★補助線 Feed

2009年6月30日 (火)

【補助線】ポジティブでいこう

◆ネガティブを裏返すとポジティブ

「ポジティブな感情を持とう」、「前向きに考えよう」とかいうと精神論みたいだが、意外とそうでもない。この議論、プロジェクトマネジメントの中で、「視点」を変えるのに意外と効果がある。ポジティブ心理学の本を何冊か読んで、いくつか気がついたことがあるので、ときどき、書きたい。

自分たちにとってよくないことを、ポジティブに捉えてみるというのは、場合によっては相手の立場でものごとを考えることに通じる。「ポジティブ心理学の祖父」と言われ、「ストレングス・ファインダー」という自分の強みを評価するシステムの発明者であるドナルド・クリフトンという人がいる。このシステムは世界中で100万人以上の人に使われているらしいが、日本ではあまり、噂を聞かない。むしろ、マーカス・バッキンガムと一緒に書いた「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす」という本の方がよく知られているかもしれない。この本も、ポジティブ心理学の本であるが、彼が、ポジティブに考えるためには、「相手の身になって考える」ことが必要だといっているのはまさしく表裏一体だといえる。

たとえば、多くのプロジェクトマネジャーが忌み嫌う顧客の「要求変更」という問題がある。確かに、途中で顧客の要求が変わると言うのは極めて面倒だ。いくつかの作業が無駄になってしまうだろう。

これは、プロジェクト側の立場での話。これをポジティブに捉えるとどうか?この変更によって、それまで決まっていなかったことが決まったのかもしれないし、不適切だったものが適切になったのかもしれない。いずれにしても一歩前進である。

実際に顧客にしてみればそうだ。

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2009年6月 8日 (月)

【補助線】サーバントリーダーシップと「家族型経営」

◆注目されるサーバントリーダーシップ

ロバート・グリーンリーフの提唱する「サーバントリーダーシップ」というリーダーシップがある。昨年末に日本語訳がでた影響もあると思うが、とにかく、注目されるようになってきた。

とくに、トーマス・フリードマンの予言する「フラット化する世界」の中で、従来型のリーダーシップに代わって、中心的なリーダーシップ概念になるだろうと言っているのをよく耳にする。もう少し、さかのぼれば、ピーター・ドラッカーのいうナレッジワーカーには、サーバントリーダーシップが必要になるのだろう。

リーダーシップがそうであるように、サーバントリーダーシップも具体的にこういうものだという説明がしにくい概念である。ロバート・グリーンリーフのサーバントリーダーシップを日本に紹介された神戸大学の金井壽宏教授はご自身に子供ができた頃に、「親の子供に対する行動」をサーバントリーダーシップの説明に使われていたが、いまだに、この説明がもっともしっくりとくる。

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2009年5月26日 (火)

【補助線】プロジェクトの神とレバレッジ

◆Der liebe Gott steckt im Detail

神は細部に宿る(Der liebe Gott steckt im Detail)という言葉がある。誰の言葉か不明だが、ドイツの建築家L. M van der Roheが世の中に広めたというのが定説になっている。

もともと、建築について言及した言葉だが、いろいろな使われ方をしている。問題は意味(解釈)だが、これまた、さまざま。細部の細かなところまでこだわるといった使い方をしているケースもあるし、逆に、細部が全体に統合されなくてはならないという意味に解釈している人もいる。結局のところ、この2つは同じことなのかもしれない(であるべきということ)。

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2009年4月30日 (木)

【補助線】チームを前提にしたプロジェクトマネジメント

◆なぜ、商社が成り立つのか

PHPから発行されている雑誌「Voice」から、雇用問題をテーマに記事を選んで一冊の本が発行された。

クビ切り不要!

