2009年6月 2日 (火)

経験からモチベーションは生まれない【ほぼ日読書日記 2009年6月1日】

金井先生の短い解説と、野田先生との対談で構成されたモチベーション論。

この本に限らず、金井先生の書かれるモチベーション論を読んでいると、前提が変わっていることを感じることが多い。この本は特にそれを感じた。もうやる気は、個々人がコントロールすることが「当たり前」の時代になっている。上司がどうにかできるというのは幻想かもしれない。

金井 壽宏「危機の時代の「やる気」学」、ソフトバンククリエイティブ(2009)

テキサス大学の清水先生たちが、おもしろい研究をしていて、理論でどれだけ、実際の経営活動を説明できるかというもの。厳密には違うのだろうけど、単純にいえば、理論がどれだけ役立つか?30%程度だそうだ。

このような議論になってくると、客観性とはそもそも何かという議論になる。工学と経営学の決定的な違いは、適用範囲を明確にする必要があるかどうかだ。工学では、理論を立てるときに、その適用範囲を明確にしない限り、その理論は用をなさない。経営学の理論というのは、そこをはっきりさせない。極論すれば、参考になるかどうかの世界なのだ。

その意味で、金井先生のいう「持論」という発想は正しいと思う。30%に対しては理論を使えるが、70%に対しては理論が使えず、持論を持つ必要がある。

問題は、持論が何に依拠するかだ。日本人は圧倒的に経験である。いわゆる経験論。僕はきらいだ。経験からイノベーションは生まれない。経験が理論化されるからイノベーションの温床ができる。

モチベーション論はおもしろいところがあって、こういった情報発信自体が社会に何らかの影響を与える。結局、行くつくところは信じるかどうかの世界なのかなあ。

2009年6月 1日 (月)

儀式は重要【ほぼ日読書日記 2009年5月31日】

知人のブログで見て、興味本意で読んだが、たいへん、おもしろうございました。

マイケル・チウェ(安田 雪)「儀式は何の役に立つか―ゲーム理論のレッスン」、新曜社(2003)

コミュニケーションの中での儀式の役割を合理的選択理論を使って説明している。清水先生が、「経営の神は細部に宿る」という本の中で、コミュニケーションについて語っている部分で、そもそも、コミュニケーションを合理化しようというのは間違っていると書かれている。清水先生の主張は本を見る限りでは「意見」だと思うが、この本を読むと、ある程度、合理性のある意見であることが分かる。

儀式を省略したがる人が増えているが、そのことがコミュニケーション不全を招いていることが分かっただけでも読む価値のある本だった。

もう一冊、今日読んだ本。

ダン・ガードナー(田淵 健太訳)「リスクにあなたは騙される―「恐怖」を操る論理」、早川書房(2009)

リスクマネジメントの本質が何かということを事例を読みながら考えさせられる本。

先月からのインフルエンザ騒動で、日本人はメキシコ、米国より大騒ぎしたと揶揄する識者の意見も相次いだが、その理由がよく分かる。ビジネス書としても秀逸な一冊。

2009年5月31日 (日)

「語り」と「騙り」

4779503477 金井 壽宏、高井 俊次、中西 眞知子、森岡 正芳編著「語りと騙りの間―羅生門的現実と人間のレスポンシビリティー(対応・呼応・責任)  」、ナカニシヤ出版(2009)

お奨め度:★★★1/2

語りの真実や責任について考察した論文集。このテーマで3つのパートに分け、

○語りが生み出す「ともに生きる世界」
・語りと騙りの間を活かす ―セラピーの場で―
・看護師に内在する語りと傾聴の様相
・演劇と語り ―声と身体の共振・共酔の世界―
○語りを可能とする仕掛け 
・リーダー人物の語りとリーダーシップ現象の時空間 ―世代継承的夢の語り―
・叙事詩の語り口 ―日本人が「語る」チンギス・ハーン―
・語りと成熟の仕掛けとしての地域社会 ―中高年におけるコンボイの形成と自己の語りなおし―
○実践のなかの語り
・地域ブランドと「語り」建築の創作における語り
・建築の創作における語り
・言葉のなかの倫理的なまなざし ―組織の語りと不祥事―
・語りと再帰性 ―語りから社会・制度へ 社会・制度から語りへ―

