2015年4月 6日 (月)

【戦略ノート318】タレントとしてのプロジェクトマネジャー

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Talent◆プロジェクトマネジャーの役割とタレント

プロジェクトマネジャーは与えられた課題をきちんとやり遂げる仕事である。そこでは期待される価値(計画上の利益)を生み出すことは求められるが、それ以上は期待されていない。

そんな人材イメージを持っている人は少なくないだろう。だが、本当にそれでいいのだろうか?

この議論、実は、PM養成マガジンを創刊したときから持っている問題意識である。PM養成マガジンの中でもプロフェッショナルとか、プロジェティスタとかいろいろと提案してきたが、本質的な問題である新しい価値を生み出すべきかどうかについてはモヤモヤしたものがある。

最近、酒井 崇男さんという方の書かれた「タレントの時代」という本を読んでいてプロフェッショナルという概念への視座が少しずれていたことに気がついた。

「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論 (講談社現代新書)

この本ではタレントとは、

「チームのプロフェッショナルやスペシャリストの力を引き出しながら、顧客が「これしかない。欲しい」と思うような、使ってみて満足するような新しい製品やサービスを生み出すことができる人、知識や才能を利益に変えることができる人」

だとしている。要するにプロフェッショナルは自分で新しい価値を生み出すものではなく、タレントのもとで自分の持つ力を発揮する存在だというのだ。確かにそうかもしれない。

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2015年3月11日 (水)

【イノベーション戦略ノート:069】イノベーションと好奇心

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Koukisin

◆イノベーションの推進力は野心と好奇心

イノベーションという言葉には価値創造という言葉をつけて考えるので分かったようでわからない言葉になっているが、もう少し簡単にいえば

ものごとを変える方法を「新しく」考えること

である。

このように考えたときにイノベーションにとってもっとも重要なことを一つ上げるとすれば、「好奇心」だと思う。日本のエンジニアが非常に優秀なのは好奇心が強い人が多いからである。ついでにいえば、これまでに付き合ったことのある米国のエンジニアでは好奇心より野心が強い人が多いように思う。

昨年、ノーベル賞を取った中村修二先生に対して日本人がもろ手を挙げて評価しないのは彼からは好奇心より、野心を感じるからだろう。彼の著作を読んでいると好奇心がないとは思わないが、同時にノーベル賞を受賞した2名の先生と比べると、研究の推進力の割合として野心の方が大きいと思う。

ただ、今回10年ぶりくらいにマスコミに大量露出したのを見て感じたのは、だいぶ、好奇心の割合がだいぶ増えてきたなということだった。

誤解のないように言っておくが、野心といっているのはイコール私利私欲ではないし、誰かに勝つことでもない。

たとえば、世界の人を貧困から解放したいというのも野心だし、戦争のない世界を作りたいというのも野心である。これらがイノベーションの推進力になっているケースは多い。

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【戦略ノート317】プロジェクトはマネジメントするより、創ることの方が難しい

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Human

◆プロジェクトを創ること、マネジメントすること

プロジェクトマネジメントのブームの時代からずっと気になっていることがある。それが、今回のタイトルだ。

プロジェクトマネジメントの達人というと、予算や納期の制約の厳しいプロジェクトをうまく進め、目標を達成することだと思っている人が多い。計画のときには、見積もりを正確にできるとか、リスクを見抜ける。実行の際には、コミュニケーションを適切に行う、外注をうまくコントロールできる、変更をスムーズに行えるといったことがよいプロジェクトマネジャーの条件だと考えられている。

もちろんこれらができることは十分にすごいことなのだが、誤解を恐れずにいえば、このようなことよりは、プロジェクトを創ることの方が難しい。上の活動でいえば、目標を決めることであり、さらには目標の根拠になる目的を決めることの方が難しい。

これらもプロジェクトマネジメントの一部であるが、実は誰が行うかという点で最初に挙げた要素とは全く別のものだ。

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2015年2月17日 (火)

