2011年12月13日 (火)

【戦略ノート268】プロジェクトイニシエータ考~イニシエータの着眼点

◆小さくて大きいこと

プロジェクトイニシエータはプロジェクトを起こすときに何に着眼するのだろうか?

・戦略
・ビジネス
・顧客・市場

など、いくつかのポイントがあると思われる。もちろん、このような視点は大切なのだが、もっと重要なのはインパクトである。プロジェクトイニシエータは

小さくて大きい

ことに関心を示す。

プロジェクトイニシエータのイメージは、組織の中で画策して、大きな予算のプロジェクトを立ち上げたり、顧客に対してうまく立ち回り大きな受託業務を取ったりするようなイメージではない(もちろん、これらも立派なイニシエーションであるが、イニシエータらしい仕事とはいえないだろう)。

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2011年12月11日 (日)

【報告】PM養成マガジン1000号感謝イベント(2011年12月10日)

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12月10日(土曜)に、汐留にあるヴィラフォンテーヌカンファレンスセンターで、PM養成マガジンの1000号感謝イベントを行いました。

参加者が22名でしたので、最初の3時間は好川が簡単なインプットをして、ほぼ、2時間半くらい、全員で議論をしました。基調テーマは

「リーダーとしてのプロジェクトマネジャー」

でした。この基調で、どのような議論をしようかと手探りの議論をしているうちに、

「PMBOK流のプロジェクトマネジャーから脱却するには、どうすればよいのか?」

といった感じになりました。議論の質が極めて高く、一般のイベントのパネルディスカッションのレベルだったように思います(それも上質の)。好川個人としても、いつものコンサルの立場を離れ、PM養成マガジン編集長としてのエッジを効かせた意見を言えたので、非常に楽しかったです。

議論で出てきたキーワードは以下のようなものです。

・期待以上
・コミュニケーションの活性化
・顧客のために
・プロジェクトマネジメントのスコープ拡大
・小さくて大きいこと、レバレッジ
・メンバーの想いをチームの想いとして実現していく
・メンバーに内発的な動機が生まれる

このキーワードのいくつかは、10周年記念セミナーのテーマになっています。

そのあと、近くのイタリア料理店で懇親会をしました。懇親会に参加されたのは12名で、好川が座っていたテーブルで印象に残ったのは

・人は必ず育つのか
・洞察力はどうすれば身につくのか

でした。洞察力の話はやっぱり、興味深いです。興味のある方、こんなセミナーがあります。

洞察力を鍛えよう!

 

ということで、とりあえず、前夜祭は終わり、来年から10周年の本番になります。

2011年12月 6日 (火)

【戦略ノート267】プロジェクトイニシエータ考~イニシエータという役割の価値を見直そう

Initiator◆プロジェクトイニシエータとは

PMBOKの5つのプロセスの最初「立上げプロセス群」と呼ばれるプロセスの英語名称は「initiating process」である。そして、プロジェクトを立ち上げる人をプロジェクトイニシエータと呼ぶ。

プロジェクトマネジメント的な説明としては、

(プロジェクト憲章を)プロジェクトのイニシエーターまたはスポンサーが承認し発行することで、プロジェクト・マネジャーは、人・モノ・金の資源をプロジェクトのために使う権限を持つことができる。

という話になる。プロジェクトマネジメントは現場を中心にものを見ているのでこの表現は間違いではないし、ガバナンス的にも大方の組織(大企業)ではこのような仕組みになっている。少なくともプロジェクトマネジメントの中ではあまり重視されておらず、スポットも当たっていない。

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2011年12月 2日 (金)

【PM養成マガジン10周年特別連載】インターパーソナルスキル・エンジン~プロローグ

Ips◆PMBOKの人間関係スキル

PMBOKの第4版を見て以来、プロジェクトマネジャーのインターパーソナルスキルについて整理したいと思っているのですが、来年10周年を迎えますので、10周年特別連載として、書いてみることにしました。