の10本の論文を採録している。

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2009年5月30日 (土)

座右の書 カテゴリー新設のお知らせ

カテゴリーに

 座右の書

 https://mat.lekumo.biz/books/cat5658085/index.html

というカテゴリーを作りました。

僕は、新しい仕事とするときには、仕事が始まる前に、必ず、1~2冊、本を読む習慣があります。その仕事への「視座」を作るためです。

そのために使う本です。

なんてカテゴリーにしようかと思ったのですが、コンサルタントとしては、やはり、これも座右の書だと思い、このカテゴリータイトルにしました。

とりあえず、今まで紹介した本の中から、拾ってあります。今後は、このカテゴリーに入る本ということでも、書籍の紹介をしていきたいと思います。

それから、また、突っ込まれそうなので、先に書いておきますが、このカテゴリーとお奨め度は、直接関係ありません。お奨め度は、あくまでも、いくつかのビジネスマンのモデルを想定し、モデルの視点からつけているものです。

ときどき、出版社や著者の方から評価基準の問い合わせを受けますが、そういうことです。市場価値を評価しているわけではありませんし、自分にとってどのくらい価値があるかということでもありません。

ただし、★3つ未満のものは紹介記事では取り上げていませんので、その点では一定の評価をしています。

目的と目標の違い、分かります?【ほぼ日読書日記 2009年5月29日】

目標達成の方法について書かれた本はたくさんあるが、「目的」を対象にした本はあるようでない。この本は意味がある。願わくば、浜口さんのネームバリューでたくさん、売れてこのような議論が活性化することを願う。

浜口 直太、上野 則男「「目的達成」の教科書」、ゴマブックス(2009)

このテーマでは、少し古い本だが、山崎 康司さんの

山崎 康司「オブジェクティブ&ゴール―行動の思考法・行動の組織術」、講談社(2003)4062117452

がよい。相当しっかりと体系化されているが、難点は抽象的であり、難しいこと。どちらかといえば、コンサルタントなどの専門家を想定して書かれている。

その点で、浜口さんの本は、自己啓発書的な書き方で、一般的なビジネスリーダーを対象にしているように思う。山崎さんがこの本を書いた時代と今では、このような思考法を必要としている人の範囲が変わってきているということだろう。

一言でいえば、戦略思考が普及してきたことだが、誰もがこのような思考を必要とする時代にうまくマッチした、リーダーであれば誰が読んでも分かる本。

重要なテーマなので、早いうちに紹介したい。

2009年5月29日 (金)

合理的な問題解決アプローチ

4478750068 佐藤 允一 「新版 図解・問題解決入門―問題の見つけ方と手の打ち方、新版版」、ダイヤモンド社(2003)

お奨め度:★★★★★+α

問題解決本のバイブル。

問題解決は戦略と並ぶビジネスの両輪である。

その問題解決の分野で、1987年に出版され、ずっと定番本の位置を守ってきている。さすがにこの数年、問題解決本の出版が相次ぎ、売れ行きは落ちているようだが、未だにこの本を超えるレベルの問題解決本には出会わない。多くの本は、この本の一部を切り出して易しくしたり、独自の視点を付け加えたようになっている。その意味で、この本はまさに、日本の問題解決のバイブルだといっても過言でないだろう。

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1人も1億人も同じ【ほぼ日読書日記 2009年5月28日】

マツダヒロミさんの新刊。

マツダ ミヒロ「やめる力」、中経出版(2009)

いろんな意味でうまい作り方の本。表紙になにげに、老眼には見えないような字で「Quit to Begin」と書かれている。この

 やめる力 → はじめる力

というフレームがすばらしい。変わるってことだが、変わるっていうよりはるかにインパクトがある。戦略実行や組織でも使えそうなフレームワーク。このフレームを使って勧めていることに関してはコメントしない。個人の信条の問題。

もう一冊読んだのは、日テレのプロデューサーの書かれた仕事術本。

福士 睦「1億人を動かす技術」、ダイヤモンド社(2009)

この本は超・お奨め。

著者は「世界一受けたい授業」の企画者。コミュニケーションの方法と、発想の方法を書いている。もちろん、原体験はテレビの番組づくりなのだが、テレビっていうのは、普段みているからか納得感がある。

