【戦略ノート276】プロジェクトマネジャーのジレンマ
◆成果か人か
ある本を読んで、マネジメントは深いとつくづく思った。マネジメントはジレンマの集まりだというのだ。
たとえば、プロジェクトという業務の性格上、プロジェクトマネジメントは成果に焦点をあて、人には焦点を当てない。権限委譲をしてメンバーの自律的管理に委ねる。確かに、WBSを作って、達成しなくてはならない中間成果物とそのスケジュールを明確にする(落とし込みは必ずしも個人ではなくチーム単位の場合もある)。そして、スケジュール通りに中間成果物が出てくるかどうかだけを問題にする。メンバーの勤怠や勤務態度、あるいは業務遂行方法についてはメンバーに任せるわけだ。
これには前提がある。プロジェクトのメンバーはスキルを持った自律した人材であり、管理をされなくても自律的に仕事ができるという前提である。しかし、これはSI事業のようにプロジェクトが常態化している場合には必ずしも成り立たない。
その場合には、成果に焦点を当てようとすると、それを遂行する人に注意を払わなくてはならない。つまり、メンバーが自分の担当する成果物をきちんと達成できるかどうかだけではなく、ある程度、そのやり方も見ておく必要がある。
ところが、プロジェクトマネジャー(リーダー)がその分野について必ずしも、不十分なスキルしか持たないメンバーより、知見を持っているかというとこれはまた別の話だ。そもそも、プロジェクトマネジメントが成果だけに焦点を当てるのは、そのプロジェクトチームにおいては、特定の問題に対しては特定のメンバーが最もスキルフルであるという前提に立つものだ。プロジェクトが専門家の集まりという所以である。
そのような状況で、人に注意を向けるにはどうすればよいか。よく見かけるのは、そのメンバーに指導をしてくれるスキルを持つ人に支援を請う、メンバーがスキルアップの動機を持つように仕向ける、といった行動である。
このようにプロジェクトマネジメントが難しいのは、2つの相反する活動(ジレンマ)を整合性を持って行わなくてはならないことだ。ここまでに述べてきた例では
成果に焦点を当てるために、人に焦点を当てなくてはならない
というジレンマである。
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