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2009年6月 8日 (月)

【補助線】サーバントリーダーシップと「家族型経営」

◆注目されるサーバントリーダーシップ

ロバート・グリーンリーフの提唱する「サーバントリーダーシップ」というリーダーシップがある。昨年末に日本語訳がでた影響もあると思うが、とにかく、注目されるようになってきた。

とくに、トーマス・フリードマンの予言する「フラット化する世界」の中で、従来型のリーダーシップに代わって、中心的なリーダーシップ概念になるだろうと言っているのをよく耳にする。もう少し、さかのぼれば、ピーター・ドラッカーのいうナレッジワーカーには、サーバントリーダーシップが必要になるのだろう。

リーダーシップがそうであるように、サーバントリーダーシップも具体的にこういうものだという説明がしにくい概念である。ロバート・グリーンリーフのサーバントリーダーシップを日本に紹介された神戸大学の金井壽宏教授はご自身に子供ができた頃に、「親の子供に対する行動」をサーバントリーダーシップの説明に使われていたが、いまだに、この説明がもっともしっくりとくる。

◆家族型経営とサーバントリーダーシップ

日本の高度成長期には、「家族型経営」を標榜している企業が多かった。社長は父親、シニアマネジャーは長男、マネジャーは次男、社員は末っ子、そこに母親として管理スタッフがいる。要するに、経営組織に家族のメタファ(喩え)を持ち込んだ。もっと厳密にいえば、家族ではなく、「家」のメタファを持ち込んだ。そんな会社が多かったのではないかと思う。

このメタファは、今の時代はともかく、サザエさんの時代には、強烈なメタファだった。家族というのは唯一、損得を超えた存在である。

家族の中で、親は自分の子供の成長や成功を願う。自分の生活を顧みずに、子供に尽くす。子供を育てる(保護する)義務はあっても、成功させる義務があるわけではない。かといって、子供が成功すれば自分に見返りがあるなどと考えているわけでもない。ただ、ひたすら尽くす。子供は感謝し、自然に老いた親に恩返しをしようとする。影響力の法則でいうところのレシプロシティが自然に機能する。

◆サーバントリーダーシップは日本型経営の中心概念

ビジネスの中に損得を超えた概念があるというのは極めてわかりにくいが、そのような構図が出来ている日本企業の中では、サーバントリーダーシップは、ずっと昔から普通のことだったのではないか。皮肉なことに、欧米で注目されだした頃に、日本人は自らその価値を理解することなく、放棄してしまい、「トヨタウェイ」のように欧米が体系化したものをありがたがって導入するというパターンになりそうだ。

金井先生の講義でこの話を耳にしたときに直感的に思ったのはこのことだった。実際に直感は当たっていたように思う。今のところサーバントリーダーシップに反応するのは、例外なくいわゆる日本型経営で成長してきた企業だ。なくして、初めて価値が分かったのだろう。ただし、これを「人工的」にやるのは並大抵のことではないが、DNAがどこまで残っているのかが問題だ。

しかし、サーバントリーダーシップがもう一度、日本型経営復活のキーワードになることは間違いない。何らかの方法での開発(復元)が求められる。

ここで注意して起きたいのは、類似品である。サーバントリーダーシップに似て非なる概念はたくさんある。特に「支援」という類似品がくせ者だ。支援は明示的なガバナンスの上に、上が下を助けることである。目的は上(経営)の目標を達成することにある。これに対して、サーバントリーダーシップは組織のすべての人の自己実現に機能する。

ここが大切なところである。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。