lzzzzzzz キャシー・クラム(渡辺直登、伊藤知子訳)「メンタリング―会社の中の発達支援関係」、白桃書房(2003)

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2006年1月23日 (月)

役人とプロジェクトマネジャー

412003238809lzzzzzzz 久保田勇夫「役人道入門―理想の官僚を目指して」、中央公論新社(2002) 

お奨め度:★★★★

4年近く前に出版された本であるが、偶然、書店で見つけた。たいへん、面白い本で、珍しく、初読からみっちり、読み込んだ。何が興味を引いたかというと、プロジェクトマネジャーというのは役人道を極めればよいのではないかという点。とても意外な発見だった。
著者の久保田氏は、プロフィールによると東大法学部から大蔵省入省、官僚キャリアの最後は国土庁事務次官で終わったとある。王道のキャリアを歩んだ人だ。その久保田氏の自伝的回顧的に役人のあり方、思考規範、行動規範を説いた本。

ここで興味深いのは、社会学者のマートンの指摘である。それは、

規則や命令をかたくなに重視すると、それさえ守りすればよいということで、内部では形式主義、事なかれ主義になる。外部に対しては面倒な手続きをおしつける繁文縟礼(はんぶんじょくれい)となる。 権限の原則、専門化は、各部門の利益ばかりを考えるセクショナリズムを生みやすく、責任の回避、秘密主義、権威主義といった欠点となる。 上下関係の階層秩序は、下層に無関心を生みやすい。
これらの逆機能が強まると、合理的なはずの官僚制が、非効率的なものとなる。

といった指摘である。マートンはこれを「官僚制の逆機能」と呼んだ。

逆機能が起こってしまうと、いわゆる「官僚主義」となり、揶揄の対象になるが、この本を読んでいると、逆機能をさせ起こらなければ、すばらしくよく考えられた組織であることがわかる。

特に感じるのは、プロジェクトマネジャーは本質的に役人道をきわめていなくてはならないのではないかということだ。事業マネジャーには役人道はマイナスになる部分も多いと思うが、プロジェクトマネジャーにとっては非常に参考になる。

プロジェクトマネジャーの方、ぜひ、ご一読を!

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2006年1月18日 (水)

あるあるマーフィー探検隊!

448405111709lzzzzzzz リチャード・ロビンソン(小林由香利、杉浦茂樹、服部真琴訳)「やっぱり、あるある マーフィーの法則」、阪急コミュニケーションズ(2005)

お奨め度:★★★★

マーフィーの法則とは、先達の経験から生じた数々のユーモラスでしかもペーソスに富む経験則をまとめたものである。「マーフィー」と言う名は、基地内のライト航空研究所に勤務していたエンジニアのエドワード・アロイシャス・マーフィー大尉が残したエピソードに端を発するといわれている。マーフィー大尉の逸話とは

エドワード空軍基地に来ていたマーフィーは、トラブルを起こした装置を調べて誰かが間違ったセッティングをしていた事を発見し、

If there is any way to do it wrong, he will.「奴は可能な限りヘマをする」

と言い放った。ここからマーフィーの法則は始まり、冒頭に述べたような法則をマーフィーの法則と呼ぶようになったという。

その後、いろいろな人の手で、マーフィーの法則が作られている。この本もその一冊。なかなか、よく出来たマーフィーの法則が多い。この本の中で、印象に残ったのは、帯にあるものだが、

 ・結論とは考えるのに飽きたときにたどり着く場所だ

 ・好きなようにしていいとき、人は誰でも同じことをする

といった法則である。

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2006年1月 5日 (木)

2005年ベスト10

あけましておめでとうござます。旧年中は、ビジネス書の杜ブログをご愛読戴き、ありがとうございます。このブログでは昨年度、こんな本がたくさん売れました。

Pmbok3rdjapaneselarge_1

第1位 A Guide To The Project Management Body Of Knowledge: Official Japanese Translation

