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2009年5月16日 (土)

ルールかモラルか

448006477x 岡本 薫『世間さまが許さない!―「日本的モラリズム」対「自由と民主主義」』、筑摩書房(2009)

お奨め度:★★★★1/2

僕はマネジメントのコンサルタントの仕事をはじめてほぼ15年になる。その前は、5年ほど技術コンサルタントをしていた。この両者の間には歴然とした差があると感じている。

技術コンサルタントとして、たとえば設計方式(ルール)を決めたときにクライアントがそれを無視して設計するという経験はあまりしたことが無かった。逆に、マネジメントのコンサルタントとして何かルールを決めても、それを全員がやるということもあまり経験がない。極論すれば、ルールを決めることではなく、ルールを守らせることの方がコンサルタントとしての価値のある仕事のような気すらしている(儲かるのは、ルールを決める仕事だが、、、)。

このギャップについてそれなりに経験からくるもやもやとした思いがあったが、この本を読んで霧がぱっと晴れた。日本的モラリズムと著者が呼ぶ現象がそれを引き起こしている。平たくいえば、この本のタイトルのとおり、「世間さまが許さない」という話。

この本で言っていることはそんなに複雑なことではない。日本社会では、同質性が前提になり、モラルは社会的に共有されているので、何かルールを決めたとしても、そのルールより、モラルの方が優先されるという話。そこでは、子供のしつけとしての「みんなに笑われますよ」とか、マスコミの「国民は許さない」といったことに代表される価値観が植え付けられていく。

これにより、

・ルールで禁じられていないのに、やると避難される
・ルールで禁じられているのに、やっても許容される

という2つの現象が起こってくる。このようになってしまうと、ロジックというのが効かなくなる。そして、自由主義の前提になっている、ルールで決められていないことをやったときの責任が希薄になっている。こんな話だ。

官僚だった著者が、いろいろな事例を取り上げながら、この日本の社会の本質をあぶり出していくといった趣の本。

どんな事例があるかは本を読んでもらうことにして、冒頭の話に戻る。たとえば、日本人が比較的苦手だと入れるマネジメントの活動にドキュメントを残すという活動がある。マネジメントプロセスのコンサルであれば、ドキュメントテーションのルールを作らないことはまずない。たとえば、計画書。書くことを決める。決めた内容は組織の中で決済され、会社としてやろうと決める。ドキュメンテーションを作成するためのトレーニングもする。

1年くらい経って行ってみると、形骸化しているのはましな方で、半分くらいの人がやっていないので、何か改善点があるんじゃないでしょうかという話になる。

理由を聞くと、納期が短いので、計画書を書いている時間がとれないという。つまり、世間さまは計画書を書くというルールがあっても、そのルールを守ることより、お客様の納期通りにサービスを提供することの方がよいことだと考えているというわけだ。

おまけに、ルールを守ることと、顧客納期を守ることはどっちが重要だなんて議論をしている。僕に言わせれば議論の余地はない。ルールに決まっている。ルールが不都合なものなら、最初から作らなければ良いだけだ。

さて、この本で指摘されている問題の本質は、このようなモラリズムは根強く残っているにもかかわらず、日本でも同質性が崩れてきているということだ。どうなるか。自分自身の世間さまを持って、自分自身のモラルを振り回し始める。こうなってくると、収集がつかなくなる。たとえば、この事例としてモンスター○○という現象を上げている。給食費を払うというルールは無視して、勝手に出しているだの、義務教育だからだのと言い出す。

この本はこの問題に対して、最後に「世間さまをガバナンスにするとどうなるか」というおちゃらけ的な「思考実験」はしているが、回答を与えているわけではない。問題指摘にとどまっている。

ただ、著者はこの問題を踏まえて、マネジメントプロセスとして「Ph.P」というマネジメント手法を提案している。あまり、練れてはいないと思うが、アイディアとしてはよいと思う。興味があれば、この本を読んでみるといいだろう。

4785715073 岡本 薫「Ph.P手法によるマネジメントプロセス分析―国・自治体・企業・団体・学校などあらゆる組織のガバナンスのための方法論」、商事法務(2008)

この問題は今後どちらに進んでいくのか実に興味深い問題である。今はおそらく転換期にある。

今日、たまたま、民主党の代表選挙をやっている。小沢問題は、まさに著者が指摘する構図がある。少なくとも現時点で報道からわかる範囲では、小沢氏自身はルールを破っていない。しかし、世間さまは許さず、代表を辞任に追い込まれた。マスコミは説明責任があるといっているが、この本のロジックでいえば説明責任はない。マスコミが自分のモラルを振り回しているだけということになる。

これに対して、ルールを決めるのがいいのか、それとも、異質な中で暗黙的なモラルを共有するのがよいかというのは極めて興味深い問題である。個人的には、後者の方向に進むことを期待している。企業でいえば、内部統制が導入されている割には、やっぱり、まだ、世間さまがいると感じることが多い。ガバナンスが強化されるのか、あるいは、もっと知恵を出すのかといったところだ。

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