★イノベーション戦略ノート Feed

2014年6月25日 (水)

【イノベーション戦略ノート:031】自分の使いたいものを作る

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◆イノベーションをめぐる2つの考え方

Yokubou

イノベーションは生活者の観察から見とれるニーズから生まれる

という考え方をする人が増えてきた一方で、

イノベーションは市場ニーズを知り、顧客ニーズを知るところからは起こらない

と考える人もいる。どちらが正しいのだろうか。

たとえば、アップルで世紀初頭にして、世紀のイノベーション「スマートフォン」を実現したスティーブ・ジョブズは

・顧客は自分たちが何をほしいか知らない
・自分が使いたいものを作る

といった発言をしている。つまり、後者の立場をとっている。

もう一つ例を上げると、ソニーの伝説の開発者でエアボードを開発した前田悟氏は自著「ソニーの伝説の技術者が教えるイノベーションの起こしかた」(中経出版、2014)において、

ソニーには自分がほしくなる商品を作れという文化がある

と言っている。この2つのイノベーションに共通するのはコンセプトの斬新さである。



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2014年5月 7日 (水)

【イノベーション戦略ノート:030】続・技術とイノベーション

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Gijyutu2◆はじめに

前回、イノベーションと技術の基本的な関係について述べた。その中で、従来のように「技術ありき」からイノベーションを始めるのではなく、生活者の観察により目的ありきからコモディティ化かされた技術によるイノベーションを目指すことが望ましいことを指摘した。ただし、そこでその中で技術開発が必要であれば行うという姿勢が重要であることにも触れた。

今回は、この議論をもう少し深めてみたい。

技術者が生活者(ニーズ)を観察するときに難しいのは、技術というフィルターをす傾向があることだ。おおさげにいえば、技術的に解決しない生活者のニーズは目に入らないといってもよい。この点において、技術的な視点を持たない人はニーズを直視することができるともいえる。

では、技術的な視点を持たない方がよいのかというと否である。ここで問題になるのは、ニーズと「課題」の関係である。

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【イノベーション戦略ノート:029】技術とイノベーション

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Gijyutu◆イノベーションは技術革新ではない

この数年、ビジネスモデルイノベーションへの関心が高まって、イノベーションと技術の関係について、多少極論ともいるような議論がなされるようになってきた。今回は、技術とイノベーションの関係について改めて考えてみたい。

日本語では、イノベーションという言葉を技術革新と訳してしまったために、イノベーションというと技術革新のことだという批判がある。これは正しい。

企業が行う不断のイノベーションが経済を変動させるという理論を構築したヨーゼフ・シュンペーターは、1912年に刊行した「経済発展の理論」で、イノベーションを新結合と呼んでいた。そして、新結合は、経済活動において旧方式から飛躍して新方式を導入することであるとした。この本の中で、シュンペーターはイノベーションとして以下の5つの種類があることを示している。

・新しい財の生産
・新しい生産方式の導入
・新しい販売先の開拓
・新しい仕入先の獲得
・新しい組織の実現

技術に限定したものではない。ただし、時代背景を考えると新方式には新技術が絡んでくると考えてよい。イノベーションと技術革新としたのもそのあたりの背景があると想像でき、今いわれている技術革新だけがイノベーションではないというのとは多少ニュアンスが異なる。

今の時代のイノベーションは、コモディティ化された技術、あるいは部品でこれまでにはなかった新しいものを作り出すことをイメージした議論だからだ。

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2014年4月21日 (月)

【イノベーション戦略ノート:028】50%の性能を15%の価格で提供する意味

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◆挑発する質問

Taki先日開催した「イノベーティブリーダーのための質問力」セミナーの中で、以下のような質問を紹介した。

・顧客の可処分所得が半分になったら、自社の製品やサービスをどのように変えるだろうか

・通信インフラがなかったとすれば、自社の製品やサービスをどのように変えるだろうか

・空輸ができなくなったら、商売の方法をどう変えるべきだろう

お気づきの方も多いと思うが、これは新興国を想定した質問である。

たとえば、新興国では、所得レベルが低いので、先進国に比べると極端に安い商品を求める。有名なのはインドにおけるタタ自動車やノキアの携帯電話だ。タタ自動車は20万円もしないような自動車を作った。ノキアは2~3千円の携帯を作り、一部のユーザには数百円で買えるようにした。いずれもインドでは60%のシェアをとった。

あるいは、新興国には先進国のようなインフラはない。インフラが必要な製品を売ろうとすればインフラを作ってからという発想ではビジネスにならない。

そこで、現状のインフラを前提にして製品を見直すということになる。たとえば、インドでは電力供給が不安定で、医療インフラが未発達だった。そこでGEヘルスケアは電力供給が不安定でも使える携帯型の心電計を開発した。


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2014年4月15日 (火)

【イノベーション戦略ノート:027】続・イノベーションのエンジン

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◆真のチームの条件

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前回はイノベーションのためには、効率を犠牲にしてでも多様性のあるチームの必要であることについて述べた。そして車でいえば多様性がエンジンでイノベーションの成果を上げるにはターボチャージャーをつけなくてはならない。


【イノベーション戦略ノート:026】イノベーションのエンジン

今回はこの点について説明する。


「真のチーム」という言葉がある。これはチームに関する世界一の識者だといってもよい、マッキンゼーのパートナーのョン・カッツェンバックが提唱する概念である。ジョン・カッツェンバックは膨大な高業績を上げているチームを調査し、真のチームの条件として