やはり、これでした。300冊以上売れました。おもしろいのは、2000年版や英語版が結構売れていることです。

あわせると400冊を超えています。

紹介記事はこちらにあります。

477411858309lzzzzzzz 第2位 プロジェクトマネージャーが成功する法則―プロジェクトを牽引できるリーダーの心得とスキル

今年も2位になることができました。感謝。そろそろ、新しい本が待たれますが、もう、プロジェクトマネジメントの本は書きません。この本で書きつくしています(笑)。

紹介記事はこちらです。

479810023409lzzzzzzz_1第3位 イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき

第一版(原書)は1997年ですので、根強く売れています。まさに、一世を風靡した感のある本です。

ただ、もう、古いという感じがするのも事実です。もう、この本で指摘されているような問題は多くの企業は解決しているように思います。

これからの方向性はやっぱり、これでしょう。イノベーションの民営化(笑)、いえいえ、イノベーションの民主化

とはいえ、すでに、エクセレントカンパニーなどと並ぶような歴史的名著にといえるレベルになっているように思いますので、読まれていない方は、ぜひ、読んでいただきたいと思います。

ということで、4位~10位は以下のとおりです。あなたのお気に入りの一冊は入っていますか?

第4位 先制型プロジェクト・マネジメント―なぜ、あなたのプロジェクトは失敗するのか

     紹介記事はこちらです。

第5位 ソフトウエア企業の競争戦略

     紹介記事はこちらです。

第6位 チームリーダーの教科書―図解 

     紹介記事はこちらです。

第7位 ハーバードで学ぶ「デキるチーム」5つの条件―チームリーダーの〈常識〉

     紹介記事はこちらです。

第8位 世界一わかりやすいプロジェクト・マネジメント

     紹介記事はこちらです。

第9位 プロジェクトマネージャー・コンピテンシー開発体系―PMI標準

     紹介記事はこちらです。

第10位 セクシープロジェクトで差をつけろ! トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦

     紹介記事はこちらです。

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2006年1月 3日 (火)

本家のコンピテンシーマネジメント

4569616275 ヘイコンサルティンググループ 「正しいコンピテンシーの使い方―人が活きる、会社が変わる!」、PHP研究所(2001)

お奨め度:★★★★1/2

コンピテンシーの提唱者とされるハーバード大学の行動心理学者のデビット・マクレランドが、コンピテンシーの商用利用を目的に、その同僚のバーナードと一緒に「マクバー」という研究所を作り、それが、ヘイグループと合併して本格的なビジネスが始まったという経緯がある。

その意味で、ヘイグループはコンピテンシーの本家であるという自負を持っているコンサルティングファームであるし、実際に業界的にも顧客にもそのような認識がある。

本書はそのヘイグループが、おそらくは現在のコンピテンシーという言葉や概念の氾濫を見て一石を投じる目的で出版した書籍であろう。他のコンピテンシーの解説本には書かれていないようなことがたくさん書かれている。その意味で、目からウロコの落ちる1冊である。

本書の流れは初心者向けのコンピテンシー解説本である。ところが、本書(というよりはヘイグループ)のスタンスはコンピテンシーを経営レベルの改革手法として位置づけている。このスタンスに立ち、他の手法、BPRやIT、あるいは、EVAやBSC、あるいはラーニングオーガニゼーションなどとの関係付けを明確にしている。ここが本書の特徴である。このほかにも、誤った扱いをしやすいコンピテンシー項目の持つ意味などを具体的な事例に基づいて紐解いており、すっと読めるが非常にインプリケーションの多い本である。

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コンピテンシーを開発する

482074064409lzzzzzzz JMAMコンピテンシー研究会、古川久敬「コンピテンシーラーニング―業績向上につながる能力開発の新指標」、日本能率協会マネジメントセンター(2002)

お奨め度:★★★

古川久敬先生が中心に行われたコンピテンシーの研究会のレポート。第2部、第3部はさほど、目新しくはないが、第1部のコンピテンシー学習の概念提案は一読に値する。

コンピテンシーを学習することとはどういうことかということを研究論文的にまとめ、フレームワークの提案をしている。学習方法ではなく、学習によるコンピテンシーの変化について言及したうえで、学習方法に関する提案をしている点が説得力があって、非常に興味深い。

