ブルーオーシャンの手本とされる経営の本質
井上 理「任天堂 “驚き”を生む方程式」、日本経済新聞出版社(2009)
お奨め度:★★★★1/2
今や、日本企業の中ではトヨタやソニーと並んで関心を持たれているにもかかわらず、そのマネジメントが秘密に包まれている任天堂を、取材とデータ、洞察から描いた力作ノンフィクション。
井上 理「任天堂 “驚き”を生む方程式」、日本経済新聞出版社(2009)
お奨め度:★★★★1/2
今や、日本企業の中ではトヨタやソニーと並んで関心を持たれているにもかかわらず、そのマネジメントが秘密に包まれている任天堂を、取材とデータ、洞察から描いた力作ノンフィクション。
今日は1日セミナーの講師。終わった後で本屋に行き、10冊くらい本を買ってきた中から、仕事術系の本を3冊ほど、読んだ。
一冊目。古田マリさんの新刊。
古田 マリ「絶対「間に合う」仕事術―突発事態も切り抜ける4つのツール」、東洋経済新報社(2009)
ガントチャート、クリティカルパスに加えて、オリジナルのツール、「敷地図」、「目標管理透視図」を組み合わせて、デッドラインを死守する仕事の方法を解説している。
この前の空間思考の本
古田 マリ「仕事の設計図を描く―「空間」思考でできる人になる」、成美堂出版(2007)
が結構、インパクトあったのに、新刊は普通。次作に期待。
二冊目。高橋浩一さんという方の「人を巻き込む仕事のやり方」。
高橋 浩一「人を巻き込む仕事のやり方」、ファーストプレス(2009)
まず、目立ったのが帯。金井先生の推薦だが、著者より遙かに大きなフォントで名前が出ている。少なくとも僕はこの帯で、また、金井先生の新刊かと思って手にとったのだから、出版社の作戦大成功。
内容はよかった。っていうか、金井先生の品質保証なので当たり前か。
三冊目。
小山 登美夫「小山登美夫の何もしないプロデュース術」、東洋経済新報社(2009)
この本が3冊の中では最もおもしろかった。
著者の小山 登美夫さんはギャラリスト。キャリーという仕事そのものも興味深いし、その中で、非常に人間観察眼に優れた著者の見識は読むに値する。人をプロデュースするというのはどういうことかを考えるに当たって非常に参考になった。
アーティストというのがどのくらいの割引要素になるか、よくわからないが、結構、ビジネスプロデュースにも通用しそうだ。
今日は久しぶりのナイトセミナー。「プロジェクトマネジャーの秘密」というシリーズセミナーの第1回で、多少、ぎこちない感じもあったが、なかなか、楽しかった。
終わったあと、さすがに本を読む気にならなかったが、寝る前に1冊。
中尾 政之「創造はシステムである 「失敗学」から「創造学」へ」、角川グループパブリッシング(2009)
僕が大学院を出て入ったのは、三菱重工長崎研究所の制御研究室というところだったのだが、こういうことをよく言われていたなと懐かしかった。失敗を恐れるな、小さな創造を積み重ねよ。この考えは当時の研究開発マネジメントの基本だったような気がする。
日本の企業ってこれで結構イノベーションを起こしてきたんだよなあ。千三つを嫌う文化である組織が多いのは間違いない。ただ、それが、失敗しないようにするというのとはちょっと違う。失敗をマネジメントできるというのは、結局のところ、創造しているってことなんだと思う。失敗をマネジメントするシステムは、創造をするシステムでもある。
TRIZがまさにそうであるように、「創造はシステムである」という考え方は世界的なのではなだろうか。
22時過ぎまで、プロジェティスタ研究会。その後、メンバーの一人と夕食。ホテルに戻り、風呂に入って本を読み始めた。
渡邉 美樹「 「戦う組織」の作り方」、PHP研究所(2009)