PMBOK第4版の付録Gでは、以下のような記述があります。

プロジェクトマネジャーはプロジェクトチームおよびステークホルダを介して業務を成し遂げる。有能はプロジェクトマネジャーは、技術的スキル(テクニカルスキル)、人間関係スキル(インターパーソナルスキル)、概念化スキル(コンセプチャルスキル)をバランスよく身につけており、状況を分析し、適切に対応するうえでそれらのスキルを役立てている。

テクニカルスキルはプロジェクトマネジメントやプログラムマネジメントの技術スキルです。コンセプチャルスキルは、マネジャーに不可欠なスキルで、抽象的な考えや物事の大枠を理解するスキルです。具体的には、洞察力、創造力、構想力、戦略力、問題解決力、意思決定力などがあります。

さて、問題のインターパーソナルスキルです。PMBOKの日本語版では「人間関係スキル」と翻訳されています。一般には対人関係スキル、ピープルスキルなどいろいろな言い方がされ、微妙にニュアンスが違うことと、「人間」という言葉には手垢がついているような印象があります。そこで、カタカナ英語で「インターパーソナルスキル」と呼ぶことにします。

PMBOKではプロジェクトマネジャーのインターパーソナルスキルとして、

・リーダーシップ
・チームビルディング
・動機づけ
・コミュニケーション
・影響力
・意思決定
・政治的風土と文化に対する認識
・交渉

の8つを取り上げています。ちょっと面白いのは、一般的にはコンセプチュアルスキルに位置づけられることの多い意思決定をインターパーソナルスキルに位置づけていることです。説明を見ると、「プロジェクトマネジャーが一般に用いる意思決定のスタイルには、命令、相談、合意、成り行き(無原則)の4つがある」とありますので、意思決定の中でも行動を重視しているためだと思われます。なお、PMstyleでは意思決定は、コンセプチュアルスキルに含めています。

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【PM2.0事始め】第10回 決めない管理がプロジェクトを複雑にする

Fa◆はじめに

予定よりだいぶ遅れたが、やっとこの連載も復習モードから、新しい内容へと移っていく。

これまで、主に戦略整合など、ガバナンスの話をしてきたが、まず最初のテーマとして戦略的にプロジェクトを行うことの意味を考えてみたい。


◆問題提起

まず、最初に問題提起をしたい。あなたは、SIプロジェクトの収益責任者(プロジェクトスポンサー)だとしよう。入札により新規顧客のシステム開発の案件を受託した。顧客が契約の際に、RFPに提示した以上の仕様の実現を要求してきた。さて、あなたはどういう対応をするか。

(1)開発予算を変えないことを前提に要求を受け入れる
(2)見積もり提案を楯にとって、拒否する
(3)顧客の意向に沿う再見積を提案し、仕様に見合う契約額を求める
(4)事業責任者の意向に沿う
(5)事業戦略に沿う

講演・研修でよくやるショートエクスサイズなのだが、どこの企業でも(3)と(4)が多い。メーカの場合には、SIプロジェクトを商品開発に変える。

あなたは事業計画で承認されている新商品開発プロジェクトのプロダクトマネジャーである。事業計画では、商品の簡素化による新規市場の開拓を戦略として開発が承認されている。ところが、開発プロジェクトが始まると、営業部門が既存顧客への配慮を求めてきた。平たくいえば、既存顧客にも売りたいので、従来の機能を残したままで、新規の機能を追加した商品にすることを求めている。さて、あなたはどういう対応をするか?

(1)原価を変えないことを前提に営業の要求を受け入れる
(2)事業計画を楯にとって、拒否する
(3)営業の要求を聞き入れることを前提に予算の調整を行う
(4)事業責任の意向に沿う
(5)事業戦略に沿う

こちらの場合、(1)が多い。意図的には、SIプロジェクトの場合と対応しているのだが、(4)はある程度いるが、(3)はほとんどいない。現実的にそうはならないからだろう。

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2011年11月29日 (火)

