2005年12月11日 (日)

現場力の本質

453403989109lzzzzzzz 酒見和行「「段違い品質」を実現する現場力」、日本実業出版社(2005)

お奨め度:★★★1/2

著者のホンダでの35年間の経験をまとまた本。

本質の理解、ものの見方・考え方、こころがまえ、改善推進の基本、人の育て方等々、の基本セオリーと、それを現実化する実践ノウハウなどを述べている。

書かれていることは本質的にはトヨタウェイと同じであるが、トヨタはシステムが出来上がっているので、それに隠れで本質がぼやけてしまっている点が多い。多くのトヨタOBがその部分を抉り出すような本を書いているが、あまりすっきりしない。

その点、この本に書かれていることは、すっきりしており、品質やコストの作りこみの本質がよくわかる。

現場改革は難しい

447845048x09lzzzzzzz 黒瀬邦夫(野中郁次郎監修)「富士通の知的「現場」改革」、ダイヤモンド社(2005)

お奨め度:★★★

野中先生の提唱されるナレッジマネジメントは、現場の改革が必要である。最近、「現場力」というのが経営のキーワードになっている節がある。背景には、「組織学習」があるようだが、現場を変えるには気の遠くなるような時間が必要である。

米国でCMMレベル5に認定されているIT企業の役員が、CMMレベル5に認定されたが、まだ、現場が変わったとは思っていないといっていた。トヨタのような現場を作るには、まだまだ、継続的な取り組みが必要だとしみじみといっていた。そのくらい、現場を変えるには時間と根気に対するトップマネジメントのコミットメントが必要である。

この本は富士通が10年近く取り組んでいるナレッジマネジメントによる現場変革の活動を紹介した本である。トップが十分に野中流のナレッジマネジメントを理解し、根気よく取り組んでいる様子がよくわかる。

ただ、読み進むうちに、これだけの時間をかけて、ここまでしか到達しないのかという思いが強くなった。富士通の取り組みがまずいということではなく、これが上に述べた難しさであろう。自分の中堅企業のコンサルタントとしての経験に照らし合わせると、これだけの大きな企業が10年でこれだけ変わったと見るべきかもしれないという感もある。

現場改革の難しさを知る上では、非常に参考になる1冊である。ただし、かなり、広報的な書き方をし、生々しさを除いてあるので、その辺りは想像しながら読む必要がある。

2005年12月 7日 (水)

ドラッカー 365の金言

447830073909lzzzzzzz P.F.ドラッカー(ジョゼフ・マチャレロ編、上田 惇生訳)「ドラッカー 365の金言」ダイヤモンド社(2005)

紙版><Kindle版

お奨め度:★★★★★

The Daily Drucker!

つい最近、逝去したドラッカー先生の言葉から375点を選び出した金言集(ドラッカー逝去:https://mat.lekumo.biz/pm/2005/11/post_911d.html)。

ドラッカー先生の名言集は2003年に一度、出版されている。

P.F.ドラッカー(上田 惇生訳)「仕事の哲学」、ダイヤモンド社(2003)
P.F.ドラッカー(上田 惇生訳)「経営の哲学」、ダイヤモンド社(2003)
P.F.ドラッカー(上田 惇生訳)「変革の哲学」、ダイヤモンド社(2003)
P.F.ドラッカー(上田 惇生訳)「歴史の哲学―そこから未来を見る」、ダイヤモンド社(2003)

これを全部買っているでの、迷ったが、装丁がきれいだし、選ばれている言葉も好きなものが多かったので、結局買った。ドラッカーファンであれば持っておきたい1冊。

365なので、タイトルのごとく、デイリーなのだが、結局、買った日に読んでしまった(笑)。ドラッカーの言葉はメールマガジンを書くときに本当にインスピレーションを与えてくれる。いい本が出た。447833103009lzzzzzzz447833102209lzzzzzzz447833104909lzzzzzzz447833105709lzzzzzzz

2005年12月 4日 (日)

プロジェクトマネジメント定番テキスト

Enterprisepmハロルド・カーズナー(伊藤健太郎訳)「戦略的エンタープライズ・プロジェクトマネジメント」、生産性出版(2005)

