ブックレビュー・イニシアチブ Feed

2014年6月17日 (火)

【ブックレビュー】オーケストラ・モデル 多様な個性から組織の調和を創るマネジメント

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クリスティアン・ガンシュ(シドラ房子訳)「オーケストラ・モデル 多様な個性から組織の調和を創るマネジメント」、阪急コミュニケーションズ(2014)

オーケストラ組織はよく企業組織のモデルになるといわれる。指揮者や奏者はプロフェッショナル中のプロフェッショナルであり、癖も個性もある。そのようなプロフェッショナルが集まって、一つの統一されつつも、魅力のある音楽を生み出す組織というのは、ある意味で企業組織の理想だからだ。

古くはリーダーシップについて述べたオルフェウスプロセスが話題になった。

ハーヴェイ・セイフター、ピーター・エコノミー(鈴木 主税訳)「オルフェウスプロセス―指揮者のいないオーケストラに学ぶマルチ・リーダーシップ・マネジメント」、角川書店(2002)

最近では、山岸 淳子さんの「ドラッカーとオーケストラの組織論」があるが、これらの本はオーケストラの知識がないとなかなか手ごわい。この本は、オーケストラとビジネスを対比させながら書かれているので、これらに比べると読みやすい。

著者は、オーケストラの奏者、さまざまな国での指揮者、音楽プロデューサーといろいろな立場を経験し、さらにはオーケストラ型の組織を企業に導入するコンサルティングや講演を行っているクリスティアン・ガンシュ。自分の経験に基づくオーケストラ・モデルを紹介しながら、企業組織にどのように取り入れていけばよいかを解説している。テーマは多様性と統一性。

オーケストラは見たとおり、プロフェッショナルな奏者の集まりで、明確な役割と厳格なヒエラルキーがある組織で統一性が要求される。一方で多様性がないと演奏はつまらないものになる。この二律背反をどのように克服しているかがこの本を読むとよく分かる。

今、大企業で硬直した組織を乗り越え、イノベーションを興すためのチームが注目されているが、大企業と同じ前提が多いオーケストラのやり方は非常に参考になる。

ある企業の幹部が

「オーケストラ全体の調和、実に見事だ。当たり前のように一つにまとまって。うちの会社はどうしてこんな風に統一がとれないのだろう」

とつぶやいたそうだ。このつぶやきにオーケストラの本質がある。その本質を追求した本である。

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2014年6月14日 (土)

【ブックレビュー】君に友だちはいらない

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瀧本 哲史「君に友だちはいらない」、講談社(2013)

マッキンゼー仕込みのチームマネジメントの実践経験を通じて、チームマネジメントのあり方を書いた本。良いチームはたいてい


・小人数である
・メンバーが互いに補完的なスキルを有する
・共通の目的とその達成に責任を持つ
・問題解決のためのアプローチの方法を共有している
・メンバーの相互責任がある

という性質を持っているとし、その実現方法を述べた一冊。

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2014年5月14日 (水)

【ブックレビュー】レジリエンス ビルディング――「変化に強い」人と組織のつくり方

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ピースマインド・イープ株式会社「レジリエンス ビルディング――「変化に強い」人と組織のつくり方」、英治出版(2014)

※レジリエンス・ビルディングは著者であるピースマインド・イープ株式会社の登録商標です。本記事中でクレジット表示は割愛させて戴きます。

日本でレジリエンスが注目されるようになってきたのは、大震災の後、主に建築物や街のレジリエンスに関心が高まったことがきっかけである。また、震災からの復興において、心理的なレジリエンスにも関心が高まった。

しかし、心理学の分野ではレジリエンスの研究は1970年代から行われており、レジリエンスのトレーニングにおいてもいくつもの方法が確立されている。日本では、21世紀に入ってから職場のメンタルヘルスが深刻な問題になってきた。日本の職場のメンタルの問題の背後には、マネジメントがうまくできず、成果が実感しにくい中で、努力を要求されるという構造的な問題があり、心理学的なアプローチだけでは解消できないと思われるが、それでも一定の効果はあり、多くの企業が取り組むようになってきた。

一方で、メンタルヘルスはある意味で受動的な活動、あるいは、弱みを克服する活動のイメージがあり、メンタルヘルスに時間やコストを割くなら、もっと能動的な活動、強みになるような活動に注力したいと考える企業も出てくる。

そこで、注目されるのがレジリエンスである。この本は、この流れでピースマインド・イープ株式会社がレジリエンスをビジネスとしてどのように展開しているかを紹介した本である。

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2014年5月12日 (月)

【ブックレビュー】失敗しないとわかっていたら、どんなことをしてみたい?