(1)少人数である
(2)メンバーが互いに補完的なスキルを有する
(3)共通の目的の達成に責任を持つ
(4)問題解決のためのアプローチの方法を共有している
(5)メンバーの相互責任がある

の5つがあるとしている。前回の多様性の議論は、(2)に相当しているが、それ以外について説明していこう。


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2014年3月12日 (水)

【イノベーション戦略ノート:026】イノベーションのエンジン

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◆イノベーションのエンジンTayo
イノベーションのエンジンというと何を創造するだろうか。技術、プロジェクト、ビジネスモデルなど、いろいろとあると思う。一つだけ挙げるとすれば、筆者はチームを選ぶ。

イノベーションとチームは切っても切れない関係にある。多くのイノベーションがチームによって生み出されているからだ。

イノベーションがチームにより生まれやすい理由は、チームの多様性である。さまざまな専門分野を持つ人が集まり、「チームになる」によって、アイデアが交わり、組み合わせが生まれる。これがイノベーションのエンジンになる。

そこではメンバー一人一人の創造性はあまり問題にならない。問題はチームの創造性である。そのためには個々のメンバーの創造性よりも、自分の領域に拘らないオープンさが重要である。異なる分野の話を真剣に聞いて、そこで自分なりのアイデアを出すことができるかどうかだ。

その人にとってアイデアそのものは平凡なものだとしても、それが専門家にとっては思いもつかないアイデアになっていることは珍しいことではない。専門分野とはそういうものだ。

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【イノベーション戦略ノート:025】イノベーションのシナリオ

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◆iPhoneの歴史

SinarioアップルのiPhoneも6年目を迎え、そろそろ、神通力も薄れてきたようだ。今年には次の世代のデバイスが出るという噂もあるようだ。

iPhoneのラインナップは2007年に発売され、以下のように1年に1モデルずつ、新しいモデルが投入されてきた(2013年だけは従来のラインナップに加えて廉価版の5cが投入された)。
iPhone: 2007年6月29日[1]
iPhone 3G: 2008年7月11日[2]
iPhone 3GS:2009年6月19日[3]
iPhone 4:2010年6月24日
iPhone 4S:2011年10月14日
iPhone 5:2012年9月21日
iPhone 5s:2013年9月20日
iPhone 5c:2013年9月20日


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2014年2月 4日 (火)

【イノベーション戦略ノート:024】続・模倣によるイノベーション~ダイソン掃除機

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◆ダイソン氏の気づきDayson
23回に模倣によるイノベーションという記事に、カンバンはイノベーションかもしれないが、ジーンズ眼鏡はイノベーションではないだろうという意見を貰った。ジーンズ眼鏡もイノベーションだとは思うが、もう少し、インパクトのある例を紹介しよう。

実は、23回で書きかけて止めた事例がある。みなさんがよくご存じのダイソンのサイクロン式掃除機の事例だ。この事例が画期的なイノベーションであることは、当初の価格や普及の度合いから間違いないと思うが、この事例は典型的な本質の模倣でイノベーションが生まれた事例である。技術の絡む話なので、書いていたら話が複雑になりすぎてやめたのだが、もう一度チャレンジする。

ダイソンのサイクロン式掃除機が生まれたのは、ジェームズ・ダイソン氏の既存の掃除機への不満からというのはよく知られている。ダイソン氏が掃除機を使っているうちに集塵パックの目を通過したホコリが外に出て行くため、長時間使っていると集塵パックが目詰まりを起こし、ゴミを吸い込む力が弱ってくることに気付いた。


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2014年1月15日 (水)

【イノベーション戦略ノート:023】模倣からイノベーションを生み出す

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◆模倣はタブー、、、か?Saru
最近、気にかかっていることがある。それは、日本人は模倣が嫌いだという話である。模倣はタブーだと言い切る人さえいる。

確かにこの4~5年、中国の模倣事件の報道を見ているとボロクソに叩いているし、スティーブ・ジョブズが存命の頃、会社の全財産を投げ打ってでも「コピーキャット」(サムスン)を潰すという啖呵に拍手喝采をしていた人も少なくない。

模倣をすることは法律に違反するかどうかという明確なようで曖昧な一線があるが、この一線を越えない模倣は本当によくないことか。これが今回のテーマだ。


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2014年1月 7日 (火)

【イノベーション戦略ノート:022】イノベーションを抑制する

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◆イノベーションを抑える企業

Kinsi1イノベーションが必要だという主張に対して正面から否定することは難しい。なので、リスクがあるとか、足元を固める方が先決だといった話しになる。

しかし、もっと積極的な理由でイノベーションを抑えてしまうようなケースもないわけではない。たとえば、マクドナルドだ。

マクドナルドというと標準化というくらい高度な標準化を行っている企業だ。デイブ・グレイ、トーマス・ヴァンダー・ウォルが「コネクト」という本の中で、これまでのサービス業は企業が提供のルールを決めて顧客はそれに従ってサービスを受けていたが、今後のサービス業は企業と顧客が結びついて一緒に作り上げていく傾向が強くなっていくだろうという予測している。その中で、依然として企業がルールを決めて顧客を動かす特別な企業があるとし、その例として挙げられているのがマクドナルドだ。そのくらい、マクドナルドの標準化というのは進んでいる。

デイブ・グレイ、トーマス・ヴァンダー・ウォル(野村 恭彦監訳、牧野 聡訳)「コネクト ―企業と顧客が相互接続された未来の働き方」、オライリージャパン(2013)

標準化のメリットというか、目的はコストダウンすることである。そこにイノベーションを受け入れることは標準を崩すことであり、コストアップを意味する。そこで、マクドナルドはイノベーションを抑制している。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。