☆戦略ノート Feed

2012年2月 7日 (火)

【戦略ノート277】チェックリスト考

Checklist◆チェックリストは網羅的に作るものではない

チェックリストは誰でも知っているツールである。しかし、実体は意外と理解されていないのではないかと思う。たとえば、プロジェクトマネジメントの中でもっともチェックリストが使われているのはリスクマネジメント(リスクチェックリスト)だろう。多くの企業がリスクチェックリストを使って、リスクマネジメント計画を作っている。

では、リスクチェックリストをどのように作っているかというと、結構、考え方の違いがある。多いのは、網羅的に作るという方法である。とにかく、チェックリストをみれば考えられるすべてのリスクの有無が判断できるという狙いだ。その対極にあるのが、少数派ではあるが、必要最小限押さえておいてほしいリスクだけをチェックリスト化する。

リスクマネジメントとしてどちらがよいかではなく、チェックリストとしてどちらが適切かというと後者である。前者のものはチェックリストとは言わない。

リスクに限らず、チェックリストと聞くと多くの人が面倒だとか、厄介だという印象を持つ。それは、チェックリストに記載されていることは実施しなくてはならないからだ。と同時に、チェックリストの作り方が網羅的だからだ。

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2012年2月 3日 (金)

【戦略ノート276】プロジェクトマネジャーのジレンマ

Dilemma◆成果か人か

ある本を読んで、マネジメントは深いとつくづく思った。マネジメントはジレンマの集まりだというのだ。

たとえば、プロジェクトという業務の性格上、プロジェクトマネジメントは成果に焦点をあて、人には焦点を当てない。権限委譲をしてメンバーの自律的管理に委ねる。確かに、WBSを作って、達成しなくてはならない中間成果物とそのスケジュールを明確にする(落とし込みは必ずしも個人ではなくチーム単位の場合もある)。そして、スケジュール通りに中間成果物が出てくるかどうかだけを問題にする。メンバーの勤怠や勤務態度、あるいは業務遂行方法についてはメンバーに任せるわけだ。

これには前提がある。プロジェクトのメンバーはスキルを持った自律した人材であり、管理をされなくても自律的に仕事ができるという前提である。しかし、これはSI事業のようにプロジェクトが常態化している場合には必ずしも成り立たない。

その場合には、成果に焦点を当てようとすると、それを遂行する人に注意を払わなくてはならない。つまり、メンバーが自分の担当する成果物をきちんと達成できるかどうかだけではなく、ある程度、そのやり方も見ておく必要がある。

ところが、プロジェクトマネジャー(リーダー)がその分野について必ずしも、不十分なスキルしか持たないメンバーより、知見を持っているかというとこれはまた別の話だ。そもそも、プロジェクトマネジメントが成果だけに焦点を当てるのは、そのプロジェクトチームにおいては、特定の問題に対しては特定のメンバーが最もスキルフルであるという前提に立つものだ。プロジェクトが専門家の集まりという所以である。

そのような状況で、人に注意を向けるにはどうすればよいか。よく見かけるのは、そのメンバーに指導をしてくれるスキルを持つ人に支援を請う、メンバーがスキルアップの動機を持つように仕向ける、といった行動である。

このようにプロジェクトマネジメントが難しいのは、2つの相反する活動(ジレンマ)を整合性を持って行わなくてはならないことだ。ここまでに述べてきた例では

成果に焦点を当てるために、人に焦点を当てなくてはならない

というジレンマである。

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2012年1月31日 (火)

【戦略ノート275】ビーイングのプロジェクトとビカミングのプロジェクト

Relation◆ビーイングとビカミング

ものごとの捉え方には、固定的、かつ静態的なビーイング(being)と、流動的、かつ動態的なビカミングがあるというのは、知識創造で著名な経営学者・野中郁次郎先生の説である。

たとえば、昨年大ブレークしたノンアルコールビールがある。もともとあった微アルコールビールは、車を運転している人、お酒がダメな人が、ビールで乾杯するときに飲む商品だった。市場の設定としては、ビーイングな設定をされていたし、そのようなマーケティングしかされなかった。実際に見かけるのはドライブインとか、飲み屋だった。

ところが、大ヒットしたキリンフリーでは、ユーザが用途をどんどん拡大していった。一度飲んだ人が飲む場面を考える。非常に印象的だったのは、高速のサービスエリアにビバレッジとしておいてあったこと。これまでは本当はビールを飲みたいけど、自動車なのでノンアルコールビールだったのが、ドライブのときの飲み物になってしまったのだ。このように経験や環境変化でユーザ自身がどんどん変わっていく。これがビカミングである。

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2012年1月27日 (金)

【戦略ノート274】センスのいいプロジェクトマネジャーへの旅

Sense◆はじめに

この記事は、日経BPのITproに谷島宣之さんの書かれた「「センスのよいSE」とは何か、じっくり考えてみたが難しい」への返事として書いた記事である。まずは、谷島さんの記事を読んで欲しい。

「センスのよいSE」とは何か、じっくり考えてみたが難しい

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2012年1月24日 (火)

【戦略ノート273】プロジェクトマネジメントをクリエイティブにする

Creative2◆プロジェクトマネジメントをクリエイティブにする

「プロジェクトをクリエイティブにする」という言い方に違和感を感じる人は少ないと思う。プロジェクトの成果物を創造性の高いものにするという意味だ。1017号の編集後記に書いたのだが、2月11日の「ゲームストーミングによるプロジェクト活性手法」というワークショップをやっていただく野村恭彦さんがご自身で作られたフェースブックイベントページに、受講してほしい人として

システム企画・開発、商品企画・開発、組織開発、経営企画など、あらゆるプロジェ
クトマネジメントを「もっとクリエイティブにしたい」と考えている変革リーダーの
皆さまです

と書かれていた。なるほどと思った。プロジェクトをクリエイティブにするには、プロジェクトマネジメントをクリエイティブにする必要がある。

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2012年1月17日 (火)

【戦略ノート272】なぜ、プロジェクトマネジャーになりたがらないのか?

