2014年7月 8日 (火)

【イノベーション戦略ノート:035】パラダイムの変化に対応する

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◆テリットという会社

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日本ではあまり知られていないが、イタリアにテリットという会社がある。かつては携帯電話の製造をしていた会社で、倒産の危機に瀕していた。そこから見事に立ち直り、今ではこれから市場の拡大が期待されるある分野で世界市場の30%を占めるに至っている。

ある分野とは、M2M(Machine to Machine)、いわゆるモノのインターネットの通信手段である。

この会社は倒産の危機にあったときに、無線M2Mの戦略目標を立て、見事に戦略実行に成功した。今年は1800万台を出荷し、4年後には1億台の出荷をもくろんでいる。その背景にはモノのインターネットの急速な普及の見込みがある。ガートナーによると、2020年までに260億以上のモノが互いに接続されることになると予想されている。その中の1億を自分たちの携帯電話を売り込もうとしている。

この中でも有望な分野としては、

自動車、セキュリティ、盗難防止、決済、自動販売機、遠隔測定法(telemetering:いわゆるインテリジェントメーター)、遠隔医療によるヘルスケア、ホームエレクトロニクス

などがあるという。

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2014年7月 6日 (日)

【プロジェクトの本質】本質とは何か?

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◆はじめに

これまで「プロジェクトの補助線」という名前でブログをやっていたときには「補助線」というコラムをときどき書いていた。

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ブログを「プロジェクトイニシアチブ」に変え、コンセプトも変えたので、「補助線」に代わる新たなブログ連載として「プロジェクトの本質」という連載を始める。

初回のテーマは、そのタイトルにもある「本質」とは何か。

最近、PM養成マガジンで「プロジェクトマネジメントをコンセプチュアルにしよう!」という連載を始めたが、その中で述べたようにコンセプチュアルスキルとは

「周囲で起こっている事柄や状況を構造的、概念的に捉え、事柄や問題の本質を見極めるスキル

と定義される。要するに本質を見極める技術がコンセプチュアルスキルである。

プロジェクトマネジメントをコンセプチュアルにしよう!

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2014年7月 4日 (金)

【ブックレビュー】「好き嫌い」と経営

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楠木 建「「好き嫌い」と経営」、東洋経済新報社(2014)

ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件」で知られる楠木建先生の対談集。

企業の戦略ストーリーの創造は経営者の直観やセンスに大きく依存している。

その根底には、その人を内部から突き動かす「好き嫌い」があるというのが楠木先生の仮説で、その後、その仮説を実証すべく、東洋経済の季刊誌Think!で「楠木教授の好き嫌い対談」という企画で特徴のある経営者と好き嫌いを巡る対談をするという連載があった。

それをまとめたのが本書である。

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2014年7月 2日 (水)

【イノベーション戦略ノート:034】イノベーションの流儀

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◆はじめに

RyugifacebookのPMstyleページで、今年の3月くらいから、「イノベーションの流儀」というシリーズのミニ記事を書いている。いろいろな開発事例を取り上げ、そこからイノベーションの流儀(方法論)を学ぶという趣旨でやっている。

PMstyle facebookページ

10回を超えたので、一度、まとめて紹介してみました。

興味がある流儀があれば、紹介しているURLに詳細があるので、クリックしてみてください。その際、別のサイトに移動するので、了解の上でお願いします。

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2014年7月 1日 (火)

【イノベーション戦略ノート:033】イノベーションをめぐるジレンマ

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◆破壊的イノベーション

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イノベーションのジレンマ(正確にはイノベーターのジレンマ)は、ハーバードビジネススクールの教授であるクレイトン・クリステンセン先生が名付けた破壊的イノベーションの理論である。破壊的イノベーションはパラダイムシフトの際に起こる既存の市場を壊滅させるイノベーションである。

最近の例でいえば、フィルムの市場を破壊したデジタルカメラがそうである。破壊的イノベーションの特徴は、パラダイムシフトの特徴といってもよいが、あり得ないと思われることが起こることだ。

クレイトン・クリステンセン「イノベーションのジレンマ 増補改訂版」、翔泳社(2001)

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2014年6月30日 (月)

【イノベーション戦略ノート:032】良い失敗と悪い失敗

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◆組織における3種の失敗

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イノベーションにおける失敗について語られるときに、良い失敗(意味のある失敗)と悪い失敗(意味のない失敗)という言葉が出てくる。今回の戦略ノートは、失敗の意味について考えてみた。

失敗の区分についてはいろいろな言及があるが、「最も影響力のある経営思想家」50人に選ばれた組織学習の専門家であるハーバードビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授は、組織における失敗には

(1)予防できる失敗
(2)複雑さに起因する失敗
(3)「知的な失敗」

の3つがあると指摘している。この区分がもっともしっくりくる。

※「安心して失敗できる組織をつくる 失敗に学ぶ経営」(ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビュー、2011年7月号)

