【戦略ノート279】未来志向のプロジェクトマネジメント
◆プロジェクトマネジメントは未来志向
最近、「フューチャーセンター」のマイブームで、未来志向という言葉が頭から離れない。未来志向とは、未来に目標を定め向かうことである。プロジェクトマネジメントは、この20年くらいの間に、すごい発展をし、一つの完成形に近づきつつあるように思う。
そんなことを少しずつ、考えてみたいと思う。
まず、最初に明確にしておきたいのは、本来、プロジェクトマネジメントは未来志向である。数か月から数年の未来に目標を定めて、実現していくのがプロジェクトであり、その活動をスムーズに進めていくためにプロジェクトマネジメントがある。その意味で、未来志向の活動に他ならない。
ただ、考えてみたいといっているのはこのことではない。プロジェクトマネジメント自体が未来においてどのようになっていたいかだ。たとえば、5年先、10年先にどうなっていたいのか?
◆コントロールするプロジェクトマネジメントの前提
今のプロジェクトマネジメントとは目標達成をコントロールするための手段である。冒頭にも述べたように、この意味でのプロジェクトマネジメントはほぼ完成形に近づいている。この先向かうところは、コントロールしないプロジェクトマネジメントである。
今のプロジェクトマネジメントは、「不確実性」が小さいことを前提としている。ここで不確実性という言葉を使っている意味は、何かが起こることが想定の範囲外だという意味だ。想定していれば、不確実性は小さく、あとは、確率と大きさの問題にある。つまり、リスクである。
今のプロジェクトマネジメントは、不確実性が小さい、つまり、リスクの範囲という前提がある。手法的にも不確実性がリスクとして扱えない場合はあまり考慮されていない。
逆にいえば、不確実性がリスクとして扱えない場合には、プロジェクトはコントロールできない。しかし、実際には不確実性の大きいプロジェクトが増えているが、不確実性は本質的にコントロールできない。そこで、コントロールしないプロジェクトマネジメントというのが必要になってくる。
◆コントロールしないプロジェクトマネジメントの条件(1)
コントロールするプロジェクトマネジメントとコントロールしないプロジェクトマネジメントの本質的な違いは、メンバーの役割と、ステークホルダの位置づけである。
まず、メンバーはプロジェクトの目的やゴールを理解し、他のメンバーとのコミュニケーションも含めて、自立的、かつ自律的な活動ができなくてはならない。プロジェクトマネジメントの一つの役割は、メンバーのそのような活動の支援である。今は、権限委譲が不十分なこともあって、この点が欠けている。成果物の進捗が望ましくない場合には、コントロールして是正していく。具体的にはメンバーに指示を与えることによって是正しようとする。
自立したメンバーにおいては、逆である。プロジェクトマネジャーに何をしてほしいかを決めるのはメンバーであり、プロジェクトマネジャーはその意向に沿うべく行動をする。もちろん、プロジェクトマネジャーがそのような行動をするには、プロジェクトスポンサーも同じような行動をしなくてはならない。つまり、サーバントリーダーシップにみられる、逆三角形の支援体制ができるわけだ。
◆コントロールしないプロジェクトマネジメントの条件(2)
もう一つのポイントになるのは、ステークホルダである。プロジェクトのコントロールの主たる目的はプロジェクト目標の達成であるが、もう一つの裏目的は、ステークホルダ、特に目標設定に対する利害関係の対立するステークホルダに弱みを見せないことにある。目標が計画通りに達成できないとなった瞬間に、目標をひっくり返される可能性があるからだ。
コントロールをやめるには、ステークホルダの位置づけを利害関係者ではなく、仲間にしていけばよい。そのためには、目標を徹底的に話し合い、プロジェクトによって相対的な利ではなく、絶対的な利が生まれるようにすることが必要だ。
そんなことはできないと考える向きもあるだろうが、決して不可能なことではない。モノを中心にして考えている限り、どんなに知恵を絞ってもできるとは思えないが、「価値」、あるいは、「コト」を中心にして考えると、突破口は必ずある。
このようなチームとステークホルダの関係を実現できれば、コントロールしないプロジェクトマネジメントは現実味を帯びてくる。
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