昨年のリーマンショック以来、ビジネスの世界の価値観が情と理の間でゆらいでいるように思う。渡邉 美樹さんの価値観は成功者であることを除いても、いい感じのバランスの方(ってテレビで見て感じているだけだが)。サーバントリーダーシップの実践者である。そんなことを感じさせる本。
草食系がいわれる今、「戦う」というのはもう一度、思い出す必要があるキーワードだ。この本で渡邉さんが戦うといっているのは、「自分」と戦うという意味だろう。ビジネスにおいて戦わないというのは一つの価値観であると思う。ただ、それが自分と戦わないというところに結びついていくような風潮はいただけない。
SMAPの草彅クンは草食系かもしれないが、戦っている。
もう一冊。2~3ヶ月前にさっと読んでもう一度、読み直したいと思っていた本をやっと読む。
別所哲也「夢をカタチにする仕事力~映画祭で学んだプロジェクトマネジメント」、光文社(2009)
プロジェティスタ研究会で、ビジョンは一人歩きして、初めてビジョンという議論をしていたので、もう一度読んでみようと思って引っ張り出したのだが、やっぱり、この感覚なのだろう。プロジェクトにもシンクロニシティというキーワードが重要だなと再認識。
こういう形のマネジメントをしてみたいものだ。
いろいろとあって、次の読者プレゼントに予定している書籍「チームの生成と開発」の吉村さんのセミナーに参加。インパクトのセミナーなので、ちょっとわくわくしながら参加したが、さすがって感じでした、はい。アクティビティ(プロジェクト)は楽しめた。
それにしても、6割くらいは女性で、研修担当。チームマネジメントってそういうテーマであることを実感。
夜、ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」の続編をやっと読んだ。
N.J.ゴールドスタイン、S.J.マーティン、R.B.チャルディーニ(安藤 清志監訳、高橋 紹子訳)「影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣」、誠信書房(2009)
名著「影響力の武器」もこうなってしまうと、ハウツーものになるが、読んでいて気持ちいいのは、「仮説」として扱っていること。
日本の出版物のように、著者が言いたい放題という感じの書き方ではない。仮説の根拠も説明されているし、かりに、これがロバート・チャルディーニの著作ではなくても、十分に読む価値はあると思える。
内容そのものよりも、思考プロセスの方が楽しめるかもしれない。
ついでに、日記を書けなかったので、さかのぼっておく。
6月22日(月曜日)に東京に来る新幹線で読んだ本。
杉野 幹人、内藤 純「コンテキスト思考 論理を超える問題解決の技術」、東洋経済新報社(2009)
非常に参考になった。コンテンツに対して、コンテキストだというのは若干違和感があるが、そんなことはどうでもよく、思考法としておもしろい。ロジックを超えるということで、いろいろな思考法が提案されているが、本命の一つではないかと思う。3Sというフレームも使えそうな気がする。
それから、もう一冊。鈴木有香さんの「コンフリクトマネジメント」が新装になった。鈴木有香さんはセミナーが抜群によいという話を聞くが、この本はイマイチだったという感想を述べる人が多い。理論とトレーニングが中途半端なのだと思うが、今度の本は、かなり、トレーニングの要素を強化している。その意味でセミナーに近づいたのかもしれない。お奨めです。
鈴木 有香「人と組織を強くする交渉力-コンフリクト・マネジメントの実践トレーニング」、自由国民社(2009)
