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2021年1月 5日 (火)

【コンセプチュアル講座コラム】VUCAワールドで、創造性と生産性を両立させるコンセプチュアルスキル

バックナンバーはこちら https://mat.lekumo.biz/ppf/conceputual_col/

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Vuca16◆「創造性が大切」が建前に終わる理由

自組織の創造性を高めたいというのは、トップリーダーだけでなく、組織のリーダーであればだれもがそう思うことです。一方で、現実には逆の行動をしていることが多いという現実があります。

例えば、組織の創造性を高めたいと思っているリーダーに、業務において生産性(実用性)と創造性のどちらを選びますかと聞くと、多くの人が生産性だと答えます。そんな二択は選べないというリーダーもいますが、両立しなくてはならないというリーダーはわずかです。つまり、「創造性が大切だ」というのは建前に過ぎないと思われるのです。

このような現実の背景には少なくとも3つの理由があると思われます。

一つは、創造性の発揮をリーダー自身が行わなくてはならないと思い込んでいることです。実際に創造的な成果を生み出す活動になると、まずは周囲に何か考えてくれと振りますが、自らが発案しなくてはならないと思っているリーダーが多く、一方でそのような時間は取れず、実現できないままになっているケースをよく見かけます。

さらにリーダーがこのように考える理由として、完璧な答えを出さなくてはならないと思い込んでおり、メンバーにはそのスキルがないと思っていることがあります。これが、二番目の理由です。

三つめは、ステークホルダーが求めるものが、その仕事に遠い人は創造性が大事だと言いますが、当事者に近くなってくるとやはり実用性が大事だと考える現実です。


◆不確実性の中で生産性を維持するために創造性を受け入れない

このような傾向はVUCAワールドの中ではより顕著になります。VUCAワールドの中では、人間はできるだけ不確実性を回避することによって生産性を維持したいと考えます。ところが、不確実性を回避し、生産性を維持しようとすればするほど、創造性を受け入れがたくなっていきます。

つまり、不確実性がない状況でとる行動にできるだけ近い行動をしようとするのです。言い換えると、従来通りにできない可能性を考えて、可能性を低くする方法を懸命に考えるのです。

これが明確に分かるのはリーダーが不確実性をどのように捉えているかです。さすがに、不確実性のある状況で、不確実性を気にせずに進めて、想定外の状況になったら運が悪かったとしてあきらめるというスタンスで行動するリーダーはほとんどいなくなってきました。多くのリーダーは不確実性に何らかの対処をしなくてはならないと考えています。

ここで問題になるのは、不確実性をどう捉えるかです。プロジェクトマネジメントのようにリスクと考えるのは計画を重視しているからですが、このようなスタンスはしばしば「計画どおりにやること」が目的化していることが原因で起こります。

つまり、不確実性はあくまでもリスクだと考え、不確実な状況を乗り切るために計画、特にリスク計画をしっかりしよういう方向性を取ろうします。

このようなスタンスで考えると、VUCAワールドでは計画通りに進めること自体がリスクになることが少なくないため、奮闘しながら計画通りに進めても、、成果が得られなかったということになりかねません。実際に、プロジェクトではしばしばそのような結末を見かけます。


◆VUCAの時代にはリスクマネジメントは通用しない

VUCAワールドにおける活動は、そもそも計画が作れない、もっと言えば予測できないことに難しさがあるわけで、不確実性をリスク、すなわち予測との差異が生じる可能性だと考えることに無理があります。

にも拘わらず、予測できると言う前提で計画を作り、作ったら計画通りに進めることが目的だと考えると、計画通りにはいかないですし、結果も伴わないという結果に終わります。極論すれば、VUCAワールドではリスクマネジメントは通用しないのです。

冷静に考えてみると、VUCAな状況では、不確実性がない状況と同じ行動がとれないことはすぐに分かります。できることは、不確実性に向き合い、創造的な発想で生まれてくる新しい考えを受け入れた行動をすることです。

つまり、創造性を発揮する方法を考えなくてはならないわけですが、ここで生産性が頭にちらつくと、結果として成果が生まれず、生産性が全く実現でききないという現実が待っているわけです。


◆創造的な活動ができないのは組織が阻害しているから

このように組織やプロジェクトが創造的な活動ができないのは、創造力を持つ人材がいないからではありません。組織が勝手な思い込みをし、創造力を阻害してケースの方が圧倒的イ多いのです。人材がいないという話は、所詮、創造力が大切だと言いながら、阻害している言い訳に過ぎません。

