【新連載・リーダーのためのビジネスナレッジ】第1講 シナリオプラニング(1/2)
◆はじめに
プロジェクトの補助線メールマガジンの連載第2弾として、「リーダーのためのビジネスナレッジ」という連載を開始することにしました。
リーダーがビジネスを進めていくために必要なビジネスナレッジを手短に提供していこうという趣旨の連載です。
◆シナリオプラニングの歴史
ここ数年、フューチャーセッション、未来創造など、未来を見すえた活動をすることに関心があつまり、その中核として注目されているのが「シナリオプラニング」です。
シナリオプラニングは意外と古い歴史を持つ手法で、世界第二次大戦の軍事計画研究に遡ると言われています。
初期のシナリオプランニングは、予測を立てて、それを管理するというプランニング手法にでしたが、そののち進化し、ビジネス分野でも事業戦略構築やマネジメント手法として活用されるようになりました。このあたりの流れはプロジェクトマネジメントと似ているといえます。
シナリオプラニングがビジネス分野で注目されることになったのは、1970年代にロイヤル・ダッチ・シェル社(以下、シェル)が活用し、大きな成果を上げたことです。
シェルでは、未来がどうなるのか、それがなぜ起こるのかを組織内で考えていった結果、複数の未来のストーリーをシナリオとしてまとめました。そのシナリオの一つが日本にも大きな影響を与えた「石油危機シナリオ」です。そして、事前に組織内の体制を整えていたことで効果的に対応していきました。
◆未来適応から未来創造へ
シナリオプラニングは将来に何が起こっても対応する能力を身につけることを目的に行われていました(未来適応) が、1990年代以降、徐々に変わりつつあると言われています。それは、南アフリカなど、比較的政情が不安定な地域において、政府系の組織・機関が、国や 社会の未来を描く方法として用いられるようになったことが契機になっています。このような活動の中では将来に影響を与え、改善していくため、つまり、未来 創造のためにシナリオプラニングが使われるようになってきました。
未来適応のシナリオプラニングは、観察者の立場でシナリオを作ります。基本的な前提は、未来の可能性は複数あり、それが同じ確率で起こるというものです。この場合、ポイントになるのは、情報収集や分析の精度です。
こ れに対して、未来創造のシナリオプラニングは、主体者の立場でシナリオを作ります。未来の可能性は複数あると考える点は未来適応同じですが、未来創造のシ ナリオプラニングでは、自分自身や他の人の行動がどのような未来になるかを決めると考えます。従って、ポイントになるのは、多様な作成者(チーム)の合意 です。
◆未来創造による組織学習
未来創造のシナリオプラニングは、組織学習を実現する方法としても注目されるようになってきました。多くのステークホルダーがシナリオプラニングに参加し、実現したい未来のビジョンやプロセスについてオープンに対話をすることにより、
・視野の拡大
・世界の構造の洞察
・ステークホルダーの相互理解と理解の共有
・未来の方向性の共有
といったことが実現でき、これらによって組織としての学習が進んでいくと考えられています。この効果がビジネスの世界でシナリオプラニングが注目されている一因になっています。
◆シナリオの作り方
さて、ではどのようにシナリオを作ればいいのでしょうか。大まかな流れは以下のようなものです。
(1)描きたいシナリオの範囲を決めて、リサーチを行う
(2)分析をする
(3)情報を統合する
(4)ストーリーでプランを描く
(5)複数の選択肢を提示する
詳細は次回、説明したいと思います。
◆プログラムやプロジェクトにおけるシナリオプラニングの有用性
今 回の最後で、シナリオプラニングはプロジェクトマネジメントやプログラムマネジメントにどのように役立つかを簡単に説明しておきたいと思います。大規模な プロジェクトやプログラムにおいてはリスクなどでは対処できないような不確実性があります。この不確実性に適応していくための手段としてシナリオプラニン グは不可欠なものだと考えられています。
また、プログラムにおいては、未来創造のシナリオプラニングが使われることがあります。プログラムをどのように進めていくかを決めるためです。
今後、プログラムやプロジェクトにおいてシナリオプラニングはどんどん重要なものになっていくことが予想されます。
(シナリオプラニング 2/2に続く)
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