それから、さらにさかのぼり21日の日曜日。いま、話題にブラックスワンの上下巻を一気に読む。おもしろかった。こういう本がミリオンセラーになるって、どういう国なんだろうと思った。日本でそんなにたくさん売れるような気はしないなあ。
ナシーム・ニコラス・タレブ「ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質」、ダイヤモンド社(2009)
「渋滞学」で有名な西成先生の最近の本を読んだ。
西成 活裕「無駄学」、新潮社(2008)
渋滞学を読んだ時には、よくここまでと思ったが、比べると、ご本人も書かれているように、まだ、未成熟。
ただ、視点はとてもよいと思う。トヨタ方式のように無駄の排除で改善というのは基本的に深掘りしていくアプローチであるが、水平思考的なアプローチで改善するというのは有効なのではないだろうかと思った。
次作に期待。
日記には書かなかったが、新しい学問体系として実に興味深いものに、「希望学」がある。2~3ヶ月前から、東大出版会から、配本のような形で出ている。東京大学社会科学研究所による4年間にわたる全所的プロジェクトの成果の発表だそうで、すでに、3冊出ていて、第4巻も予約できる。
東大社研編著(玄田 有史、宇野 重規編)「希望学1 希望を語る」、東京大学出版会 (2009/4/4) (2009)
4千円もする本なので、あまりお奨めはしないが、なかなか、考えさせられる論文が多い。また、第三巻では、釜石でフィールドリサーチをしている。これも興味深い。
・希望と変革――いま、希望を語るとすれば
・希望研究の系譜――希望はいかに語られてきたか
・アジアの幸福と希望――「国民の幸福」戦略と個人の新たな選択
・データが語る日本の希望――可能性、関係性、物語性←これが特にお奨め
・「希望がない」ということ――戦後日本と「改革」の時代
・労働信仰の魔法とそれを解く法――希望の意義と危険性
・経済学からみた希望学――新たな地平を開くために
・ハンナ・アーレントと「想起」の政治――記憶の中にある希望
・社会科学において希望を語るとは――社会と個人の新たな結節点
時代的にこういうことを考える時代なのだろうなと痛感する。経営学でも希望というのは、取り扱ってもいいテーマだ。ポジティブ心理学にも通じる。
ある本からの抜粋。
目の前の仕事に全力投球し、一生懸命やった結果として、「負荷」という「重り」が「やりがい」という「目標」に変化し、仕事が楽しくなってくるのです。
どうだろうか?なかなか、いいこと言っているなという感じだろうか。では、これはどうだろう?
21世紀型のリーダーの資質とは、「どれだけ多くの人を指導し、大きな組織を束ねたか」ではなく、「どれだけ、たくさんのリーダーを輩出し、育てることができたか」
牽引するリーダーシップから、サーバントリーダーシップという感じだ。では
本来の営業とは、「あなたの想いのエネルギーを、モノやサービス、商品に乗せて、より多くの人に投げかけ、分かち合うこと」に他なりません
はどうだろう?はて?、なんだろう?って感じか。では、
21世紀のメインテーマは「ビジネス」と「スピリチャル」の融合です
と言われるどう感じるだろうか?
実は、これは知る人ぞ知る、経営コンサルタントはづき虹映さんの新しい書籍
はづき 虹映「スピリチュアル・コーチング」、ビジネス社(2009)
殻の抜粋である。買ってきてさっと読んだが、ひょっとしてホンモノかもと思った。
ちなみに、
伊勢白山道「内在神への道」、ナチュラルスピリット(2008)
の著者の伊勢白山道さんのブログ「伊勢ー白山 道」はたいへん有名なブログであるが、結構、ビジネスマンの読者が多いというブログ記事を読んだ記憶がある。
「ビジネス」と「スピリチャル」の融合というテーマに共感している人は少ないないのだろうか?
