◆イノベーションで得られる収益はパフォーマンスエンジンに依存する
イノベーションの実行の議論の中で、見逃せないのはパフォーマンスエンジンとの関係だ。
パフォーマンスエンジンは定常業務を行う組織や人、あるいはプロセス(仕組み)のことだ。一般にイノベーションは製品やサービス、プロセスなどを革新する。そして、革新された製品が定常的に生産・販売されるようになったり、サービスが定常的に提供されるようになることにより、初めてイノベーションが収益化される。具体的には製品の場合、生産設備や、販売チャネルをどれだけ活用できるか、サービスの場合、現在の人材への投資がどれだけ活用できるかがポイントになってくる。
このようにイノベーションでどれだけの収益が得られるかはパフォーマンスエンジンとの関係に大きく影響を受ける。まず、この点を頭に入れておいてほしい。
ところが、イノベーションと定常業務は、その比率の議論はされることはあるが、そもそも、どのような関係かという議論がされることは少ない。
3月~4月にかけて、プロジェクトマネジメントオフィスやエムアンドティのウェブ上のサービスにいろいろと変化がありましたが、4月末までにやっと終了しました。整理しておきます。
[1]PMstyleホームページ
全面的にリニュアルしました。
http://pmstyle.biz/index.htm
バックナンバー https://mat.lekumo.biz/ppf/cat9922971/
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◆提案についてどう思う?
あなたが、自動販売機メーカの幹部で、社員から以下のような自動販売機の提案をうけたらどうしますか?
(1)金や銀が購入できる自動販売機
(2)自転車レンタルの自動販売機
(3)生の魚介類の自動販売機
この質問はリサ・ボルデさんの「会社をつぶせ」という本にあったものを編集したものである。これらの自動販売機はすべて実在し、ある程度成功をしているものだそうだ。金の自動販売機は米国で、自転車レンタルはオランダ、生の魚介類は中国の地下鉄にあるどうだ。
実は本では、これ以外に牛乳の自動販売機というのがあってインドで多く設置されているらしい。牛乳の自動販売機といえば日本の温泉に多数あるので抜いたのだが、ひょっとするとインドで展開されているのは生乳かもしれない。
リサ・ボデル(穂坂 かほり訳)「会社をつぶせ―ゾンビ組織を考える組織に変えるイノベーション革命」、マグロウヒル・エディケーション(2013)
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◆スマートリスクマネジメント
戦略ノート第2回。実質的な初回なので、何について書こうかと思って少し迷ったが、スマートリスクという話題を選んだ。
スマートという言葉がはやり言葉になっているが、リスクにもスマートという言葉が使われるようになってきた。「スマートリスク」である。スマートリスクって初めて聞くという人も多いと思うが、スマート=賢いで、「賢いリスク」という意味。リスクが賢いわけではなく、リスクをとることが賢い、つまり、妥当であるという意味だ。
システム開発のように失敗をすることが許されないオペレーション型のプロジェクトの場合、リスクはできるだけ回避したい(とりたくない)。だから、技術にしろ、工法にしろ、プロセスにしろ、できるだけ新しいことをしたくない。これがリスクマネジメントの本分であり、この体質がしみ込んでいるのがイノベーションができない一つの理由だ。
イノベーションのリスクは取ってナンボだ。リスクをとらないということは、イノベーションをしない(新しいことをしない)ということに等しい。取ったリスクをなんとか潜り抜けながらプロジェクトを進めていくことがリスクマネジメントの本分である。
PM養成マガジンの戦略ノートにスマートリスクのマネジメントについて書いたことがあるので、こちらも参考にしてほしい。
【戦略ノート278】スマート・リスクマネジメント
https://mat.lekumo.biz/ppf/2012/02/note278.html
前回、イノベーションプロジェクトの中止について話をしたが、中止をどのように扱うかというのと同じくらい難しい話が、「失敗」の話である。