紹介記事を書くので、そこで詳しく書くが、たとえば、ひな壇で隣に誰を座らせるかという話はチーム編成に大変参考になる。良くも悪くも、テレビには人間が凝縮されているということを痛感しました。はい。

この本は、この前読んだ、清水先生の「経営の神は細部に宿る」のヒューマンスキル版だな。

「影響力の法則」を実践する

4419053003 アラン・コーエン、デビッド・ブラッドフォード(高嶋 薫、高嶋 成豪訳)「続・影響力の法則―ステークホルダーを動かす戦術」、税務経理協会(2009)

お奨め度:★★★★★

2007年に同じ訳者で翻訳出版された「影響力の法則」は、原書「Influnence without Autohrity」の1章~9章を訳したもの。残りの10章~17章を翻訳したのが本書と訳者の前書きに書いてあるのだが、なぜか本書は7章構成。まあ、細かいことは気にしないということで。

また、本書には訳者による影響力の法則ミニセッション的なページが冒頭にもうけられているので、一同、前書を読まなくても読めるようになっている。

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2009年5月28日 (木)

Are you hungry?【ほぼ日読書日記 2009年5月27日】

今日は予定行動。昼間、某社のコンサル。夕方、終わったら、とりあえず、汐留に戻り、リブロ汐留店で購入。ホテルで5時間かけて、読みました。満足。心地よい疲れ。

村上春樹「1Q84」、新潮社(2009)

ビジネス書ではないので、中身は紹介しない。

というのはウソ。この本は著者の「予断を持たずに読んでほしい」という意向があるだとかで、アマゾンにも一切の記述がない。これはこれで目立つが、、、僕も何も触れないことにした。

アマゾンでこの本に書評がつくかどうか、興味津々。村上春樹ファンはつけないだろうな、、、

ビジネス書から外れたついでに、昨日、今岡純代さんが亡くなった。大学の頃から、中島梓さん、栗本薫さんともにファンだったのでとても残念。まだ、若いのに。冥福をお祈りします。

「1Q84」は、アマゾンで予約が2万冊以上あるとかいう話を誰かに聞いた。

最近、アマゾンでハングリーマーケットを作るような販促をしている出版社が多い。アマゾンがすべて実売であることを考えるとこの戦略はエクセレントな戦略だといえる。

ビジネス書では、大前研一氏、神田 昌典さん、金井壽宏先生、問題解決の授業の渡辺健介さんといったところが目立っていた。村上春樹氏とは桁が、ひょっとすると2桁違うんだろうけど。

大前 研一「大前の頭脳」、日経BP社(2009/6/25)
神田 昌典「全脳思考」、ダイヤモンド社(2009/6/12)
金井 壽宏「危機の時代の「やる気」学」、ソフトバンククリエイティブ (2009/5/29)

以上は当然ながら未読。金井先生の本はともかく、上の2冊のようなタイトルの本が出てきたというのは、ついに、自己啓発書ブームも終焉だな。

渡辺さんの本は、もう出版されているので、読んだ後で感想を書く。

勝間和代さんの訳本でハングリーマーケティングらしきことを仕掛けた出版社があったのは笑ってしまった。これはデザートマーケティングだな(笑)

渡辺健介さんの本は、問題解決の授業に予告を入れて、増刷をかけるというあまり見かけないことをやっていた。奥付のあとにほかの本の宣伝を入れている本屋は多いが、帯というのは意外といいかも。Aさんの本の帯に○間本の予告入れるって究極のクロスセリングかも(笑)。

2009年5月27日 (水)

あいまいはよくないのか【ほぼ日読書日記 2009年5月26日】

先週の土曜日から、事務所の引っ越しなどでばたばたしていて本を読む気にならない。そんな中で、ぺらぺらとめっくった新書に思わぬ、当たり。

この1年くらい、印象に残っている本はほとんど新書だ。各出版社はこぞって新書に参入するが、実際に、優秀な編集者の多くを新書に投入しているんじゃないかと思うくらい。

さて、今日の当たり本。

呉 善花「日本の曖昧力」、PHP研究所(2009)

あいまいであることは、悪いことなのだろうか?この問題を考えさせられる。

日立系の会社の社長を務められたあとで、プロジェクトマネジメントに関するいろいろな経験や知見を本や講演で披露されている名内泰藏さんという方がいらっしゃる。名内さんの論点は曖昧性とどうつきあうかというもの。本もおもしろいし、講演も一度聴く機会があったが、たいへん、おもしろかった。