Untileader◆なぜ、プロジェクトマネジャーになりたがらないのか

プロジェクトマネジャーの育成の課題の中に、なぜ、プロジェクトマネジャーになりたがらないのかという問題がある。よく指摘されるのは

・先輩のプロジェクトマネジャーの仕事を見ていて報われない
・十分なインセンティブ制度がない
・専門家であることへのこだわりがある
・マネジャーの仕事にやりがいを感じない

といったことだ。多くの組織は、こういった指摘を解消しようといろいろな工夫をしている。が、あまり成果は出ていないようだ。どこの企業にいっても、みんながプロジェクトマネジャーになりたがっているので案件がなくて困っているという話は聞かない。案件数が減っても相変わらず、プロジェクトマネジャーが足らないといっている。

いつか、この記事を書こうと思っていたのだが、1000号で、これからは、メルマガの視座を

「プロフェッショナルとしてのプロジェクトマネジャー」

から、

「(ビジネス)リーダーとしてのプロジェクトマネジャー」

に移していると宣言したので、そろそろ、立ち位置をはっきりとしておこうと思う。

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2012年1月10日 (火)

【戦略ノート271】アジャイルの実践条件

◆アジャイル実践のアプローチ

Agile2年末最後のネタがアジャイルだったので、年始もアジャイルから。年末にも書いたが、今年はアジャイルの成果が求められる年になるだろう。

アジャイルを実践するアプローチは2つある。一つは適用範囲を限定的にすることである。これがそんなに難しくなく、適材適所に使えばそれなりの効果が得られるし、プロジェクトマネジメント自体の大きな枠組みはほとんど変えなくて済む。アジャイル化するスコープの取り方としては、開発マネジメントにアジャイルを入れるというのが多い。

もう一つは、プロジェクトマネジメントそのものをアジャイルスタイルにすることだ。こちらは、従来のやり方を変えることになるので多少、厄介である。

いずれのアプローチも、カギはプロジェクトガバナンスの確立にある。いくら、顧客主義といっても、プロジェクトガバナンスが確立できなければプロジェクトマネジメントにはならない。

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2011年12月27日 (火)

【戦略ノート270】「ルーヴル美術館照明改修プロジェクト」に学ぶアジャイルプロジェクトマネジメント

Louvre◆ルーヴル美術館照明改修プロジェクト

今年から、PMI(R)がアジャイルPMPの認定制度の試行を開始した。米国のPMIでは、この4~5年、アジャイルに関連する活動が年々盛んになっている感があるが、今年はアジャイル元年だといってもよいだろう。ということで、今年最後の戦略ノートはアジャイルの話題。

「はやぶさ」ほど注目されることはないが、ある意味ではやぶさより示唆に富み、今年、アジャイル元年にふさわしいプロジェクトが大きな成果を上げた。

そのプロジェクトは東芝が実施した「ルーヴル美術館照明改修プロジェクト」である。ルーヴル美術館といえば美しいライトアップでも有名だが、このプロジェクトは、ルーヴル美術館のピラミッド及びナポレオン広場、奥のクールカレの外観ライトアップに用いる器具を、LED照明にすべて改修するものだ。目的はいうまでもなく、環境保全である。

東芝は日本で初めて、白熱電球の製造に成功した企業であるにも関わらず、昨年、いち早く、白熱電球の事業から撤退し、LED照明に特化した。ルーヴル美術館のプロジェクトのパートナー選定においては、この点が評価されたらしい。

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2011年12月20日 (火)

【戦略ノート269】「センス」について考える

Sense◆「センスのよいプロジェクトマネジャーになるための6つのスタイル」

PM養成マガジンの10周年記念セミナーのタイトルを

10thプロジェクトマネジメントを深化させるもの
~センスのよいプロジェクトマネジャーになるための6つのスタイル

としたら、さっそく、突っ込みがあった。「センス」って何。来年は、この話題をしようと思っているので、とりあえず、前説。

「センスのあるプロジェクトマネジャー」と「センスのないプロジェクトマネジャー」がいることに異存がある人はそんなにいないだろう。

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2011年12月13日 (火)

【戦略ノート268】プロジェクトイニシエータ考~イニシエータの着眼点

◆小さくて大きいこと

プロジェクトイニシエータはプロジェクトを起こすときに何に着眼するのだろうか?

・戦略
・ビジネス
・顧客・市場

など、いくつかのポイントがあると思われる。もちろん、このような視点は大切なのだが、もっと重要なのはインパクトである。プロジェクトイニシエータは

小さくて大きい

ことに関心を示す。

プロジェクトイニシエータのイメージは、組織の中で画策して、大きな予算のプロジェクトを立ち上げたり、顧客に対してうまく立ち回り大きな受託業務を取ったりするようなイメージではない(もちろん、これらも立派なイニシエーションであるが、イニシエータらしい仕事とはいえないだろう)。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。