経験からモチベーションは生まれない【ほぼ日読書日記 2009年6月1日】
金井先生の短い解説と、野田先生との対談で構成されたモチベーション論。
この本に限らず、金井先生の書かれるモチベーション論を読んでいると、前提が変わっていることを感じることが多い。この本は特にそれを感じた。もうやる気は、個々人がコントロールすることが「当たり前」の時代になっている。上司がどうにかできるというのは幻想かもしれない。
金井 壽宏「危機の時代の「やる気」学」、ソフトバンククリエイティブ(2009)
テキサス大学の清水先生たちが、おもしろい研究をしていて、理論でどれだけ、実際の経営活動を説明できるかというもの。厳密には違うのだろうけど、単純にいえば、理論がどれだけ役立つか?30%程度だそうだ。
このような議論になってくると、客観性とはそもそも何かという議論になる。工学と経営学の決定的な違いは、適用範囲を明確にする必要があるかどうかだ。工学では、理論を立てるときに、その適用範囲を明確にしない限り、その理論は用をなさない。経営学の理論というのは、そこをはっきりさせない。極論すれば、参考になるかどうかの世界なのだ。
その意味で、金井先生のいう「持論」という発想は正しいと思う。30%に対しては理論を使えるが、70%に対しては理論が使えず、持論を持つ必要がある。
問題は、持論が何に依拠するかだ。日本人は圧倒的に経験である。いわゆる経験論。僕はきらいだ。経験からイノベーションは生まれない。経験が理論化されるからイノベーションの温床ができる。
モチベーション論はおもしろいところがあって、こういった情報発信自体が社会に何らかの影響を与える。結局、行くつくところは信じるかどうかの世界なのかなあ。
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