もう少し、具体的に知りたいという人には、こちらの本がお奨め。

4889163751 高木史朗(ニッコンアセスメントセンター編)「コンピテンシー評価と能力開発の実務―成果主義時代の人材アセスメント手法と展開方法」、日本コンサルタントグループ(2004)

こちらも実務書というレベルではないが、コンピテンシーをベースとした評価および能力開発について、概念、定義、手法等を網羅的に解説しているので、コンピテンシーラーニングよりはもう少し具体的なレベルで、頭の整理はできる。

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コンピテンシーマネジメント実務ならこの一冊

453971817709lzzzzzzz 太田隆次「コンピテンシー実務ハンドブック」、日本法令(2002)

お奨め度:★★★★

太田氏はコンピテンシーマネジメントに非常に精通したコンサルタントである。その太田氏が、ここまで出すのかと、業界を唖然とさせた本を出版されたのがこの本。

おそらく、この本が一冊あれば、誰もが実務レベルでコンピテンシーマネジメントの導入をすることができると思われる。コンピテンシーの考え方、組織や制度における位置づけといった背景的な解説から、モデル作成、導入方法、ジョブディスクリプションなどのヒューマンソフトマネジメントとの位置づけなど、おおよそ考えられる問題について一通り解決方法や方向性が述べられている。また、豊富な事例も参考になる。

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コンピテンシーマネジメントのバイブル

482011722x09lzzzzzzz ライル・スペンサー、シグネ・スペンサー(梅津祐良、横山哲夫、成田攻訳)「コンピテンシー・マネジメントの展開―導入・構築・活用」、生産性出版(2001)

お奨め度:★★★★1/2

コンピテンシーマネジメントのバイブル。コンピテンシーに関する過去の研究を整理し、詳細・精密なコンピテンシー・ディクショナリーを提示している類のない本である。この本の売りはなんといってもこの点だろう。このため、コンピテンシーモデルや、コンピテンシーマネジメントの議論をするときには、だいたい、この本で提示されているコンピテンシー・ディクショナリーをベースにすることが多い。

さらに、この本では、コンピテンシーモデルの開発の方法論についても詳しく議論されており、さらに、コンピテンシーモデルの活用方法についても詳しく述べられている。

簡単にいえば、この本1冊あれば、コンピテンシーマネジメント(ディクショナリーの開発、モデルの開発、モデルの活用)に関する一通りの知識を身につけることのできる本である。

基本的には人事部門の人に向けて書かれているのだと思われるが、実は、プロジェクトマネジメントコンピテンシーの世界においても、米国プロジェクトマネジメント協会(PMI)のまとめたコンピテンシーマネジメント標準(PMCDF)のうち、人格に関わる部分はこの本を参考にまとめられている。

「プロジェクトマネージャー・コンピテンシー開発体系―PMI標準」

https://mat.lekumo.biz/books/2005/01/pmi.html

このことからもわかるように、コンピテンシーにかかわりを持つ人すべての必読書である。

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リーダーのためのとっておきの1冊

489451213009lzzzzzzz 石田淳(小阪裕司監修)「リーダーのためのとっておきのスキル」、フォレスト出版(2005)

お奨め度:★★★★

石田淳(小阪裕司監修)「リーダーのためのとっておきのスキル」、フォレスト出版(2005)4894512130

株式会社ウィルPMインターナショナルの石田氏が、自らのマネジメント理論である「IS行動科学マネジメント」についてまとめた書籍。

IS行動科学はパフォーマンスマネジメントの一種であるが、コンセプトも理解しやすく、非常に実行しやすい点がすばらしい。

書籍としては、最初にマネジメントに対する問題提起をし、それを解決するのがIS行動科学マネジメントであるという構成になっている。提起されている問題そのものはよく言われいていることが多いが、それらをある程度体系的にまとめている。これはあまり類を見ないのではないかと思う。行動科学のマネジメントにおけるカバー範囲が広いということの証でもあろうが、この部分だけでも一読に値する。

行動科学はマネジャーにとっては必須科目である。行動科学といえば必ず出てくる

「行動科学の展開―人的資源の活用」
https://mat.lekumo.biz/books/2005/04/post_1baf.html

といったバイブルもあるが、結構、難解である。また、パフォーマンスマネジメントについても、

「行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由」
https://mat.lekumo.biz/books/2005/10/post_22a9.html