就寝前にこの本を読んだ。ミシマ社の本というだけの理由なのだが、おもしろかった。
清水 浩「脱「ひとり勝ち」文明論」、ミシマ社(2009)
清水さんのほかの本も読んだことがあるので、僕的には内容はそんなに目新しいって感じではなかったが、本の作りは明るくていい。
環境問題の本っていうのは、書き方や作り方が小難しいものが多くて、市民を巻き込むという肝心の役割にコミットしている本が少ないように思うが、この本は間違いなく、その役割を果たすだろう。
「変われない理由もわかりますし、その事情ももっともですけど、そろそろ、変わった方がいいですよ」
ということだそうだ。
渡辺 英夫、「超感性経営」編集委員会「超感性経営―ソニー伝説のストラテジストが授けるデザインマネジメント・メソッド:25」、ラトルズ(2009)
ソニーファンで、マネジメントに興味のある人には、垂涎の一冊。
ある方から頂戴し、あっという間に読んだ。おもしろい。
プロダクトマネジメントに携わっている人であれば、渡辺英夫氏の名前を知らない人はいないと思うが、昨年、病気で他界された。闘病中、デザインマネジメント論をまとめておきたいという願いをもち、同僚や後輩に託したまま、他界されたそうだ。
渡辺氏の机のなかから、出てきたノートの最初のページに書いてあった「感性経営」という言葉を頼りに同僚や後輩たちは本作りを始めた。
しかし、誰一人として、渡辺氏から「感性経営」とは何かということを聞いた人はおらず、渡辺氏の残した資料や講義録、そして元部下や同僚のインタビューから、感性経営を編集し、できあがったのがこの本。ちなみに、「超」とついたのは、この分野が今後、渡辺氏の思想のさらなる広がりと飛躍を祈ってとのこと。
タメ日記第二弾。
今日は、某社でPMOスタッフの方に、プロジェクトワークアウトセッションの進行指導。自分でファシリテータをやった方がずっと楽。
結構、疲れてかえってきて、癒しの読書。
こういう時代なので、本格的に勉強してみようと思って、ポジティブ心理学の勉強を始めた。とりあえず、今回の東京出張に本棚から引っ張り出してきた本を2冊持参。
1冊目。金井先生のゼミで、課題図書になって感動して何度も読んだ「オプティミストはなぜ成功するか」のマーティン・セリグマン博士の
マーティン・セリグマン(小林 裕子訳)「世界でひとつだけの幸せ―ポジティブ心理学が教えてくれる満ち足りた人生」、アスペクト(2004)
を手始めに読む。イマイチ。
で、もう一冊。
ドナルド・クリフトン、トム・ラス「心のなかの幸福のバケツ」、日本経済新聞社(2005)
こっちは良かった。先日、どこかの本屋で勝間さんの推薦帯がついたものをみかけたが、古い本でも勝間さんの推薦で売れるというのはすごいなあ。
昨日読んだ太田先生の本と、通じているところもある。ネガティブ1回でポジティブ13回以上は生産性が落ちるというデータもあった。バケツというのはなかなか、おもしろいメタファだ。
ポジティブなら寿命が10年延びるそうだ。
午前中、大阪で打ち合わせ。昼食を取って、東京に。
東京に着くなり、丸の内で1件クライアントとの打ち合わせを済ませて、夕方から「質問会議」の清宮さんにお会いする。プロジェクトマネジメント系の人が、「質問会議」にシンパシーを感じているという話をされていた。昨年、12月にイベント、やった甲斐があったというものです。
新大阪駅で2冊購入。東京へ来る新幹線で読む。
岩田 徹、内山 英俊「スッキリと「考える」技術」、ファーストプレス(2009)
いいな、この本。波長がばっちりあった。
フレームワークで思考停止するな、自分で考えたことはすべて正しい! すばらしい!
副題もいいぞ!
考えて、考えて、考え抜いた答えは、周囲を巻き込んで解決に導いてくれる
考えるというのと、考え抜くというのは違うと我々も常々言っている。我々の答えはこちら。
時間があったので、もう一冊。
太田 肇「認め上手 人を動かす53の知恵」、東洋経済新報社(2009)
若干、飽きてきた感じもしたが、褒めることと、認めることの違いをこれだけ明確に書いた本は初めてだと思うので、その点はよかったかな。もちろん、太田流全開で、読み応えもあった。
で、、、清宮さんとの打ち合わせの後に読んだ本。
久野康成、井上ゆかり「母性の経営」、出版文化社(2009)
なんとなく、空気がこんな経営を求めるようになってきているなあと感じる。プロジェクトにも母性型リーダーがいた方がよいと思う今日この頃でした。この本、究極のコンサルティングファームの宣伝本なのだが、鼻につかないで読めた。これも母性のおかげか?!
