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2016年11月11日 (金)

【イノベーション戦略ノート:103】問題を大きく捉え、イノベーションを起こす

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Mondai1◆問題を大きく捉えるとは

イノベーションを起こすには、問題を捉えなおすことが重要である。その方法として、問題を大きくすることがある。今回の戦略ノートはこの点について考えてみたい。

まず、問題を大きくするとはどういうことかを明確にしておく。たとえば、長距離の飛行機に乗ることが大嫌いだという人は少なくないだろう。飛行機会社にとっては、長距離飛行を無くすことが課せられた課題であると考えることができる。実際に、プロペラ機から、ジェット機、コンコルドまでの飛行機の発達は、この問題に対する解決策として飛行時間を短くするという方向性で実現されたといえる。

ところが、この方向性では限界がある。そこで問題解決の範囲を変えた。飛行機を速くすることだけではなく、飛行時間を顧客にとって価値のある時間にするにはどうすればよいかを考えることにした。映画やゲーム、ドリンクや食事の提供、情報の提供、通信環境の提供など、どんどん進化している。サービスのイノベーションが起こっているわけだ。



◆iPhoneは問題の捉え方を変えて生まれた

このような発想の転換が問題を大きくすることであるが、イノベーションにおいてはこのようなやり方がベースになっていることが少なくない。

たとえば、iPhoneがそうだ。それまではフューチャーホーンの機能改善で競争をしていた。つまり、問題として携帯電話に何が必要かという捉え方をしていた。そこで、ジョブズはこの問題を大きくし、パーソナルな情報機器に何が必要かという問題にした。その背景には、アップルがもともと追いかけていたダイナブックがあったのではないかといわれている。

そのように問題を大きく捉え、その問題を解決する方法を自由に考えることによって、イノベーションを起こした。


◆問題を大きく捉えると何が起こるのか

問題を大きく捉えるとどうしてイノベーションが生み出されやすくなるのかを考えてみるといくつかのポイントがあるように思うが、iPhoneで考えてみると以下の3つだろう。

(1)問題が解決しやすくなる(通信速度)
(2)以前の問題の重要性が小さくなる(処理速度)
(3)より多くのことを達成できる解決策を得られる(アプリケーション)

では、問題のとらえ方とイノベーションの間にどのような関係があるのだろうか。まず、問題の範囲を限定的に捉えると技術的なイノベーション、あるいは持続的なイノベーションが求められる。iPhoneが登場したときに、日本企業の中には自社でもできたといった会社があった。確かに、iPhoneの半分の技術は日本の技術だといわれていたので、そうなのかもしれない。


◆システム的なイノベーションを起こすには

しかし、現実にはそうではなかったし、iPhoneは作れなかった。それはiPhoneがシステム的なイノベーションだったからだ。

問題を限定していると、システム的なイノベーションを起こすことは難しい。問題を大きく捉えるというのは、逆にいえば解決策をシステム的に組み合わせで考えるということでもあるし、やりたいことを一般的に考えるということでもある。

日本企業に技術以外のイノベーションが生まれにくいのは、問題のとらえ方にあるように思える。つまり、問題を具体的に、限定的に捉えすぎているのだ。だから、画期的な技術は生み出せても、画期的なシステムは生み出せない。

この問題を解決するには、問題の捉え方を変える必要がある。

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好川哲人

技術経営のコンサルタントとして、数々の新規事業開発や商品開発プロジェクトを支援、イノベーティブリーダーのトレーニングを手掛ける。「自分に適したマネジメントスタイルの確立」をコンセプトにしたサービスブランド「PMstyle」を立上げ、「本質を学ぶ」を売りにしたトレーニングの提供をしている。