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2011年4月

2011年4月11日 (月)

【戦略ノート233】ホールシステムアプローチとプロジェクトマネジメント(1)~ホールシステム・アプローチの重要性

◆ホールシステム・アプローチとは

戦略ノートの新しいスレッドとして、ホールシステム・アプローチのスレッドを立てることにする。いろいろな意味でずっと関心のあった分野だ。

ホールシステム・アプローチとは、組織や分野の境界を超えてできるだけ多くの関係者が集まり、自分たちの課題や目指したい未来について話し合う大規模な対話の手法である。ホールシステム・アプローチの代表的なものには、ワールドカフェ、OST、アプリシエイティブ・インクワイアリ(AI)、フューチャー・サーチなどがある。

次に、なぜ、プロジェクトマネジメントでホール・システムアプローチが重要かという問題に触れておく。プロジェクトマネジメントでホール・システムアプローチが必要になるのは、広い意味でのコンフリクトを前向きに解消するためである。

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【戦略ノート232】シンプリシティ考(5)制約があるのでシンプルになる

◆「○○絶対」

「○○絶対」という考え方がある。例えば、「品質絶対」、「納期絶対」といった考え方もあれば、「顧客絶対」といった考え方もある。

「絶対」といえばいかにも明確な方針を打ち出し、意志決定をシンプルにしているように見える。しかし、これはレトリックであり、実体は何も言っていないに等しい。

にもかかわらず、なかには、「○○絶対」は全社的な価値感であり、その是非について議論をすることすら難しいといった風土の企業もある。総じていえば、「○○絶対」はものごとをシンプルにするどころか、一層複雑にしている。今回はこの問題を話題にしたい。

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【戦略ノート231】シンプリシティ考(4)問題はプロジェクトリーダーだ

◆リーダーシップの欠如がプロジェクトを複雑にする

前回、プロジェクトをシンプルにするにはリーダーシップが重要であることを述べた。今回はこの問題をもう少し、高い視点から考えてみたい。もう一度、コッター博士のリーダーシップとマネジメントの定義を確認しておく。

マネジメント:現在のシステムを機能させ続けるために、複雑さに対処することリーダーシップ:現在のシステムをよりよくするために、変革を推し進めることである。

この定義に従うと、プロジェクトマネジメントは現行のプロジェクト業務の方法や、プロジェクトマネジメントプロセスを前提にして、如何にその中でプロジェクトをやりきるかに対する相違工夫だといえる。実際に、プロジェクトの現場で行われているプロジェクトマネジメントはそういうものだろう。

でも、プロジェクトリーダーはどこに行ってしまったのだろうか?

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【戦略ノート230】品質マネジメントからプロジェクトマネジメントへ

◆「品質優先、コスト、納期は柔軟に対応」

製造業やSIでは、プロジェクトマネジメントを品質マネジメントの拡張だと考えているケースが多い。組織を見ても、品質管理部門の中にPMOを設置したり、あるいは、品質管理部門をPMOに組織替えしているケースもある。

その品質のマネジメントも20年前と較べると大きく変わっている。20年前であればユーザが不都合だと考える事象は品質に問題があると考えられてきた。しかし、今は商品の複雑化に伴い、すべてのユーザが了とする「絶対品質」というのは無くなりつつある。そこで、商品毎に「品質がよいとはどういうことか」を計画し、顧客や市場と合意しなくてはならなくなっている。言いかえると瑕疵(問題であるという状態)の定義をしなくてはならない。もちろん、提供サイドに品質メトリクスがなくなったわけではないが、知覚的なレベルの品質で市場との合意ができない商品は問題を引き起こす。少し前に世の中を騒がせたトヨタプリウスのブレーキの問題はまさにそうだろう。

このように考えていくと、プロジェクト品質という考え方の合理性が見えてくる。成果物の品質も含めて、(プロジェクト)品質とは計画の精度であると整理できるからだ。つまりは、プロジェクトマネジメントを品質マネジメントの延長線上に取るということは自然である。

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【戦略ノート229】シンプリシティ考(3)~増築から減築へ

◆はじめに

今回のテーマは、この問題の本質に迫るテーマだ。商品を複雑にしたいと思っているメーカの開発者もいない。システムをできるだけ複雑にしたいと思っている情報システム部門の担当者もいない。しかし、プロジェクトで生み出される商品や情報システムはどんどん、複雑になっていく。なぜだろうか?

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【戦略ノート228】「シンプリシティ」考(2) ドラッカーでダイエット!

◆お詫びと訂正

8月6日の第1回(戦略ノート223)から久しぶりのシンプルシリーズ第2回。第1回配信後に若干名から、ヘッダーを間違っていると指摘されました。間違っていました。このためひょっとすると第1回ってどこだと思われた方もいらっしゃるかもしれません。戦略ノート223が第1回です。お詫びとともに、訂正させて戴きます。

 [1-1]戦略ノート(223)
      「シンプル」考(1) 顧客とユーザ

です。

もう一つ、第1回の記事のタイトルというか、言葉使いについてシンプルという形容詞はおかしいのではないかという意見を頂いた。まあ、カタカナ英語の場合、形容詞を名詞で使うことはままあると思うのだが、この場合には、simplicityという正しい単語があるので、こちらを使うことに決めた。というわけで、サブタイトルが「シンプル考」から、「シンプリシティ考」になっている。なんとなくかっこよくなったかな。シンプルではないような気もするが。

