インテグレーションマネジメント(ファンが選ぶビジネス書12)
橋本 忠夫「変革型ミドルのための経営実学―「インテグレーションマネジメント」のすすめ」、芙蓉書房出版(2010)
お奨め度:★★★★★
サントリーで情報システム部長、事業部企画部長、工場長、商品開発研究所長、SCM本部長、取締役、サントリー食品工場社長などを歴任され、現在は多摩大学大学院で教鞭をとられている橋本忠夫先生が、複雑化する経営環境に対応していくために、ミドルマネジャーの連携による新しいマネジメントの形として「インテグレーションマネジメント」を提案された1冊。インテグレーションマネジメントというアイデアもさることながら、おおよそ、現代の大企業で起こっているさまざまな問題に対して、体系的に納得性の高い分析が行われており、ミドルがマネジメントの視座を考えるには最高の一冊。
◆インテグレーションマネジメントという新しいマネジメントスタイル
経営環境が複雑になる中で、トップの強いリーダーシップだけで組織を動かしていくことは難しく、ミドルマネジメントの連携を中心にした、新しいマネジメントの形が求められている。その一つの形態として、この本では、
・マーケティングマネジメント
・サプライチェーンマネジメント
・ファイナンスマネ占めのt
・ヒューマンリソースマネジメント
とこれらを統合する
インテグレーションマネジメント
によりミドルマネジメント連携によるマネジメントのあり方を論じている。
この本の根本的な問題意識は、よく全体最適というが、そもそも、全体が見えるのかという問題である。全体が見えるか、見えないかは大変、大きな違いである。仮に、全体が見えないとすれば、トップのリーダーシップとピラミッド型組織で進んでいくのは非常にリスクが大きい。そこで、柔軟な力を持つミドルマネジャー同士が高次の組織目的の達成のために状況に応じて協力するというマネジメントスタイルが必要になってくる。
本書では、このスタイルを
・基幹業務のマネジメント
・プロジェクトマネジメント
・戦略業務のマネジメント
の中でどのようにインプリメントしていくかを論じている。
◆基幹業務のマネジメントでの位置づけ
まず、経営上での基幹業務の位置づけは
(1)今日の糧を稼ぐ
(2)致命的リスクの発生源
(3)オペレーショナルエクセレンス獲得
(4)環境経営メイン領域
(5)経営基本情報発生源
の5つとして位置付けられる。
基幹業務においては、PDCA以前に、SDCAのサイクルを確立することが重要である。SDCAのSはスタンダードであり、
標準通りにオペレーションする
→標準通りにできたかどうかをチェックする
→できていなければ、次回から必ず実行する
→標準が悪ければ全員納得の上で標準を改定する
→標準通りに改定する
というサイクルで、オペレーションレベルを向上し、QCDのレベルを上げていく活動である。
SDCAから始まり、オペレーションのマネジメントは
・オペレーションのSDCAを回す
・改善活動
・オペレーションのリスク管理活動
の3つの活動から構成される。
この中でミドルは、トップの決める中長期の利益とバランスする、短期的利益を実現するために、SDCAのサイクルの回しやすいシンプルな基幹業務設計を行うことが求められる。
◆プロジェクトマネジメントでの位置づけ
次にプロジェクトマネジメントであるが、プロジェクトマネジメントについては、次の5つを重点項目とする。
(1)目的(プロジェクト完了時の姿)を明確にする
(2)優先順位の高い納期を遵守する
(3)権限は委譲できても責任は委譲できないことを理解する
(4)プロジェクトスポンサーとの意思疎通に努める
(5)当事者全員でタイムスケジューリングをする
また、専門性に対する考え方も重要である。プロジェクトマネジメントの基本は、インターディシプリナリー/トランスディシプリナリーアプローチであり、必要なディシプリンをもったメンバーをどこまで集められるかにかかっている。ディシプリンの重要要素は専門であるが、そのポジショニングに関するコンセンサスを十分にとる必要がある。
◆戦略業務のマネジメントでの位置づけ
次に戦略業務である。戦略業務のマネジメントでは、分析より、構想・行動を重要にする。つまり、徹底的に分析をするよりも、70点の分析結果をもとに、構想計画を練り、構想計画の分析に力を入れるべきである。
◆インテグレーションマネジメント
この中で、ミドルマネジメントは戦略を理解し、問題指摘ではなく、代替構想を提案する虫のミッションを持つ必要がある。この本では、このようなミドルを変革型ミドルと呼ぶが、虫の目を持つ変革型ミドルと鳥の目を持つトップが繰り返し摺合せを行うマネジメントが今後必要なマネジメントのスタイルであるとしている。
冒頭にも述べたように、これらのマネジメントをスタイルはトップだけに真の全体が見えるという前提ではない。そして、虫の目を持つミドルマネジメントとのコラボレーションをしていくには、以下の5つの阻害要因を排除していく必要がある。
(1)階層思考
指示事項は疑わずに要素分解する思考癖
(2)取り敢えず思考
一手先しか読まない思考癖
(3)権威主義
自分では考えない思考癖
(4)処罰志向責任感
責任とは処罰か辞任という思い込み
(5)嫉妬容認風土
結果がよかった人の足は当然引っ張るという常識
そして、上に述べた5つのマネジメントからなるインテグレーションマネジメントを実現するとともに、トップマネジメントは
(1)全員が納得する経営理念を定める
(2)実学経営を心掛ける
(3)コアネット経営を行う
の3つの実践三ヶ条を守る必要がある。
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投稿: 家主 | 2011年6月21日 (火) 22:37
変革型ミドルを書かれた橋本忠夫さんが、金井先生がまとめられた、仕事で一皮剥ける、光文社新書のサントリー取締役のお話と同じだった。当人だったのですね。
投稿: 植村哲也 | 2011年6月21日 (火) 22:09