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2014年5月14日 (水)

【ブックレビュー】レジリエンス ビルディング――「変化に強い」人と組織のつくり方

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ピースマインド・イープ株式会社「レジリエンス ビルディング――「変化に強い」人と組織のつくり方」、英治出版(2014)

※レジリエンス・ビルディングは著者であるピースマインド・イープ株式会社の登録商標です。本記事中でクレジット表示は割愛させて戴きます。

日本でレジリエンスが注目されるようになってきたのは、大震災の後、主に建築物や街のレジリエンスに関心が高まったことがきっかけである。また、震災からの復興において、心理的なレジリエンスにも関心が高まった。

しかし、心理学の分野ではレジリエンスの研究は1970年代から行われており、レジリエンスのトレーニングにおいてもいくつもの方法が確立されている。日本では、21世紀に入ってから職場のメンタルヘルスが深刻な問題になってきた。日本の職場のメンタルの問題の背後には、マネジメントがうまくできず、成果が実感しにくい中で、努力を要求されるという構造的な問題があり、心理学的なアプローチだけでは解消できないと思われるが、それでも一定の効果はあり、多くの企業が取り組むようになってきた。

一方で、メンタルヘルスはある意味で受動的な活動、あるいは、弱みを克服する活動のイメージがあり、メンタルヘルスに時間やコストを割くなら、もっと能動的な活動、強みになるような活動に注力したいと考える企業も出てくる。

そこで、注目されるのがレジリエンスである。この本は、この流れでピースマインド・イープ株式会社がレジリエンスをビジネスとしてどのように展開しているかを紹介した本である。

本の紹介に入る前に、システムのレジリエンスにおいても、サスティナビリティからレジリエンスという流れがあるようだ。これは

アンドリュー・ゾッリ+アン・マリー・ヒーリー「レジリエンス 復活力--あらゆるシステムの破綻と回復を分けるものは何か」、ダイヤモンド社(2013)

で紹介されているのだが、サスティナビリティは素晴らしい活動であるが、40年間の実践を経てほころびが見え始めている。その原因になっているのは、地球と人類の調和に一つだけの均衡点があると考えるのは自然の理に適っておらず、地球も人類も変化するもっと動的なものだというのがアンドリュー・ゾッリの指摘である。そして、その動的な考え方こそがレジリエンスという主張をし、レジリエンスは「翼を与える」と言っている。

この指摘と、メンタルヘルスとレジリエンスの関係はよく似ている。

さて、脱線したが、レジリエンスが必要になるのは変化が起こる、あるいは変化を起こすという前提での話であるが、ビジネスとしてはメンタルヘルスのより戦略性の高いもののような位置づけになっているようだ。

ピースマインド・イープが提供しているサービス(レジリエンス・ビルディングという商標のサービス)は、

(1)体制を作る
(2)指標を決める
(3)調査と即時フィードバックの仕組みを導入する
(4)調査結果の分析と課題の優先順位を決める
(5)アクションプランを立てる
(6)レジリエンスの訓練をする
(7)PDCAを回す

というもので、この流れであれば、組織変革プロジェクトの中に組み込んでいける。

この本では各ステップの紹介をしているが、指標はウェルビーイングの指標として

・ストレス
・モチベーション
・ハラスメント

の3つを使っている。またトレーニングのための要因として

1.信念
2.人間関係
3.考え方
4.専念する力
5.自己コントロール
6.良い習慣

に着目し、アセスメントを行ったのちに、必要なトレーニングを行う仕組みを提供している。

自社のサービスの背景と内容を解説した本なので、一般的な意味で読んであまり役に立つ本ではないと思うが、ピースマインド・イープが適用した事例を顧客視点からの紹介をしているケースもいくつかあり、客観性はある。組織のレジリエンス強化のイメージを短時間でつかみたい人にはいいかもしれない。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。