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2014年4月14日 (月)

【ブックレビュー】ソニー伝説の技術者が教える「イノベーション」の起こしかた

4046001674前田悟『ソニー伝説の技術者が教える「イノベーション」の起こしかた』、ADOKAWA/中経出版(2014)

ソニーでエアボードの開発をした伝説の技術者、前田悟さんの経験的イノベーション論。技術者がイノベーションを手掛けるときに、何を考え、どのように進めればよいかを「ルール」、「プロセス」、「チーム」の3つの視点からまとめ、最後にイノベーションを起こすための鍛え方について論じている。製品開発に携わる技術者必読の一冊。

また、非技術系のマネジャーにとっては、優秀な技術者がどのような発想をするかが手に取るように分かる貴重な一冊。


我々がソニーのイノベーションと聞くと、「ソニーらしさ」という言葉が頭に浮かんでくる。この本はまず、ここから始まる。ソニーでソニーらしさを支える技術者はソニーらしさなど考えない。そこで考えるのは、まだ、誰も世に出していない製品である。

ただし、それだけではだめだ。世の中の生活の必需品になること。そのためには、技術者自らが感動することが重要だという。

これが大前提である。その上で、イノベーションとは

コモディティ化した技術・部品を用いても、世の中にないアイデアを出すこと

だという。このようなイノベーションを起こすには、人々の生活スタイルを起点にして、「何が必要だろうか」という視点から考え続ける必要があると主張する。

さらに、その必要な今、必要かどうかだけではない。将来の環境を予測し、そこまで含めたコンセプトを考えることが重要だ。つまり、今、出すイノベーションがヒットしなくても、二の手、三の手で成功することも考える必要があるということだ。

このような考えで開発を行う中で著者が心がけてきたことは

・アイデアを出し続ける時間を作ること
・完成したら必ずレポートを書くこと
・人の真似をせず真似をされることに生きがいを感じること
・仕事を自ら増やすこと
・技術論を後回しにすること
・あきらめないでやり通すこと
・信念のあるトップ、上司から逃げないこと

の7つだそうだ。

次にプロセス。イノベーションには新規カテゴリーの開発と、改善の2つがあり、これらを混同しないこと。

さらに新規カテゴリーには2つの種類があり、

・リプレイスするもの(従来の製品を否定する)
・リプレイスしないもの(既存カテゴリーと共存)

である。従来の製品の延長線上にあるものは、従来の製品をリプレイスしなくては生き残れない。同時に、従来とは全く別の発想で、既存カテゴリーと共存するイノベーションも不可欠である。

プロセスの中で大切なのは、市場調査からイノベーションは生まれないと考えることである。かつてのソニーには自分がほしくなる商品を作れという文化があったが、このようなプロダクトファーストの発想が重要である。

ただし、ここで技術ファーストになってしまうと、ガラパゴス化するので注意しなくてはならない。

チームで大切なことは、「感動」である。「感動」こそがチーム力を最大化する。非常に面白いのはビジョンではなく、「感動」なのだ。これが技術者軍団の最大の特徴だといってもいいだろう。

さらに感動は周囲を巻き込む。この点でも重要である。

これが基本で、チームマネジメントとしてはテーマ(目的)を与えて、あとは任せるとよいとしている。ただし、ここにもう一つ重要な要素がある。それは、ブレークスルーになる目標だ。つまらない目標ではメンバーは熱くならない。ブレークスルーがあって初めて熱くなる。

そして、ブレークスルーになる目標を達成するには、リーダーがはっきりし、責任もはっきりするプロジェクト制がもっともよいとしている。

また、チーム運営の中で重要なことは、やりたい人にやらせることだ。これもソニーの伝統的な文化だそうだ。この点は非常に考えさせられる。今の多くの製品開発プロジェクトでは、メンバーがやりたいことがはっきりしない。これはおそらく、目的や目標設定の問題なのだろう。

最後に鍛え方について述べている。ここでは、

・企画癖をつける
・足らないものを作るという発想を持つ
・常に顧客がこれで満足してくれるかと考える

といったことを奨めている。

イノベーションの場面においては、技術ではイノベーションは起きないとか、ビジネスモデルが重要だとか、なんとなく技術者を否定するような言い分が主流になっている。だが、本書を読むとイノベーションの主人公は技術者だと思えてくる。

共感できる点が多いと思うので、すべての技術者に読んでみてほしい一冊。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。