経験的に、創造力の高い人はそれなりに存在するものですし、また、チームとして創造的な能力を持つものです。組織の障害がなければ、これらの創造力が機能します。

VUCAを乗り越えていくには、組織が創造性を開放し、生産性の両立させていく必要があります。ところが、既存の方法で不確実性に対応しようとすると、必ず生産性は下がります。そこで考えるべきことは、不確実性を前提にした新しい方法を創造し、生産性を維持する、あるいは上げることです。


◆例~コロナの中で飲食店はなぜ店内メニューのテイクアウトをやっているのか

VUCAだと漠然としているので、VUCAの一つの例としてコロナウィルスへの対応を考えてみましょう。

コロナの中で目立つのはこれまで通りに進めることに執着している企業です。例えば、飲食業を取ってみると、緊急事態宣言の際に多くの企業や飲食店がテイクアウトを展開するようになりました。

この中で、半年たってみると、いまだに店舗と同じメニューでテイクアウトサービスをしている飲食店が多い中で、コンセプトは変えず、テイクアウトに適したメニューを開発し、展開している飲食店があります。そして、テイクアウト用のメニューは店舗の料理より早く顧客に手渡すことができ、値段も高くしているところがあります。

これが創造性の阻害の有無の違いです。

創造性を受け入れることができない店舗は、店舗メニューのテイクアウトを続けているのに対して、創造性を開放している店舗は生産性を上げ、付加価値も高めているのです。ついでに言えば、あと1年コロナが続くと両者には明らかに差がつくと思われます。


◆ミドルマネジメントの役割

飲食店を見ていると、創造性の障壁のある組織とない組織の違いは、トップマネジメントよりも、経営と実務の両方が分かっているミドルマネジメントの差だと思われます。

ミドルマネジメントが機能せず、トップから現場への要望、現場からトップへの意見をスルーしているだけだと、トップリーダーが創造的であることを求めても、現場が勝手に解釈してコンセプトに合わない商品を生み出すのが関の山です。逆に現場がいくら創造的なアイデアを出しても、トップリーダーが理解できず、没アイデアになったりするわけです。そして、このような繰り返しが、創造性の障壁を作っていくわけです。

ミドルマネジメントが機能していないと、創造性は実現できません。

そして、ミドルマネジメントの差を生み出しているのは、ミドルリーダーレベルのコンセプチュアルスキルの高さだと考えられます。


◆ミドルリーダーのコンセプチュアルスキルが不可欠だ

コンセプチュアルスキルが高いリーダーは、目先の問題解決において解が見い出せずに困ったら、コンセプトや目的を実現するには何ができるかという視点で考えることができ、そのような視点で現場に考えさせ、答えに行き着きます。ところが、コンセプチュアルスキルが低いリーダーは、改善こそ試みますが、目の前の問題から抜け出せず、現場からの創造的なアイデアを受け入れず、答えを見つけられません。

これは上の飲食の例を見ていればよく分かります。店舗で出したい料理が、テイクアウトに適しているとは限りません。テイクアウトにするとコンセプトに合致しない場合もあるでしょう。流石にテイクアウトを全くしていない飲食店は少なくなってきましたが、テイクアウトにすると自店のコンセプトや目的が実現できないと考えている飲食店は、テイクアウトはしていません。

テイクアウト用に新しいメニューを作っている飲食店は、フロアマネジャー的な立場のミドルが、テイクアウトを販売しているメンバーと、メニューを決め、調理しているコックの間に入って、メンバーの要求やアイデアを吸い上げ、コックと調整するという役割をしています。


◆新しいリーダーの役割

コロナに限らず、上に述べたようにこういう話は山ほどあります。

ただし、VUCA以前の時代は、状況が変わる速度が遅かったので、何とかだましだまし対応できていました。しかし、VUCAと言われる時代として、突然変わるということが起こると全く対応できないのです。これが、VUCAが悩ましい理由でもあります。

VUCAを乗り越えていくには、このような悩ましさを克服しなくてはなりません。そのためには、コンセプチュアルスキルの高いリーダーが不確実性から目を逸らさず、向き合い、全体の絵を描き、メンバーを動かしていくことが不可欠です。

これがミドルアップダウンです。

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 1.コンセプチュアルな視点から自組織のマネジメントを振り返る
 2.コンセプチュアルなマネジメントの6つのポイント
 3.ミドルアップダウンによるコンセプチュアル・マネジメントの実践
 4.コンセプチュアルなマネジメントの5つの効果
 5.自身のコンセプチュアル・マネジメントの実践方法を考える
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。