☆戦略ノート Feed

2012年6月22日 (金)

【戦略ノート287】プロジェクトを推進するシステムはなぜ変わらないのか

◆システムの一部だけを変えることはできない

Sanmiかつて、プロジェクトマネジャーの育成をするときに、上位管理者をどうするかということがしばしば、話題になった。プロジェクトマネジャーが一生懸命、新しいやり方を学び、業務の中で実践しようとしても、上位管理者が足を引っ張ることが多い。たとえば、プロジェクト計画書を時間をかけて作成していると、「そんな時間があれば早く着手しろ」と平気で言い切る上位管理者はいまでも少なくない。

この問題は厄介である。次世代のリーダーの育成方法に関して、「ハイ・フライヤー」という本を書いた、南カリフォルニア大学マーシャルビジネススクールのフレーズはモーガン・マッコール博士は

組織というものはひとつのシステムであり、他の部分への影響を及ぼすことなく、システムの一部だけを変えることはできない。ある人が変化を試みているにもかかわらず、属しているシステムが同じ状態であった場合には、その人はジレンマに陥ってしまう。

と指摘しているが、まさに、プロジェクトマネジメントのトレーニングを受け、行動を変えようとした人は、ジレンマに陥っていた。PMstyleでは、半年~1年かけて行うアクションラーニングによる行動変革を求めるトレーニングをやっているため、この問題にいやというほど直面した。

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2012年5月24日 (木)

【戦略ノート286】人ベースのプロジェクトマネジメント

Hito◆人ベースと仕事ベース

慶応ビジネススクールの高木晴夫先生が「「人ベース/仕事ベースのアークテクチャーにおける組織学習装置」という研究をされている。最近、この研究成果が書籍になって出版された。この本だ。

高木 晴夫「組織能力のハイブリッド戦略」、ダイヤモンド社(2012)

この本はグローバルな経営環境の中で生き延びていくために、人ベースと仕事ベースをどのように組み合わせていけばよいかを、163社の調査に基づいて考察したものである。

高木先生によると、経営組織の仕組みは、仕事ベースと人ベースに分けることができる。仕事ベースは、まず仕事があり、その仕事をするために人を採用する。人ベースは、まず人があり、その人が仕事をとってきて実施していく。分業が進むと仕事ベースになっていくわけだが、日本の組織は人ベースのままで仕事をしている企業が多い。

今回の戦略ノートは、この問題をプロジェクトマネジメントの問題として考えてみたい。ちなみに、今回、初めての試みとして、このネタをメルマガのオンラインコミュニティ「プロジェクトの補助線」に投げ、意見を戴いた。その上で、記事を書いた。

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2012年5月 1日 (火)

【戦略ノート285】プロジェクトの主体者は誰か

Collab1◆プロジェクトの主体者は誰か

PMBOK(R)はステークホルダーという考え方に特徴がある。一言でいえば、プロジェクト活動に対して、利害関係者はすべてステークホルダーという考え方である。プロジェクトスポンサーや、プロジェクトマネジャーやチームメンバーもすべてステークホルダーである。

ここで、利害関係とはそのプロジェクトを実施すること、あるいは、そのプロジェクトを実施した結果として生じる状態が特定の人にどのような影響を与えるかである。影響は業績に関わるものもあれば、個人のキャリアに関わるものもある。そのほかにもいろいろとあるだろう。

企業のステークホルダーという場合、経営活動の主体者たる経営陣はステークホルダーだとは考えない。あくまでも経営活動に対する利害関係者として、株主、消費者(顧客)、従業員、得意先、地域社会などが挙げられる。

両者を比較すると、一つ、疑問が浮かんでくる。それは、

プロジェクト活動の主体者は誰か

という疑問である。プロジェクトスポンサーなのか、プロジェクトマネジャーなのか、プロジェクトチームなのか。活動を中心に考えると、活動の主体者(活動の意思決定者)がステークホルダになることは本来の意味と反するので、少なくともステークホルダに名を連ねる人たちではないはずだ。

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2012年4月24日 (火)

【戦略ノート284】プロジェクトにおける品質へのアプローチ

Qm珍しく、まじめなネタ。facebookで一度殴り書きをして、整理して書きなおした。比較して貰うと、好川の思考プロセスが分かると思う。

【プロデューサーの走り書き(18)】品質は絶対か

◆品質はトレードオフの対象なのか?