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ジョン・マクスウェル(日暮 雅通訳)「失敗しないとわかっていたら、どんなことをしてみたい?」、ダイヤモンド社(2014)

数あるジョン・マクスウェルの本の中で、一番気に入った一冊。

テーマは「失敗とうまく付き合い、最後に成功する」。どのように失敗すればよいか、そのように失敗を受け止めればよいか、失敗をばねにするにはどうすればよい。

そう、今、もっとも求められているレジリエンスをテーマにした本だ(レジリエンスという言葉は1回も使われていません)。

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2014年5月 7日 (水)

【ブックレビュー】100のボツから1のアイデアを生み出す天才の思考術

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ジェイムズ・バナーマン(山本 雅子訳)「100のボツから1のアイデアを生み出す天才の思考術」、アルファポリス(2014)

非常によくできたクリエイティブシンキングの本。星の数ほどあるクリエイティブシンキングの方法から効果的なものを選定し、応用方法を体系的に説明している。

また、分量は少ないが、思考結果を具体的なアクションに持ち込む方法も述べられている。何よりも素晴らしいのは、この本を活用するという点において、極めてクリエイティブな構成になっていることだ。創造的問題解決の解説書として完成度の高い良書。

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2014年4月26日 (土)

【ブックレビュー】独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門

4799314777木谷哲夫「独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2014)

日本企業は現場力が卓越している、ものごとを決めない、ボトムアップの意思決定をする、擦り合わせや話し合いでものごとを進めていくといった評価があるが、共通しているのは権力を嫌うことだ。本書の帯に権力アレルギーという言葉が出ているが、おそらく、なぜ権力が嫌いですかと聞いても、10人中の9人は答えられないのではないかと思う。要するに権力はよくないものだという思考停止を起こしているし、考えることすらタブー視している。

しかし、ここにきてこのようなやり方に限界が出てきている。日本的なやり方の最大のメリットは多くの人が意思決定に参加するため実行性が高まることである。ところが、今は意思決定にも実行にもスピードが求められている。そこで改めて考えさせられるのが、権力の使い方である。この本は、権力に対する正しい認識と権力の構築、使い方をやさしく述べた一冊である。


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2014年4月15日 (火)

【ブックレビュー】世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方

440845494x久世 浩司「世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方」、実業之日本社(2014)

レジリエンストレーニングの歴史は古いが、そこに新たに、認知行動療法、ポジティブ心理学、PTG(心的外傷後の成長)の研究・手法を統合し、欧州で生み出された第2世代のトレーニング法について紹介した一冊。

トレーニングの紹介の前にレジリエンスそのものについても解説されており、個人レベルのレジリエンスの入門書としても適した内容になっている。


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2014年4月14日 (月)

【ブックレビュー】ソニー伝説の技術者が教える「イノベーション」の起こしかた

4046001674前田悟『ソニー伝説の技術者が教える「イノベーション」の起こしかた』、ADOKAWA/中経出版(2014)

ソニーでエアボードの開発をした伝説の技術者、前田悟さんの経験的イノベーション論。技術者がイノベーションを手掛けるときに、何を考え、どのように進めればよいかを「ルール」、「プロセス」、「チーム」の3つの視点からまとめ、最後にイノベーションを起こすための鍛え方について論じている。製品開発に携わる技術者必読の一冊。

また、非技術系のマネジャーにとっては、優秀な技術者がどのような発想をするかが手に取るように分かる貴重な一冊。


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2014年3月24日 (月)

【ブックレビュー】アンシンク UNThink~眠れる創造力を生かす、考えない働き方

4062188716エリック・ウォール(住友 進訳)「アンシンク UNThink 眠れる創造力を生かす、考えない働き方」、講談社(2014)

読んでほしい人:創造的な活動をしたい方、コンセプチュアルスキルを身につけたい人、リーン開発を実践している人

ビジネスの論理性とアートの創造性を組み合わせることによって仕事の方法を変えようという提唱をする本。

帯にダニエル・ピンクが絶賛とあるが、この本はダニエル・ピンクが2004年に「ハイコンセプト」という本を出した。この本でこれからの時代は左脳思考の知識ワーカーではなく、右脳思考もできる人、すなわち「ハイコンセプト・ハイタッチ」な人が活躍できるだろうと予言した。

この本の著者はまさにハイコンセプト・ハイタッチを実践している人で、左脳思考の世界から、アーティストになり、その考え方はアートの域にとどまらず、多くのビジネスマンに影響を与えている。この本にはその具体的な考え方や方法が書かれている。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。