吉村 啓邦「チームの生成と開発」、北辰堂出版(2009)
お奨め度:★★★★★
チームマネジメントのバイブルといわれる
ジョン・カッツェンバック、ダグラス・スミス(吉良 直人、横山 禎徳訳)「「高業績チーム」の知恵―企業を革新する自己実現型組織」、ダイヤモンド社(1994)
という本がある。この本は300ページ以上ある本だ。ジョン・カッツェンバックなどによって確立されているチームマネジメント論をベースに、自らの新しい知見と実践論を交え、発展させ、200ページ強の本にまとめた密度の濃いチームマネジメント論。
書くのが遅くなってしまったが、土曜日に読んだ本。まず、これ。
久米 信行「がんばっているのに報われない人のための 「認められる!」技術」、日本実業出版社(2009)
恋愛コミュニケーション術の本だな、これは。
内容はかなり、高度だし、うまく体系化されているように思う。ベストセラーになったらしい前書「考えすぎて動けない人のための 「すぐやる!」技術」より、こちらの本の方がおもしろかったし、本としてもできがよいのではないか。
最初、太田先生の「承認欲求」の逆張り本かと思って読み始めたが、そうでもない。自己啓発書の中では、これまであまり無かったカテゴリーで、よい切り口の本だと思う。
このブログの開始以来、3番目に売れている本、アラン・コーエン博士と、デビッド・ブラッドフォード博士の書いた「影響力の法則」という本があるが、これをハウツーっぽく作るとこんな感じになるのではないだろうか。
ただ、この久米信行さんは、ハウツーでビジョンを書く術を持っていらっしゃる方で、この本も単なるハウツー本ということではない。
この先に何があるか楽しみだ。
もう一冊。
藤屋 伸二「図解で学ぶ ドラッカー入門」、日本能率協会マネジメントセンター(2009)
上田先生の「ドラッカー入門」書籍があるが、趣が違う。上田先生の本はドラッカーの思想を「伝える」ことに焦点が置かれているが、この本は「活用」に焦点が当てられているように思う。そのような視点からドラッカー思想の編集がされている。
ある意味で、実用書に仕立てられている。ドラッカーというと、洞察することに読む価値があるという人が多いが、こういう本があっても良いと思う。
それにつけても、ドラッカーは思想家なのだなあとつくづく思う。
この1年くらいでも、日本実業出版から思考法の出版が目につく。ビジネス書の杜でも、
山下 貴史「3分でわかるラテラル・シンキングの基本」、日本実業出版社(2008)
高橋 浩一「レバレッジ・ポイントを見つけ出せ! 問題発見力養成講座 “木を見て森も見る”システム・シンキング」、日本実業出版社(2009)
の2冊はプレゼントしてもらった。このほかにも、「3分でわかる」には、
大石 哲之「3分でわかる ロジカル・シンキングの基本」、日本実業出版社(2008)
があるし、「3分でわかる」シリーズの集大成のような本、
小川 進、平井 孝志「3分でわかる クリティカル・シンキングの基本」、日本実業出版社(2009)
もある。クリティカルシンキングはプレゼントにして戴く予定になっている。
また、堀内さんの
堀内 浩二「必ず最善の答えが見つかるクリエイティブ・チョイス」、日本実業出版社(2009)
もあるし、
極めつけは、思考フレームワークの使い方に言及した、手塚さんの
手塚 貞治「戦略フレームワークの思考法」、日本実業出版社(2008)
といった本まである。これ、すべて1年以内。
出版社の場合には、「製品開発力」とは言わないのだろうが、まあ、すごい出版力だ。ラインナップの作り方は、なんだか、日経BPの雑誌群を連想させる。少しずつテーマをドリフトして、網を張っていくような感じ。雑誌と違って身内で作っているわけではないので、これを外部の著者を使ってやるというのは、大したものだなあ。
その日本実業出版から、全体の集大成と思えるような本がでた。定性分析の本。
中村 力「ビジネスで使いこなす〈入門〉定性分析」、日本実業出版社(2009)