【PM2.0事始め】第9回 計測可能な目標の設定

Fa◆はじめに

前回は、戦略的アラインメントの6つの成功条件

(1)バランスがとれ、また、よく考えられた目的・目標の設定されていること
(2)明確で、かつ、耐久性のある目的が設定されていること
(3)階層化をきちんとできるようなフレームワークがあること
(4)目標が計測可能であること
(5)ステークホルダの合意形成が行われていること
(6)実行計画が組織としての仮説になっており、実施体制作りが十分であること

のうち、(3)について説明した。今回は、(4)について説明する。


◆プロジェクトの目標はQCDだけでない

プロジェクトの管理において、目標が計測可能であるという条件は当たり前だと思うかもしれない。QCDを目標として設定するならば、定量化されているからだ。

しかし、戦略アラインメントの視点から考えた場合、プロジェクトも目的がQCDの達成だけで終わることは考えにくい。たとえば、トップブランド構築を戦略として策定し、「競争力を持つ商品を開発する」といった目的を設定したとしよう。この目標として、「シェア」のような比較的定量化しやすい指標で目標を設定することはできるが、戦略としてブランド構築を掲げている限り、競争力という目的の中にブランドに関する指標は不可欠だろう。

自社の範囲だけで考えれば、ブランド力を定量化することはできるだろう。定義の問題である。たとえば、認知度とか、購買における影響力とかだ。ところが、このような指標で他社のブランドを評価してみても、適切な評価になっているとは限らない。たとえば、ブランドヒストリーを重視している企業と、単純な認知だけで評価しても競争力の指標としてはあまり適切な評価とはいえないだろう。

このようにプロジェクトの評価指標は必ずしも定量的なものが主流だとはいえず、定量化の工夫をし、メトリクスの設定を行う必要がある。

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【補助線】創造性とプロセス

Process◆プロセスが好きな人と、嫌いな人がいる

PMBOK(R)のプロセスの複雑さとか、ドキュメントの多さなどもやっと受け入れられて、なんとなく落ち着いてきた感がある。

一方で、PMIの今のトピックスはアジャイルである。今年の4月から、プロフェッショナル認定制度(Agile PMP)のトライアルが始まり、北米の年次大会でも年々、発表が増えている。アジャイルの活動は興味深い。PMIとしてはプロジェクトマネジメント、プログラムマネジメントやポートフォリオマネジメントのような標準を持たずに展開している。さし向き、アジャイルウェイのようなとらえ方をしているように見える。

世の中には、プロセスが好きな人と、嫌いな人がいる。プロセスが適したプロジェクトとプロセスは適さないプロジェクトがある。トラディッショナルなプロジェクトマネジメントとアジャイルの境界はここにあるのかもしれない。

そもそも、標準とは何かという議論もある。標準というのは、それを適用することによって確実にうまく行くメソドロジー(方法論)である。プロセスを標準にするということは、メソドロジーの適用の仕方を限定しているということで、たいへん、勇気のいることだ。




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2011年11月22日 (火)

【PM2.0事始め】第8回 階層的フレームワーク

Fa◆戦略アラインメントとは縦の関係と横の関係の整合

前回は、戦略的アラインメントの6つの成功条件

(1)バランスがとれ、また、よく考えられた目的・目標の設定されていること
(2)明確で、かつ、耐久性のある目的が設定されていること
(3)階層化をきちんとできるようなフレームワークがあること
(4)目標が計測可能であること
(5)ステークホルダの合意形成が行われていること
(6)実行計画が組織としての仮説になっており、実施体制作りが十分であること

のうちの(2)について説明した。今回は(3)について説明する。

プロジェクトからみると、上位のビジネスの目標であったり、戦略ゴールとの整合という縦の階層が問題になるが、この話がややこしいのは同じ戦略の元に、同じレベルの部門があり、その部門間で競合が起こることがあり得ることだ。

たとえば、戦略ゴールは顧客のビジネスの支援をすることであったとしよう。この戦略の元で行われる商品開発プロジェクトの目的は顧客ビジネスのリードタイム短縮を取り上げ、その目的を達成するような商品の開発をしようとした。ところが、マーケティング部門はすでにリードユーザを心づもりしており、その顧客はコストダウンを中心に考えていた。開発部門が構想する商品ではリードタイムの短縮の期待はできるものの、コスト削減の効果はほとんどないと思われる。