名内 泰蔵「曖昧性とのたたかい―体験的プロジェクトマネジメント論」、翔泳社(2005)

ただ、多少の違和感が残った。この本を読んでいて、その違和感が何かわかったような気がした。

あいまいという言葉は、少なくともビジネスワードでネガティブになっているが、韓国出身の比較文化学者である呉 善花さんは、これがこれからの世界の求めるものになるだろうと指摘している。調和がとれた人間関係とか、環境への順応性ということが求められるからだという。

ビジネスでも本当に成果を求めるのであれば、曖昧性を排除することはすべきではない。たとえば、分担の曖昧性。勤勉な国民性を持つ日本では、分担の曖昧性はプラスであった。本当の意味で成果にコミットするからだ。

では、もの作りにおいては曖昧性は悪か?たしかに、仕様が曖昧なままではモノやシステムは作れない。

だからそれを悪いモノだと前提にして考えるのがよいかというとそうとは言い切れない。そんなことすら感じさせる本。

2009年5月22日 (金)

マネジャー育成現場のエスノグラフィー【ほぼ日読書日記 2009年5月22日】

おもしろかったので、新幹線の2時間で一挙に読んだ。

どちらかと言えばMBAに批判的な本であろうが、本質的に批判だとは思わない。どちらかというとなかなかよくできた「エスノグラフィー」である。ここから見える未来もある。

それをわざわざ、最終章のタイトルをサブタイトルに引っ張り出し、MBAの批判論者を監訳者に仕立て、こういうテーストの本に仕立てるところに、世間さまを感じる。

フィリップ・デルヴス・ブロートン(岩瀬 大輔監訳、吉澤 康子訳)「ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場」、日経BP社(2009)

日本では、MBAの必要性や意味は二元論で語られ勝ちだ。

しかし、本来二元論で語られるものではなく、それは米国でも一緒。これは、たとえば、ミンツバーグ先生の

ヘンリー・ミンツバーグ(池村 千秋)「MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方」、日経BP社(2006)

を読んでもよくわかる。マネジャーを育てるという仕事はそれだけ難しい仕事であり、発展途上であるというのがミンツバーグ先生の主張だが、存在自体を否定しているわけではない。問題点の指摘と、問題解決の提案をしているだけである。

この本のタイトルも、「Managers not MBAs」という原題で、よくこういう恣意的なタイトルをつけるなと感じた記憶がある。同じ編集者か?

世間さまが君臨し、理論か経験か、現場か会議室かといった二元論をしている限り、この国にまともな経営をする企業はでてこないだろうな、、、

まあ、せっかく500ページにもわたる優れたエスノグラフィーであるので、しっかりと読んで、自分の頭でこの問題を考えてみてほしい。受け入れるかどうかは別にして、今、世界を支配している(米国流)戦略経営の本質の勉強にもなる。

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プロジェクトマネジメントの大局観を養う

4883732738 稲垣 哲也、一柳 隆芳「ITプロジェクト実践リカバリーマネジメント」、ソフトリサーチセンター(2009)

お奨め度:★★★★

ITプロジェクトのプロジェクトマネジメントの肝要を、成熟度に合わせたリカバリーという視点から整理した一冊。作りとしては、プロジェクトマネジメントの基本的なことを知っている人が、もう少し、専門的な知識を深めるとともに、自分のプロジェクトマネジメントのやり方を振り返り、考えるためにお奨めしたい。

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日本のカッツェンバック現る【ほぼ日読書日記 2009年5月21日】

こんな本があるとは思わなかった。汐留の芳林堂で偶然見つけたで、読んで見ると、大当たり。宝くじに当たったようなものだ。

吉村啓邦「チームの生成と開発」、北辰堂出版(2009)

まさに、日本のチームマネジメントのバイブルだといってよい。専門書というわけでもないと思うが、最近のビジネス書のような無駄な飾り付けはなく、まさに、ど真ん中の直球。でいて、決して読みにくくない。むしろ、チームマネジメントの本としては読みやすい部類に入ると思う。

