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2010年6月18日 (金)

【戦略ノート215】正解のないマネジメントとリーダーシップ

◆マネジメントに正解はないとは

マネジメントには正解がないとよくいう。この言葉にはいくつかの意味がある。代表的なものを3つ上げるとすれば、次の3つではないかと思う。

まず、やり方は人によって違うという意味がある。これは、正解はないといいながら正解はあり、正解にたどり着くいくつかの方法があるということだ。言い換えると、ロジカルに正しい答えがあるということだ。多くの人はマネジメントで扱う問題というのはこういう問題だと信じている。

二つ目は、問題がはっきりしないので、正解といえるものもないという意味がある。マネジメントとは、自ら課題(問題)設定を行い、それを解決していく。したがって、正解があるとか、ないとかいう議論そのものがナンセンスであるという言い方もできる。ただし、この場合も、設定した課題と解決策の間には論理的な関係がある場合が多い。


◆論理的に正しい答えがない場合

三番目として、本当に正解がないという意味を上げることができる。つまり、論理的に正しい答えがない。この場合には、誰が何を根拠にして解決策を評価するかによって結果が変わってくる。

たとえば、

10人で行うプロジェクトとして仕立てて、1000万円の利益を上げた
5人で行うプロジェクトとして仕立てて、500万円の利益を上げた

という2つの状況でどちらが正しいといえるのだろうか?

これだけの情報から論理的に正しい答えはない。どちらが正しいかを論理的に決める根拠は、組織の方針とおいうことになろう。

方針に合っているから正しいという言い分がある。これは一見、合理性(論理性)があるように見えるかもしれないが、ある結果が組織の方針にあっているかなど、簡単に判断できるものではない。

たとえば、上の例で、組織の方針はできるだけ収益の大きいプロジェクトを行うことだったとしよう。すると、ある人は10人のうちの5人を別のプロジェクトに当てれば、500万円以上の収益を上げることができると考えるかもしれない。また、ある人は残り5人で500万円の利益を上げることができるとは限らないので、現実に1000万円の利益を上げたことを評価するかもしれない。

要するにマネジメントが正しかったかどうかは、論理的な話ではなく、ステークホルダがどう考えるかなのだ。つまり、ステークホルダにそれが正しいと思わせると、そのマネジメントは正しかったということになるわけだ。これを突き詰めると、重要なステークホルダのいうとおりにすればよいと話になるのだが、世の中はそう甘くない。

マネジメントが正しかったかどうかはわからないが、間違っていることはすぐわかる。誰もが期待しない結果になればマネジメントは正しくなかったということになるからだ。


◆マネジメントが正しいためにはリーダーシップが不可欠

違う言い方をすれば、マネジメントの正解というのはステークホルダの要求をどれだけ満たすことができるかであるといえる。

このときに、もうひとつ重要な要素がある。それは、決めることだ。

10人で行うプロジェクトとして仕立てて、1000万円の利益を上げる
5人で行うプロジェクトとして仕立てて、500万円の利益を上げる

という2つの選択肢を目の前にしたときに、自分なりに考えて、どちらが正しいとしていくのかを決める。そして、その決定に基づいてステークホルダにもそれが正しいと思わせていく。これがリーダーシップである。

つまり、マネジメントが正しくあるためには、リーダーシップが不可欠なのだというあまり前の話になるのである。


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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。