【戦略ノート316】「働きやすいプロジェクトについて考える」プロジェクト(アンケートのお願いあり)

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Ofiice

◆はじめに

アベノミクスで女性活用施策が打ち出され、働き方についての議論が盛んにおこなわれるようになっている。その議論を聞いていると、プロジェクトで仕事をすれば解決する問題ばかりだと思う一方で、現実のプロジェクトでは大きな問題の一つとして指摘される長時間労働、深夜残業が起こっているプロジェクトは珍しくないという現実
もある。

プロジェクトマネジメントをメンバーが自発的に成果を出すための支援手段だと考える人はもちろんだが、ゴール達成のための管理手段だと考える人もプロジェクトの生産性やメンバーの創造性の問題などを考えた場合、プロジェクトを働きやすいものにすることは、プロジェクトマネジメントの大きな目的である。

そこで、戦略ノートは「働きやすいプロジェクト」とはどのようなものかという議論をしてみたい。今回はスタートして、その視点とメトリクスを検討する。

なお、この内容に基づいて、久しぶりのメルマガアンケートをします。この記事の最後にあります。ぜひ、ご協力をお願いします!

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2015年1月23日 (金)

【戦略ノート315】ステークホルダーマネジメントについて考える

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Stakeholder

◆ステークホルダーマネジメントが重視される時代

現行のPMBOK(R)である第5版から、ステークホルダーマネジメントが新しい知識エリアとして設定されている。戦略ノートでステークホルダーについては久しく書いていないので、これから時々、書いてみたいと思っている。

戦略ノートなので、あまりテクニカルな話は書く予定はないので、手法的なことを知りたい人は鈴木道代が書いている連載

ステークホルダーマネジメント

などを参考にして戴きたい。

ステークホルダーマネジメントはマネジメントの中心的なイシューである。ある意味で、計画やリスクマネジメントよりも重要なものであり、人で事業や組織を動かすことはステークホルダーマネジメントだといってもよい。

PMBOK(R)ではステークホルダーマネジメントの存在はだんだん大きくなっている。当初はコミュニケーションのプランを作るために、どのようなステークホルダーがいて、どのようなコミュニケーションが必要かを考えるための手段であり、知識エリアでいえばコミュニケーションの知識エリアの活動であった。

ここでお断りをしておくが、PMBOK(R)のステークホルダーという概念はプロジェクトを中心にして考えているのでプロジェクトの外部関係者だけではなくプロジェクトマネジャーやプロジェクトメンバーもステークホルダーという理屈になる。が、議論の中では特別に断らない限り、ステークホルダーはプロジェクトの外部関係者だけを指して議論を進めていくので、注意しておいてほしい。



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2015年1月22日 (木)

【戦略ノート314】コンセプチュアル・プロジェクトマネジメント

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Honsitu2

◆考え抜くプロジェクトマネジメント

PM養成マガジンを立ち上げて、プロジェクトマネジメントの普及活動をする中で、PM養成マガジンで提供するサービスコンセプトとして「プロジェクトマネジメントOS」というコンセプトを提唱した。

そして、プロジェクトマネジメントOSを身につけ「考え抜く」プロジェクトマネジメントをしようと働きかけてきた。

しかし、考えるというのは当たり前のようで意外と難しいことが分かった。まず、全般的な印象として考えることよりは、知っていることが重要だと思う人が多いことが挙げられる。簡単にいえば、思考より、知識(情報)が重視される。



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【イノベーション戦略ノート:068】なぜ、卓越したアイデアは実行できないのか

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Idea◆卓越したアイデアは実行できない

イノベーションアイデアを評価するのは難しいといわれるが、それ自体はそんなに難しいものではない。新規性と独創性があれば優れたアイデアだと言ってよい。にも関わらず、評価が難しいのは、そのようなアイデアはなかなかイノベーションとして実行できないからだ。

むしろ、新規性の高いアイデアであればあるほど、イノベーションは実行しにくいといっても過言ではない。このため、実行しやすいアイデアがいいアイデアだと評価される風潮すらある。

