解決しようのない問題というのがある。
この場合の「解決しようがない」という意味には、常識の範囲、合理性の範囲というスコープ定義が隠されている。
たとえば、提案したスケジュールの半分の期間でやることを要求されたとする。当然、即座にできないと答えるだろう。できないというのには、前提条件がある。
・通常のリソース確保の方法
・通常の(支援)体制
・通常のパフォーマンス
・通常のリーダーシップ
・通常の業務方法(開発方法)
通常といわれることに抵抗があれば、常識的と言ってもよい。
なぜ、人はこういう対応をするのか?話は変わるが、標準化の議論と関係がある。標準化というのは、「(成功)予測」を作り上げることである。このやり方でやればできるというのを定めることである(実際の標準はそうなっていないものが多いが)。
ところが上のような状況は、予測を求めてみても役に立たない。可能性を求めることが必要である。そこで、可能性を求めるというマインドセットのない組織の場合には、すぐにできないという判断をする。
実際に上に前提条件と書いたが、多くの組織ではプロジェクトを実行するにあたって、明文化するかどうかは別にして、上のような前提をおいている。言い換えると、プロジェクトマネジメントの前提だといってもよい。そして、組織はリスクマネジメントだと称して、この前提を何とか維持をしてプロジェクトを実施しようと躍起になっている。つまり、
・通常のリソース確保の方法でできるプロジェクト
・通常の(支援)体制でできるプロジェクト
・通常のパフォーマンスでできるプロジェクト
・通常のリーダーシップでできるプロジェクト
・通常の業務方法(開発方法)でできるプロジェクト
に仕立てようとしているわけだ。
それはそれでいいのだが、いくらリスクマネジメントを行っても不確実性そのものをなくすことができるわけではない。不確実性は減ることはあってもなくなることはない。
すると、上の前提条件が怪しくなってきて、プロジェクトが失敗する。こんなケースが少なくない。
ドラッカーが面白いことを言っている。
リスクをとらない人でも一般的には年に二つくらいの大きな過ちを犯す。リスクをとる人も、一般的には年に二つくらいの大きな過ちを犯す。
失敗(予測)ということに関してこんなものだとすれば、可能性にかける戦略というのはありうるし、重要である。
常識を重視するかどうか、合理性を重視するかどうか、可能性を重視するかどうかというのはマインドセットの問題であるが、おかしな議論をしている人をよく見かける。常識を重視し、そのようなマインドセットで構築したやり方を引き合いに出して、可能性を重視するやり方は危険であるといった議論だ(逆はあまり見かけないが)。
たとえば、冒頭に示した例を常識を重視する意思決定やレビューの仕組みを持つ組織で行っても必ず失敗する。議論するまでもない。無謀というものだ。
解決できないと思われる問題を解決できるプロジェクトは間違いなく、可能性を追いかけるのであれば仕組みが必要である。これだけプロジェクトの条件が厳しくなってきているのだから、仕組みを作りながら可能性を追いかけるというスタンスの組織が出てきてもおかしくない。全治3年という経済状況であれば、今がチャンスかもしれない。
「売り上げを伸ばそう」というよりも、「すごいものを作ろう」というほうがはるかに社員の心に響く(青野慶久、サイボウズ社長)
【成分】
◆サイボウズを世界中で使われるグループウエアにしよう
◆何を作るかを考えるプロジェクトの目標
◆どう作るかを考えるプロジェクトの目標
◆すごいリードタイム!
◆すごい技術を使っている
◆作り方で勝負するプロジェクトが何に強みを求めるか
【効用】
・PM体質改善
創造力アップ、顧客感度アップ、顧客説得力アップ、リーダーシップ発揮
問題解決能力向上
・PM力向上
チームをまとめる力の向上、ピープルマネジメント力向上
・トラブル緩和
モチベーション向上、チームの士気向上
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問題解決の責任は問題に気づいた人にある(鈴木秀子、聖心女子大学教授)
【成分】
◆問題の見てみぬふりを防止する
◆問題の保有者と発見者が違う場合の対応
◆見てみぬふりがおおいプロジェクトやオフィス
◆見てみぬふりは風土の問題
◆興味深い事例~ルールへのフィードバックがコミュニケーションを深める
【効用】
・PM体質改善
アカウンタビリティ向上、リスク管理力アップ、問題解決能力向上、
実行力向上
・PM力向上
リスク対応力向上、プロ意識の向上
・トラブル緩和
モチベーション向上、プロジェクトにおける辛さの克服
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問題解決ブームである。本もたくさん売れているし、マネジャーも部下の問題解決力に強い関心を持つようになってきた。
あるSI企業の部長からこんな相談を受けた。2年くらい前に問題解決の研修をやり、問題解決活動(改善活動)を定着化させるためにアクションラーニングのプログラムを実施したそうだ。研修も、そのあとの定着化の活動も盛り上がっているそうだ。ただ、2年たってみると、思ったような効果がでてこない。数こそ多いのだが、その部長がかゆいと思っているところになかなか手が届いてこないそうだ。どうしたものだろうか?