お奨め度:★★★★

組織がプロジェクトをより成功させていくためにどのようにプロジェクトマネジメントを導入、活用していくのがいいのかを、3M、サンマイクロシステムズ、ヒューレットパッカード等のベストプラクティスとケーススタディを通して示している。米国では、大学院におけるプロジェクトマネジメントのテキストとして広く活用されている著名な書籍。

ちなみにと取り上げられているケーススタディは

Clark Faucet社
非協力的な文化の中でプロジェクトを実施する上での問題提示
Photolite社(A)
プロジェクトマネジャーがメンバーの選定を行う上で考慮する事項の検討
Photolite社(B)
ライン業務とプロジェクト業務を行う従業員の評価についての検討
Photolite社(C)
プロジェクトマネジメント組織で働く従業員を公平に評価する方法についての検討
Photolite社(D)
マトリックス型組織における新評価方法についての検討
Continental Computer社
事業部横断的なプロジェクトマネジメントのキャリアパスの検討
Goshe社
新事業部の格上げでの問題点を多角的に検討
Hyten社
公式のプロジェクトマネジメントの導入に関する検討

であり、テーマを見ても、非常にポイントをついていることがわかる。

問題は価格。なんとこの本、21000円する。高いなあ~と思う人は、とりあえず、原書という手もある。もっとも、こちらも10000円するが、、、

047147284001lzzzzzzzAdvanced Project Management: Best Practices on Implementation」、John Wiley & Sons Inc(2004)

この本はすばらしいと思う。いちゃもんをつけるわけではないということをお断りした上で、一つ、面白い話を紹介したい。

いろいろと差し障りもあると思うので、名前は伏せるが、昔、DECにいて、今は、HPでプロジェクトマネジメントのミッションについている人が、この本でもベストプラクティスとして取り上げられているヒューレットパッカード(HP)について、今のHPのプロジェクトマネジメントはDECの作り上げたものが基盤になっているという話をされていたのを思い出した。真偽のほどははっきりしないが、この本に書かれているかなりの部分は、DECでは既に実現されていたようだ。

この様子は、DECの80年代について書かれたエスノグラフィーである

482224467901_pe_scmzzzzzzz_ ギデオン・クンダ(金井壽宏監訳、樫村志保訳)「洗脳するマネジメント~企業文化を操作せよ

を読んでみるとよくわかる。とても、面白いことだが、プロジェクトマネジメントも組織レベルで考えた場合、組織文化が重要なキーになる。ちなみに、ハロルド・カーズナーもこの点を強く主張している。

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2005年12月 1日 (木)

すごい考え方

480612296301lzzzzzzz ハワード・ゴールドマン(松林博文訳)「すごい考え方」、中経出版(2005)

お奨め度:★★★★

ハワード・ゴールドマンの代表作。

言葉にこだわり、普段、何気なく使っている言葉が、思考を制限し、人生に悪い影響を与えていることを指摘し、どのように表現すれば、考え方が変わっていくかを指南してくれる本である。

例えば、「誰かが悪い、自分は正しい」といつも言っていないかを考える。すると、責任転嫁をしないという考え方が身に付く。

ある意味で行動習慣を身につけることで思考習慣が変わるという話に似ているが、言葉に注目するというのは振り返りが容易で、とてもよいと思う。

読んでみると、確かにそういう面はあるなと思わせる本である。

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2005年11月28日 (月)

プロジェクトマネジメントにおけるコーチング

488373218509lzzzzzzz 大浦勇三「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」、ソフトリサーチセンター(2005)

お奨め度:★★★1/2

コーチングは、プロジェクトマネージャーのためのヒューマンマネジメントスキルの中で最も重要なものである。コーチングに関する本は多いが、プロジェクトマネージャーに焦点を当ててコーチングスキルをまとめた本はなかった。

個々の内容を読むと、少し、コーチングやファシリテーション、メンタリングの本をかじった経験のある人なら、どこかで読んだという感じだと思うが、プロジェクトマネージャーとしての適用方法、適用場面などに言及している点において意味のある本である。

まとめ方もよく工夫されており、自分の中で、自分のやっていること、やっていないことの整理をしながら、読み進めていくことができる。

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2005年11月26日 (土)

IT分野のPMBOK3版解説本

PMBOK第3版の日本語版が出版されて1年足らずだが、第3版対応のPMBOK解説書が目立ってきた。さすがに、内容はともかく、PMBOK解説という雰囲気の本はなくなり、応用について多少なりとも、言及されるようになってきた。