必読だ。結構、売れているみたいだし。

実は、芳林堂に言ったのは広告で見つけたこの本を探すため。

中野 民夫、堀 公俊「対話する力―ファシリテーター23の問い」、日本経済新聞出版社(2009)

わくわくで読んだが、期待はずれ。期待せずに読んだら可も不可もなしだと思うが、ファシリテーションをかじったことがあれば、この2人の組み合わせにはいったい何を伝えてくれるのだろうと期待するのは致し方ないところ。

内容より、編集が悪いのではないかと思う。残念ながらコラボレーションになっていない。でも、このタイトルで、この2人なら、売れるんだろうな、、、

2009年5月19日 (火)

プレゼント本を2冊、頂きました【ほぼ日読書日記 2009年5月18日】

この日記では、いわゆる専門書を読んだのは書いていないが、この本はぎりぎりの線か?

稲垣 哲也、 一柳 隆芳「ITプロジェクト実践リカバリーマネジメント」、ソフトリサーチセンター(2009)

著者の稲垣さんはフューチャーアーキテクトという会社に勤務されている方だが、何度かセミナーにきて頂いたり、メルマガに簡単なコメントを書いてもらったことがある。この度、ご自身で書籍を出版されたとのことで、書籍を戴いた。

リカバリーの本は数冊しかないが、今ある本の中ではこの本が一番勉強になるのではないかと思う。構成が体系的であり、よく考えてられている。

何かでお会いしたときに、本書きますって言われていたのがもう2年くらい前かな。お忙しい中で、よく完成されたと感心。

読者プレゼントに戴いているので、数日のうちに紹介記事を書く。

もう一冊。2007年のビジネス書の杜Awardに選んだ「影響力の法則」の続編。訳者の高嶋さんから戴く。発売は5月20日。

アラン・コーエン、デビッド・ブラッドフォード(高嶋 薫、高嶋 成豪訳)「続・影響力の法則―ステークホルダーを動かす戦術」、税務経理協会(2009)

前の本は影響力の法則そのものについて書かれたものだが、この本はその応用方法について書かれた本。こっちの方が圧倒的に読み応えがある。訳者によって、影響力の法則そのものについて簡単な解説があるので、とりあえず、この本1冊読めば完結する。

こちらの本もプレゼントに戴いているので、近いうちに紹介記事を書く。

もう一冊読んだ。

ジェフ・ジャービス(早野 依子訳)「グーグル的思考」、PHP研究所(2009)

グーグルのパラダイム(グーグルの法則)を、他の分野で採用すると何が起こるかという一種の思考実験本。もちろん、現実に行われているので思考実験というのは言い過ぎなのだが、 まあ、こじつけ感のあるものも多く、思考実験の域だと思う。

ただ、この本でグーグルの法則として書かれているものを並べてみると、95年くらいから、提唱されているコンセプトの羅列になっている。これらのコンセプトをグーグルが持っているということは、ある意味、グーグルの成功は「必然」ってことか。

グーグル再発見的な本として読むのもいいかもしれない。もちろん、自分のビジネスに「グーグル的」なものを取り入れるにも役立つことはいうまでもない。

2009年5月17日 (日)

トヨタと任天堂、どちらがすごい【ほぼ日読書日記 2009年5月16日】

トヨタウェイ」の著者として有名なジュフリー・ライカーのトヨタ経営大全の第2巻。上下巻2冊併せて1000ページを超える大作だが、昼過ぎから読み出したら、比較的すっと読め、夕食前には読み終えた。

ジュフリー・ライカー、マイケル・ホセウス(稲垣 公夫訳)「トヨタ経営大全 2 企業文化」、日経BP社(2009) 上巻 下巻 

第1巻が出たのは、もう1年半前になるが、第1巻は、結局、完読しなかった。

ジュフリー・ライカー、デイビッド・マイヤー「トヨタ経営大全 1 人材開発」、日経BP社(2007)
上巻 下巻 

1巻に比べると2巻は、文化や組織、人、プロセスというトヨタの基盤について述べた本で、共著者もトヨタに勤務していた人で、内容的におもしろい。

企業文化に関する本は、たくさん読んでいるが、この本、秀逸の出来。どんな本よりも、勉強になった。トヨタの組織はもちろんだが、組織文化とは何か、どのように構築されるかも、トヨタというベストプラクティスを通じて勉強することができた。

