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2010年1月 2日 (土)

ドラッカー「マネジメント」の本質が理解できる、エンターテイメント

4478012032 岩崎 夏海「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」、ダイヤモンド社(2009)

紙版><Kindle版

お奨め度:★★★★1/2

放送作家から、ビジネスのマネジャーへという異色のキャリアを持つ著者が、ドラッカーの「マネジメント」を高校野球という舞台で実践する様子をエンターテイメントとして書いた一冊。

主人公は女子マネージャーの川島みなみ。将来、プロ野球選手になることを夢見てリトルリーグ活躍するが、次第に男子に太刀打ちできなくなり、野球をあきらめる。そのため、野球を嫌うが、病気の親友の宮田夕紀のために野球部のマネージャーになり、「甲子園にいく」というビジョンを持つ。

マネージャーになったみなみは、マネージャーの仕事を学ぶために書店にいき、偶然、トラッカーの「マネジメント」を手にとる。

4478410232 ピーター・ドラッカー(上田 惇生編訳)「マネジメント - 基本と原則 [エッセンシャル版]」、ダイヤモンド社; エッセンシャル版(2001)


そして、他に頼るものがないまま、マネジメントを読み込み、野球部の革新を行う。まず、みなみが取り組んだのは、

・野球部の定義

だった。まず、

・野球部の顧客は誰か、顧客は何を求めているのか

という問題だった。この問題に対して、顧客はすべてのステークホルダであり、顧客は「感動」を求めているという答えを出す。次に、目標。これは、「甲子園にいく」ことだ。その答えが見つかったとき、すでに顧客の、現実、欲求、価値からスタートするマーケティングをすでに取り組んでいることに気づく。

野球部のマーケティング活動を本格化するために、みなみは「お見舞い面談」と称して、入院している夕紀と部員の対話を企て、部員が野球部に求めるものを探ろうとする。この活動はテーマを変え、最後まで続くことになる。

野球部員という顧客の求めるものは、そう簡単に把握できなかったが、その中で、あることに気づく。監督の加地誠は、試合中の投手の気持ちを理解できない采配のエースの浅野慶一郎と対立していた。加地は、大学まで野球をやり、知識もあり、論理派である。しかし、慶一郎をはじめとして、部員とのコミュニーションがうまくできない「専門家」だった。

そんなときに、マネジメントの以下のフレーズに出会う。

専門家が効果的であるためには、マネジャーの助けを必要とする。マネジャーは専門家のボスではない。道具、ガイド、マーケティング・エージェントである。逆に、専門家はマネジャーの上司となりうるし、上司とならなくてはならない。教師であり、教育者でなくてはならない。

この言葉を読んで、みなみはマネージャーとして、加地の通訳になろうとする。そして、加地に慶一郎との話し合いを求めるが、加地は相手にしない。手探りのマネジメント活動を続けるうちに、春の甲子園出場をかけた秋の大会で決定的な出来事が起こる。

野手のエラーをきっかけにストライクが入らなくなった慶一郎は、四球を連発し、コールド負けをする。反省会で慶一郎はふてくされて四球を出していると避難される。それを加地がかばったことにより、慶一郎の態度が変わる。それまで練習をしなかったのが、真剣に練習をするようになった。これが野球部が変わるきっかけになった。ちょうど同じころ、将来の起業のために野球をやっている、しかし、下手でレギュラーになる見込みがない、二階正義がマネジメントに専念したいと言いだし、もうひとりの女子マネジャー北条文乃とマネジメントチームを組み、加地をサポートする。

次に行ったことは、自己目標管理を持ち込むことと、練習に競争を持ち込むことだった。これが効果があった。

また、マネジメントの教えにより、社会への貢献について考えるようになる。その結果、陸上部やブラバン、吹奏部との交流、地域への貢献として少年野球の指導、大学との交流を行い、相互に学び、実力を上げていく。

いろいろやってみても一朝一夕にトップの実力になるものではない。そこで、イノベーションを考え、違うルールでの競争を展開しようとする。それは加地の持論である「送りバント」、「ボール球を打たせる投球術」への疑問からくる、投球と打撃のイノベーション「ノーバント・ノーボール作戦」の導入であった。

そして、夏の大会が近づいてきた。まだ、十分な実力とはいえない。そこで行ったことは「ストライクとボールに見極める」打撃と、「エラーを恐れない」守備に集中する。これは、「ノーバント・ノーボール作戦」という戦略ときちんと整合している。

このポイントは試合でも効を奏し、見事に甲子園出場を成し遂げる。

こんな話だ。ドラッカーのマネジメントを見事に解説している。おもしろと思ったのは、マネジメントにはすでに手垢がついている。つまり、ビジネス上の慣行に引っ張られているのだ。その典型が、マネジャーの役割だろう。

この点について、ビジネスとはまったく縁のない高校野球を例にとって、本質に迫っていることだろう。深く、難解なドラッカーをこういう手法で解説するというのはすばらしいと思う。

小説そのものも放送作家出身の著者だけあって、ビジネス小説独特の、とってつけたような感じはまったくない。エンターテイメントとして楽しむことができる。その点もすばらしい一冊である。

マネジメントをしなくてはならない人、すべてに読んで戴きたい本である。

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