問題解決法で難しいのは、手法の使い方ではなく、問題意識を持つことではないかと思う。問題発見のスキルを持っていても、問題解決のスキルを持っていても、問題意識が低ければ何の変化も起こらない。
出典は覚えていないのが、エニアグラムで有名な聖心女子大学の鈴木秀子先生が「問題解決の責任は問題に気づいた人にある」といっていたが、問題解決とほかの仕事の違いは、担当を決められる性格の仕事ではないことだ。かといって、リーダーがすべての問題に目配り、気配りをして対応できるという問題でもない。鈴木先生の言われるように気づいた人がやらなくてはならないのだ。
そこで問題になるのは、見つけれるどうかである。問題発見法というのもいろいろな手法があるが、どんな手法を使おうと、見つけることができるかどうかは、問題意識にかかっている。事故、不良、苦情があれば、問題を見つけるまでもなく、問題は見つかる。ところが問題が顕在化する前に問題を見つけるためには、高い問題意識が必要である。
人は、同じ状況におかれても、問題だと思うかは個人差がある。たとえば、10日間の仕事をしていて、4日目を終えたところで上司から「明日、1日、今年度の事業計画の修正検討をするので付き合ってほしい」といわれたとしよう。これを問題と捉える人と捉えない人がいる。
というと、残りの5日間で6日分の仕事ができる見通し(自信)があるかどうかの違いだと思う人が多いと思うが、そうとばかりはいえない。この段階では気にしないという人がいる。
なぜだろうか?
端的にいえば、10日という目標に対するコミットメントの問題である。当然だが、コミットメントが強い人は、問題意識が高くなる。ここで興味深いのは、これが8日目だとすれば、5日目より多くの人が問題意識を持つだろう。学生症候群という現象があるが、コミットメントは一定ではなく、締め切りまでの時間が短くなれば強くなる。こういう心理も働いているのかもしれない。
問題意識を高めるというのは、容易なことではない。よくトップが、「問題意識を持とう」という訓示をするが、「はい、わかりました」といって変わるような類のものではない。
したがって、変えるのは非常に難しいのだが、まずは、上にのべたように目標に対する強いコミットメント、言い換えると目標意識のようなものをもてるようにすることが先決であろう。目標に対するコミットメントは上に述べたように、時間的な要素があるので、計画により、できるだけ目標を小刻みに与えて、常にコミットメントを高い状態に保つことが必要である。
その上で、以下のような3つの行動習慣をつけるとよい。
・疑う習慣
現状把握に問題はないかと疑う習慣
・探求する習慣
疑いを払拭するためにさらに問題を追及しようとする習慣
・認識を更新する習慣
問題に対する認識を継続的に更新する習慣
これは、トヨタなどの継続的改善が定着している企業では必ずといってよいくらい、定着している習慣である。
チームが目標を達成しただけでは成果は不十分である。競争に勝つためには、人材の育成が不可欠である。(関島康雄、3Dラーニング・アソシエイツ代表)
【成分】
◆PMBOKでもメンバーの育成がミッションになってきた
◆競争に勝つには育成が不可欠
◆人材を使うプロジェクトの進め方と、育成するプロジェクトの進め方
◆本格的なチームを作ることが人材の育成の解になる
【効用】
・PM体質改善
リーダーシップ発揮、創造力アップ、実行力向上
・PM力向上
チームをまとめる力の向上、ピープルマネジメント力向上
・トラブル緩和
モチベーション向上、チームの士気向上
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◆究極の議論
誰もやったことがないことなので、いつまでに終わるなどとはいえない
vs
プロジェクトなのだから、やったことがなくてもいつまでに終われというのがリーダーシップだ
みなさんは、どちらを支持しますか?
ダメな理由が100あっても、うまくいく道がひとつあればよい(小宮山宏、東大総長)
【効用】
・PM体質改善
自信をつける、問題解決能力向上、リーダーシップ発揮、リスク管理力アップ、
・PM力向上
リスク対応力向上
・トラブル緩和
モチベーション向上、チームの士気向上
【成分】
◆賛成しながらできない理由をいう心理
◆本当は変わってほしくない
◆計画レビューの典型的パターン
◆PMOへの期待
◆プロジェクトメンバーに対する対応にも活かそう
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ちょっと間が開いたが、再び、チームの話題。
◆どう作るか、何を作るか
今までプロジェクトは「どう作るか」を中心に考えられてきた。これは、プロジェクトマネジメントが云々というよりも、多くの日本企業は何を作るかという部分は捨てて、どう作るかにすべてをかけてきた。
ただし、この戦略は大量生産の元で有効な戦略であり、多様性が増す中で、いろいろな商品を市場に出し、一本被りを狙うことを常套手段とする市場では機能しない戦略であり、現在は明らかにそのような時代にある。
この図式は、コンシューマ向けの商品をやっているメーカでもっとも顕著であるが、どう作るかという文化にどっぷりと染まっているのはSI企業ではないだろうか?
すべてに優先されるのがESで、CSはそのあとについてくる(横田秀毅、ネッツトヨタ南国社長)
【効用】
・PM体質改善
顧客感度アップ、顧客説得力アップ、創造力アップ、計画力アップ、
・PM力向上
チームをまとめる力の向上、ピープルマネジメント力向上
・トラブル緩和
モチベーション向上、チームの士気向上
◆「衣食足りて礼節を知る」
◆ESはCSを達成する道具ではない
◆顧客から信頼されるにはESが必要
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好川哲人
技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。
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