といった読みやすい書籍があるが、体系が結構大きいので全体が把握できない部分も多い。このような分野をコンパクトにまとめ、独自の理論体系として纏め上げているので、非常に実用的である。マネジメントに悩むマネジャーには何度も繰り返し読んで欲しい1冊である。

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2005年12月28日 (水)

実感としてわかる組織論

447843022509lzzzzzzz_2 野田稔「組織論再入門―戦略実現に向けた人と組織のデザイン」、ダイヤモンド社(2005)

お奨め度:★★★★

組織論というのは難しい。その難しさは何だろうと考えてみて、思い当たることは、マクロ組織論とミクロ組織論の遊離にあるように思える。組織に属する人が、組織論を実感を持って理解するには、マクロとミクロの関連付けが必要で、そのような組織論の本というのはありそうでなかった。

マクロ組織論を学んだ人も、ミクロ組織論を学んだ人も、新しい視点で組織論を学ぶことができるという意味で、まさに再入門書に適している。

その意味で、組織論のテキストとしては画期的な一冊である。マネジャーはマクロ的な視点から、平社員はミクロ的な視点なら、それぞれの別の世界が見えるような工夫がされているので、ほ~と思って読める組織論の本になっている。

著者の野田先生の本に

4569628125 野田稔「コミットメントを引き出すマネジメント―社員を本気にさせる7つの法則」、PHP研究所(2003)

という本がある。この組織論再入門の組織観はこの辺にあるように思えるので、併せて読まれることをお奨めしたい。この本は

●第1章 コミットメントの引き出し方
●第2章 今なぜコミットメントなのか
●第3章 コミットメント経営のベストプラクティス
●第4章 コミットメントマーケティング~コミットメントの組織浸透

といった内容であるが、とてもよい本であるので、組織論に興味がない人にもこちらの本は薦めたい。

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2005年12月27日 (火)

言行一致の組織を作る

427000099609lzzzzzzz ジェフリー・フェファー、ロバート・サットン(長谷川喜一郎、菅田 絢子訳)「実行力不全 なぜ知識を行動に活かせないのか」、ランダムハウス講談社(2005)

お奨め度:★★★★1/2

5年ほど前に一冊の本が出た。非常に目立つ表紙で、タイトルは「変われる会社、変われない会社」。表紙の背景には、大きく

          019280680000   The Knowing Doing Gap

とある。流通科学大学の出版ででたが、話題になることもなく、絶版された。この本、米国ではベストセラーになった本である。内容は、このタイトルからぼんやりとわかるだろう。

  知っていることと、実行することのギャップ

当時は、日本では、戦略病の発病期だった。あるところで、この本を使って、マネジャー研修を提案したところ、そんなのはうちには必要ありませんと言われたことがある。

日本ではなかなか、この問題意識が芽生えてこない。例えば、仕組みと実行。言うけど、やらないとトップマネジャーが嘆いている企業をたくさん知っている。しかし、そこは個人の問題で片付けられ、組織としての問題に切り込まれることはない。

453231037709この後、もう一冊、同じ問題で、米国でベストセラーになった本の翻訳が出版された。ラリー・ボシディとラム・チャランの経営は「実行」―明日から結果を出す鉄則である。戦略やビジョンを実行するためのアイディアやノウハウを書いた本であるが、この本もあまり売れなかったらしい。

そして、今年、ジェフリー・フェファー、ロバート・サットンと同じ問題意識をうたった1冊の本が出版された。

ハイケ・ブルック、スマントラ・ゴシャールの書いた「意志力革命」である。427000063501lzzzzzzz

これに影響をうけたわけではあるまいが、ジェフリー・フェファー、ロバート・サットンの本が復刊された。これが、冒頭に掲げた「実行力不全」である。なかなか、インパクトのあるタイトルだ。

この本も意志力革命と同じく、綿密な企業調査の上で書かれている。その期間は4年間にも及ぶそうだ。行動ができない組織で、何ゆえに行動できないかを分析し、さらには、ギャップを乗り越えた企業では、どのようにして、あるいは、どのようなメカニズムでギャップを乗り越えたかを解説している。

上の3冊は、すべて、トップマネジャー、ミドルマネジャー必読の一冊。

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2005年12月25日 (日)

タレントになろう!