プロジェクトマネジメントは問題解決の連続である。もう少し正確にいえば、トレードオフの連続である。トレードオフが発生する理由は明確で、プロジェクトには予算や納期、リソースなど、さまざまな制約があるためだ。制約条件の中で、如何に主要ステークホルダ(顧客)の満足を最大化するかでプロジェクトのマネジメントの優劣が決まる。

この際に問題になるのが、品質の問題である。

プロジェクトマネジメントの方針を決める際に、品質絶対という価値観の是非が問題になることがある。品質は絶対なのか、それとも、スケジュールやコストとのトレードオフになるのか。この点が問題になる。

モノ作りの発想からすれば、品質は絶対である。いくら優れたものを提供しようとも、品質が悪ければ顧客(ユーザ)の満足は得られないと考える。この議論がややこしいのは、品質がどのように競争優位に影響を与えるかである。

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2012年4月 3日 (火)

【戦略ノート283】戦略実行としてのプロジェクトと、そのマネジメント

Strategy5◆「アクションを重視するプロジェクトマネジメント」

PMstyleでは、PMBOKに代表される現場業務のオペレーションマネジメントをPM1.0とし、経営戦略に基づき、組織の戦略オペレーションのマネジメントをPM2.0と定義している。

PMstyleの第8期のプログラムで、カテゴリーに「PM3.0」というカテゴリーを加えた。意味するところは、「アクションを重視するプロジェクトマネジメント」である。

PMstyleでは、昨年度まで、「計画を重視しない」という言葉を使っていた。カテゴリー化するにあたって、この言葉は誤解を招くなと思い、IPAがアジャイルの契約形態をまとめる際に使っている「非ウォーターフォール型」使おうかとも思ったが、ウォーターフォールという言葉は、日本語ではソフトウエアプロセスを連想させるので、「アクションを重視する」にしたという経緯がある。

プロジェクトが戦略実行の手段であるという認識は、かなり定着してきたように思うが、ここで戦略と言っているものは何かというのはなんだろうか?

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2012年3月27日 (火)

【戦略ノート282】プレイングマネジャーとしてのプロジェクトマネジャー

Manager1◆新しい管理職のあり方

慶應大学大学院の教授、高橋俊介さんが、新しい管理職のあり方という提言をしている。それは、中堅(45歳くらい)を迎えるプロフェッショナルに、管理職と同じ権限を与え、その活動を支援する。そして、必要に応じて、管理職の役割を分解して、負わせる。たとえば、若手の指導育成の役割を求める。一方で、管理職の仕事の中で、メンタルヘルス、コンプライアンス、ダイバーシティ、キャリア支援などについては、社内プロフェッショナルに任せるといったものだ。(「プロフェッショナルの働き方」、PHP出版、2012)

そして、組織としてみれば、意欲のある中堅社員に権限を与え、プロフェッショナルに育てていくマネジャーの存在。この2つが両輪となると指摘する。

このモデルは、まさに(組織的)プロジェクトマネジメントのあるべき姿を示している。マネジャーはプロジェクトスポンサー。プロフェッショナルなプレイングマネジャーがプロジェクトマネジャーである。

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2012年3月 6日 (火)

【戦略ノート281】続・未来志向のプロジェクトマネジメント

◆アージリスのダブルループ学習

Miraiクリス・アージリスという学者がいる。教育学者であり、かつ、ハーバードビジネススクールで教鞭をとっていた。人の学習や、それを可能にする組織にあり方についてさまざまな成果を残している。

