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2009年6月11日 (木)

経営の神は細部に宿る

4569709303 清水 勝彦「経営の神は細部に宿る」、PHP研究所(2009)

お奨め度:★★★★1/2

ユニークなマネジメント論を展開するテキサス大学の清水 勝彦先生の極めつけの経営論。

建築の分野での言葉で、「神は細部に宿る」というのは、誰が言ったか、そしてどんな意味で言ったかについては、いくつかの説のある言葉。設計の本質は細かなところにあるとも言われるし、画竜点睛のような意味だという人もいる。

どっちでもいいが、これを文字って、「経営の神は細部に宿る」とはよく言ったもの。清水先生の本らしく、これをコンセプトに、「戦略に関わること」、「人に関わること」、「考え方に関わること」と3つのカテゴリーに分けて、事例を取り上げている。

清水先生は、小さなことが重要な理由は大きくは2つあるとしている。

一つは「時間軸からみた大切さ」だ。これは、小さなことが変化の予兆担っているケース。畑村先生の「失敗学」の中で出てくる「ハインリッヒの法則」がこの代表。この法則は1件の重大事故が起こるまでに、29件のかすり傷程度の事故があり、さらに300件のヒヤリハットがあるというもの。

もうひとつは、それが氷山の一角であるケース。こちらは、昔からよく言われるトイレのきれいな工場は品質がよいといった話。オフィスワークでいえば、挨拶がよいオフィスのサービスは信用できるといったところだろうか。

にも関わらず、なぜ、小さなことが見逃されるのか?まず、最初のケースだが、予兆を小さなこととして片付けていることに問題があるという。パラダイムシフトや破壊的イノベーションの話とも関連してくる。たとえば、マイクロソフトはインターネットを小さなこととして失敗し、ITのリーディングカンパニーの地位をGoogleに譲った。、キリンビールはスーパードライのクリアな味を際物だとして長年のトップシェアを譲った。このように時間の流れの中で、最初は小さな動きだったものが、大きなうねりになることを予見できないで失敗していくケースがある。

この問題を語るときに重要なことは、大きい、小さいというのが、あくまでも既得権を持っている企業の価値観になっていることである。次の世代の価値観でみればとんでもなく大きなことだというのは、特にマイクロソフトのケースなどでははっきりしてとれる。

もう一つのケースは小さなことを小さなこととして片付けていることに問題があるという。この典型的なケースは「忙しい」という問題に見られる。忙しいと言っている人は、次から次に新たな問題が発生し、悩まされているケースが多い。これは小さい問題の背後に大きな問題(本質的な問題)があり、本質的な問題を片付けないので、その問題が生み出した一つの小さな問題を片付けたら、次の問題が出てくるというモグラ叩きをやっているような状態である。

では、これらの問題を解決するにはどうすればよいか。予兆の問題は問題意識を高めることが必要だ。炭坑にカナリアをつるしておくと、二酸化炭素が充満してくると、カナリアが死んで鳴かなくなり、それに気づいて作業員は中毒になる前に逃げることができるという話がある。同じカナリアが死んでいても、通勤途中で道ばたで死んでいるのを見つけたのであれば何もアクションは起こさない。

つまり、小さなことを見るときには、炭坑のカナリアの死を見るように問題意識が必要である。問題意識があれば、それを問題の予兆として捕らえ、アクションに結びつけていくことが可能になる。

また、後者に対しては、小さなことをサインとしてみて、そのサインを通じて方向性を探り、取り組むべき重要な問題を見つけていくことが必要である。コヴィーの7つの習慣の中に、プライオリティの決定の話がある。仕事を緊急度と重要度を軸に整理したときに、緊急かつ重要な仕事の次に、重要で緊急性は高くない仕事をするのがよいとするプライオリティマネジメントの考え方だ。それによって、緊急度の高い仕事は少なくなり、やがて、重要性の高い仕事からやっていくことが容易にできるようになる。

たとえば、こういう問題をよく目撃する。小人数で商品を開発している。その途中で過去に提供した商品のトラブルがある。人がいないので、開発に従事している人が緊急避難的に対応する。すると、今度は開発中の商品の細部にまで手が回らなくなり、その商品を出したのちにトラブルになり、また、同じような対応を繰り返していく。顧客の反応はだんだん厳しくなり、商品開発の際の検査要求が増え、開発の工程がかさんでいて、ますます、厳しい状況になる。

この問題は表面的には人がいない。それもがんばればなんとかなると思う程度の人手不足だ。小さな問題である。しかし、そこには上のような悪循環という大きな問題の一部に過ぎない。

こういう問題をなくしていくためには、小さなことをきちんとすることが必要である。この考え方はレバレッジの考え方であり、この本で清水先生が言われていることを一言でいえば、レバレッジをうまく見つけて、戦略を作ったり、問題解決をしなさいということにつきる。

加えていえば、小さいことをきちんとやるというのは、現代のような不確実性の高い経営環境の中で欠かすことができないことである。小さな仮説を作り、もっとよい仮説を作っていくことこそ、レバレッジを見つける最善の方法である。

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