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2020年1月24日 (金)

「工場」パラダイムから「アート」パラダイムへ

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若宮 和男「ハウ・トゥ アート・シンキング 閉塞感を打ち破る自分起点の思考法」、実業之日本社(2019)
 
 
お薦め度:★★★★★
 
 
 
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今年の一冊目の紹介。
 
多くのビジネス書で「正解はない」と言っているが、それで読者を納得させるのは非常に難しい。特に、VUCAといわれる時代に入ってきて、その意味も微妙に変わってきた今は難しい。
 
事実、今まで何度も正解はないという主張に遭遇して納得できる説明だと思ったことはほとんどなかった。しかし、この本は珍しく納得できた本である。
 
本書は、建築士→アート研究者→大企業での新規事業立ち上げ→起業家と、様々な領域を行き来し、試行錯誤を重ねた著者がたどりついた正解のない時代を生き抜く考え方を「アートシンキング」としてまとめた一冊。
 
あとがきに書かれているように、著者はこの本を書籍化することは抵抗があったそうだ。その理由はアートやアートシンキングには正解がないからで、教科書はできないことを意味しており、ビジネス書に求められる教科書的な性質には合わない内容と感じていたという。
 
にも拘わらず、執筆したのは、同郷の友人であるという玉樹 真一郎さんが昨年出版した本
「「ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ」(ダイヤモンド社)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478106169/opc-22/ref=nosim
 
に背中を押されたからだという。その理由はなかなか意味のある話だと思うので、興味があればぜひ手に取ってみてほしい。
 
さて、本書で取り上げているのは、タイトルの通り、著者が実践するアートシンキングに関する20のポイントで、以下のようなものだ。
 
2.アートの価値はなにで決まる? 「おなじ」より「ちがい」を生むチカラ
13.アートは身体的? 異質性を活かす「身体」の思考
11.アートは「自分」をアップデートする? 「制約」が常識を超えた新しい視点を生む
17.アートはmetaphorical? 世界の見方を「多次元化」しよう
4.アートに「正解」はない? 「わからない」がイノベーションを生む
16.技術とアートの共犯関係? 文化を革新するinspireとchallenge
19.新規事業に「アート・シンキング」? 「自分」起点の事業をつくる
14.アートは予期できない? 想定外から生まれる価値
3「.アート・シンキング」は詩的? 「分からない」モヤモヤを楽しもう
20「.アート・シンキング」は培養菌? 消費せず、培養する社会のつくり方
10.アートは変幻自在? 真・善・美に挑む精神の冒険
15.アートは触発し合う? 「触発」の感性を磨く方法
12.アートのエネルギー源は「偏愛」と「違和感」? 理屈を超えた熱量が価値を革新する
18.アートとスタートアップはおなじ夢をみるか? アート制作と起業家マインドセット
7「.アート・シンキング」は「当てにいかない」? 価値とは「自分」を愛すること
1「.アート・シンキング」はどうして生まれた? ビジネスにおける思考法の進化
9「.アート・シンキング」忘るべからず? ときどき、思考をスイッチしよう
6「.自分」を欺く3つの罠? 「ありたい」「あるべき」を手放そう
5.アートは「自分」がクライアント? 個の時代を生き抜く力をつける
8「.アート」と「遊び」はムダ? 「非効率」と「余白」が仕事を面白くする
 
最初、Kindleでサンプルをダウンロードして見たときに、このような目次になっており、少しびっくりした。何か、意図があってサンプル用に工夫しているのかと思った。とりあえず、最初の
 
2.アートの価値はなにで決まる? 「おなじ」より「ちがい」を生むチカラ
 
を読んで非常に面白かったので、すぐに購入したのだが、実はこれが目次だった。
なぜ、この順序に並んでいるかというと偶然だそうだ。もともとも順番は数字になっていたものを娘さんに1~20のカードをつくって引いてもらい、その順序に並び替えたからだと書かれている。確かに、
 
1「.アート・シンキング」はどうして生まれた? ビジネスにおける思考法の進化
 
から始まり、2.、3.と続いている方がビジネス書の流れとしてはすっきりする。ただし、この本の20のポイントの中から僕が一つだけを選べと言われたら、文句なしに2.を選ぶと思うので、いい感じの並びではあるし、何よりもどこから読んでも言いたいことが伝わるような書き方をしているのは素晴らしい。
 
この20のポイントは、すべて強く共感した。ひょっとすると、理系の士業、研究者、大企業の新規事業立ち上げ、起業という著者のキャリアは、僕のキャリアとほぼ同じものだからかもしれない。いずれにしても、サンプルで読んだときから興奮したのだが、これは最近、久しくなかったことだ。
 
常識に反したことをいろいろと指摘しているので、反感を感じる人もいると思うが、そこは一歩踏み込んで読んでみてほしい。きっと、価値観が変わるだろう。
 
日本でも2017年に山口周さんの
 
「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 」
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334039960/opc-22/ref=nosim
 
がベストセラーになって以来、アートに関する書籍が増えている。ビジネス書の杜でも何冊か紹介しているが、この本が圧倒的によい本だ。

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コメント

ビジネス書の杜の好川哲人です。素晴らしい本を読ませて頂きありがとうございます。どうぞ、ご利用ください。

はじめまして、実業之日本社新企画編集部の白戸と申します。
「ハウ・トゥ アート・シンキング」の担当編集をしております。
こちらお取り上げいただき、また大変うれしいコメントをいただき誠にありがとうございます。

現在、この本のPOPを製作しているのですが、一部コメントを抜粋して使わせていただくことは可能でしょうか。

現状考えているのは以下の部分です。

KIndleのサンプルで読んだ時から興奮したのだが、これは最近、久しくなかったことだ。
(ビジネス書の杜)

突然のコメントで申し訳ございません。
何卒ご検討いただけますと幸いです。

よろしくお願いいたします。

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