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2020年12月24日 (木)

【コンセプチュアル講座コラム】概念と形象の行き来を促進するミドルマネジメント

バックナンバーはこちら https://mat.lekumo.biz/ppf/conceputual_col/

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◆VUCAの時代に通用しなくなった従来の組織スタイル

古くから言われている組織マネジメントのスタイルの区別に

「トップダウン型」
「ボトムアップ型」

の2つがあります。これは、組織には階層があることを前提とし、その関係に注目したもので、トップが自分の集めた情報に基づいて意思決定するのがトップダウン、現場の意見を集約し、調整することによってトップが意思決定するのがボトムアップ型です。

一方、VUCAの時代に求められるマネジメントは、

(1)変化が激しく、迅速な意思決定が求められる環境下で成果を上げる
(2)新たな価値の創造と事業の発展を目指す

の2つです。

トップダウンは迅速な意思決定という点では優れていますが、経営環境の変化を的確に把握することが難しく、(1)がクリアできていない組織が多くなっています。また、ボトムアップ型では、新しい価値創出や事業発展に対しては一定のパワーを発揮できましすが、迅速な意思決定ができないため激しい変化に対応できません。

このような理由が多くの企業がVUCAじ手を焼いている理由です。


◆VUCAの時代に通用する新しい組織スタイル

このような背景があり、比較的、新しい組織スタイルが注目されるようになってきています。それは、

「ミドルアップダウン型組織」
「自律分散型組織」

の2つです。

ミドルアップダウン型組織は、組織の階層自体は認めますが、トップと一般社員の中間に位置するミドルが主体的に動き、第一線で働く現場の声を吸い上げて経営に提言したり、経営者が発信しているメッセージをわかりやすく一般社員に伝えたりする役割を担うことによって経営成果を高めていこうとする組織です。

これに対して、自律分散型組織は、組織の階層を前提にしたい組織です。自律分散型組織では、特定の管理者や主体を持たない分散型の組織で、構成員一人一人によって自律的に判断し、動き、全員が必要に応じてフィードバックをするという形をとることが多いと思われます。

自律分散型組織の中で特に最近日本で注目されているのが、ティール組織です。ティール組織とは、管理職がマネジメントしなくても、構成員一人一人が目的のために進化を続ける組織で、指示系統がなく、メンバー一人一人が自分たちのルールや仕組みを理解して独自に工夫し、意思決定していくことが特徴だとされます。

ミドルアップダウンと自律分散型はアプローチは異なりますが、共通しているのは最前線の構成員が自由に考え、動くことで、これにより、VUCA時代の経営に必要な(1)、(2)の条件をクリアできると考えられます。


◆日本で生まれたミドルアップダウンというスタイル

この2つで特に注目したいのは、ミドルアップダウン型組織です。自律分散型は比較的新しいこともあり、実現されているのは小規模から中規模な企業が多く、どこまでスケーラビリティがあるかは未知です。

これに対して、ミドルアップダウンは日本に限っていえば世界中の企業がトップダウンで、経営成果を大きくするために企業規模を大きくし、さらにグローバル化していく中で、日本企業が編み出したといってもよいスタイルです。

日本企業は戦後、ボトムアップを中心にして成長してきましたが、やはり事業や組織を大きくしていくには難しいものがありました。そこで、行われた工夫がミドルアップダウンで、現場の意見を経営に反映するために、ミドルが主体的に動いて、経営と現場を統合しようとする考えたです。

ただし、このようなアプローチはグローバル化の中ではうまくいきませんでした。現場に多様性があり、日本の現場と同じやり方を持ち込むためには、ミドルは現場を管理するしかなかったためです。そのような中でトヨタのように日本のやり方を組織ごと持ち込んだ企業ではミドルアップダウンがグローバルに保たれていることに注目に値します。


◆VUCA時代に求められる組織スタイル

ということで、維持が難しくなり、あまり活用されなくなってきた組織スタイルですが、VUCA時代を迎えて再び注目されるようになってきています。その理由は、上に述べた2つの要件をクリアできる組織スタイルだからですが、もう少し本質的な意味があると考えるのは、VUCA時代を乗り越える必須条件ともいえるコンセプチュアルな組織行動をとるには非常に適していることです。これがこのコラムを書いた理由でもあります。

経営成果を上げるには、

(1)筋のよい経営方針(ビジョンやパーパス)を示す
(2)経営方針を実現する戦略を創り、市場や社会の状況により変更していく
(3)戦略を具体化して、事業や製品に展開し、失敗すればすぐに別の具体化を考える

の3つが不可欠です。(1)は経営層のコンセプチュアルスキルですので、今回は議論しません。問題は(2)と(3)です。(2)を実行するのは、トップの役割で、従来であればこの質が経営成果の大きさに直結していました。

ところが、VUCAの時代はそうはいきません。いくら考えてよい戦略を作っても、環境が変われば期待した成果は生まれません。一方で、その戦略と現状のギャップをもっとも感じ取ることができるのは、最前線で働く現場です。


◆現場と経営を統合するミドルアップダウン

そこで現場の意見を経営に反映していく必要が生まれるわけですが、ここで問題になるのが現場は自分の関わる範囲で具体的なファクトでしか考えることができないことです。例えば、自分の担当している商品が売れているかどうか、売れていなければなぜ売れていないの、どう変更すれば売れるかを考えることができても、そこから自分の商品だけではなく一般的に売れるものがどういうものかを考えることは難しいものがあります。

立場的にそれを考えることができるのは、ミドルです。ミドルがさまざまな現場の意見を集め、それを概念化した上で、改善の方向性を考え、具体的な製品やサービスを現場に提案していく。また、トップに戦略の修正を働きかけていく。言い換えると、組織内で、概念と形象の行き来をすることを促進するのがミドルなのです。

これによって、

(1)変化が激しく、迅速な意思決定が求められる環境に対応する
(2)新たな価値の創造し、事業を成長させる

の2つを実現できるわけです。

これは、組織としてコンセプチュアルな活動を行っていることに他なりません。そして、コンセプチュアルな活動によって経営成果を大きくすることが可能になります。

 

◆関連セミナー

ということで、ミドルアップダウン型のマネジメントを目指すミドルマネジャーのためのセミナーです。

━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ミドルアップダウンによりコンセプチュアルスキルの高い組織を作る
                 ~VUCA時代のマネジメント◆(7PDU's)
 日時・場所:【ZOOM】2021年 02月 03日(水) 13:30-17:00、
               02月 04日(木) 13:30-17:00
      ※ZOOMによるオンライン開催です。
      ※少人数、双方向にて、演習、ディスカッションを行います
 講師:好川哲人(エム・アンド・ティ コンサルティング代表)MBA
 詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/conceptual_management.htm
 主催 プロジェクトマネジメントオフィス、共催:PMAJ
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 【カリキュラム】                     
 1.コンセプチュアルな視点から自組織のマネジメントを振り返る
 2.コンセプチュアルなマネジメントの6つのポイント
 3.ミドルアップダウンによるコンセプチュアル・マネジメントの実践
 4.コンセプチュアルなマネジメントの5つの効果
 5.自身のコンセプチュアル・マネジメントの実践方法を考える
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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。