これは、トヨタが云々という話ではないな。ジュフリー・ライカーの力だろう。ジュフリー・ライカーは、トヨタの神話を作った人であり、大野耐一が作ったトヨタのイメージを体系的に変えた研究者でもある。

ということで夕食のあとで、もう一冊。トヨタが失速する中で、思いっきり元気なのが、任天堂。DSの最速1億台、Wiiの最速5千万台などの記録も作る一方で、史上最高の収益を上げている。

井上 理「任天堂 “驚き”を生む方程式」、日本経済新聞出版社(2009)

任天堂という会社は取材を一切、断っているらしい。僕の行った神戸大学のMBAコースには結構任天堂の人がたくさんきている。やっぱり興味深い企業なので、研究対象として必ず名前が挙がるのだが、取材を申し込んでも受けてもらえないらしい。学術研究でもそうなので、マスコミの取材は厳しいことが容易に想像できる。

実際に、特にWiiに関しては、ブルーオーシャン戦略の中に記述されているくらい。

そんな制約の中で作られた本にしてはこの本は傑作である。メディア規制が厳しいのが幸いして、取材対象は新鮮みはあるし、ストーリーはおもしろい。プレステ本とはその辺りが違う。

が、ジュフリー・ライカーの本と比べると、ノンフィクションの域の本だと思う。ベストプラクティスだとは言い難い。

ただ、任天堂のような経営をフレームワークで切れるかというとこれまた疑問で、だとすれば、物語として伝えるという方法は確かにある。ただ、そうだとすれば記述不足で、本当に知りたいことが書いていない。残念だ。取材に制限があるのだろうけど。

2009年5月16日 (土)

ルールかモラルか

448006477x 岡本 薫『世間さまが許さない!―「日本的モラリズム」対「自由と民主主義」』、筑摩書房(2009)

お奨め度:★★★★1/2

僕はマネジメントのコンサルタントの仕事をはじめてほぼ15年になる。その前は、5年ほど技術コンサルタントをしていた。この両者の間には歴然とした差があると感じている。

技術コンサルタントとして、たとえば設計方式(ルール)を決めたときにクライアントがそれを無視して設計するという経験はあまりしたことが無かった。逆に、マネジメントのコンサルタントとして何かルールを決めても、それを全員がやるということもあまり経験がない。極論すれば、ルールを決めることではなく、ルールを守らせることの方がコンサルタントとしての価値のある仕事のような気すらしている(儲かるのは、ルールを決める仕事だが、、、)。

このギャップについてそれなりに経験からくるもやもやとした思いがあったが、この本を読んで霧がぱっと晴れた。日本的モラリズムと著者が呼ぶ現象がそれを引き起こしている。平たくいえば、この本のタイトルのとおり、「世間さまが許さない」という話。

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成功は個人の問題ではない?!【ほぼ日読書日記 2009年5月15日】

東京から京都へ戻る新幹線車中。昼間のコンサルの仕事で疲れたあまたで、読んでますます疲れた本。

マルコム・グラッドウェルの「OUTLIERS」の待望の翻訳。

マルコム・グラッドウェル(勝間 和代訳)「天才! 成功する人々の法則」、講談社(2009)

ティッピングポイント」が出版されてもう10年になる。満足。やっぱり、そんなに興味のあるテーマではないが、それでもおもしろい。21世紀は「日本的」なものがグローバルになるのではないかと思うが、この話もやっぱりその気配を感じる内容だ。

今回の本には、翻訳者の勝間和代さんの解説がついている。

このようなスタイルでいつもいいなと思うのは、金井先生の解説だ。著者がその本を書いた背景や背後にある理論、関連理論などを深いレベルで書いてくれている。本の価値をます解説。「サーバントリーダーシップ」の解説などは、それ自体に価値があるようすら思える。

今回の勝間さんの解説はご自分のことを書いている。読み物としてはそれなりにおもしろいが、この解説がこの本の価値を増しているとは思えない。ちょっとがっかり。

こんな解説をするくらいなら、レーヴン漸進的マトリックス検査を使った記述のような原著の不適切さに対するコメントを入れてほしいなあ(早速、アマゾンでは指摘されていた)。