427000085609lzzzzzzz トム・ピーターズ(宮本喜一訳)「トム・ピーターズのマニフェスト (3) タレント魂」、ランダムハウス講談社(2005)

お奨め度:★★★★1/2

トムピーターズのマニュフェスト第3弾。タレント魂なるものについて書かれている。

トムピーターズがタレント魂と言っているのは、「自分の才能を見極め、極限まで高め、仲間を作り、シナジーを産み出しながらイノベーションを起こしていくこと」である。そこには、「すごいプロジェクト」が必ず実現される。

「セクシープロジェクト」で展開されているトムピーターズのプロジェクト論、あるいはプロジェクトマネジメント論をタレントという視点から見て、どのようなタレントが必要か、どのようにしてそれを身につけていくかを考えさせてくれる一冊。

いわゆるスキル論で、自己完結型の能力論を考えている人には、ぜひ、読んでいただきたい1冊。

ちなみに、同時発売は、第4弾である「トレンド魂」。

427000086409lzzzzzzz トム・ピーターズ(宮本喜一訳)「トム・ピーターズのマニフェスト (4) トレンド魂」、ランダムハウス講談社(2005)

こちらは、男女の特性に注目したマーケティング戦略の専門家、マーサ・バーレッタと一緒に、これからのビジネスの潮流と、注目べき市場について述べている1冊。併せて読んでみよう!

ちなみに、

 第1弾 リーダーシップ魂

  第2段 デザイン魂

こちら

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2005年12月23日 (金)

勝ちぐせで組織は強くなる

449253206401lzzzzzzz 高野研一「勝ちぐせで組織は強くなる―戦略でなく、組織を差別化する」、東洋経済新報社(2005)

お奨め度:★★★★

成功は小さな成功の積み重ねであるとよく言われる。小さな成功が自信を生み、さらに大きな成功に結びつく。しかし、小さな成功を個人の力だけで達成するのは意外と難しい。

そこで、組織力ということになる。

この本では、戦略ではなく、組織力で勝ち残っている企業に焦点をあて、そこで起こっていることを分析している。その結果、組織力で個人の能力を初めとする、さまざまな限界を超えた成果を上げている企業が多いということがわかる。

つまり、優れた組織では

 ・空間的限界を超える(製薬業界)

 ・時間的限界を超える(IT業界、自動車業界など)

 ・個人の能力の限界を超える(IBMなど)

 ・気力の限界を超える(セブンイレブンなど)

の4つの限界を超えることを事例に基づいて議論している。さらに、そのような組織の作り方について説明し、25週間でそのような組織を作る方法を紹介している。

この議論の興味深い点は、持続的イノベーションに強い組織を作ることで、破壊的イノベーションに勝ち残ることができると主張している点。この議論は大変興味深い。

最近の経営の風潮では、戦略ではなく、組織とはなかなかいいにくい。そのように考えている人は少なくないと思うが、戦略病の中で、ある意味でタブーになっている。そのタブーを破り、まさに、日本に適した経営論といえる。

こういう本が堂々と出てくるようになったのは、やはり、現場ブームの影響だろうか?

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2005年12月19日 (月)

すごいプロジェクトマネジメント

447979118301lzzzzzzz 大橋禅太郎「すごい会議-短期間で会社が劇的に変わる!」、大和書房(2005)

お奨め度:★★★★

ガズーバ!―奈落と絶頂のシリコンバレー創業記で日本デビューした大橋禅太郎さんのプロジェクトマネジメント論。484431396709lzzzzzzz

タイトルや内容から昨今、流行の会議術、ファシリテーションの本のように見えるが、実は違う。起業プロジェクトのプロジェクトマネジメント論。大橋氏の現実に経験したガズーバ!での経験をストーリー風にまとめ、その中に、「すごい会議」と称して起業プロジェクトのプロジェクトマネジメントの進め方を体系的に書いてある。

この本がすばらしいのは、人と組織と事業を育てるプロジェクトマネジメントの方法を、具体的に述べていること。起業や新規事業はこれでないとだめだ!

