☆戦略ノート Feed

2010年7月 5日 (月)

【戦略ノート217】プロジェクトの<重さ>

◆組織の<重さ>

3年くらい前に、「組織の<重さ>」という本が出版された。

沼上 幹、加藤 俊彦、田中 一弘、島本 実、軽部 大「組織の“重さ”─日本的企業組織の再点検」、日本経済新聞出版社(2007)
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組織には<重さ>があり、それが、新たな方策を立てて一体となって行動しようとすると、多大な労力があかったり、結局何も変わらなかったりするような組織の状況を生み出すという指摘だ。

同書によると、組織の重さを構成する要素には、

(1)過剰な「和」志向
(2)内向きの合意形成
(3)本来負うべき責任を他人や組織自体に転嫁する「フリーライド(ただ乗り)」
(4)経営リテラシーの不足

の4つがあるという。そして、重さの問題は、存在自体ではなく、経営上の成果に悪影響を与えることにある。直接的な影響は調整活動の増大であるとし、同書では「調整比率」という業務全体における「根回し」にかかる時間の比率をメトリクスとして見ている。2006年の結果であるが、軽い組織10%の調整比率は29.4%、重い組織10%の調整比率は42.3%であったそうだ。

ただし、組織の重さが短期的に収益性の低下をもたらすとは限らないが、中長期では大きな影響を与えるとしている。

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2010年7月 2日 (金)

【戦略ノート216】見積もりの心理学と政治学

◆心理テスト

見積もりはつまるところ、どのように決まるのか。今回の戦略ノートはこの話。

簡単な例だが、5日間の作業を5つ、計25日でできると思っている仕事があるとする。各作業が計画通りにいく確率は一律に

6日の場合 100%
5日の場合 90%
4日の場合 70%

だとする。話がややこしくなるので、PERTのような生産性のばらつきは存在せず、確率は焦って失敗をする確率だとしよう。

簡単のために

(1)それぞれの作業を6日で終え、全体を30日で終える
(2)それぞれの作業を5日で終え、全体を25日で終える
(3)それぞれの作業を4日で終え、全体を20日で終える

の3つのどれを選ぶかという議論にする。このような状況で、あなたはどのような計画を立てるだろうか?

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2010年6月18日 (金)

【戦略ノート215】正解のないマネジメントとリーダーシップ

◆マネジメントに正解はないとは

マネジメントには正解がないとよくいう。この言葉にはいくつかの意味がある。代表的なものを3つ上げるとすれば、次の3つではないかと思う。

まず、やり方は人によって違うという意味がある。これは、正解はないといいながら正解はあり、正解にたどり着くいくつかの方法があるということだ。言い換えると、ロジカルに正しい答えがあるということだ。多くの人はマネジメントで扱う問題というのはこういう問題だと信じている。

二つ目は、問題がはっきりしないので、正解といえるものもないという意味がある。マネジメントとは、自ら課題(問題)設定を行い、それを解決していく。したがって、正解があるとか、ないとかいう議論そのものがナンセンスであるという言い方もできる。ただし、この場合も、設定した課題と解決策の間には論理的な関係がある場合が多い。

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2010年6月 7日 (月)

【戦略ノート214】ソフトなプロジェクトマネジメント

◆ハードアプローチとソフトアプローチ

もう10年近く前になるが、PM養成マガジンで初めてセミナーを開催し、PMBOKをベースにしたプロジェクトマネジメントの話をした。そのときに、以下のような質問を受けた。

PMBOKのようなハードなアプローチ以外に、ソフトなアプローチがありますが、どう思われますか?

実は、そのときは、(マネジメント)プロセスが明確に決まっているかどうかの話だろうと思ったので、そのような視点からの回答をしたと思う。しかし、今、思えば質問の意図を取り違えていた。プロジェクトマネジメントのアプローチのハードとソフトとは

・ハードアプローチ:
  組織が決めた目的や目標を達成するためにプロジェクトを進めていく
・ソフトアプローチ:
  プロジェクトが目的や目標を決めながら、進めていく

という意味だと思われる。

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2010年5月21日 (金)

【戦略ノート213】T型あるいは、π型プロジェクトマネジャー

◆T型人材

専門職の道を選ぶと、一度は、T型人材になれとか、あるいはもう一歩進んで、π型人材になれといった指導を受けたことがあるのではないかと思う。

念のために説明していくと、T型人材は、一つの深い専門知識を縦軸にもち、幅広い知識を使いこなす能力を横軸に持つ人材である。πの場合には、Tに加えてもう一つの専門性を持つ。