応用分野は、圧倒的にITが多い。何冊か、取り上げてみよう。

4883732193 佐藤義男「PMBOKによるITプロジェクトマネジメント実践法―PMBOKガイド第3版対応」、ソフトリサーチセンター(2005)

まずは、定番本。JPMF(PMAJ)の副会長の佐藤義男さんの書かれた本。この本については、改めて触れるまでもないが、PMBOKのITへの適用という点ではもっとも実用的である。

本の出来た背景に、JPMFの研究会での1年に渡る議論があったということなので、納得できる。この後、PMBOKのIT応用の本は何冊も出ているが、その地位は揺るがない。

僕も自習書でよく使って貰っているが、もう少し、詳しく書いてほしいという要望をよく聞く。この辺は、ビジネス的な配慮があるようである。実際のところ、この本の4章以降を読むには、相当なITのスキルが必要である。アマゾンなどで、この本の酷評を見かけるが、一つは詳細度の問題があるが、もう一つは、ITのスキルの低い人には価値のわかりにくい本だという面があると思われる。

4274066150 次は、新しく出た本で、

広兼修「プロジェクトマネジメント標準PMBOK入門」、オーム社(2005)

最近出版されたITプロジェクトマネジメントの本の中では、最もよい本ではないかと思う。非常によくまとまっており、ITのスキルレベルが低い人でも読めるような内容になっているし、もちろん、ITのスキルが高い人が呼んでもPMBOKに関するいろいろな知識習得ができる。佐藤さんの本がPMBOKの概要+ITへの応用という構成なのに対して、全体をITにフォーカスした解説にしてあるので、その分、少なくともIT分野の人にはPMBOKのイメージがわきやすい。

ぜひ、IT以外の分野の方で、PMBOKに興味がある人も手にとってみてほしい。

479810984301lzzzzzzz つぎはこの本。

久手堅憲之「ITエンジニアのための PMBOK 2004 がわかる本」、翔泳社(2005)

日本でもやっとこの手の本が出たかと思う、PMBOKのダイジェスト本。もちろん、今までも佐藤さんの本を初めとして、PMBOKの解説をしている本は多いが、重要だと思う部分だけを紹介するという趣のものが多かった。もちろん、それはそれで重要なのだが、PMBOKガイドがだんだん重くなる中で、情報を探しにくくなってきたし、何よりも持ち歩くのが大変(笑)になってきていたので、こんな本があればと思っていた本。

非常にフェアにダイジェスト化されている。著者はPMI翻訳監修委員会のコアメンバーの一人だったとのことで、PMBOKに対する高い見識が伺われる。

1冊手元にあると便利だが、ただし、高い!!

この本で3千円(正確には2940円)はないだろうという感じ。佐藤さんの本が2100円、広兼さんの本が2310円。この本で3千円出すなら、PMBOKガイドを買うわって感じなので、あくまでも、サブガイドみたいな位置づけどまり。PMBOKなので高くなる理由はわかるが、出版社(翔泳社)にはもう少し、頑張ってほしいなあ。。。

2005年11月21日 (月)

マスコミは三流から脱却できるか

B000bt7wl009lzzzzzzz COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) という雑誌が創刊された。外国人記者が、日本で話題になっているトピックスなどについて書いた記事からなる雑誌。

「日々起こる世界中のニュースを、海外の現地メディアはどう報じているのか」とコンセプトに創刊された雑誌。フランスの週刊誌『クーリエ・アンテルナショナル』と提携し、全世界1000メディア以上の有力メディアから記事を厳選し、日本の既存メディアが伝えない情報を月2回届けようという雑誌だ。

かつて、経済一流、政治は二流、マスコミは三流という言葉があった。今は、経済も政治も1.5流くらいではないかと思うが、マスコミはあまり変わらないように思う。NHK記者の放火、相次ぐ捏造記事があっても、そんなに驚かない。ただ、こういう雑誌を創刊したことは少し、状況が変わってきたのかなと思わないでもない。

実際にいろいろな国のニュースを読むといっても、英語圏だけで、フランスやドイツは手がでなかったので、非常にありがたい雑誌である。

2005年11月19日 (土)

トヨタウェイの実践

482224477609lzzzzzzz ジェフリー・K・ライカー(稲垣公夫訳)「ザ・トヨタウェイ 実践編 (上)」、日経BP社(2005)

