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2016年11月18日 (金)

【イノベーション戦略ノート:104】ステークホルダーとの信頼関係の構築

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Stakeholder1

◆ステークホルダーに対する幻想

イノベーションにおいて一つの大きな課題はステークホルダーにどのように接するかだ。特にイノベーションの初期のアイデアの実験段階において、多くの人が勘違いしていると思われるのが、通常の仕事と同じようなステークホルダーとの関係が必要だと考えていることだ。

通常の仕事では取り組んでいることをステークホルダーに理解してもらい、協力を得ることを目標としたステークホルダーマネジメントを行うが、イノベーションにおいても同様に考えている人が多い。

つまり、アイデアを実験的に行う自分の取り組みをステークホルダーに理解してもらい、協力してほしいと考えている。

しかし、これは幻想に近い。そもそも、この段階ではステークホルダーが誰かが分からないケースが多い。仮にステークホルダーが特定できたとしても、自分が取り組んでいることをステークホルダーに理解してもらうのは困難だし、そのために時間を使うのは無駄だと思われる。もちろん、方向性は理解し、合意して貰う必要があるかもしれないが、それ以上のことは自分にとっても手探りであり、ステークホルダーに説明することも難しいだろう。


◆ステークホルダーのアドバイスはイノベーションを妨げる

にもかかわらず、ステークホルダーとの良好な関係を持ち、アドバイスを受けたいと考える人は少なくない。認識しておく必要があるのは、それはイノベーションにとってむしろ、妨げになることがあることだ。

経験のある人なら分かると思うが、新しいことをやるときには、途中で立ち止まったり、すでに失敗に終わったことを後悔しても何も起こらない。立ち止まることなく、ひたすら前に進むべきだ。


◆ステークホルダーから信頼してもらう

ただ、ひたすら前に進むには、イノベーターが実験的な取り組みを終えるまで責任を持ってやりきることを信頼してもらうことが必要だ。これには2つの側面がある。一つはイノベーター個人に対する信頼があることである。

難しいのは、一般的に考えれば、ステークホルダーからそのような信頼を得るには良好なコミュニケーションが前提になる。これではコミュニケーションをせず、ひたすら前に進んでいくことと矛盾する。


◆信頼する文化

そこで求められるのが、もう一つの側面で、そのような組織文化があることだ。たとえば、部門間の横断的な協力体制を好んで行う文化があれば、コミュニケーションをとっていなくても比較的自由に協力が得られるだろう。

ただし、そのような組織文化があればいいが、ない場合には自ら作っていかなくてはならないことになる。

そのように考えると、結局のところ、重要なことは、自分自身で取り組みの進め方を判断し、イニシアチブをとることだ。これなら確実にできるし、また、ひたすら前に進んでいく中でステークホルダーとの関係をある程度コントロールできるだろう。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。