予防できる失敗とは、不注意や不勉強による失敗である。複雑さに起因する失敗とは、業務プロセスやタスクの複雑さ、難しさに起因する失敗である。このような失敗は(1)の失敗とは異なり、避けることは難しい。

イノベーションにおいて重要なのは、(3)の知的な失敗である。知的な失敗というのは、デューク大学のシム・シトキン教授の造った言葉だ。



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2014年6月25日 (水)

【イノベーション戦略ノート:031】自分の使いたいものを作る

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◆イノベーションをめぐる2つの考え方

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イノベーションは生活者の観察から見とれるニーズから生まれる

という考え方をする人が増えてきた一方で、

イノベーションは市場ニーズを知り、顧客ニーズを知るところからは起こらない

と考える人もいる。どちらが正しいのだろうか。

たとえば、アップルで世紀初頭にして、世紀のイノベーション「スマートフォン」を実現したスティーブ・ジョブズは

・顧客は自分たちが何をほしいか知らない
・自分が使いたいものを作る

といった発言をしている。つまり、後者の立場をとっている。

もう一つ例を上げると、ソニーの伝説の開発者でエアボードを開発した前田悟氏は自著「ソニーの伝説の技術者が教えるイノベーションの起こしかた」(中経出版、2014)において、

ソニーには自分がほしくなる商品を作れという文化がある

と言っている。この2つのイノベーションに共通するのはコンセプトの斬新さである。



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2014年6月24日 (火)

【ブックレビュー】33の法則 イノベーション成功と失敗の理由

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オリヴァー・ガスマン、サシャ・フリージケ(山内 めぐみ、黒川 亜矢子訳)「33の法則 イノベーション成功と失敗の理由」、さくら舎(2014)

教授、学者として活躍する二人の著者が、BMW、メルセデス・ベンツなどのドイツ企業の実例、日本やアメリカ企業のイノベーション、その他グローバルに進化し続ける企業の成功の秘訣を分析した一冊。


大きなテーマは、なぜ、大抵の企業は、似たり寄ったりの製品を提供してしまうのか? イノベーションの失敗と成功を分けるものは何か?

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2014年6月18日 (水)

【ブックレビュー】「ひらめき」を生む技術

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伊藤 穰一(狩野 綾子訳)「「ひらめき」を生む技術 (角川EPUB選書)」、KADOKAWA/角川学芸出版(2013)

MITメディアラボで伊藤穣一所長が自分の人脈をつなぎ各界の第一線で活躍するスペシャリスト達を呼んで、学生たちの前でディスカッションする「カンバセーション・シリーズ」の中から、伊藤さん自身が対談した4名の対談録に、伊藤さんの解説をつけた本。

刺激を受けるという点においては、まれにみる一冊だ。


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2014年6月17日 (火)

【ブックレビュー】オーケストラ・モデル 多様な個性から組織の調和を創るマネジメント

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クリスティアン・ガンシュ(シドラ房子訳)「オーケストラ・モデル 多様な個性から組織の調和を創るマネジメント」、阪急コミュニケーションズ(2014)

オーケストラ組織はよく企業組織のモデルになるといわれる。指揮者や奏者はプロフェッショナル中のプロフェッショナルであり、癖も個性もある。そのようなプロフェッショナルが集まって、一つの統一されつつも、魅力のある音楽を生み出す組織というのは、ある意味で企業組織の理想だからだ。

古くはリーダーシップについて述べたオルフェウスプロセスが話題になった。

ハーヴェイ・セイフター、ピーター・エコノミー(鈴木 主税訳)「オルフェウスプロセス―指揮者のいないオーケストラに学ぶマルチ・リーダーシップ・マネジメント」、角川書店(2002)

最近では、山岸 淳子さんの「ドラッカーとオーケストラの組織論」があるが、これらの本はオーケストラの知識がないとなかなか手ごわい。この本は、オーケストラとビジネスを対比させながら書かれているので、これらに比べると読みやすい。

著者は、オーケストラの奏者、さまざまな国での指揮者、音楽プロデューサーといろいろな立場を経験し、さらにはオーケストラ型の組織を企業に導入するコンサルティングや講演を行っているクリスティアン・ガンシュ。自分の経験に基づくオーケストラ・モデルを紹介しながら、企業組織にどのように取り入れていけばよいかを解説している。テーマは多様性と統一性。

オーケストラは見たとおり、プロフェッショナルな奏者の集まりで、明確な役割と厳格なヒエラルキーがある組織で統一性が要求される。一方で多様性がないと演奏はつまらないものになる。この二律背反をどのように克服しているかがこの本を読むとよく分かる。

今、大企業で硬直した組織を乗り越え、イノベーションを興すためのチームが注目されているが、大企業と同じ前提が多いオーケストラのやり方は非常に参考になる。

ある企業の幹部が

「オーケストラ全体の調和、実に見事だ。当たり前のように一つにまとまって。うちの会社はどうしてこんな風に統一がとれないのだろう」

とつぶやいたそうだ。このつぶやきにオーケストラの本質がある。その本質を追求した本である。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。