★イノベーション戦略ノート Feed

2013年12月25日 (水)

【イノベーション戦略ノート:021】イノベーターのレジリエンス

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◆はじめに

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20回で一度ストップしたイノベーション戦略ノートを再開する。12月5日に「イノベーション力を身につける」というセミナーをやって、棚卸したネタが山ほどあるので、これから少しこのシリーズを書いて行こうと思っている。

第1弾として書きたいのは、第4回で、概念の紹介をしたレジリエンスという話である。一旦止まってしまったので、復活のテーマとしてもいいかなと思った次第だ。

【イノベーション戦略ノート:004】イノベーションを担う人材のスキルとマインド


◆イノベーションの現実

イノベーションに関する「組織の現実」を聞いていると、何かを提案して却下されたら、その件はそれで終わりというような感じの意見が目立つ。よく言えば潔いが、果たしてそんなものなのかとも思う。

イノベーションの本質をついた格言の一つは、「成功するまでやれば失敗はない」というものではないかと思う。こういうと、

組織はそんなに甘いものではない。一度失敗すれば次はない

という反論が飛んできそうだ。これも現実といえば聞こえがいいが、上位管理者と話をしてみるとそんなことはないという人が多い。失敗の仕方というか、失敗の後の態度によるというごく当たり前の考えの人が多い。すると、イノベーションの実行者は、ただ、単に一度打たれてへこたれているだけのようにも思える。



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2013年9月12日 (木)

【イノベーション戦略ノート:020】iPhoneに見るイノベーションのむずかしさ

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◆計画されたイノベーションの最終段階

Iphone

ひとつはジョブズの計画した最後のモデルだということだ。ジョブズは、iPhone4sが発表された翌日に死去した。このとき、iPhone4sも含めて、向こう3世代のiPhoneのデザインはすでに終わっていると言われていた。これが事実なら、iPhone5sがジョブズが開発に関わった最後のモデルということになる(あとに述べる理由でおそらく事実である)。アップルコンピュータの50%以上の売り上げを占める看板商品のiPhoneの新しいモデルがiPhone5sが発表された。いろいろな意味で注目されたモデルだった。

一方で、今回のiPhone5sはみんながもろ手を挙げて素晴らしいという製品ではなかった。もちろん、iPhone自体はクールな商品だし、特に日本では圧倒的に市場の支持を得ている。今回の商品も期待外れといったレベルではない。

 

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2013年9月11日 (水)

【イノベーション戦略ノート:019】日本型イノベーションの方向性

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◆小型化と詰め合わせ

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前回、「借りる」をやめるという話をしたが、では、日本の独自のイノベーションの方法というのはあるのだろうか?

日本的なイノベーションというと、真っ先に思い浮かぶのが、小型化である。一説によると日本人の小型化思考は奈良時代の折り畳み式のセンスから始まっているという。最近でいえば、ウォークマンから始まって、ビデオカメラ、デジカメ、携帯電話といくらでも例はある。

小型化とセットなのが、つめこみである。ガー・レイノルズはプレゼンテーションZenの中で、日本の幕の内弁当のつめこみを芸術的だと称したが、このようなつめこみが日本の製品の特長の一つになっていることは間違いない。代表は携帯電話である。欧米のフューチャーホーンに対して、恐ろしく、多機能である。おそらく、欧米のメーカではこんなつめこみはできない。まさに芸術だ。

この詰め合わせの背後にあるのが、摺合せというやり方である。摺合せが小型化を可能にし、詰め合わせを可能にする。

 

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2013年9月 9日 (月)

【イノベーション戦略ノート:018】攻めのイノベーション、守りのイノベーション

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◆「何のためにイノベーションをするのか」

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イノベーションに対するもっとも重要な問いは「何のためにイノベーションをするのか」にあるように思う。この問いに対するもっともラディカルな答えは、新しいものを追求するのは、組織や人間の本能であるというものだろう。だが、この本能をむき出しにしてイノベーションを行っている企業はジョブズが存命のころのアップルとか、そんなにたくさんはない。やはり、イノベーションに取り組む企業には目的がある。

一言でいえば戦略を実行するためであるが、具体的な目的はさまざまである。それをあえて分けるとすれば、競合に勝つこと(攻め)、負けないようにすること(守り)の2つに分けて考えることができる。

 

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2013年8月27日 (火)

【イノベーション戦略ノート:017】「借りる」をやめる

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◆借りてきて安くつくる

Kariru今回はちょっと視点を変えた議論をしてみたい。

イノベーションの実行を阻んでいると思えるものの一つに「借りる」文化がある。「思考の整理学」で有名な外山 滋比古先生が「思考力」(さくら舎、2013)という本の中で、こんな指摘をされている。ちょっと長くなるが引用させて戴く。


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新しいものをつくる力がないので、よそのものを借りてきて安くつくる、中国や韓国がいまやっていることを日本はやってきた。(中略)。いま、日本が困っているのは、借りるものがなくなってきたことだ。借りたものをつくるにしても、効率が悪いから、国内には工場ができない。つまり、日本において「借りる」限界がきたのである。このへんで自前の仕事がどこまでできるか、真剣に考えなければいけないのに、依然として、どこかによい技術があればそれを導入する(借りる)ことばかり考えている。(p73-74)
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いわゆるコピーキャット論である。



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【イノベーション戦略ノート:016】戦略とイノベーションは同義である

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◆戦略とイノベーションの本来の位置づけSenryaku2
これまでも何度か、戦略実行とイノベーションは同じことを言っていると書いてきた。今回は、これについてもう少し、詳しく論じる。