という本だ。

この中に、伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎氏と東京理科大学教授の伊丹敬之先生の対談記事が採録されている。「人を大切にする経営」という記事。伊丹先生は一橋大学の時代から、人本経営を説かれている方である。

この記事がたいへん、おもしろい。この中に、総合商社に関する伊丹先生のこんな発言がある。

商社という組織の経営がなぜ成り立つかというと、まさにチーム力があるからです。アメリカ型の「あなたの役割はこれ」と、仕事を分解していくようなやり方では、とてもできません。それこそ、人のつながりを大事にして、安定的にやっていくからこそ、組織全体が発展する。これは商社に限らず、製造業も銀行も皆一緒でしょう。
(同書、22p)

これに対して、丹羽氏が答える。

じつは伊藤忠商事で昔、日本の商社と同じものをアメリカにつくってほしいと頼まれ、人を派遣したことがあります。ところが絶対に成功しない。彼らは個人主義ですから、隣の人と同じチームでやれといってもどうもうまくいかない(同書、22p)

なるほどと思った。

総合商社は、日本が世界に誇るビジネスモデルである。このやりとりを読んで、ずっと昔から、もやもやしていた2つの疑問が氷解したような気がした。

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2009年4月 7日 (火)

【補助線】ラテラルで行こう!

◆正面突破できない壁

世の中には正面突破ではどうしても突破できないものがある。

例えば、ある商品を開発していた。ところがトライアルのフェーズになって思わぬ法律的な疑念が生じた。商品の仕様を変えることが望ましいが、顧客はどうしてもスケジュールを譲らない。さて、どうしようという問題がある。

この問題をスケジュールの問題だと考える限り、答えはないだろう。いくら大量の要員を投入してみたところで限界はある。治具をうまく使っても限界はある。このような状況でどうすればスケジュールの問題を解消できるのか教えて欲しいと言われても、それは無理というものだ。そもそも論を言えば、現場の作業者が無理と思っているスケジュールを、スタッフや外部の人間が何か名案を出して解決できるかもしれないというのは幻想である。米国ならいざ知らず、日本の現場はそんなレベルではない。

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2009年3月31日 (火)

【補助線】「プロジェクトマネジメントをする」vs「プロジェクトをマネジメントする」

◆プロジェクトマネジメントの2つのスタイル

プロジェクトマネジメントには2つのスタイルがある。

一つは、「システム工学」によるプロジェクトマネジメントである。システム工学というのは、「システム論」、「数理計画法」、「オペレーションズリサーチ(意志決定論)」、「ネットワーク論」、「制御工学」、「情報処理や計算」などを含む学問の体系であり、PMBOKに代表されるようなこれらの理論を使ったプロジェクトマネジメントの手法がこの記事でいう「システム工学」によるプロジェクトマネジメントである。ここでは、これをシステム工学型プロジェクトマネジメントと呼ぶことにする。

プロジェクトマネジメントという場合、一般的にはこれを意味している。

もうひとつは、「チームワーク」によるプロジェクトマネジメントである。こちらのスタイルは、そもそも手法として明確になっているわけでもなく、言ってしまえば、今までのマネジメントに対する知見を総動員して、「プロジェクトをマネジメントする」という感覚である。その中で、比較的、体系化された手法としてはアジャイルプロジェクトマネジメントがある。ここでは、チームワーク型プロジェクトマネジメントと呼ぶ。

専門性ということでいえば、システム工学型プロジェクトマネジメントはかなり、専門性の高いものである。これに対して、チームワーク型プロジェクトは、一般的なマネジメントの方法を「プロジェクト」に適用しようとするところに原点があり、マネジメント手法に対する専門性はあるとしても、マネジャーにとってそんなに専門性が要求されるものではない。

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2009年3月17日 (火)

【補助線】プロジェクトのトラブルとはどういう状況か

◆50%以上のプロジェクトがトラブっている?!

