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2012年3月 6日 (火)

【戦略ノート281】続・未来志向のプロジェクトマネジメント

◆アージリスのダブルループ学習

Miraiクリス・アージリスという学者がいる。教育学者であり、かつ、ハーバードビジネススクールで教鞭をとっていた。人の学習や、それを可能にする組織にあり方についてさまざまな成果を残している。

ほとんどの人が、アージリスの名前を最初に知るのは、ダブルループ学習ではないかと思う。ダブルループ学習は、学習するには、方法する仕方も学ばなければならないという指摘をしたものだ。アージリスの指摘は組織学習に関するものだが、金井壽宏先生はアージリスのダブルループ学習は個人にもあてはまると指摘されている。



◆経験から学ぶ限界

たとえば、プロジェクトマネジャーとして経験したことを自分なりに整理して、学んでいく。素晴らしいことである。しかし、10本程度のプロジェクトをやると、プロジェクトから学ぶことがなくなったという人が少なくない。

経験から学ぶ方法はいろいろとあると思われるが、典型的な方法は

失敗したこと→その原因→再発防止のためにすべきこと

という思考プロセスで、失敗したことをリスクとして識別するようにするとともに、再発防止のためにすべきことを計画に中に折り込んでいく。

このような学び方は、本来、定型業務における学び方であり、「たとえば、欠陥ゼロ」といったゴールを設定し、ゴールが達成できれば、一応、学習は完了する。プロジェクトのような非定型業務も、定常業務として実施する分にはリスクをとらない方向に持っていくので、確かにある程度の経験をすれば、学ぶべきことは収束するだろう。

ただし、その時点がプロジェクトがうまく行くかというとそうとは限らない。プロジェクトはうまく行っていないが、学ぶべきことはないという状況に陥る。学んだと思っていることで失敗する。言い換えると、同じ失敗を繰り返す。そんな状況だ。

なぜ、こんなことが起こるのか?一つは学ぶことと実行できることは別次元の話であること。もう一つは、学び方に問題があること。


◆学び方を学ぶ

前者は改善にはついて回る問題なので、粘り強くやるしかない。問題は後者だ。プロジェクトマネジャーを始めてやると、すべて新鮮である。大規模のプロジェクトのチームリーダーの経験がある人でも、プロジェクトの責任者になるということは責任もあるし、新鮮さがあるという人が多い。

つまり、やること、なすことが学びになる。しかし、このような状態はずっと続くわけではない。この段階はいわゆる「慣れる」段階であるので、いずれ終わる。

ところが延々と「失敗(経験)から学ぶ」という学び方を変えない人は多い。シングルループの学習しかできていないわけだ。ここで成長は止まる。それだけならまだしも、成長が止まると、モチベーションが下がり、失敗が目立つようになる人もいる。

そこで、学び方そのものを学ぶ必要がある。そのためには、経験から学んでいるプロセスについて、深いレベルで考えてみる必要がある。たとえば、そこで起こっていることを知識化しているだけであれば、それを概念化し、知恵として自分の中に蓄えていく。すると、次のプロジェクトでは、今までのように知識ではなく、知恵を使って計画を作ることになる。すると、同じ失敗から学ぶのだとしても、

失敗したこと→知恵の活用をどう変えるのか

というメタレベルの学習が起こる。


◆失敗からの学び方

もう一つの問題として、本当に失敗から学べるのかという問題がある。日本人は失敗から学ぶことが好きだ。ただ、最近の傾向としてシングルループ学習しかしてないの思う。シングループだけでは、失敗からは学べない。

同じ失敗を繰り返す理由は、失敗の本質が理解できていないからで、失敗の本質を理解するには、上に述べたようにダブルループ学習が必要である。その方法を体系化した一つが畑村洋太郎先生の提唱された「失敗学」である。

この点をきちんと認識しておきたい。


◆未来志向のプロジェクトマネジメントには定型的な方法はない

未来志向のプロジェクトマネジメントは、PMBOKのような素晴らしい知識体系をプロジェクトマネジャー自身が知恵に昇華し、知恵をどんどんブラッシュアップしながら、ダイナミックな活動をしていくことにある。

つまり、プロジェクトマネジメントに定型的な方法(プロセス)はなく、ダイナミックにマネジメントを変えていくのが未来志向である。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。