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2011年4月

2011年4月11日 (月)

【戦略ノート223】「シンプル」考(1) 顧客とユーザ

◆複雑化する成果物と厳しくなる制約

今、多くのプロジェクトが頭を抱えている非現実的ともいえる制約条件の根源にあるのが、成果物の複雑さである。複雑な機能の商品に複雑さを実現している組み込みソ
フトウエア、複雑な情報システムなどだ。

この問題の本質は、ユーザはほとんど使わないだろうと思える機能を追加することにより、プロジェクトの制約が厳しくなっていることだ。なぜそのようなことをしているかというと、誰も「意思決定」をする人がいないからだ。言いかえると、戦略的な発想がないからである。

もう少し異なる視点でみると、顧客の声を聞きながら、顧客のことを考えていない。
顧客に言われる通りに作る。それが不便であろうが、使わないものであろうが、顧客が望んだ機能だ。そこにはユーザという視点がない。

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【戦略ノート222】戦略類型とプロジェクトマネジメント

◆プロジェクトの2つの側面

プロジェクトには2つの側面がある。ひとつはビジネスであり、ひとつはオペレーションである。プロジェクトマネジャーはこの両方をマネジメントすることを求められる。これがプロジェクトマネジメントの難しさの本質でもあり、品質管理とプロジェクト管理は違う理由でもある。

PMIでは、オペレーションのマネジメントをプロジェクト(プログラム)マネジメントとして行い、ビジネスのマネジメントはポートフォリオマネジメントなどの経営システムの中で行うように整理している。したがって、プロジェクト(プログラム)マネジメントはプロジェクトポートフォリオなどの形で表明された経営の意図を正確に実現することが求められる。

P2Mでは、オペレーションとビジネスのマネジメントの両方をプログラムマネジメントとして行う。プログラムの中に経営があるといってもよい。

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【戦略ノート221】モチベーション3.0とプロジェクト課題

◆モチベーション3.0

最近、モチベーション3.0という言葉をよく見かけるようになってきた。東洋経済で3月27日に「新しいやる気のかたちモチベーション3.0」という特集が組まれ
たのが火付けになったように思う。このあと、この言葉をよく目にするようになった


最近では、「フリーエージェント」という著作が日本でも注目されたダニエル・ピンクの「Drive」という本が日本では、大前研一氏の訳で「モチベーション3.0」とい
うタイトルで出版されて注目を浴びている。

東洋経済3月27日「新しいやる気のかたちモチベーション3.0」(この特集号はアマゾンでは売り切れている)

ダニエル・ピンク(大前 研一訳)「モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか」、講談社(2010)


まず、ダニエル・ピンクのいう、モチベーション3.0とは何かを説明しておこう。
ピンクによると

モチベーション1.0:生存を目的とするモチベーション
モチベーション2.0:信賞必罰に基づく与えられた動機づけによるモチベーション
モチベーション3.0:自分の内面から湧き出る「やる気」に基づくモチベーション

とされる。

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【戦略ノート220】ポジティビティがプロジェクトをドライブする

◆ポジティブであることを求められるアメリカ人

米国人と一度でも仕事をした経験がある人はお分かりだと思うが、米国人は常にポジティブであることを求められる。日本人だと、例えば「みんなで仲良くやりなさい」
と求められるのと同じような感覚だと言えよう。

バーバラ・エーレンライクというジャーナリストが、この問題を指摘した本がある。

バーバラ・エーレンライク(中島由華訳)「ポジティブ病の国」、河出書房新社
(2010)


多少、風刺的ではあるが、この本を読むと、米国人のポジティブであることに対する執念のようなものを感じ取れる。もちろん、その効用についても多くの指摘がある。

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【戦略ノート219】意思決定としてのリスクマネジメント

◆AさんとBさんの予備時間のマネジメント

リスクマネジメントはプロジェクトマネジメントの中でもっとも進んでいる分野であるが、理解されているようで意外と理解されていないことがある。それは、リスクマネジメントは「意思決定」であるということだ。今回は、このテーマについて考えて見たい。

