木谷哲夫「独裁力 ビジネスパーソンのための権力学入門」、ディスカヴァー・トゥエンティワン(2014)
日本企業は現場力が卓越している、ものごとを決めない、ボトムアップの意思決定をする、擦り合わせや話し合いでものごとを進めていくといった評価があるが、共通しているのは権力を嫌うことだ。本書の帯に権力アレルギーという言葉が出ているが、おそらく、なぜ権力が嫌いですかと聞いても、10人中の9人は答えられないのではないかと思う。要するに権力はよくないものだという思考停止を起こしているし、考えることすらタブー視している。
しかし、ここにきてこのようなやり方に限界が出てきている。日本的なやり方の最大のメリットは多くの人が意思決定に参加するため実行性が高まることである。ところが、今は意思決定にも実行にもスピードが求められている。そこで改めて考えさせられるのが、権力の使い方である。この本は、権力に対する正しい認識と権力の構築、使い方をやさしく述べた一冊である。
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◆挑発する質問
先日開催した「イノベーティブリーダーのための質問力」セミナーの中で、以下のような質問を紹介した。
・顧客の可処分所得が半分になったら、自社の製品やサービスをどのように変えるだろうか
・通信インフラがなかったとすれば、自社の製品やサービスをどのように変えるだろうか
・空輸ができなくなったら、商売の方法をどう変えるべきだろう
お気づきの方も多いと思うが、これは新興国を想定した質問である。
たとえば、新興国では、所得レベルが低いので、先進国に比べると極端に安い商品を求める。有名なのはインドにおけるタタ自動車やノキアの携帯電話だ。タタ自動車は20万円もしないような自動車を作った。ノキアは2~3千円の携帯を作り、一部のユーザには数百円で買えるようにした。いずれもインドでは60%のシェアをとった。
あるいは、新興国には先進国のようなインフラはない。インフラが必要な製品を売ろうとすればインフラを作ってからという発想ではビジネスにならない。
そこで、現状のインフラを前提にして製品を見直すということになる。たとえば、インドでは電力供給が不安定で、医療インフラが未発達だった。そこでGEヘルスケアは電力供給が不安定でも使える携帯型の心電計を開発した。
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◆真のチームの条件
前回はイノベーションのためには、効率を犠牲にしてでも多様性のあるチームの必要であることについて述べた。そして車でいえば多様性がエンジンでイノベーションの成果を上げるにはターボチャージャーをつけなくてはならない。
【イノベーション戦略ノート:026】イノベーションのエンジン
今回はこの点について説明する。
「真のチーム」という言葉がある。これはチームに関する世界一の識者だといってもよい、マッキンゼーのパートナーのョン・カッツェンバックが提唱する概念である。ジョン・カッツェンバックは膨大な高業績を上げているチームを調査し、真のチームの条件として
(1)少人数である
(2)メンバーが互いに補完的なスキルを有する
(3)共通の目的の達成に責任を持つ
(4)問題解決のためのアプローチの方法を共有している
(5)メンバーの相互責任がある
の5つがあるとしている。前回の多様性の議論は、(2)に相当しているが、それ以外について説明していこう。
久世 浩司「世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方」、実業之日本社(2014)
レジリエンストレーニングの歴史は古いが、そこに新たに、認知行動療法、ポジティブ心理学、PTG(心的外傷後の成長)の研究・手法を統合し、欧州で生み出された第2世代のトレーニング法について紹介した一冊。
トレーニングの紹介の前にレジリエンスそのものについても解説されており、個人レベルのレジリエンスの入門書としても適した内容になっている。
前田悟『ソニー伝説の技術者が教える「イノベーション」の起こしかた』、ADOKAWA/中経出版(2014)
ソニーでエアボードの開発をした伝説の技術者、前田悟さんの経験的イノベーション論。技術者がイノベーションを手掛けるときに、何を考え、どのように進めればよいかを「ルール」、「プロセス」、「チーム」の3つの視点からまとめ、最後にイノベーションを起こすための鍛え方について論じている。製品開発に携わる技術者必読の一冊。
また、非技術系のマネジャーにとっては、優秀な技術者がどのような発想をするかが手に取るように分かる貴重な一冊。
◆普及してきたレジリエンス
レジリエンスという概念がある。東日本大震災のあと、メルマガの配信をしばらく休んでいたが、復活第1号(通算942号)から「難局を乗り切るマネジメントとリーダーシップ」というシリーズを書き、真っ先に取り上げたのがこの話だ。
【戦略ノート247】難局を乗り切るマネジメントとリーダーシップ(1)~レジリエンスを高める
それから3年になるが、当時は一般にはあまり知られていない概念だったレジリエンスがかなり知られるようになってきている。レジリエンスを高めるトレーニングの本も見かけるようになった。
エリック・ウォール(住友 進訳)「アンシンク UNThink 眠れる創造力を生かす、考えない働き方」、講談社(2014)
読んでほしい人:創造的な活動をしたい方、コンセプチュアルスキルを身につけたい人、リーン開発を実践している人
ビジネスの論理性とアートの創造性を組み合わせることによって仕事の方法を変えようという提唱をする本。
帯にダニエル・ピンクが絶賛とあるが、この本はダニエル・ピンクが2004年に「ハイコンセプト」という本を出した。この本でこれからの時代は左脳思考の知識ワーカーではなく、右脳思考もできる人、すなわち「ハイコンセプト・ハイタッチ」な人が活躍できるだろうと予言した。
この本の著者はまさにハイコンセプト・ハイタッチを実践している人で、左脳思考の世界から、アーティストになり、その考え方はアートの域にとどまらず、多くのビジネスマンに影響を与えている。この本にはその具体的な考え方や方法が書かれている。
本ブログの名前を「プロジェクトの補助線」から
プロジェクト・イニシアチブ
に変更しました。今後ともよろしくお願いいたします。
また、「ビジネス書の杜ブログ」の休止に伴い、本ブログに書評コーナー
「ブックレビュー・イニシアチブ」
を設置しました。本ブログでサポートしているメールマガジン
「PM養成マガジン」
「イノベーション・イニシアチブ」
の2つのメルマガを読んでいただくのに役立つの情報を提供していく予定です。
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◆イノベーションのエンジン
イノベーションのエンジンというと何を創造するだろうか。技術、プロジェクト、ビジネスモデルなど、いろいろとあると思う。一つだけ挙げるとすれば、筆者はチームを選ぶ。
イノベーションとチームは切っても切れない関係にある。多くのイノベーションがチームによって生み出されているからだ。
イノベーションがチームにより生まれやすい理由は、チームの多様性である。さまざまな専門分野を持つ人が集まり、「チームになる」によって、アイデアが交わり、組み合わせが生まれる。これがイノベーションのエンジンになる。
そこではメンバー一人一人の創造性はあまり問題にならない。問題はチームの創造性である。そのためには個々のメンバーの創造性よりも、自分の領域に拘らないオープンさが重要である。異なる分野の話を真剣に聞いて、そこで自分なりのアイデアを出すことができるかどうかだ。
その人にとってアイデアそのものは平凡なものだとしても、それが専門家にとっては思いもつかないアイデアになっていることは珍しいことではない。専門分野とはそういうものだ。
好川哲人
技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。
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