まず、戦略とイノベーションの本来の位置づけは、戦略実行において必要なイノベーションを実行するというものである。たとえば、向こう3年間で30%の売り上げを伸ばすという経営計画を立てたとしよう。この30%を実現する戦略を作るわけだが、たとえば、生産台数を増やす、派生製品数を増やす(製品強化)、営業マンの人数を増やす(営業力強化)、チャネル数を増やす(チャネル強化)といった戦略を作る。

このような既存の方法で量を増やす戦略だけで十分でなければ、いよいよ、イノベーションの登場となる。新しい技術を開発し新技術を売りにした製品を開発する、これまでとはコンセプトもターゲットも異なる製品を開発する、既存の製品のターゲットを変える、製品を組み合わせて新しい製品として販売していくなどさまざまな方法がある。

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2013年8月25日 (日)

【イノベーション戦略ノート:015】変化を利用する

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◆変化に対応するNami
コップに半分入った水をみて、まだ、半分も残っていると思う人もいれば、もう半分しか残っていないと思う人もいるように、変化の渦中においてチャンスだと思う人もいれば、ピンチだと思う人もいる。

経営者は盛んに時代に取り残されないようにしようといって社員にはっぱをかけるが、こういう企業ではイノベーションは生まれにくい。変化に対して、なんとか自分たちの顧客や市場ポジションを守ろうとするからだ。

最近の例でいえば、スマートフォンだ。NTTドコモはガラケイと呼ばれるフューチャーフォンをスマートフォンに置き換え、ガラケイと同じことができる環境を作ってしまった。フューチャーフォンの時代から、スマートフォンの時代に変わったという認識があり、それに対応しなくてはならないと思ったわけだ。そして、その方法として、新しい器に古い酒を入れて、出したわけだ。

iモードはフューチャーフォンでは非常に優れたシステムだと思うので、iモードで学んだことを使って、スマートフォンへの対応をしていけばiPhoneとの戦いも別の形になっていたかもしれない。

時代の変化に対応しようとするとどうしてもこういういまあるものをどのように適応させるかと考えるパターンが増えてくる。問題への対処に追われて、新しい要素を導入しながらも新しい価値を生み出していないわけだ。

もちろん、時代の変化への対応から始めて本質的な変化を起している例もある。たとえば、電子書籍だ。電子書籍はデジタルの時代の書籍流通のあり方として考えられたものであるが、そこに新しいデバイスの普及が重なり、本では考えられないような量の情報を持ち歩きできるとか、体系的に管理できるといった付加価値が加わっている。


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【イノベーション戦略ノート:014】 「よいものを作れば売れる」というイノベーションを支える神話

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◆良いもの=品質の時代

Iimono2今、多くの人が持つイノベーションのイメージはこれだと思う。よいものを作れば売れる。日本の高度成長期を支えてきた技術者の信念でもある。

ところが、高度成長が一段落し、バブルが終わるころにはこの信念が揺らいできた。

よいものを作ってもなかなか、売れない。これは当たり前の話で、高度成長期の「良いもの」とは、品質のよいものだった。ユーザは「品質」のよいものを求め、提供者はそれを分かっているので品質改善にまい進するという中で売れてきた。

ところが、高度成長期が終わるころには品質は共通の価値にならなくなってきた。ちょうど、過剰品質という言葉が使われ出したのはこのころだが、過剰品質とはユーザが求める以上のレベルの品質のことで、一定の品質が保証されているのは当たり前で、それ以上に品質がよくてもそれでユーザが買おうとは思わない。

ただし、この時代の価値感は今でも消えたわけではない。日本品質という言葉があるが、品質に絶対的な価値感を持つ人がいて、水準以上の品質は競争力になる(良いものを作れば売れる)と感がている。



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2013年7月16日 (火)

【イノベーション戦略ノート:013】20%ドクトリン

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◆3Mの15%ルールSukanku

ライアン・テイトというアワードのライターが「20%ドクトリン」と名付けた方法がある。勘のいい人はお気づきだと思うが、この命名は今ではすっかりと有名になった、勤務時間の20%は自由に使ってもよいというグーグルの20%に由来するものだ。イノベーティブな企業であり続けるための方策である。

ライアン・テイトの書いた本で紹介されているように、今や、大きな組織で20%ルールはそんなに奇異なものではなくなってきているし、スタートアップに20%ルールを使っている企業さえある。

グーグルが20%ルールをシリコンバレーに持ち込んだのだが、その元祖はポストイットで有名な3Mという会社である。3Mのポストイットと並ぶ代表商品の一つにスコッチマスキングテープがある。

この商品は副社長が中止を指示した開発を、一人のエンジニアが命令に抵抗して行ったものだ。このため、この商品は密造テープと呼ばれたそうだ。


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2013年7月 5日 (金)

【イノベーション戦略ノート:012】イノベーションと組織

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◆イノベーションと組織の論点Innvatioon_2
最近、イノベーションへの組織的取り組みを話題にした記事をよく見かけるようになってきた。この議論はある意味でイノベーション戦略の本質である。イノベーションと組織に関する議論には

・イノベーションは個人によるものか、組織によるものか
・イノベーションを生み出す組織とはどのようなものか
・組織によるイノベーションはどのように行われるのか
・戦略とイノベーションの関係はどのようなものか
・イノベーションと組織プロセスはどのような関係があるか

などの論点がある。これらの論点を通して、イノベーションはどのような戦略を持って行われるのかを考えてみたい。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。