◆マネジメントとリーダーシップ
今回は計画の話をしたいと思います。どのような仕事においても計画は重要な仕事です。しかし、自分の仕事は不確実性が高く、計画はできないので、走りながら考えるという人もいます。まず、この問題から考えてみたいと思います。
計画の話に入る前にマネジメントとリーダーシップの話をしておきたいと思います。よくマネジメントは既存の枠組み(ルール、仕組みなど)の中で何とか目標を達成することで、リーダーシップは枠組みを変えることだと言われることがあります。
違う言い方をすれば、複雑性の高い仕事をするにはマネジメントが必要で、不確実性の高い仕事をするにはリーダーシップが必要だということになります。
この考え方はハーバードビジネススクールのジョン・コッター先生の定義で、他にも定義はいろいろありますので、自分の考えと違うと思う人は読み流してください。
◆はじめに
プロジェクトの補助線メールマガジンの連載第2弾として、「リーダーのためのビジネスナレッジ」という連載を開始することにしました。
リーダーがビジネスを進めていくために必要なビジネスナレッジを手短に提供していこうという趣旨の連載です。
◆シナリオプラニングの歴史
ここ数年、フューチャーセッション、未来創造など、未来を見すえた活動をすることに関心があつまり、その中核として注目されているのが「シナリオプラニング」です。
シナリオプラニングは意外と古い歴史を持つ手法で、世界第二次大戦の軍事計画研究に遡ると言われています。
初期のシナリオプランニングは、予測を立てて、それを管理するというプランニング手法にでしたが、そののち進化し、ビジネス分野でも事業戦略構築やマネジメント手法として活用されるようになりました。このあたりの流れはプロジェクトマネジメントと似ているといえます。
シナリオプラニングがビジネス分野で注目されることになったのは、1970年代にロイヤル・ダッチ・シェル社(以下、シェル)が活用し、大きな成果を上げたことです。
シェルでは、未来がどうなるのか、それがなぜ起こるのかを組織内で考えていった結果、複数の未来のストーリーをシナリオとしてまとめました。そのシナリオの一つが日本にも大きな影響を与えた「石油危機シナリオ」です。そして、事前に組織内の体制を整えていたことで効果的に対応していきました。
◆ロジカルシンキングとクリティカルシンキング
クリティカルシンキングという思考法があります。さまざまな定義がある言葉ですが、著者はロバート・エニスの
何を信じ、何を行うかの決定に焦点を当てた、合理的で内省的な思考
という定義がしっくりくるのでこの定義を使っています。クリティカルシンキングとロジカルシンキングはどう違うのか分からないという人がおり、実際にクリティカル・シンキングの書籍やセミナーをみても、ロジカルシンキングとどう違うのかと思う人も多いと思われます。
なぜそのようになるかといいますと、ロジカルというのは前回述べたように必ずしも合理的なものではなく(ましてや論理的だから正しいとは限らない)、合理性が問題なり、それを考えるのがクリティカルシンキングだからです。つまり、ロジカルシンキングとクリティカルシンキングは表裏一体なのです。
◆日本におけるロジカルシンキングの原点
コンセプチュアルスキルの基本といえばロジックです。ところが、このロジックというのが非常にやっかいなシロモノなのです。今回から何回か、ロジックについて考えてみたいと思います。
日本でもいまではロジカルシンキングは新入社員教育にも含まれるようになっています。もっといえば、会社に入る前に身につけておくべきものだと思われています。ところが、この裾野の広がりが、あまり、よい結果をもたらしていないように思うわけです。
この辺から話を進めていきたいのですが、その前に少し、ここにいたった経緯的なものを見ておきたいと思います。日本のビジネスパースンをロジカルシンキングに注目させたのは2冊の本です。
ひとつは文字通り、ロジカルシンキングの本です。
照屋 華子、岡田 恵子「ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best
solution) 」、東洋経済新報社(2001)
当時、マッキンゼーに所属していた2人の才女が書いた本で、マッキンゼーのやり方を整理して書いた本だと言われています。そのあと出版された本はこの本に影響を受けていますし、研修もしかりで、いまロジカルシンキングというとこの本の内容に近いものをイメージする人が最も多いと思います。
もう一つは、時期的には照屋・岡田本より先に出版された本ですが、「ピラミッド原則」についてかかれた本です。
バーバラ・ミント(山崎 康司、グロービスマネジメントインスティテュート訳)
「考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則」、ダイヤモンド社
(1999)
です。こちらは論理構造に問題があるとよい文章を書けないということから、自らが考案した「ピラミッド原則」と呼ばれる考え方を提示し、物事を上手に論理立てて述べるテクニックを説明したものです。こちらは照屋・岡田さんのロジカルシンキングほど広まっていませんが、コンサルタントなど、問題解決をする仕事には必須のスキルだと言われています。
好川哲人
技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。
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