それから、余計なお世話だが、訳本の帯に写真を入れるのも頂けない。まあ、僕は帯は読む前に捨てるので、どうでもいいけど。

2009年5月13日 (水)

トレードオフの本質に迫る【ほぼ日読書日記 2009年5月13日】

今日は、MBAプロジェクトマネジメントのセミナーの後で、アクションラーニングに関する打ち合わせ。そのあと、食事をして本を読み出す。

一冊目は山形ワールド。とりあえず、山形さんの本は読んで見ることにしているが、この本もそんな感じで読む。何よりもタイトルに感動。本当に山形さんは訳本のタイトルをつけるのがうまいよなあ。

ハロルド・ウィンター(山形浩生訳)「人でなしの経済理論-トレードオフの経済学」、バジリコ(2009)

トレードオフの入門書だが、社会問題に応用しているので、金銭換算できない問題でトレードオフを考えるときのヒントがたくさん掲げられてる。マネジャーは読んでみるといいだろう。これは、恐ろしくいい本ではないかと思う。これは、ぜひとも、紹介記事を書きたい。

もう一冊。読んだとはいえないが、ぺらぺらとみた。

スティーブン・ブランク(渡邊 哲、堤 孝志訳)「アントレプレナーの教科書」、翔泳社(2009)

これもいい本。新規事業開発について、オーソドックスだが、実践的な解説がある。この本の一部について書いた本は結構多いが、意外とこの分野を体系的に書いた本というのは少ない。

まさに、クリエイティビリティ+コンシステンシーの実践的ガイド本。書評を書きたいタイプの本ではないので、たぶん、書かないが、日本の本では類書はないので、新規事業マネジャーや、プロジェクトマネジャーにはぜひ目を通してほしい。

2009年5月12日 (火)

ダメ上司につけるクスリ【ほぼ日読書日記 2009年5月11日】

東京に向かう新幹線。修学旅行の生徒の下車を目撃。シーズンだなあ。

思わず、乗らずに見入ってしまった。1車両が、85名だから、これを停車時間の2分でおろすというのは神だな。

さて、乗ってすぐに「バカ社長論」でファンになった山田咲道さんの新作を読む。

山田 咲道「ダメ上司論」、日本経済新聞出版社(2009)

今度はマネジメント。この人、本当にうまいと思う。相性かもしれないが、刺さる。

シュールな上司論というと、長野慶太さんだと思う。

長野 慶太「部下は育てるな! 取り替えろ! ! Try Not to Develop Your Staff」、光文社(2007)

は共感を覚えたし、最近、焚書シリーズ第3段として出版された

長野慶太「アホな上司はこう追い込め!」  、光文社(2009)

もすばらしい出来だと思う。

長野さんに比べると、山田さんの本の話は論理的なのだが、じわっと刺さる感じ。たとえば、上司の不作為の罪など、愚痴→撃破って感じではなく、なるほどと思わせる論点だ。

2009年5月11日 (月)

オペレーショナルエクセレンスは時代遅れなのか【ほぼ日読書日記 2009年5月10日】

知人にもらったので、とりあえず、読んだが、予想外におもしろかった。

岩淵明男「躍進 日本オラクル 全社最適化戦略」、出版文化社(2009)

たまたま、昨日にローランド・ベルガー会長の遠藤功さんのセミナーをやり、オペレーショナルエクセレンスが重要だって話をしてもらったが、もう、マネジメントエクセレンスの時代らしい。

ただ、トヨタとかみていると、マネジメントエクセレンスを追いかけるあまりに、オペレーショナルエクセレンスを忘れてしまって、ひっくり返った感が強い。

井上 久男、伊藤 博敏「トヨタ・ショック」、講談社(2009)

数ヶ月前にこの本を読んだときに、何が一番トヨタショックだったかというと、山のような在庫を作ったという話。会社なのでいいときも悪いときもあるし、自動車のような耐久財は景気の影響を受けやすいのもわかる。

ただ、1兆の利益想定が赤字になるというのは尋常ではないので、何が起こっているか気になっていたが、なんと、在庫があるのだとか。トヨタって、ジャストインタイムが売りの会社じゃなかったのか、、、オーマーゴッ。

両立は難しいんだろうなあ。とりあえず、遠藤さんのいうように日本はオペレーショナルエクセレンスを追いかけるべきなのかもしれないなあ。

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