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2014年4月26日 (土)

【ブックレビュー】独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門

4799314777木谷哲夫「独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2014)

日本企業は現場力が卓越している、ものごとを決めない、ボトムアップの意思決定をする、擦り合わせや話し合いでものごとを進めていくといった評価があるが、共通しているのは権力を嫌うことだ。本書の帯に権力アレルギーという言葉が出ているが、おそらく、なぜ権力が嫌いですかと聞いても、10人中の9人は答えられないのではないかと思う。要するに権力はよくないものだという思考停止を起こしているし、考えることすらタブー視している。

しかし、ここにきてこのようなやり方に限界が出てきている。日本的なやり方の最大のメリットは多くの人が意思決定に参加するため実行性が高まることである。ところが、今は意思決定にも実行にもスピードが求められている。そこで改めて考えさせられるのが、権力の使い方である。この本は、権力に対する正しい認識と権力の構築、使い方をやさしく述べた一冊である。


まず、権力や、本書のタイトルでもある「独裁力」という言葉は上に述べたように言霊の塊のような言葉であるので、著者の定義から紹介しておく。著者は

リーダー力=構想力(コンセプト力)+独裁力(組織を動かす力)

だとし、独裁力とは

権力を乾いた視点で合目的的に活用し、何かを実現するために道具として使いこなす

ことだと定義している。この定義からわかるように、権力や独裁力というのはリーダーに求められる基本的なスキルである。

実は権力アレルギーの背景には仕事や活動を行うためにあまり目的を明確にせずにやってきたという背景があるように思う。目的が明確でないと、権力が独り歩きし、自己目的化し、いわゆる権力の亡者のような人を生み出すことになる。

今は、目的を明確にして仕事をするのが当たり前になっているでの、権力を構築し、使うことの意味も変わっているのだが、こちらは依然として残っている。そこで、本書では、権力のメカニズムを理解し、権力リテラシーを鍛えることが必要だとしている。

本書では独裁力を

ステップ1:権力基盤を構築する
ステップ2:動員力を高める

という2つのステップで考えている。

権力基盤を構築するには支持層を

・コア支持層
・コア予備軍
・一般メンバー

に分け、コア支持層を強化、安定化させると同時に、3つの支持層に広範な支持を持ち、組織の戦略をフル動員できるようにならなくてはならない。これをグランド・コアリションと呼んでいる。

本書では、このような考え方を基本としてまず、権力基盤を強化するには、以下のような法則を実行するとよいとしている。

<権力の法則1>
コア支持層をできるだけ小さくする
<権力の法則2>
第1層を常に不安定な状態におく
<権力の法則3>
第2層の予備軍を増やし、代わりはいくらでもいるという状況を作り出す
<権力の法則4>
自分の支持層にはきちんと報いる

また、動員力を発揮するには

<権力の法則5>
大きな支持連合をつくる

を挙げている。

動員力を発揮しようとした場合に、組織の壁ができる。権力基盤が安定していても動員力がなくては動ないのでなんとかしなくてはならない。権力による企業変革の代表的な例である稲盛氏によるJALの再建の例でいえば動員力の壁を壊すために

・階級制の廃止
・本社の中間的組織の権限の縮小
・トップと現場との数字による直結
・トップと現場の理念による直結

といったことを行っている。

こういった権力の法則をうまく使うためには、以下のような点に気をつけるといいとしている。

・個人的に魅了する
・接待攻勢
・隠れ蓑を活用する
・わざと混乱を作り上げ、自分を仲裁者として位置づける
・序列を無視し、ピンポイントで一番大事な現場を動かす
・時間を場所を押さえる
・沈黙は金と心得る

本 書の問題提起や手法にはできる部分が多く、また、考えさせられるところも多い。ただ、この本が果たして権力アレルギーを直すほどのパワーがあるかどうかは 疑問だ。僕のスタンスは権力はうまく使うべきだというスタンスで、それゆえに権力を嫌う人たちの言い分をよく分かっている。

そのような言い分を跳ね返すには、もう少し、違ったロジックが必要だと感じた本だ。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。