◆責任者は社長です。
日本の組織は責任の所在がはっきりしないと言われることが多い。よく笑い話になるのが、責任者は誰かと聞いても、「何に関する責任ですか」といわれるという話だ。RAM(責任分担表)のようなものを作って、責任分担をしているのでそのような対応になるのかというと、必ずしもそうでもない。阿吽の呼吸のもとに、そのような責任分担が行われており、責任の所在があいまいになっている。そして、責任を突き詰めていくと、社長ということになってしまう。もちろん、正常なロジックではない。現場の問題で社長が責任者というのは、責任者はいませんということに等しい。
冒頭から何を意気込んでいるかというと、いまさら責任論をしたいわけではない。この記事で議論したいのは、責任が不明確なのに、振り返りができるのかという問題だ。
PM養成講座10周年記念セミナーも第3回を迎えます。6回のセッションの中で、好川が個人的にもっとも関心があるのが、第3回のデザイン思考です。今回の棚橋さんのワークショップでは、デザイン思考の本質だと思う行動観察を取り上げて頂きました。
僕が行動観察の重要性に最初に出会ったのは、もう20年近く前になります。マネジメントの大家の一人であるヘンリー・ミンツバーグ博士がマネジャーの業務の実態を調査し、結果をまとめた「マネジャーの仕事」という著書があります。マネジャーは、当時考えられていたようにまとまった体系的な仕事をしているわけではない。短い時間で終わる雑多な仕事をつぎから次に処理していることを見つけた名著ですが、この調査で使われたのは行動観察です。実際に、マネジャーの行動を観察し、常識とは異なる事実を発見したわけです。
「百聞は一見にしかず」という言葉がありますが、まさに、これですね。
◆プロジェクトの主体者は誰か
PMBOK(R)はステークホルダーという考え方に特徴がある。一言でいえば、プロジェクト活動に対して、利害関係者はすべてステークホルダーという考え方である。プロジェクトスポンサーや、プロジェクトマネジャーやチームメンバーもすべてステークホルダーである。
ここで、利害関係とはそのプロジェクトを実施すること、あるいは、そのプロジェクトを実施した結果として生じる状態が特定の人にどのような影響を与えるかである。影響は業績に関わるものもあれば、個人のキャリアに関わるものもある。そのほかにもいろいろとあるだろう。
企業のステークホルダーという場合、経営活動の主体者たる経営陣はステークホルダーだとは考えない。あくまでも経営活動に対する利害関係者として、株主、消費者(顧客)、従業員、得意先、地域社会などが挙げられる。
両者を比較すると、一つ、疑問が浮かんでくる。それは、
プロジェクト活動の主体者は誰か
という疑問である。プロジェクトスポンサーなのか、プロジェクトマネジャーなのか、プロジェクトチームなのか。活動を中心に考えると、活動の主体者(活動の意思決定者)がステークホルダになることは本来の意味と反するので、少なくともステークホルダに名を連ねる人たちではないはずだ。
好川哲人
技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。
最近のコメント