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◆人材開発担当の要望
コンセプチュアルスキルのトレーニングを始めたのにはいくつかの理由がありますが、その中の一つが、マネジメントやプロジェクトマネジメントの研修をするときに人材開発の担当の方から、よく
「我が社のエンジニアはコンセプチュアルスキル(概念化能力)が低いので、説明もできるだけ具体的な事例でお願いします」
と言われていたことが多いことです。PMstyleで提供しているマネジメント研修は、かなり概念的な説明を入れているものが多いからこういう要望が出てきていると思われます。
これに対して、概念と具象の行き来を行いながら、講義やワークを行うマネジメント研修を提供していますが、どうも行き来がうまくできない、言い換えるとコンセプチュアルスキルが低い人が多いと感じたのがコンセプチュアルスキルのトレーニングを始めたきっかけの一つです。
◆なぜ、エンジニアのコンセプチュアルスキルが低いのか
エンジニアのコンセプチュアルスキルが低いのにはいくつかの側面があるように考えています。
一つは、エンジニアというのはもともと概念の扱いに慣れていました。技術を使って行っている業務においてモデルと現象/現物があり、その間を行き来しなくては、エンジニアリングは仕事にならないからです。
しかし、最近では業務のスピードやコストの制約により、分業が細かくなり、現場を知らない設計者とか、モノを作ることしかできない技術者といった人種が増えてきました。結果として、コンセプチュアルスキルが鍛えられるような機会に遭遇しませんので、コンセプチュアルスキルは低いままです。
もう一つは、具体的であるということに誤解があることです。具体的なものを見て何かを得るということは、なぜそのようになっているかのを理解するということに他なりません。そのためには、それなりに背景になる知識や理論が必要になります。つまり要素技術がないのです。
要素技術のない人が具体的な製品や事例をみても、情報は増えますが、なぜを考えられないので学ぶものはあまり多くありません。コンセプチュアルスキルも向上しません。エンジニアにとって経験するとはこのなぜを考える機会を得ることなのです。
◆コンセプチュアルスキルがないと経験から新しいものは生まれない
このような背景があって、人材育成の担当者たちはエンジニアのコンセプチュアルスキルが低いと感じており、研修はできるだけ事例を使って、具体的にと要望するわけですが、実はこれはあまり意味がありません。
まず、上で述べた通り、コンセプチュアルスキルが低いと具象と概念の間の行き来ができませんので、事例を知っても何も考えることができません。ほぼ、似たような業務であれば役立ちますが、それだけです。いわゆる応用が利かないのです。
ここに一つ時代錯誤があります。それは以前から、製品にしろ、サービスにしろ、類似のものが多く、一つの事例を知ればコンセプチュアルスキルが低くても対応できたという一面もあります。しかし、今はどんどん新しいものを作って、展開していかなくてはビジネスになりません。したがって、応用がきかなくてはあまり意味がありません。
イノベーションの生まれない理由はいろいろとありますが、個人の問題としてはコンセプチュアルスキルが低いことが最も大きいのではないかと思われます。
◆事例はネットで
こういう状況を考えると事例を学ぶというのは時間の無駄とは言わないまでも、研修で行うことではないように思えます。それこそ、ネットで自分で調べてみればよいのです。
その上で、コンセプチュアルスキルを高めるトレーニングをする。すると、調べた事例からさまざまな新しい考え方を生み出すことのできるエンジニアが育ってくると思われます。これこそが、コンセプチュアルな組織を創るマネジメントの基本だといえます。
コンセプチュアルスキルのトレーニングというのはそういう意味合いがあります。
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