ジェフリー・K・ライカー(稲垣公夫訳)「ザ・トヨタウェイ 実践編 (下) 」、日経BP社(2005)

お奨め度:★★★★

ジェフリー・K・ライカー教授の「ザ・トヨタウェイ」の実践編。トヨタウェイを実践するために必要なツール、手法、ノウハウについて詳細に解説されている。特に、暗黙知の部分が分析的に解説されており、大変、参考になる本である。

482224415609lzzzzzzzザ・トヨタウェイ」では、アメリカの製造業に「リーン生産方式」として多大な影響を与えたトヨタ生産方式をその事業哲学にまで遡って分析したしている。

この本ではトヨタ方式を導入しようとする場合にどのような問題が発生するかを、さまざまな視点から解説している。実際のところ、トヨタ生産方式を導入することは難しい。カンバンなどの表面的なプロセスを見ても、うまく行かないからだ。

その部分について言及している本は少なくないが、本書ほど、体系的かつ、実践的にその部分に切り込んでいる本はない。この1冊で、トヨタ生産方式が導入できるかどうかは微妙であるが、逆に、これ以上の情報は書籍の形では提供できないだろうと思われる1冊であることは間違いないだろう。

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2005年11月14日 (月)

6人で9人分の仕事をする

4569616232 インタービジョン総合研究所, 小林 惠智「プロジェクトリーダーのための入門チームマネジメント―6人で9人分の仕事をする組織最適化の法則」、PHP研究所(2001)

お奨め度:★★★★

FFS(Five Factors & Stress)理論をベースにしたチームマネジメントの入門書。

FFS理論とは組織人事心理学者の小林惠智先生が提唱された理論体系である。1979年から米国国防機関の依頼で人事関連費用(人件費・教育訓練費等)を押さえつつ、労働強化なしに組織生産性を上げる事を目的として開発された理論。

その際の成果として検証されたデータでは、無作為で集めたチームは、10名集めても約6名分のアウトプットしか達成されなかったが、FFS理論で設計したチームでは、同質型人材を集めた場合は6名集めた時に約9名分、異質な人材で補完関係が成立するチームを集めた場合は8名で12名分のアウトプットを達成したという有名なデータがあり、これがFFS理論を有名にした。

この本は、一般的なチームマネジメントの問題、それにFFS理論が如何なる答えを与えるかをわかりやすく解説している。FFS理論はツールがASP提供されており、気軽に使えることも魅力である。

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2005年11月 9日 (水)

技術経営の定番

4820118064_1 藤末健三「技術経営論」、生産性出版(2005)

お奨め度:★★★★

最近ではMOTの本は山ほどある。古くから技術経営の定番だったのは山之内昭夫先生の「新・技術経営論」(日本経済新聞社)だが、1992年の本で、その後、クリステンセンの破壊的イノベーション概念の登場があったり、あるいは、ITに代表されるような昔は見られなかった性格の技術の台頭があったりで、少し、古くなってきた感がある。

技術経営の本の多くはあまりバランスがよくない。その中で、比較的バランスがいいと思っていたのが、著者の前著である「技術経営入門」である。この本そのものは入門書であ482224387709lzzzzzzzり、突っ込み方が浅く、定番というにはちょっとという感じで、次の本格解説本が待たれた。その後、東京大学で教鞭をとられていた著者は、民主党より参議院議員となられたので、諦めていたら、なんと、いきなり、出てきたのが本書。

技術経営の課題が、ほぼ、網羅されており、技術に関わる仕事をしている人はぜひ、読んでおきたい1冊である。

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2005年11月 3日 (木)

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!マインドマップ

447876099309lzzzzzzz トニー・ブザン(神田昌典訳)「ザ・マインドマップ」、ダイヤモンド社(2005)

お奨め度:★★★★1/2

最近、注目されているマインドマップだが、提唱者のトニー・プザンの原典がついに翻訳出版される。訳が、神田昌典氏というのも心憎い。最後に神田氏による解説もある。

この本はマインドマップというツールの唯一の公式書であり、出版ライセンスだけではなく、マインドマップのディストリビューターライセンスのようなものが必要らしく、それを今回、ダイヤモンド社が取得し、書籍の出版にこぎつけたらしい。