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【戦略ノート227】プロジェクトの成果物と組織の成果

◆プロジェクトの成果について考える2つの事例

プロジェクトで成果を上げるとはどういうことだろうか?こんな基本的な話題を改めて考えて見た。

わかり易い話から入ろう。SIベンダーは得意先からある業務システムの受託開発プロジェクトを受注した。SIベンダーは得意先の要求通りのシステムを開発し、引き渡した。しかし、得意先は満足しなかった。システムの仕様は自分たちの指定した通りであることを認めつつも、できあがったシステムでは自分たちの狙っていた効果を出すことがないないと主張。全面的な改定を要求した。長年のつきあいは何のためだとまでいった。これに対して、SIベンダーは契約を楯にとって自分たちの仕事の正当性を主張。結局、得意先はSIベンダーとの取引を打ち切るという事態に発展した。

議論したいことは、どちらに非があるかではない。非があろうが無かろうか、SIベンダーが得意先を一つ失い、年間数億円の売上げを失ったことは紛れもない事実である。仮に顧客に非があるとしても、失ったものを取り返すことはほとんど不可能だろう。

もうひとつ、今度は多少複雑な話。あるメーカでは、新商品の開発プロジェクトを実施した。そして、開発部隊はコンセプト通りの商品を開発した。企画者はコンセプト通りだと評価し、品質レベルも上々だった。ただ、不幸なことにまったく売れなかった。売れない商品を作ると振り返りという名の犯人捜しが始まる。犯人捜しの中で、開発リーダーがこの仕様では売れないということを指摘していたことが判明した。当然、なぜ、その意見を企画担当に伝えないかという議論になった。聞いてみると一度伝えたが、歯牙にもかけられなかったというのが真相らしい。

ここでも議論したいことはどちらに非があるかではない。いまさらそんな議論をしても手遅れだ。

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【戦略ノート226】ガラパゴス化について考えてみた

◆ガラパゴス化とはなにか

10月28日に実施するプロジェクトマネジメント無料特別セミナー「PMO2.0」の副題に、「ガラパゴス型からの脱出」というタイトルをつけたところ、何人もの方からどういう意味ですかという問いを受けることになった。

もう少し、一般化した言葉だと思っていたので、意外だった。この言葉を最初に使ったとされている野村総研のNRI未来ナビに収録される論文「「ガラパゴス化」する日本」
では、以下のように説明されている。

技術やサービスなどが日本市場で独自の進化をとげて、世界標準からかけ離れてしまうという現象が起こっています。このような現象は、生物の世界でいうガラパゴス諸
島における現象にたとえられて「ガラパゴス化」といわれています。

もともとは国内でどんどん高機能化するのに、海外に展開できない携帯電話に対する言及から出てきた言葉であるが、こういう例は今に始まったことではない。呼び名は
ともかく、我々がこの問題を最初に意識し出したのは、パソコンではないかと思う。
一時は、国内で80%以上のシェアを持ったNEC製のパソコンPC-98が、やがて、コストパフォーマンスに優れたグローバル標準PC/AT互換機の上陸とともに、終焉した。

最近では、携帯電話、電子マネーといったハードウェアだけではなく、医療サービスや大学、会計基準などでもガラパゴス化という言葉が使われるようになっている。

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【戦略ノート225】コミュニケーションマネジメント2.0~横のコミュニケーションから縦のコミュニケーションへ

◆コミュニケーションマネジメント1.0

218回でPM2.0宣言をした。今回は、PM2.0におけるコミュニケーションマネジメントについて考えて見たい。

プロジェクトマネジメントの問題点としてコミュニケーションの問題がよく取り上げられるが、特に問題意識が高いのは顧客をはじめとするプロダクトスコープに影響のあるステークホルダとのコミュニケーションである。重要だと捉えていればこそだろう。実際に、スコープマネジメントの問題はコミュニケーションの問題だと言ってもよい。コミュニケーションの質によって、スコープに対する目標達成のレベルが変わってくるし、それがプロジェクトの成否に関わってくる。このように顧客も含む現場の中でのコミュニケーションで、スコープを決めて行く。

この場合、上位組織とのコミュニケーションは与えられた目標の達成度の報告が基本になる。いわゆる進捗報告だ。そこでは、進捗が芳しくない場合の問題解決は話合われることがあるが、目標設定のイニシャティブは上位組織が持ち、その「妥当性」について話合われることはまずない。目標は妥当であり、進捗が芳しくないのは目標達
成の方法が適切ではないからだという前提で考える。この前提が崩れた場合は「トラブル」になる。

このコミュニケーションのマネジメントをPM1.0に擬えてコミュニケーションマネジメント1.0と呼ぶことにしよう。

これはあくまでも上位組織から目標が与えられた場合の話、つまりPM1.0におけるコミュニケーションマネジメントになる。

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【戦略ノート224】ドラッカー考~ドラッカーはなぜ心に響くのか

◆ドラッカーブーム来る

今年は史上空前のドラッカーブームのようだ。報道バラエティはもちろん、お笑いのメッカ・関西では、お笑いバラエティでもドラッカーが取り上げらている。

きっかけになったのは昨年発売された1冊の本だ。通称「もしドラ」、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という小説である。高校野球が真っ盛りだが、この小説は弱小野球部の「女子マネジャー」がマネジャーの仕事を知りたくて、ドラッカーのマネジメントを読み、野球部を改革していくというストーリー。

岩崎 夏海「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」、ダイヤモンド社(2009)
https://mat.lekumo.biz/books/2010/01/management.html

ドラッカーといえば、ほとんどの出版を手がけているのがダイヤモンド社だ。ダイヤモンド社は大正2年の創業以来、ハーバードビジネスレビューを始め、マネジメント分野で大きな影響を与える出版活動を多数手がけている。もちろん、ドラッカーの著作物の翻訳出版もそのひとつだ。

そのダイヤモンド社が「もしドラ」で創業以来初めてのミリオンセラーを達成したのだ。今起こっているドラッカーブームがどれだけ凄いかよく分かる。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。