イノベーションでは失敗を認めなくてはだめだという議論がある。観念的にはそのとおりなのだが、この話はそんなに単純な話ではない。失敗の仕方の問題で、全力を尽くして失敗したのと、適当にやって失敗したのでは全く意味が違う。適当というのは、自分がそこに投入できる時間の中で全力を尽くすという意味だと思ってほしい。
イノベーションのようなテーマをやるのに適当にやる人はいないだろうと思う人がいるようだが、これが実に多い。むしろ、適当にやる人の方が多いかもしれない。これは、評価の問題が絡んでくるが、イノベーションは難しさの割には評価されない一面がある。
前回、ステージゲートの話をしたが、ステージゲートを導入している企業の話を聞いてみると、必ずしも、ステージゲートの理念通りに運用されているとは言い難い状況にあるという話をよく聞く。具体的にいえば、ゲートの評価が厳密に機能していない。
その理由が、プロジェクトを中止するプロセスがないことだ。この問題は別にイノベーションや製品開発に限ったことではなく、プロジェクトマネジメント全般の問題である。今回はこの問題について考えてみよう。
一般論として、イノベーションプロジェクトはアイデア出しから、実行段階に移るところでプロジェクトとして組織が承認して、予算をつけていることが多い。ステージゲートでいえば最初のアイデアの絞り込みゲート以前は予算をつけず、最初のゲートを通過したアイデアがプロジェクトをして予算をつけられる。
アイデア出しまでの取り扱いは多様である。もちろん、アイデアの段階からプロジェクトとしている組織もなくはないが、一般的ではない。部門の予算でまかなったり、15%ルールのように予算管理の俎上に載せないというやり方をしているところもある。
欧米の多くの企業がイノベーションの管理に採用しているのが、ステージゲートである。日本でもステージゲートを採用する企業が増えてきた。
ステージゲートという言葉は一般的な用語であるが、ステージゲートといえばロバート・クーパーのステージゲート法というくらい、代表的な手法だ(注)。日本でも、昨年やっと、ロバート・クーパーの翻訳が出版されたので、イノベーションのマネジメントをする立場の人は目を通しておくといいだろう。
ロバート・G・クーパー(浪江一公訳)「ステージゲート法――製造業のためのイノベーション・マネジメント」、 英治出版(2012)
バックナンバー https://mat.lekumo.biz/ppf/cat9922971/
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◆はじめに
「イノベーションの理論と実際」という連載の構想をしている中で、ある人とイノベーションに関してどんな情報提供がいいのだろうというやり取りをしていたら、PM養成マガジンの戦略ノートのような何でもありというスタイルがいいのではないかという話になった。確かにそうだと思い、連載のタイトルを本タイトルに変えた。
不思議なもので、タイトルを変えるだけで、いろいろな発想が湧いてくるものだ。
この連載はイノベーションに関して、さまざまな視点から考えたこと、感じていること、学んだことなどを、気の向くままに書いていこうと思う。
日本でプロジェクトマネジメントが注目されだしたころ、マネジメントと管理はどう違うのかという議論があった。今、どうなっているかというと、管理の色合いが強まってきて、マネジメントの色合いが褪せている。
この議論の不幸なのは、マネジメントか管理かという二項対立で考えてしまうことである。本来、管理というのはマネジメントの一つの活動であり、不可欠な活動である。二項対立で考えた瞬間に、管理があればマネジメントはいらないという話になって、マネジメントの活動はプロジェクトマネジャー個人のレベルの活動になってしまっている。
そして、プロジェクトマネジメントは多くの企業が「プロジェクト管理」と読んでいるように、文字通り、管理活動になっている企業が多い。そして、それまでに行っていた品質管理の活動に、リスクマネジメントというスパイスをかけたものになっている。
そして、プロジェクトマネジャーは、ひたすら、リスクマネジメントと品質マネジメントをやっている。
好川哲人
技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。
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