このときに、戦略ゴールとの整合は単に上下の話だけではなく、横の整合も実現されなくてはならない。

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アジャイルプロジェクトマネジメント入門(3)~アジャイルマインド:アジャイルの価値観

Agile2アジャイルには独特の価値観がある。従来のプロジェクトマネジメントとの対立軸を上げてみよう。右が従来の価値観であり、左がそれに対応するアジャイルの価値感だ。

(1)コミュニケーション>プロセス
(2)プロダクト>ドキュメント
(3)変化への対応>計画
(4)市場や顧客との対話>要求分析・市場調査
(5)自律>統制


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2011年11月21日 (月)

【お知らせ】PM養成マガジン1000号感謝イベント

1000PM養成マガジン編集長の好川哲人です。こんにちは。

おかげさまをもちまして、PM養成マガジンでは、11月8日に通算1000号を発行できました。また、来年には、10周年を迎えます。メルマガはすぐに刊行できますが、読者がいなければメルマガにはなりません。これだけ継続できたのは、ひとえに読者の方のおかげです。ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。

1000号を機に、活動を見直すべく、アンケートを行い、振り返りと今後の方向性について、いくつかの記事を書きましたが、それについてはメールの末尾にリストを載せています。

1001号より新たな気持ちで、メルマガを発行しようと思っています。

1000号までは

「プロフェッショナルとしてのプロジェクトマネジャー」

をグランドテーマにして活動をしてきました。初期のころに行っていた読者セミナーの多くは、プロフェッショナルをテーマにしたり、意識したりしていました。

節目の1000号を迎えるにあたって、読者の声も参考にいろいろと考えました。

結論として、1001号からは

「リーダーとしてのプロジェクトマネジャー」

をグランドテーマにしたいと思っています。

ご承知のようにリーダーは職位には関係のない概念で、経営トップもリーダーですし、現場の2人チームを引っ張っている人もリーダーです。リーダーといっても、役割も期待も異なるわけです。もちろん、プロジェクトマネジャーにもリーダーシップが重要だという認識は年々高まってきています。

では、プロジェクトマネジャーは、どのようなリーダーであることを求められているのでしょうか?これが1001号から議論したいことです。

まず、このテーマについて最初にみなさんと議論をしてみたいと考え、読者セミナーを開催することにしました。多くの方の参加をお待ちしています。

実は、プロフェッショナルからリーダーへというのは、好川の経験でもあります。現場の仕切り役としては、経験も自信も持っていたところに任されたあるプロジェクトは、それまでとテーマへの近さも、ステークホルダも違うものでした。しばらくして、今までのやり方では駄目だと気づき、発想をがらりと変えてプロジェクトを成功に導いたことがあります。

この経験を通じて、学んだプロジェクトマネジャーのあり方をお話し、そのあと、全員で「リーダーとしてのプロジェクトマネジャー」というテーマで、ダイアログを行いたいと思っています。

また、終了後、忘年会と1000号記念を兼ねた懇親会を行いたいと思っています。こちらも奮ってご参加ください。


━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【PM養成マガジン1000号記念セミナー:プレ10周年イベント】
リーダーとしてのプロジェクトマネジャー~プロジェクトマネジメント再入門
日時:2011年12月10日(土)  14:00-17:00(13:30受付開始) 
場所:ヴィラフォンテーヌ汐留(東京都港区)
講師:好川哲人(PM養成マガジン編集長)
詳細・お申込 http://www.pmstyle.biz/smn/pm_magazine1000.htm
主催 PM養成マガジン(運営:PMstyle)
PDUの発行について:ご相談ください。
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【カリキュラム】
1.リーダーシップとマネジメント
2.プロジェクトリーダーとはどのような存在か
3.プロジェクトリーダーにとってのプロジェクトマネジメント
4.プロジェクトリーダーに必要なプロジェクトマネジメントスキル
5.ダイアログ
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。