本の書き方も面白い。マネジメントコーチのコーチを受けながら進んでいくのだが、まるで、ロールプレイを見ているように、事業を成功させるための「鍵」を手に入れていくというストーリーになっている。最終的に手にいれたものは

・経営の中心となるメンバーが緊張感を持ってそろった

・人の意見を気にすることなく、それを発表する仕組みを手に入れた

・参加させられているという感じから「なにかやってやろう」という気分

・前向きな雰囲気にする

・達成しようとしていることの本当の障害が前向きな形で明らかになる

・なんとかやってやろうという気分になっている

・共有共感の持てる短期的で明確な目標

・目標の達成の担当分野の明確化

・目標達成のための計画

・計画の進行管理方法

である。

起業だけではなく、新規事業、新規商品開発などに関わる人は必読!の一冊。

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2005年12月17日 (土)

エンドユーザイノベーション

490324107609lzzzzzzz エリック・フォン・ヒッペル(サイコム・インターナショナル訳)「民主化するイノベーションの時代」、フォレスト出版(2005)

お奨め度:★★★★1/2

1988年にイノベーションマネジメントの分野で画期的な本が出版された。

エリック・フォン・ヒッペルが自らの研究をまとめて書いた本で、ずっとメーカの問題だと考えられてきたイノベーションの生起が、ユーザやあるいは、サプライヤにおいてもあり得る。そして、それは、イノベーションがどのような利益をもたらすかに依存しているという主張をした本である。そして、イノベーションに対して重要な役割を果たすユーザである「リード・ユーザー」という概念とともに、「ユーザー・イノベーション」というコンセプトをイノベーションマネジメントの中に確立した。

日本では、ダイヤモンド社から「イノベーションの源泉」というタイトルで出版されたが、現在は絶版になっている。

エリック・フォン ヒッペル(榊原清則訳)「イノベーションの源泉―真のイノベーターはだれか」、ダイヤモンド社(1991)

原書も絶版になっているが、原書のリプリント版(ペーパーバック)は今でも購入できる。

019509422001
Eric Von Hippel「The Sources of Innovation」、Oxford Univ Pr(1994)

この指摘は極めて重要な指摘だったと思われる。その後、クリステンセンによって、トップメーカにおいて、組織が破壊的なイノベーションに対応できなく衰退していく「イノベーションのジレンマ」が指摘されたが、この問題に対する本質的な問題解決はおそらく、ユーザやサプライやによるイノベーションをメーカがうまくマネジメントしていくことである。

インターネット時代における製品開発においては、リードユーザの役割はますます重要になってきており、企業が抱えるさまざまなイノベーションマネジメントの問題、技術経営の問題を解決する上で不可欠なものになってきているといってよい。

この本ではイノベーションの源泉の主張をさらに進化させ、企業は、エンドユーザイノベーションにそれに適応していくための長期的ビジネスモデルへと根本的な変革を行わなければならないことを主張している。

エリック・フォン・ヒッペルのイノベーション研究の集大成ともいえる一冊である。メーカでR&Dに従事している人、経営企画に従事している人、営業を担当している人などは、必読の一冊である。

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プロ論

419862106301lzzzzzzz B-ing編集部編「プロ論。2」、徳間書店(2005)

お奨め度:★★★

プロ論。の第2号。今回は以下の50名。

【経済界からは】堺屋太一氏、樋口泰行氏、堀義人氏、伊藤元重氏、吉越浩一郎氏、渡邉美樹氏、森永卓郎氏、伊藤洋一氏、白石真澄氏、幸田真音氏 【マスコミ文化人では】浅田次郎氏、丸山和也氏、リリー・フランキー氏、假屋崎省吾氏、弘兼憲史氏、樋口裕一氏、水木しげる氏、角田光代氏、森田芳光氏、石田衣良氏、富野由悠季氏、倉田真由美氏、山本一力氏、いとうせいこう氏、勝谷誠彦氏、米村でんじろう氏、木村政雄氏、細野真宏氏、荒俣宏氏、鎌田實氏、coba氏、水野晴郎氏、宮本亜門氏、嶋田隆司氏、谷川浩司氏、青島幸男氏、岡康道氏、矢口史靖氏、立松和平氏、角田光代氏 【芸能界からは】竹中直人氏、哀川翔氏、今村ねずみ氏、パパイヤ鈴木氏、田口トモロヲ氏 【スポーツ界からは】大黒将志氏、杉山愛氏、古賀稔彦氏、片山右京氏、角田信朗氏。