まず、一つ考えて見て欲しいことがある。

T1~T10までのタスクがある。番号の小さい方から順番に行うタスクである。作業時間の見積もりは500時間だとする。

Aさんは、500時間に対して、10%となる50時間の予備時間をとり、全部で50時間の見積もりをした。これに対して、Bさんはそれぞれのタスクの内容を考え、T1~T10までの仕事に別々に予備時間を割り付け、トータルで50時間の予備時間をとった。トータルの予備時間は双方とも50時間であるが、どう異なるのだろう。

まず、Aさんのやり方だと、問題が起こるごとに予備時間を費やしていく。最終的に予備時間が足らなくなったところで、やり方を変えたり、成果目標を変えたりする。
仮にT1より、T10の方が成果として重要であれば、満足な成果は得られない。

逆にBさんのやり方だと、個別のタスクで予備時間がオーバーしたら、全体をどうするかを考えることになる。たとえば、T1が80時間で、予備時間を10時間とっていたとしよう。すると、T1に90時間を費やしたところで、T1をどうするかと同時に、T2~T10をどうするかを考えることになる。当然、どのタスクが重要かを考え、T1よりT10が重要であれば、T1に費やす時間を極力小さくなるように成果目標を変える。逆にT1が他のタスクより重要なタスクであれば、T1にもう少し時間を費やし、予定した成果を得るまで続けることもある。

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【戦略ノート218】PM2.0宣言

◆プロジェクト2.0

プロジェクトマネジメントの世界的な標準であるPMBOKの第1版が出て、15年になる。ここにきて大きな変容が見られる。個別のプロジェクトの管理から、経営上関連する複数のプロジェクトの一括管理へと視野が広がってきたことだ。これは、PMOだけではなく、欧州を中心に利用されている標準であるICBやPRINCE2にも見られる傾向である。さらに、日本で2001年に独自のプロジェクトマネジメント標準として誕生したP2Mにおいては当初から複数プロジェクトの管理を前提にしたものになっている。P2Mは先進的だということで、国際的な評価が高いのはこのためである。

このような変容が意味することは、プロジェクトそのものが現場のオペレーションから、経営のオペレーションに重心が移っていることである。PMstyleでは、経営(あるいは戦略)オペレーションとしてのプロジェクトを第2世代の位置づけのプロジェクトという意味でプロジェクト2.0と呼んでいる。

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PMサプリ262:情報ではなく、認識を共有する

「行動」は強制できても、「認識」は強制できない(岡本薫、政策研究大学院大学教授)

【成分】
◆日本的モラリズムとは
◆強制と動機づけ
◆認識は強制できない
◆コミュニケーションとは何か
◆ルールだけでは何がまずいのか
◆コミュニケーションと情報伝達は異なる

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PMサプリ261:マネジメントの正解はいつも3つある

マネジメントの正解はいつも3つある(中島孝志、経営コンサルタント)

【成分】
◆マネジメントに正解はないとは
◆Aか、Bか
◆Cを考えるとどうなるか
◆マネジメントでは常に3つの答えを考える

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PMサプリ260:強いリーダーは試練のときに回りの人の力を借りる

強いリーダーほど、厳しい試練に出会った時にまわりの人たちの力を借りている(ジェームズ・ウィット、米国連邦危機管理庁・元長官)

【成分】
◆外部との戦いでは統率力が必要
◆内にある問題との戦いでは、その場にいる人の力が必要
◆トラブルで孤軍奮闘するプロジェクトマネジャー
◆腹を括って、メンバーの力を借りる

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PMサプリ259:コスト意識が仕事を効率的にする

コスト意識のある職人の仕事は効率的で、現場で発生する無駄を極力省いている(阿久津一志、一級左官技能士)

【成分】
◆コスト意識がないと嘆く管理者
◆タンジブルコスト削減の前提
◆タンジブルコストに視点が移る
◆品質優先のためにはコスト意識が必要
◆コスト意識を高めるために

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。