日本では、トニー・ブザンの本としては、放射思考によるノート術というのが最初だと思う。例のドラゴン桜で話題になった方法を紹介した本である。

487771052309lzzzzzzz トニー・ブザン(田中孝顕訳)「人生に奇跡を起こすノート術―マインド・マップ放射思考」、きこ書房(2000)

この本はアマゾンでは極めて評判がよい。

ところがこの後、ブザンのコミュニケーションの本が出ている。

487771135x01lzzzzzzz トニー・ブザン(田中孝顕訳)「コミュニケーションに奇跡を起こす マインドマップ活用術」、きこ書房(2005)

なのだが、この本はあまり、評判がよくない。書かれていることはともかくとして、書いてあることとマインドマップとの関係が分からないという意見が多い。

しかし、今回、出版された、原典を読めば、この本で言っていることもちゃんとマインドマップの思想を組んでいることが分かる。

マインドマップはツールだと思っている人が多い。もちろん、ツールなのだが、どのような思想で設計されたツールなのかを知るには、この原典を読むのが一番である。

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2005年10月30日 (日)

当たり前のことほど、実行が難しい

475690935301lzzzzzzz 浜口直太「あたりまえだけどなかなかわからない組織のルール」、明日香出版社(2005)

お奨め度:★★★1/2

浜口直太さんの「あたりめだけど」シリーズ第2弾。101のルールが書かれている。

475690880201lzzzzzzz5万部を超える大ベストセラーになった前作の「あたりまえだけどなかなかできない仕事のルール」は、誰が考えてもそうだよなという内容だったが、今回の組織のルールは半分くらいは、「いてもらいた人になる」をテーマに、かなり、思い切ったことを言っているルールがある。例えば、

ルール4:団結を乱す人は組織から外そう

などは異論がある人も多いと思う。そんなルールが結構ある。こうなると、ルールの全体的な整合性が問題になるが、その辺は勢いで書いているような気がする。

そんなアラが目についたが、その点を差し引いても前作よりよい本だと思う。特に、自律型の組織を目指す人には7~8割のルールは書いて壁に貼っておきたいような内容だ。

ところで、このシリーズのタイトルだが、いいことは書いてあるが、当たり前といわれるとどうかなと思う。これは前作も一緒。むしろ、できればすごいという気がする。あまり前のことほど、やるのが難しいと言うことか、、、

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2005年10月29日 (土)

思考と行動のエッセンス

31608250 井上明人「30歳からの進化論―仕事の仕方を成長させる29の知的ノウハウ」、文芸社(2005)

著者の井上明人さんがキャリアの中で培われてきた仕事のノウハウを1冊の本としてまとめられている。面白いのは、思考ノウハウと、行動ノウハウにきちんと分けてあること。こういう本を読んでコンピテンシーを高める上で、この区別をきちんと認識して読んでいくことは極めて大切で、それを表示してあるのはすばらしい。

内容は、キャリア(ビジネスマン人生)、問題解決力、コミュニケーション力、メンタル力という4つの視点で整理されており、数はそんなに多くないが、凝縮されたものが多い。

例えば、問題解決力の思考ノウハウの最初に

鳥のように上空から大きく全体を眺めて方向性を絞り、対象を見つけたらそこへ一気にズームアップして具体策の仕上げを行う

というのがある。大局観であるが、大局観をこのような凝縮された言葉で表現できるというのは並大抵のことではない。このような凝縮したノウハウが29個(行動7、思考22)、並んで、事例も提示しながら、解説されている。

1冊読めば、コンピテンシーは間違いなくあがるだろう。

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「理系ビジネスマン」になろう!

488759360009lzzzzzzz 泉通博「理系ビジネスマンが書いた ― 人生をプロジェクトマネジメントしよう!」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2005)

お奨め度:★★★1/2

著者の泉さんは電子機器メーカーでPMの仕事をされている方である。その泉さんが、よい仕事ができれば幸せな人生を送れるという前提で書かれた広い意味でのキャリア本。

タイトルの人生のプロジェクトマネジメントというのはちょっとしたお遊びだが、実は、この本の特徴をより現している言葉は「理系ビジネスマン」という言葉。技術者でも、エンジニアでも、理系サラリーマンでもなく、「理系ビジネスマン」。「理系ビジネスマン」とは何かという定義をした本でもある。