前作と同じスタイルだが、若干、希薄に感じる。雑誌の連載なので仕方のない部分があるが、前作はプロフェッショナリズムを感じる人が多かったし、紹介されている言葉もそうだったが、今回は、どちらかといえば成功者紹介風。

ちなみに、前作

419861961109lzzzzzzz B-ing編集部編「プロ論。」、徳間書店(2005)

では、

秋元康、安西水丸、石橋貴明、井筒和幸、糸井重里、今井彰、 おちまさと、乙武洋匡、金子勝、香山リカ、カルロス・ゴーン、北川正恭、北村龍平、木村剛、邱永漢、清宮克幸、小谷真生子、齋藤孝、櫻井よしこ、佐々淳行、佐藤可士和、笑福亭鶴瓶、重松清、白石康次郎、鈴木光司、高橋がなり、高橋源一郎、田原総一朗、堤幸彦、野口悠紀雄、中島義道、中村修二、成毛眞、野口健、日比野克彦、藤子不二雄A、藤巻幸夫、古舘伊知郎、堀紘一、三木谷浩史、宮内義彦、柳井正、横山秀夫、平尾誠二、 養老孟司、松本大、本宮ひろ志、森島寛晃、和田アキ子、和田秀樹。

の50名を収録している。

好川塾でテキストとして使ったところ、なかなか、好評だった。

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2005年12月14日 (水)

利益を生む営業マネジメントとは

447853039409lzzzzzzz リチャード・クラフォルツ、アレックス・クラークマン(三本木亮訳)「ザ・キャッシュマシーン」、ダイヤモンド社(2005)

お奨め度:★★★★

ザ・ゴールの姉妹編。ザ・ゴールの知恵を営業マネジメントに使うとどうなるかを解説した本。

TOCのプロセス

 (1)制約条件を見つける
 (2)制約条件を活用する
 (3)制約条件以外を制約条件に従属させる
 (4)制約条件の能力を向上させる
 (5)上記ステップを繰り返す

を営業マネジメントのプロセスとして適用するとどうなるかということを述べた本。著者は異なるが、ゴールと同じく、ストーリー形式で書かれている。

テーマが営業マネジメントであることが興味深い。営業にはマネジメントが必要となる分野と、マネジメントは必要としない分野がある。営業にはマネジメントなどいらないと思っている人も結構多い。しかし、本書を読むと、営業マネジメントの本質がわかり、必要性がよくわかる。

TOCの本として読めば、TOCの可能性を大いに感じさせてくれる一冊であるが、同時に営業マネジメントの本としても一級品である。

2005年12月11日 (日)

現場力のエッセンス

477710278509lzzzzzzz 遠藤功「図解 現場力―「強い企業」には「強い現場」が存在する」、ゴマブックス(2005)

お奨め度:★★★1/2

今年のキーワードの一つは「現場力」であろう。この分野で、古くから独自の視点で体系的な提唱をされてきたのが遠藤功さんである。この分野は欧米では、オペレーションマネジメントという言い方をされているが、日本では、「現場」と呼ばれている。

遠藤功さんのオペレーションマネジメントの本はとても読みやすく、斬新な視点でマネジメントについて書かれているものが多い。

このブログでも何冊か紹介している。

 見える化 https://mat.lekumo.biz/books/2005/10/post_7830.html

 現場力を鍛える https://mat.lekumo.biz/books/2005/04/post_f7bd.html

などである。これらの本は、オペレーションマネジメントについて体系的に独自の視点でかかれている類のない本なので、ぜひ、読んでほしい本である。

が、とりあえず、遠藤功さんの本を何か一冊読んでみようという向きには、この本がお奨め。遠藤さんのエッセンスの部分が図解で読みやすく書かれている。

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