縦軸はいいと思うが、横軸を改めて考えてみると、意外と複雑であることがわかる。たとえば、技術者の場合には、「多能工」という概念がある。もともとは、工場で、複数のツールを使うことができる技能者をいっていたが、今ではもう少し、広い意味で使われ、異なる技術が必要な業務に対応できる技術者のような意味である。

多能工の場合、キャリアにもよるが、基本的にはT型である。つまり、Tの横軸の意味は技術である。いろいろな技術を知っており、自分の専門技術との「アナロジー」、あるいは、「メタファ」を使って専門外の技術にも「それなり」の対応ができるのが、多能工である。僕たちが学生だった25年前は「システムエンジニア」はT型人材であれと教えられ、縦軸は何でもよかった。ところが、情報化が進むにつれて、T型人材でも縦軸は「情報技術」に限定されるようになってきた。

しかし、それだけではあまりにも人材としての深みがないので、情報技術以外にもう1本縦軸を持つ人材ということでπ型人材の必要性がいわれるようになってきた。

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【戦略ノート212】インシデントに注目したリスクマネジメントと改善

今回の戦略ノートは、Twitterのつぶやきを起点に記事を展開してみたいと思います。記事に対する意見はTwitterでお願いします。

【Twitter 2010年4月26日のつぶやき】

トラブル(事故)をマネジメントに活かしている組織は多いが、インシデント(リスクの発生)をマネジメントに活かしている組織は決して多くない。ひとつはリスクの設定ポイントに問題があるが、それにしてももったいない。マネジメントを根本的に変えるチャンスなのに。(http://bit.ly/bztDFM

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2010年5月 1日 (土)

【戦略ノート211】計画力について考える

◆プロジェクトマネジャーが必要な3種類のスキル

プロジェクトマネジャーにはいろいろなスキルが必要である。先人の知恵を借り、大きく分けると、

(1)プロジェクトマネジメントのテクニカルスキル(PM技法)
(2)ヒューマンスキル(人間系スキル)
(3)コンセプチャルスキル(概念化スキル)

の3つに分けることができる。プロジェクトの規模が大きくなったり、あるいは、プロジェクトの複雑性・不確実性が増してくるにつれて、(2)や(3)のスキルの重要性が増してくると言われている。

このような話はプロジェクトマネジャーにとっては釈迦に説法かもしれないが、この議論の中で一つ盲点になっていることがある。それが今回の戦略ノートのテーマだ。

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2010年4月30日 (金)

【戦略ノート210】プロジェクトマネジャーたるもの、すべからく、戦略実行者者たるべし

◆プロジェクトにかかわる2つの戦略

この連載は「戦略ノート」という連載である。今回は趣向を変えて、なぜ、戦略ノートというタイトルにしたのかを述べる。

プロジェクトには2つの戦略がある。

(1)プロジェクトを実行する戦略
(2)プロジェクトによって実行する戦略

の2つである。

一般的には、(1)はプロジェクトマネジメントの中で決められる。つまり、プロジェクトに対して、課題が与えられたときに、その課題を解決するためのアプローチ(戦略)を考え、その戦略を計画に落とす。また、このような計画は戦略的計画と呼ばれる、いわば、プロジェクト課題に対して実効性のある計画である。

(2)はもっと根源的な話で、プロジェクトは経営戦略や事業戦略など、上位の戦略を実行するための活動であるという意味での戦略だ。言い換えると、プロジェクトで実現すべき戦略である。問題はこの戦略のマネジメントである。

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2010年4月20日 (火)

【戦略ノート209】オーナーシップとは当事者意識である

  (PM養成マガジン2010年4月20日号より)

◆プロジェクトにおけるオーナーシップ

今ではよく知られるようになってきたが、プロジェクトマネジメントの中でオーナーシップの概念が比較的定着しているのはリスクマネジメントである。ところで、オーナーシップというのはどんな概念なのだろうか?今回の話題はこれだ。

実は、プロジェクトマネジメントの中でもうひとつ、よくオーナーシップという言葉が使われるものがある。プロジェクトオーナーシップである。こちらはなんとなくイメージが分かると思う。オーナーシップのもともとの意味である所有者に近い。たとえば、ビルのオーナーというニュアンスに近い。ビルのオーナーは、所有者として、そのビルが社会的に有効に活用され、なおかつ、収益を上げることを望む。プロジェクトのオーナーもそのプロジェクトが意義のあるものであり、かつ、会社に収益をもたらすことを期待する。

さっと読み流すと同じであるが、実はこの両者に違いがあることに気づいた人もいらっしゃると思う。ビルのオーナーは自分が儲けようとしている。ところが、プロジェクトのオーナーはいくら頑張っても直接的に自分が儲かるものでもない。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。