内容は、エンジニアらしく、論理的に構成されており

「思考の基本鉄則」⇒「行動の基本鉄則」⇒「実生活の応用鉄則」

という順序で考えていけるようになっている。書かれていることにも説得力があるし、納得できる。何よりも、著者の真摯な面がひしひしと伝わってくる。日本の強みを作っている現場を垣間見るような本である。

僕もエンジニアというのはこういう人生を送ってほしいなと思うし、エンジニアの方にはぜひ手にとって読んでみてほしい本である。

実際に、僕のクライアントにはメーカが多い。現場でエンジニアリングを担当している人には泉さんのようなタイプの人が多い。僕も技術者だった時分にはこういう考え方をしていた。

同時に、メーカの中心になるエンジニアがこのようなキャリア観を持っていることが、青色発行ダイオードの中村修二さんのようなトラブルを起こす企業風土を作っている一面も生み出している。

その辺りで、これからのエンジニアの人には十分なダイバーシティを持ってほしいなと思う。この泉さんの本は、その点のヒントも隠されているように思う。

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2005年10月28日 (金)

ザ・ゴール

447842040809lzzzzzzz エリヤフ・ゴールドラット(三本木亮訳)「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か」、ダイヤモンド社(2001)

お奨め度:★★★★

A級のビジネス小説。

いまさらという気がしないでもないが、最近、事情があって読み直した。やっぱり、よい本です。

この本、どうしても手法解説本として読んでしまうが、制約論理の枠を超えてものの考え方や、企業とは何かを考えるのに有益な本だと思う。そんな視点でぜひ、一度読んでみたい。

続編も何冊かでている。

447842041609lzzzzzzz

エリヤフ・ゴールドラット(三本木亮訳)「ザ・ゴール2 ― 思考プロセス」、ダイヤモンド社(2002)

こちらは、制約論理の思考プロセスについて書いた本。を自分で体験したかのように理解できる」というウリ。「変化を起こし、実行に移すための手法」。思考プロセスは立体的な問題解決プロセスだが、確かに、これもストーリー形式で書かれているので、知らない間に理解できる。思考プロセスは特に制約論理に限らず、何にでもつかる。

447842044009lzzzzzzz エリヤフ・ゴールドラット(三本木亮訳)「チェンジ・ザ・ルール!」、ダイヤモンド社(2002)

で、第3弾がこれ。ERP開発会社を舞台にして、TOCを成功させる秘訣を書いている。タイトルの通り、ルールを変えてしまうことが必要という話。これは、システムを変える必要はないことを意味している。仕組みより運用ということだ。小説としてはこれが一番面白い。

447842045909lzzzzzzz エリヤフ・ゴールドラット(三本木亮訳)「クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?」、ダイヤモンド社(2003)

で、最後がこれ。クリティカルチェーンプロジェクトマネジメントについて書いた本。4冊の中で、この本が一番価値があるのではないかと思う。納期直前まで作業を始めない「学生症候群」、結局は無駄になる「セーフティー(時間的余裕)」など、通常のプロジェクトマネジメントの問題を洗い出し、その問題への対処を述べている。

思想的には、ムダの排除だが、PMBOKを持ってきても、何を持ってきても適用できる考え方であるところがミソ。

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2005年10月22日 (土)

氷山の水面下に潜む動機

82011816 デイビッド・マクレランド(梅津祐良、薗部明史、横山哲夫)「モチベーション―「達成・パワー・親和・回避」動機の理論と実際」」、生産性出版(2005)

コンピテンシーの概念の発明者であるデビッド・マクレランドによるモチベーション論の名著。

このマクレランドはコンピテンシーを理解する上での基本として「人間の能力は氷山のようなものである」という考えをとっている。水面上に見ることのできる氷山は、全体のごく一部であり、水面下の、目に見えない部分が、実は圧倒的に大きいというイメージである。

人間の「能力」も、実は水面下の見えない部分が支配的な影響力を持っていて、水面から上の部分は知識・技術・スキルといったもので、後から身につけることができ、またテストで簡単に測定できる。ところが、水面から下の部分は、よりその人の人間性に近い要素であって、外からは捉えにくい。また、水面から下の部分についても、より下に潜んでいる部分、たとえば基本的動機といったものほど重要であるという考えである。

このような能力観でのモチベーションについて論じた本である。

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2005年10月19日 (水)

プロ・サラリーマン

488474723201lzzzzzzz 高橋忠之「プロ・サラリーマン―組織の中で人生目標を達成するための13か条」、致知出版社(2005)