プロジェクトマネジメントの導入後も「プロジェクトがトラブルった」という話はあちこちで聞く。弊社では半年~1年かけて10日間を使うPM養成講座という研修をやっているのだが、だいたい、この期間にプロジェクトにおける何らかのトラブル対応で一度は欠席する人は、平均的で50%はいるように思える。

少ない企業でも60~70%ということだろうか。もちろん、これはトラブルの対応を研修より優先するための欠席であって、その中にはトラブルに陥らないように対策を打つというのが含まれてくると思われるので、この数字がトラブルそのものの発生確率というわけではないが、それにしてもかなりの確率であることは間違いない。

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2009年3月10日 (火)

【補助線】マネジャーの成果は人を使って成果を出すこと

◆マネジャーの成果は人を使って、仕事に対して期待された成果を出すこと

昨日、PMstyleの会員を対象にした第5回のプライベートセミナーを行った。そのときに、参加された方と講師の間で議論になったことの一つが「プロジェクトマネジャーの成果は何か」という議論。とてもよい議論だった。

講師の國貞克則さん(ボナ・ヴィータ コーポレーション)はドラッカースクールの出身だけあって、ドラッカー先生の意見を引っ張ってこられ、

 マネジャーの成果は人を使って、仕事に対して期待された成果を出すこと

だと断言された。われわれは、この言葉をもっと真剣に考えるべきであろう。

ドラッカー博士の伝説的な講演場面にこういうのがある。講演の聴講をしているマネジャーに「あなたの仕事は何か」と聞いて、いろいろ答えさせる。圧倒的に「成果を挙げること」という答えが多いところで、おもむろに、「そうではないでしょう。そのような成果を挙げる人を育てたり、成果が出るように動機付けをすることが仕事なのではないですか」と指摘するというのだ。今、聞けば当たり前だと思う人も少なくないと思うが、数十年前の話だ。今、主流になりつつあるマネジメントの考え方を作った一場面として語り継がれている。

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2009年2月27日 (金)

【補助線】「正解への呪縛」から解き放たれる

◆マネジメントには正解はない。

この言葉自体はだんだん浸透しているように感じることが多いが、実態はどうか?

ずっと僕が思って気になっていることがあって、この本を読んでいたら、同じことが書いてあったので、この際、虎の威を借りて、言ってみようと思う。

藤井 清孝「グローバル・マインド 超一流の思考原理―日本人はなぜ正解のない問題に弱いのか」、ダイヤモンド社(2009)

ちなみに、藤井さんは最近、テレビのコメンテータなどもされているのでご存じの方が多いと思うが、マッキンゼーでコンサルタントをされたあと、ケイデンス、SAPなどいくつかの企業で社長をされた後に、ルイ・ヴィトンの日本法人のCEOをつとめられ、現在はベター・プレイスという電気自動車の電池のインフラを事業化する会社の日本法人の代表取締役である。

これで藤井さんは十分に虎になったと思うので、そろそろ、藤井さんの指摘を紹介しよう。この本で藤井さんは、日本人は正解があると正解に向けての問題解決においてすばらしい能力を発揮するが、正解がないとうまく対応できない。これがグローバル社会で成功できない理由であると指摘されている。ここまではよくある指摘。

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2009年2月25日 (水)

【補助線】PMBOKは本当に日本に馴染むのか

昨年末に、新しいバージョンのPMBOK(R)が出た。

日本には2万人以上のPMPがいる。一方で、未だに、「プロジェクトマネジメントの定着化」といったセミナーをやると多くの人が参加してくれる。どういうことなのだろうか?

4年に一度の機会なので、少し、いくつかの視点から論考してみたい。

◆米国組織の特性

冷泉彰彦さんという方が、

冷泉 彰彦「アメリカモデルの終焉、金融危機が暴露した虚構の労働改革」、東洋経済新報社(2009)

の中で、米国企業における成果主義の前提となっている組織の特性をいろいろと解説してくれている。この本を読んでいると日本で米国流のプロジェクトマネジメント(PMBOK)がうまく行くには、ドキュメント化vs暗黙知といった表面的な話ではなく、成果主義同様、相当な制度と価値観の変革が必要だと思い知らされる。

ヨコの軸:同じレベルの他の同僚との間で、お互いの守備範囲をどう決めているか
タテの軸:一人の社員が上下関係の中でどう位置づけられているか
時間軸:長い年月の中で評価対象期間がどういう意味を持つか

の3つの軸を設定して説明している。詳しくは本を読んで戴くとして、かいつまんで説明する。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。