【補助線】「プロジェティスタ」 再起動
◆過去の活動の振り返り
2008年8月~9月に補助線の記事として
【補助線】プロジェクトマネジャーから、プロジェティスタへ
【補助線】出でよ!プロジェティスタ!
という記事を書いた。また、その後も
【補助線】洞察とプロデュース
といった記事を書いてきた。
また、2009年から「プロジェティスタ研究会」なるものを立上げ、同研究会とPMstyleの共催で、2010年5月~2011年3月にかけて、東京で5回、関西で1回、イノベーションをテーマにしたワールドカフェを行った。2011年3月のワールドカフェは11日に開催し、第2ラウンドをやっている最中に東日本大震災が発生し、古い施設だったので結構、怖い思いをした。
【PMstyleCafe】プロジェティスタ研究会主催ワールドカフェ(5月19日)報告
さらに、2010年~2011年にかけて何度か、
「プロジェティスタの仕事術」
というセミナーを行った。
プロジェティスタについては、震災をきっかけに時間が止まってしまった。震災後のいま、本当に必要な人材はプロジェティスタだという思いはあるのだが、動けなかった。
◆再起動にあたってのフレーミング
動きが止まって1年になるので、そろそろ、再起動したいと思っている。再起動にあたって、もう少しフレーミングをすべきではないかと思うようになった。
僕がプロジェティスタのバイブルだと思っているエンツォ・マーリ氏の「プロジェクトとパッション」では、プロジェティスタはデザイナーであるとされている。
エンツォ・マーリ(田代 かおる訳)「プロジェクトとパッション」、みすず書房(2009)
エンツォ・マーリ氏のいうデザイナーはかなり広い意味のデザイナーで、簡単にいえば、「デザイン思考」を駆使して、創造的な活動を行っている人だと言える。我々が関わっている領域でいえば、プレイングマネジャーはすべてプロジェティスタとして仕事ができるし、また、プロジェクトでいえば、プロジェクトイニシエーターはプロジェティスタとして仕事ができる。このイメージを明確に表現しているのは、野田稔先生である。野田先生は、SASや福山雅治が所属するアミューズに所属され、明治大学や、株式会社ジェイフィール、株式会社リクルートワークス研究所などを中心に活動をされている。野田先生が2008年にまとめられた
野田 稔+ミドルマネジメント研究会「中堅崩壊―ミドルマネジメント再生への提言」、ダイヤモンド社(2008)
の中で、プロジェティスタのイメージを以下のように述べられている。
まず、自らプロジェクトを発案する。プロジェクトの内容はさまざまだ。新事業開発や新製品開発であったり、新しい技術開発、新しいチャネル開発、はたまた新しいマーケティング手法の発案でもいい。あるいは組織改革や情報システムの構築や改善といった改革プロジェクトもあり得る。もちろん、顧客のビジネスを成功させるための提案であってもよい。何であれ、何かを「企てること」から始まる。
もちろん、社内から、プロジェクトのリーダーとして指名されることもある。そのプロジェクトにアサインされると、その部署に張り付いてプロジェクトを推進し、期待を上回る成果を上げる。
一言でいえば、「ビジネスの創造者」である。
ここではプロジェティスタとは、ビジネスの創造者であるというスタンスを取る。ビジネスの創造者にはいろいろな意味がある。事業を創る、新しい商品を創る、顧客を創る、プロジェクトを創るといったイメージに近いものから、技術を創る、改善を行うというのもビジネスの創造である。つまり、ビジネスに対して主体的な立場で行う活動はすべて、ビジネスの創造だといってもよい。
◆プロジェティスタの活動
では、ビジネスの創造者はどのような活動をするのか?これが次の問題である。ここでは、「クリエイティブプロジェクトマネジメント」というキーワードで括りたい。ビジネスの創造はマネジメントだけの仕事ではない。しかし、プロジェティスタの活動は一人でやるような活動ではなく、多くの異なる専門の人たちを巻き込んでいき、コラボレーションしながら行う活動である。その意味で、マネジメントとリーダーシップである。もちろん、自分自身も一人の専門家であるかもしれず、専門家としての顔もあるが、自分も含めて全体を動かしていく活動である。
ここでもう一つ、クリエイティブプロジェクトマネジメントという名称を使っている理由がある。それは、「クリエイティブ・クラス」のプロジェクトマネジャーという意味だ。
「クリエイティブ・クラス」は、米国ジョージ・メイソン大学公共政策大学院のリチャード・フロリダ教授が提唱している言葉で、建築家、美術専門家、エンジニア、科学者、芸術家、作家、上級管理職、プランナー、アナリスト、医師、金融・法律の専門家など、高度にクリエイティブな職に就いている人を「クリエイティブ・クラス」と呼んでいる。
プロジェクトマネジャーにも「クリエイティブ・クラス」がある。それがプロジェティスタだと考える。
ただし、この議論は人がクリエイティブかどうかの議論ではなく、すべての人はクリエイティブであるという前提でクリエイティビリティの発揮が報われるかどうかという議論である。クリエイティブ・クラスはクリエイティビリティの発揮が報われる人たちであるといってもよい。
◆クリエイティブプロジェクトマネジメント活動
さて、では、クリエイティブプロジェクトマネジメントとはどのような活動なのか。大きくは以下の7つである。これができれば、野田先生のいわれるような活動はできる。
・ビジョンを掲げ、プロジェクトを立ち上げる
・変革をフレーミングする
・社内外の人々を巻き込む
・チームを動かし、問題を解決する
・イシューの管理
・行き詰ったプロジェクトを立て直す
・ビジョンを実現するための人創り
◆実践方法としてのゲームストーミング
さて、これらを活動をどのように行っていくか。プラクティス(実践方法)は何か?これが最後の問題である。この問題に対して、以前は世の中にあるいろいろな手法を駆使してという考えだった。これらの活動へのアプローチはたくさんあり、自分の好みのアプローチを探して使っていけばよいと思う。その意味で、これまでアプローチそのものについてはあまり触れてこなかった。
この考えはあまり変わっていないが、体系化した方法論が出てきた。それが、PM養成マガジンの10周年記念セミナーの第1弾に取り上げた「ゲームストーミング」である。
ゲームストーミングに取り入れられているゲームを使うと、これらの活動はかなり高いレベルでできるようになると思われる。今回、再起動にあたって、ゲームストーミングをプロジェティスタのスキルとして位置づけていきたいと考えている。
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