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2012年2月 3日 (金)

【戦略ノート276】プロジェクトマネジャーのジレンマ

Dilemma◆成果か人か

ある本を読んで、マネジメントは深いとつくづく思った。マネジメントはジレンマの集まりだというのだ。

たとえば、プロジェクトという業務の性格上、プロジェクトマネジメントは成果に焦点をあて、人には焦点を当てない。権限委譲をしてメンバーの自律的管理に委ねる。確かに、WBSを作って、達成しなくてはならない中間成果物とそのスケジュールを明確にする(落とし込みは必ずしも個人ではなくチーム単位の場合もある)。そして、スケジュール通りに中間成果物が出てくるかどうかだけを問題にする。メンバーの勤怠や勤務態度、あるいは業務遂行方法についてはメンバーに任せるわけだ。

これには前提がある。プロジェクトのメンバーはスキルを持った自律した人材であり、管理をされなくても自律的に仕事ができるという前提である。しかし、これはSI事業のようにプロジェクトが常態化している場合には必ずしも成り立たない。

その場合には、成果に焦点を当てようとすると、それを遂行する人に注意を払わなくてはならない。つまり、メンバーが自分の担当する成果物をきちんと達成できるかどうかだけではなく、ある程度、そのやり方も見ておく必要がある。

ところが、プロジェクトマネジャー(リーダー)がその分野について必ずしも、不十分なスキルしか持たないメンバーより、知見を持っているかというとこれはまた別の話だ。そもそも、プロジェクトマネジメントが成果だけに焦点を当てるのは、そのプロジェクトチームにおいては、特定の問題に対しては特定のメンバーが最もスキルフルであるという前提に立つものだ。プロジェクトが専門家の集まりという所以である。

そのような状況で、人に注意を向けるにはどうすればよいか。よく見かけるのは、そのメンバーに指導をしてくれるスキルを持つ人に支援を請う、メンバーがスキルアップの動機を持つように仕向ける、といった行動である。

このようにプロジェクトマネジメントが難しいのは、2つの相反する活動(ジレンマ)を整合性を持って行わなくてはならないことだ。ここまでに述べてきた例では

成果に焦点を当てるために、人に焦点を当てなくてはならない

というジレンマである。



◆他人の行動に責任を持つ

その最たるものは、メンバーの行動に対して責任を持つということだろう。行動と責任の基本は自分の行動に対して責任を持つというものだ。ところが、マネジャーやプロジェクトマネジャーはメンバーという他人の行動に対して責任を持たなくてはならない。

このつじつまを合わせる一つの方法が、権限である。メンバーの行動を制限する(指示する)権限を持ち、同時に責任も持つ。組織の基本である。ところが、プロジェクトマネジャーに限って言えば、メンバーに対して必ずしも権限を持たない。つまり、

制限や指示をする権限を持たないメンバーの行動に対して責任を持つ

というジレンマを抱え込んでいるのだ。


◆ジレンマがジレンマを呼ぶ

さらに、このジレンマは上に述べた、成果に焦点を当てるために、人に注意しなくてはならないというジレンマに関連してくる。権限を持たずにメンバーの行動に責任を持つための一つの方法は、成果に焦点を当て、成果が出ればOKという風にすることだ。しかし、上のようなジレンマを抱え、結局、人に注意を払わなくてはならないとすれば、同じ問題に行き当たることになる。

マネジメントが理屈だけはできないのはこのようなジレンマによるところが多い。センスのようマネジャーは、ジレンマをうまく解消する。


◆ジレンマを解消する方法

彼らは何をしているのか。ジレンマを解消するには、一歩引いてから大局的にものをみることが必要である。ジレンマになっているところだけではなく、全体がどうなってそのジレンマが生じているかを把握することが重要である。その上で、そのジレンマを解消するためにもっとも手のかからない方法は何かを見つける。

その方法は一通りではないし、問題解決をしようとしているプロジェクトマネジャーがどのような強みを持っているかによって変わる。たとえば、社内人脈が豊富であれば、知人のエキスパートをメンバーのメンターを頼むというのは、もっとも簡単にできる方法かもしれない。人を乗せるのがうまければ、メンバーをのせて、勢いで前に進めるように背中を押すことも一つの方法だろう。

このような方法はシステム思考でいう「レバレッジ」であり、プロジェクトマネジャーが大局観を身につけ、ジレンマを解消するには、システム思考を身につけるとよい。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。