個人的な感想は別にして、人には勧めやすい、よく作り込まれた本。おまけに、この本を読んでいると、たぶん、上に並べた本のうちの何冊かは読みたくなると思う。当然、競合の本はあるが、この作りで、これだけのラインナップを持っているところはないので、当然、日実にいくだろう。
集中といい、クロスセリングといい、エクセレントな戦略だ。
清水 勝彦「経営の神は細部に宿る」、PHP研究所(2009)
お奨め度:★★★★1/2
ユニークなマネジメント論を展開するテキサス大学の清水 勝彦先生の極めつけの経営論。
建築の分野での言葉で、「神は細部に宿る」というのは、誰が言ったか、そしてどんな意味で言ったかについては、いくつかの説のある言葉。設計の本質は細かなところにあるとも言われるし、画竜点睛のような意味だという人もいる。
どっちでもいいが、これを文字って、「経営の神は細部に宿る」とはよく言ったもの。清水先生の本らしく、これをコンセプトに、「戦略に関わること」、「人に関わること」、「考え方に関わること」と3つのカテゴリーに分けて、事例を取り上げている。
このところ、移動中にしか本を読んでいない気がする。
東京から京都まで新幹線で2時間20分。
東京駅で席に座ったらすぐに読み始めて、読み終わったのが東山のトンネル。途中で何度かやめようかと思いつつ、最後まで読んだ。
M.S.クリシュナン、C.K.プラハラード(有賀 裕子訳)「イノベーションの新時代」、日本経済新聞出版社(2009)
「コア・コンピタンス経営」を読んだときには、「おお~」と思ったが、今、読んでみると当たり前のことになっている。「ネクスト・マーケット」も当たり前とまでは言わないが、ぼんやりとしていたものがクリアになってきている。
けなしているわけではない。だから、「世界でもっとも影響力のあるビジネス思想家」第1位の座にあるのだと思う。
が、この本は微妙。フレームワークに新鮮さはあるが、紹介されている事例はもう一つ落ちなかった。なぜか、よく分からない。たぶん、読み込みが足らないのだと思うので、改めて読んで紹介記事を書くことになるのだろう。
夜の新幹線で東京に。車中、2冊。
一冊目は、ちょっとずつ読んでいた本。
ウィリアム・ホルスタイン(グリーン裕美訳)「GMの言い分」、PHP研究所(2009)
GMという会社の名前や、T型フォードは知っていても、会社の実態は意外と知らないものだなと思った。1927年にGMがT型フォードというドミナントモデルで創った「車」というパラダイムが終わったことがよく分かる。
日本のマスコミでは、「あぐらをかいていた」的な傲慢さを指摘する報道が多かったような印象を持っているが、けっしてそうではない。パラダイムの変化に気がつかなかっただけだというのが、この本を読めばよく分かる。
経営は難しいよなあ。
もう一冊。
森谷 正規「戦略の失敗学―経営判断に潜む「落とし穴」をどう避けるか」、東洋経済新報社(2009)
著者の森谷正規先生は、尊敬する技術マネジメントの研究者。だいたい、書籍は読んでいるが、この本も現場と経営のバランスの問題を指摘している。経営が現場の足を引っ張るというのはそんなに珍しくないが、日本の現場が強いのは、それでも何とかするという印象を持っていた。つまり、現場のやってきたことを台無しにするというのはそんなにないと思っていたが、この本で認識が変わった。経営より、現場の人に読んでほしい本。
某社でのワークアウトセッションを終えて、新幹線で京都に戻る。この2~3週間、金曜日でも空席が目立っていたが、今日は、かなり、混んでいた。新型インフルエンザ騒動も一段楽といったところか。
このくらいの方が本を読むには集中してよい。そのせいかどうかは分からないが、3冊ほど、読破。
一冊目の本。なんと、小川先生とコンサルタントの方の共著の「ビジネス書」。
小川 進、平井 孝志「3分でわかる クリティカル・シンキングの基本」、日本実業出版社(2009)
