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2014年7月 8日 (火)

【イノベーション戦略ノート:035】パラダイムの変化に対応する

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◆テリットという会社

Paradaim

日本ではあまり知られていないが、イタリアにテリットという会社がある。かつては携帯電話の製造をしていた会社で、倒産の危機に瀕していた。そこから見事に立ち直り、今ではこれから市場の拡大が期待されるある分野で世界市場の30%を占めるに至っている。

ある分野とは、M2M(Machine to Machine)、いわゆるモノのインターネットの通信手段である。

この会社は倒産の危機にあったときに、無線M2Mの戦略目標を立て、見事に戦略実行に成功した。今年は1800万台を出荷し、4年後には1億台の出荷をもくろんでいる。その背景にはモノのインターネットの急速な普及の見込みがある。ガートナーによると、2020年までに260億以上のモノが互いに接続されることになると予想されている。その中の1億を自分たちの携帯電話を売り込もうとしている。

この中でも有望な分野としては、

自動車、セキュリティ、盗難防止、決済、自動販売機、遠隔測定法(telemetering:いわゆるインテリジェントメーター)、遠隔医療によるヘルスケア、ホームエレクトロニクス

などがあるという。


◆モノのインターネット

大きな動きもある。日本でもモノのインターネットが注目されるきっかけになったのは、今年の始め、グーグルがネストというサーモスタットをはじめとするスマートホーム製品を手掛けるベンチャー企業を32億ドルで買収したことだ。

ネストの次世代の温度調節機”とうたうThermostatは、居住者のスケジュールを学んで最適な温度を自動調節できるほか、スマートフォンを利用して遠隔からの操作も可能だ。これらの機能によって温度調節関連のコストを20%程度削減できるという。

今後、グーグルがこの分野でインフラに進出してくることは確実な状況であり、グーグル以外でも大手の企業が参入してくることも予想される。

テリットが倒産の危機から立ち直ったのは、テリットが持っていた技術がMachine to Machine(機器同士のネットワーク接続による情報収集、管理、制御の技術)分野の開発を可能にしたからであるが、この話には奥がある。


◆ハードウエアとソフトウエアの新しいパラダイム

モノのインターネットという動きは、パラダイムシフトが起こっているという。かつてはハードウェアがつくられ、そのためにソフトウェアが生み出されていた。

ところが、今は違う。ネストのサーモスタットのように、企業はソフトウェアを生み出して、日常的に用いる製品を全面的に作り直している。これがモノのインターネットの特徴だ。極論をすれば、インターネットに接続されるすべてのモノはコンセプトやパラダイムが変わってもおかしくないのだ。これがモノのインターネットのインパクトである。

そのパラダイム変化をいち早く察知し、卓越した技術で事業を転換し、成功したのがテリットだったわけだ。

イノベーションを興すのに、パラダイムという概念が非常に大切になってくる。クリステンセンのいう破壊的イノベーションは、パラダイムシフトが背景にあるがゆえに、古いパラダイムで儲けていたほとんどの会社がつぶれてしまうといったことが起こる。


◆パラダイムとは何か

そもそも、パラダイムとは何か。この話はこれから詳しくしたいと思っているが、今回は入口として定義を紹介しておこう。

パラダイムという言葉はトーマス・クーンという科学者が科学の分野で用いた言葉だが、ビジネスの分野でもさまざまな定義がある。その中でパラダイム論のバイブルになっているジョエル・バーカーの

パラダイムの魔力

では、

ルールと規範であり、境界を明確にし、成功するためには境界の中でどのように行動すればよいかを教えてくれるもの

だと定義している。

テリットの例を見るとパラダイムをイノベーションとどのように結び付けていくかは漠然とわかると思う。

というところで、次回以降、パラダイムとイノベーションの関係について議論してみたい。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。