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2008年8月12日 (火)

プロジェティスタが日本を救う!

447800465x 野田 稔+ミドルマネジメント研究会「中堅崩壊―ミドルマネジメント再生への提言」、ダイヤモンド社(2008)

お薦め度:★★★★★

日本の高度成長を支えてきたミドルマネジメントが崩壊しつつある現状を丁寧に分析し、再生のための提言をした一冊。

まず、問題の全体像を示すのに面白い資料を引用している。(社)日本能率協会「2006年度経営革新提言」からの資料で、1985年の課長を取り巻く環境と、2007年の課長を取り巻く環境というタイトルの図である。この中で課長と係長、課長と部長の間の関係を抜粋してみると

■課長→部長
<1985>
・ちゃんとやりますから、口を出さないで下さい
・私のことを取り立ててくださいね
・困ったときは頼りにしてます
<2007>
・人を回して下さい
・もっとトップや人事と交渉してください
・部長の立場も分かるけど、そりゃ無理ですよ

■部長→課長
<1985>
・任せたからちゃんとやれよ
・何かあったら早めに言って来い。社内外の人脈と調整力で何とかしてやる
<2007>
・成果を出せ、もっと働け
・降格もあるぞ、昇進しないと給料も上がらないぞ
・お前が働いて稼げ

■課長→部下
<1985>
・俺の言うことを聞いておけ間違いないぞ
・何かあったら俺に任せろ
・飲みに行くぞ、ついて来い
<2007>
・目標は必要だぞ、成果を出してくれ
・やめられたら困るな
・精神不調にならないでほしい

■部下→課長
<1985>
・さすがだ、知識も情報もすごい
・課長はすごいや
・会社のお金で、飲みに連れて行ってもらえる
<2007>
・あんなふうにはなりたくない
・憧れる存在ではない
・私のほうがもっとパフォーマンスが高い

といったもので、課長の置かれている立場の厳しさがよく分かる。

本書ではこれをさらに詳細に調査・分析し、ミドルマネジャーを

・マネジャー
・プレイングマネジャー
・プレイヤー

に分けて、活動、能力、キャリアに対する意識などについて調査をしている。この中で面白いのは、自身の責務の中で重要な項目の調査である。以下のような結果になっている。
1.プレイヤーとして成果を上げる(84,62,12)
2.組織成員になすべき業務を指示(13,67,73)
3.組織成員の育成(12,66,61)
4.部下の業務を管理監督する(9,62,65)
5.成果の上がる仕組みやプロセスを構築(19,56,53)
6.組織成員のやる気を引き出す(9,63,61)
7.部下に組織の上層部や組織の外らかの情報を伝える(8,59,60)
8.上司と部下の間をつなぐ連結ピン(22,50,39)
()はプレイヤー、プレイングマネジャー、マネジャーの順で%、四捨五入)

次の章では、伊藤忠商事の丹羽会長とのミドルの在り方に対するたいへん、興味深い対談がある。

これらを踏まえて、後半の提言になっている。提言では、まず、ミドルを重視した人事政策をとっている企業としてシャープ、リクルート、GE横河メディカルシステム、伊藤忠商事、トヨタ自動車の5社をあげてかなり詳しく解説している。これが次の章での提言の伏線になっている。

提言では、「プロジェティスタ」というキーワードが中心になっている。プロジェティスタはイタリアで存在している職業で、一言でいえば独立して、中小企業がプロジェクトを実施するときにそのプロジェクトマネジメントを引き受ける。イタリアでは、95%以上の企業が従業員9人以下という中小企業で、「中小企業の輸出比率は60%に達する」そうだ。イタリア企業の全体としての強みは、各企業間で縦横に張り巡らされた水平ネットワークであり、ネットワーク環境で活躍し、ある意味でこのネットワークを支えているのがプロジェティスタという職業なのだ。本書の提言は、このプロジェティスタを社内ロールとしてミドルマネジメントに導入していくこと、そして、それをキャリアの柱にしていくことを中心に構成されている。

最後に、プロジェティスタをミドルマネジメントのロールとしたときに、どのようなコンピテンシーが必要かを分析している。

悩めるミドル、ミドルに対して「あんなふうにはなりたくない」、「憧れる存在ではない」、「私のほうがもっとパフォーマンスが高い」といった思いを持つジュニアマネジメント必読の一冊。

【目次】

第1章 長期不況がもたらしたミドル崩壊の実相
第2章 バブルミドルの焦りと問題意識―ミドル&ジュニア1000人アンケート調査結果
第3章 丹羽宇一郎会長が考えるミドル問題の本質
第4章 ミドルマネジメント・エクセレンスに向けた先進事例
第5章 創造するミドルのための新たなキーワード
第6章 ミドルマネジメントに必要なコンピテンシーを探る

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