よいアイデアに基づくイノベーションが難しいのはいくつかの理由がある。



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2015年1月20日 (火)

【戦略ノート313】プロジェクトとプロダクト

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Product

◆プロジェクトとプロダクトの関係

アジャイル開発が増えてきて、マネジメントする対象はプロジェクトがいいのか、プロダクトがいいのかという議論がされるようになってきた。この問題はどちらがいいというよりも、活動の性質によって違うというのが答えであるが、どう違うのかを少し整理してみたいと思う。

要求にもプロジェクトに対する要求とプロダクトに対する要求がある。スコープにもプロジェクトスコープとプロダクトスコープがあるし、品質概念にもプロジェクト品質とプロダクト品質がある。

要求であれば、プロジェクト要求はプロジェクトの進め方であり、プロジェクトの目的とどうするか、組織体制(プロジェクトの組織的位置づけ)をどうするかといったことが主となる。プロダクトに対する要求はそのプロジェクトで開発する製品、サービス、システムに対する要求である。

スコープであれば、プロダクトスコープというのはプロジェクトの作業によって生み出される成果物(正確にいえば成果物に対する要件)を意味している。ただし、成果物は有形、無形のいずれの場合もある。これに対して、プロジェクトスコープは成果物をつくるための役務を意味している。

品質についていえば、プロダクトの品質は成果物の品質や成果物を開発するプロセスの品質、つまり、一般にいう品質である。これに対して、プロジェクトの品質というのはもう少し広い概念で、計画に対してどれだけ正確に実行ができるかという程度を示す概念である。簡単にいえば、計画通りに実行できればプロジェクト品質は高いといえる。

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2015年1月19日 (月)

【イノベーション戦略ノート:067】失敗を許容することは正しいのか

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Sippai1_2

◆収益確保のためには失敗は許容できない

イノベーションを推進する、イノベーティブな組織を作るといったときに、必ず出てくるのが、

・リスクを取れるようにすること
・失敗を許容すること

である。今回の戦略ノートはこの問題について考えてみる。

ちょっと大上段な話になるが、この問題の本質は何のために経営戦略を作るのかという話にさかのぼる。ざっくりといえば、堅実な経営計画がありそれを実行するための戦略なのか、それとも経営ビジョンに基づく成長目標がありそれを実現することまで含めた戦略なのかによって変わってくる。

前者の場合、大前提として計画通りの収益確保があるので、そこにおいて失敗してもいいというのは考えにくい方針だし、リスクを取ることも望ましいとはいえない。実際に現場のマネジャーの意見を聞いても失敗を許容することは自部門の方針になじまないという人が多い。

日本の場合、ミドルアップダウンで戦略策定をしているケースが多いので、後者はあまり多くないが、後者の場合、成長のための模索があり、ある程度失敗は仕方ない部分があると考えられなくはないし、リスクを取ることは不可欠だともいえる。

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【戦略ノート312】マネジメントの計画が持つ意味について考える

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Keikaku_2◆プロジェクトマネジメントの歴史

プロジェクトマネジメント計画という概念がある。これは、プロジェクトのマネジメント計画である。今回の戦略ノートは当たり前のようで、意外と理解されていないプロジェクトの計画の意味を考えてみたい。

プロジェクトマネジメントの教科書を見ると、プロジェクトの歴史は古代のピラミッドの建立にまでさかのぼる。そして、現在のプロジェクトマネジメント、つまり、近代プロジェクトマネジメントの形ができたのがマンハッタン計画(原爆の開発)だという事例が使われていることが多い。

ピラミッドは権力の象徴であり、どれだけの時間や金がかかってもよかった。むしろ、時間や金をかけて作ることが望ましかったのかもしれない。これに対して、原爆の開発は戦争を早く終わらせるために可能な限り急いで行われたとされる。

ピラミッドで行われていたマネジメントはスコープ定義と要員調達と作業段取りだけであり、原爆の開発ではPMBOK(R)でいう10のマネジメントがほぼすべて行われていたと考えられる。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。