お奨め度:★★★★

いろいろなプロフェッショナル論を読んできたが、組織の中に所属してプロフェッショナルを目指す論としては、傑出した本だと思う。

まず、著者の高橋 忠之氏について抜粋。


志摩観光ホテル元総支配人・総料理長。昭和16年三重県生まれ。32年中学校卒業後、志摩観光ホテルに料理人見習として入社。46年29歳で料理長となり、従来の洋食メニューを一掃、独自の料理を交えて本格的フランス料理をメニューに据える。伊勢志摩の海の幸だけを基本素材とする料理哲学と味に対する芸術家的姿勢により名声が高まる。のちに総料理長、総支配人に就任。平成13年退任。

というキャリアの方である。このキャリアが半端ではない。ホテル業界は縦割りの社会で、料理人のキャリアから、総支配人というジェネラルマネージャーに昇進するのは、異例のことらしい。製造業でいえば、工員で入社して、社長になったようなもの。

この本を読んで、縦に突き抜ける人事制度か、従来型の人事制度かという議論が空虚に思えた。 どっちでもよく、組織が必要とする人であれば、組織に影響を与えることができるのだろう。

ここで高橋氏が提唱しているプロ・サラリーマンとは、

 スペシャリストの領域を持ちながら、同時に全体がわかるゼネラリスト

のこと。プロジェクトマネージャーはこうありたいものだ。タイトルになっている組織の中で人生目標を達成するための13か条(実践心得)とは

 その1  リーダーには絶対服従 

 その2  仕事は雑用と思え        

 その3  伸びない三要素は「バカ・ケチ・キタナイ」 

 その4  大仕事でひと皮むける

 その5  心のうちを未来指向型ストレスで満たす   

 その6  一日の設計図をつくる

 その7  本代をケチらない

 その8  波風を立てるのは新人の役目

 その9  ライバルは要らない

 その10  組織内の「いじめ」はいじめられる方に問題あり

 その11  部長の席は「なりたい」人ほど遠のく

 その12  会社のベクトルとずれた時-それまでの実績があなたを助ける

 その13  姿勢に生きざまが出る

である。

この本の中でとてもいいなあと思ったのは、むしろ、この13か条よりも、覚悟

 ・「のめりこむ」覚悟

 ・「むなしさ」に耐える覚悟

 ・創造力とは「捨てる」覚悟

 ・「変わり続ける」覚悟

 ・「超一流」をめざす覚悟

 ・「美しさ」を求める覚悟

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2005年10月13日 (木)

次世代リーダーの育成

490324104109lzzzzzzz 亀井敏郎「「経営職」を育成する技術」、ファーストプレス(2005)

お奨め度:★★★1/2

タイトルに惹かれて読んだ。

期待とは外れたが、組織論としては結構よく書けていると思う。分かりやすいし、理論的にもしっかりしている。

簡単にいえば、経営職育成プロジェクトと変革実践プロジェクトを通じて、「徹底して考え抜いた戦略を社内で実現していくプロセス体験」をさせ、経営職を育てるという話である。

ただ、具体的にどのようにするのかというところにまで言及されていないので、タイトルのように「技術」について論じているわけではない。

リーダー育成の具体的な方法論であれば、やはり、ハイフライヤーがよい。

https://mat.lekumo.biz/books/2005/06/post_da08.html

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ビジネスサプリ

477940022801lzzzzzzz ギル・バート「ビジネスサプリ」、ライブドアパブリッシング(2005)

お奨め度:★★★1/2

「ビジネス成功者から抽出した、一飲みできるサプリが52錠」

ベストプラクティスの抽出にこんな方法があるんだなと思った。いいかもしれない。サプリメントのように、仕事の合間にちょっと飲むとかするのが効果ありそう。

<効能・効果>

仕事効率、目標達成、営業能力、企画力、判断力、分析力、起業力、ビジネスセンス、負けん気、プロ意識、新規開拓力、プレゼン能力、時間有効活用、モチベーション上昇、部署内の士気高揚、その他ビジネスにおける辛さ、困難などの諸症状

だそうです。

<サンプル錠>

挨拶という基本があってこそ、いろんなサービスが生まれる。

アイディア企業ほど、基本を大事にする!!

(MKタクシー 青木定雄氏より抽出したサプリ)

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