ほとんどの人が、アージリスの名前を最初に知るのは、ダブルループ学習ではないかと思う。ダブルループ学習は、学習するには、方法する仕方も学ばなければならないという指摘をしたものだ。アージリスの指摘は組織学習に関するものだが、金井壽宏先生はアージリスのダブルループ学習は個人にもあてはまると指摘されている。

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2012年3月 2日 (金)

【戦略ノート280】アカウンタビリティを逆転させる

Pyramid◆アカウンタビリティとレスポンシビリティ

われわれが(プロジェクト)マネジメントの仕組みづくりコンサルティングを行う際に、徹底的にこだわっていることがある。それは、マネジャーや経営スタッフのプロジェクトチームやプロジェクトリーダー、プロジェクトメンバーに対するアカウンタビリティである。

アカウンタビリティ。説明責任という訳が一般的だが、業績責任の方がしっくりくるので、日本語で表記するときには業績責任という言葉を使っている。これだけの説明では漠然としているので、ちょっとだけ説明しておくと、プロジェクトに必要な責任には、レスポンシビリティとアカウンタビリティがある。レスポンシビリティは、チームメンバーの実行責任の意味で、RAM(Responsibility Assignment Matrix)で定義される。これに対して、アカウンタビリティはプロジェクトに設定した目標、あるいは、プロジェクトに課せられた目的を達成する責任である。詳しくは、戦略ノート131を読んで欲しい。

戦略ノート131

レスポンシビリティとアカウンタビリティ

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2012年2月28日 (火)

【戦略ノート279】未来志向のプロジェクトマネジメント

Mirai◆プロジェクトマネジメントは未来志向

最近、「フューチャーセンター」のマイブームで、未来志向という言葉が頭から離れない。未来志向とは、未来に目標を定め向かうことである。プロジェクトマネジメントは、この20年くらいの間に、すごい発展をし、一つの完成形に近づきつつあるように思う。

そんなことを少しずつ、考えてみたいと思う。

まず、最初に明確にしておきたいのは、本来、プロジェクトマネジメントは未来志向である。数か月から数年の未来に目標を定めて、実現していくのがプロジェクトであり、その活動をスムーズに進めていくためにプロジェクトマネジメントがある。その意味で、未来志向の活動に他ならない。

ただ、考えてみたいといっているのはこのことではない。プロジェクトマネジメント自体が未来においてどのようになっていたいかだ。たとえば、5年先、10年先にどうなっていたいのか?



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2012年2月17日 (金)

【戦略ノート278】スマート・リスクマネジメント

◆「Right Risk」

Smartプロジェクトリスクマネジメントの考え方は、当たり前だがプロジェクトを前提にしている。プロジェクトの制約が厳しくなり、また、創造性が求められるようになってきた今、好む、好まざるにかかわらず、リスクを取らざるを得なくなってきている。

「Right Risk」という言葉がある。(正しい)ゴールを達成するために、取ることが妥当なリスクのことだ。少なくとも、「Right Risk」は取らざるを得ない。

そこで、リスクマネジメントを組織で行うべきだという話が出てくる。これは何を意味するのだろうか?

よく行われているのは、プロジェクトの立ち上げや、計画の時に、プロジェクトだけではなく、上位組織も知恵をだし、リスクを評価し、対策を考えることである。これは、視点の多様性ができるという意味で、確かに有効な方法であり、実際に効果も出ている。

あるいは、リスクマネジメントを知識化し、リスクチェックリストや、リスク兆候の知識化、リスク対応策のナレッジベースの構築などを作る取り組みをしている組織もある。知識化は、リスクマネジメントへの効用だけではなく、教育という面でも効果があるよい取組である。

これらは、プロジェクトリスクマネジメントに対する組織としての取り組みとして位置付けられる。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。