学者と実務家が本を一緒に書いた例は少なくないが、難しいなあと思う。だいたい、理論とプラクティスを集めたムックのように印象の本が多い。最近だと、プロジェクトマネジメントの分野で金井先生と岸良さんが「過剰管理の処方箋」という本を書かれたのが記憶に新しいが、やっぱり、油と水的な雰囲気の仕上りになっている。まあ、この本の場合には、著者がお二人ともキャラ立ちしているので、それが味になっているとは思うが、、、
その点、この小川先生と平井氏の本は、どんな分野でもインフラになる思考術というテーマ性はあるにせよ、よくまとまっていると思う。MIT時代に家族ぐるみのつきあいをされていたということ、平井氏は存知あげないが、小川先生の頭の柔らかさもあるのだろう。
ちょっといい感じ。紹介記事、書きたい。
これで勢いづいて2冊目。
ダン・ローム(小川 敏子訳)「描いて売り込め! 超ビジュアルシンキング」、講談社(2009)
新幹線で読むにはちょっともったいなかった本。パワーポイントが気にいらないのは、本質がわからなく成るから。といっても、それで商売をしているので、あまり大きな声ではいえないが、、、
この本で推奨されている方法には全面的に共感。PMstyleで「ファシリテーショングラフィック」というセミナーをやっている。こちらはファシリテーションなので、あくまでも構造化にポイントがあるのだが、演習をみていると、ビジュアルに表現するところで苦労している人が多い。
イラストの拙攻は埋まらないかもしれないが、思考を図示するというのは後天的な能力だと思うので、この本を読めばかなり、改善するのではないかと思う。
この本も紹介したい。このカテゴリーの本で、加藤昌治さんの書かれた「考具」がいいと思うが、ダン・ロームの本も負けずに良い本。ビジュアルシンキングだけでいえば、こちらの方がよいのではないかと思う。
最後、
チャールズ・クーンラット、リー・ネル(東本 貢司訳)「仕事はゲームだ」、PHP研究所(2009)
こういう本が日本でどのように受け入れられるかは興味津々。ゴールをストレッチして、楽しむためのマネジメントを、かなり技巧的に書かれている。この本も、しばらく様子を見て、紹介したい。
ということで、3冊とも、結構、よい本でした。
新幹線の中で、何冊か、本に目を通す。まずはこれ。
ルース・ワーグマン、ジェイムズ・バラス、リチャード・ハックマン、デボラ・ニューンズ(ヘイグループ訳)「成功する経営リーダーチーム6つの条件」、生産性出版(2009)
これは、まさにパラダイムシフト。マネジメントチームという概念はそんなに目新しいものではないと思うが、実際にはチームではなく、一人のマネジャーに対して、補佐をするような形で形成されるワーキンググループであることが多い。
経営意志決定の質を高めるためには、こういう考え方が必要だ。どれだけ現実的かはともかく、非常に示唆にとんだ本。
つぎ、話のネタにと思い読んだが、思考実験としては結構おもしろいと思った。
渋谷 往男「戦略的農業経営―衰退脱却へのビジネスモデル改革」、日本経済新聞出版社(2009)
マネジメントの手法を適用してみるというのは一つのアイディアであるが、リードタイムの議論と価格のダイナミックスの議論が抜けているのではないかと思った。いずれも、時間軸絡みの話だが、実は、ビジネスと農業の最大の違いは時間軸ではないだろうか?
ジョエル・バーカー(仁平 和夫訳)「パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法」、日経BP出版センター(1995)
お奨め度:★★★★★
トーマス・クーンの提唱したパラダイムをビジネスに定着させたきっかけになった書籍。パラダイムが如何に重要かを多くのパラダイムシフトの例を上げて説明し、リーダーはパラダイムに如何に対応すべきかを述べている。
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