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2020年10月 8日 (木)

【コンセプチュアル講座コラム】なぜVUCAなプロジェクトにはコンセプチュアルな視点が必要なのか

バックナンバーはこちら https://mat.lekumo.biz/ppf/conceputual_col/
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Vucaproject◆プロジェクトはVUCA前提か

著者は「VUCA時代のプロジェクトマネジメント」や「VUCA時代のプロジェクトデザイン」という連載を書いていますが、これに対して

「結局、VUCAっていままでとなにが、どう違うのですか」

という質問が結構あります。期間が限られていて、その中で初めて取り組むことが含まれているプロジェクトではそもそも

・要求の不確実性
・要求曖昧性

の2つは必須であり、また規模が大きくなってくると、

・複雑性

が出てくると感じている人が多いようです。また、最近のプロジェクトでは、前提条件や制約条件が変わることも珍しいことではありません。つまり、

・変動性

もあると考える人も少なくないようです。そんなこともあって、今、世の中がVUCAと騒ぎだしているけど、従来、起こっていたことを別の言葉で言い出しているのではないかと感じている人が多いようです。

この記事では、このような意見に対して、VUCAはこれまでとは異なるという説明を試みてみたいと思います。

◆プロジェクトの変動性とは前提が変わること

まず、プロジェクトの話から始めましょう。プロジェクトというのはこれまでも世界はVUCAという前提で考えられてきたのではないかという点ですが、これは整理して考える必要があります。

この議論のポイントは、変動性にあります。

確かに、プロジェクトマネジメントは不確実性、曖昧性、場合によっては複雑性を前提にして考えられていますが、プロジェクトを実施するかどうかの判断は前提の変動性にあります。

従来は、変動性がある案件をプロジェクトとして実施することは好ましくないと考えられていました。例えば、PMBOK(R)を考えてみるとこれは明らかです。PMBOK(R)ではリスクという概念がありますが、これはプロジェクト計画を基準にして、計画通りにできなくなる可能性を示しています。

ここで計画通りにできなくなる理由には2種類あります。一つは、起こることが想定てきる理由で、もう一つは想定できない理由です。

では想定できる理由とはどのようなものでしょうか。これは、プロジェクトの前提が崩れない範囲で起こる可能性のある計画外の事態です。


◆例~想定できるプロジェクトとできないプロジェクト

例えば、メンバーのスキルではスケジュールが守れないといった理由を考えてみます。

ここで、例えばこれまではやっていない方法Aでプロジェクトの課題解決ができる(成果を得られる)という前提があったとします。これに対して、方法Aをメンバーが習熟していないのでスケジュールが守れない可能性があるなら、これがリスクになります。そして、別の方法を考えるとか、別の人をメンバーに加えるといったリスク対策を取るわけです。これがリスクマネジメントです。

では、事前に十分に検討したが、プロジェクト成果を得るには方法Aしかない。一方で方法Aは誰が担当しようと実現できるかどうか分からないとしたらどうでしょうか。

この場合は、方法Aが実現できる可能性を判断し、それに応じて、どうするかを決めることになります。この場合、実現できる可能性が低いとすればプロジェクトを中止するのが正しい判断になります。言い換えると、前提が成り立たないない場合にはプロジェクトは中止も含めて、一から考え直しということになるわけです。

これに対して、方法Aが実現できればプロジェクトで得たい成果を得られると考えているが、本当に得られるかどうかはやってみないと分からないとしたらどうでしょうか?

これもリスクには違いありませんが、これは前提が変わる可能性があるというわけで、想定できないリスクです。想定できないリスクはプロジェクトが失敗すること以外は、何が起こるか予想できないリスクです。

想定できないリスクがあると、リスクマネジメントではプロジェクトを完遂することはできません。もう少し、別の方法が必要になります。例えば、成果を得るまでの流れをプログラムとしてデザインし、シナリオによってプロジェクトを切り替えていくといった方法です。これについては、詳細な説明は別の機会にします。

想定できないリスクがあるプロジェクトがVUCAなプロジェクトです。


◆想定できないのはコンセプチュアルスキルが低いため

ここで考えたいのは、想定できないリスクをもう少し厳密に考えてみます。想定できないと言いながら、方法Aが機能しない(かもしれない)ということは想定しているわけです。ところが、実際に何が問題になって方法Aが実現できても成果が得られないのかが分からないのです。

つまり、抽象的なレベルで考えると想定できているのですが、少し具体化すると想定できないということです。言い換えると、プロジェクトがVUCAになるのは具体的なレベルで抽象的なレベルでは必ずしもVUCAではないといえます。問題(リスク)によって抽象度は違いますが、具体的な視点から見ればにVUCAになっているものを、抽象的な視点からみればVUCAではないということは一般性があります。

これはコンセプチュアルな視点でみればVUCAをうまく乗り切っていく可能性があることを示しています。ところが現実には、現場視点が重要だということだけが独り歩きしているために、全員が振り回されているのです。

VUCAだと思っているプロジェクトの多くはプロジェクトマネジャーやプロジェクトスポンサーが現場・現物しか見ていない可能性が大です。

プロジェクトマネジャーはともかく、プロジェクトスポンサーには、プロジェクトの関係範囲やプロジェクト期間にとどまらず、もっと大局的に、また長期的にプロジェクトを見る視点を持ち、プロジェクトの現実と行き来しながら、プロジェクトを進めていくことが求められます。場合によっては、「総合的、俯瞰的」な観点からプロジェクトに対する上位者としての判断をしていきたいものです。

そのためにはコンセプチュアルスキルが不可欠なのです。


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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。